「楢山節考」

















『楢山節考』    1958(昭和33)年  松竹

1958 (昭33)年キネマ旬報ベストテン第1位)・監督賞(木下恵介)・女優賞(田中絹代 )/第9回ブルーリボン賞ベストテン2位/NHKベストテン1位・最優秀監督賞(木下)・シナリオ賞・日本映画技術賞(楠田浩之・大野久男)/第3回コーク国際映画主演男優賞(高橋貞二)/芸術選奨文部大臣賞(楠田)

<木下恵介監督>
木下恵介監督<監督>木下恵介
<製作>小梶正治  
<撮影>楠田浩之
<音楽>杵屋六左衛門 ・野沢松之輔<音楽参与>遠道為春

<美術>伊藤熹朔・梅田千代夫
<装置>古宮源藏<装飾>小巻基胤
<録音>大野久男
<照明>豊島良三
<浄瑠璃>野沢松之輔<三味線>竹本南部大夫<長唄作曲>杵屋六左衛門・他杵屋一門 
<編集>杉原よし
<監督助手>大槻義一 
<色彩技術>楠田浩之

「楢山節考」深沢七郎著
「楢山節考」深沢七郎<原作>深沢七郎『楢山節考』(第1回中央公論新人賞)+『東北の神武たち』

「楢山節考」シナリオ
「楢山節考」シナリオ<脚本>木下恵介





<出演>
田中絹代 ・高橋貞二・望月優子 ・市川団子・小笠原慶子・東野英治郎・宮口精二・伊藤雄之助・鬼 笑介・高木信夫・三津田健・織田政雄・小林十九二・西村 晃・末永 功・本橋和子・五月女殊久・服部勝之・吉田兵次(口上役)

「楢山節考」-2












「楢山節考」-3<粗筋>

  東北地方の奥深い日陰の村。長野盆地南西に位置する姨捨山の麓である。69歳のおりん(田中)は亭主に死に別れた後、これも去年嫁に死なれた息子の辰平(高橋)と孫のけさ吉(市川)達の世話をしながら、息子の後妻を探していた。
  村では70歳になると楢山詣り行くことになっていた。楢山詣りとは姥捨のことである。働き者のおりんは、その楢山詣りの支度に余念がない。
  やがて村一番の行事である楢山祭りの日、隣村から辰平の嫁(望月)が来た。お玉と呼ぶ名で、年も辰平と同じ45歳である。気立ての良い女で、おりんは安心して楢山へ行けると安堵した。
  しかし、もう一つしなければならない事がある。おりんの歯は、村の子供達の唄に歌われるほど立派だったのだ。歯が丈夫だということは、食糧の乏しい村の年寄りとしては恥かしいことである。

「楢山節考」-5  33本あると言われて28本しかない、と言い返す。そして、おりんは自分の歯を石臼にぶつけて欠いた。
  これで支度はすっかり出来上り、後は冬を待つばかりである。おりんの隣家は銭屋といい、70歳の又やん(宮口)と強欲なその伜(伊藤)が住んでいた。
  その又やんはなかなか山へ行く気配がなく、村では振舞支度が惜しいからだと噂していた。おりんの家では女がまた1人増えた。
  けさ吉の子を姙っている松やん(小笠原)である。彼女は家事は下手だが、食物だけはよく食べる女だった。
  木枯が吹く季節にんった。雨屋の亭主(鬼)が近所へ豆泥棒に入り、捕って重い制裁をうけた。
  そして雨屋の一家12人は村から追放された。おりんは、鼠っ子(曽孫)が生れるまでに楢山へ行かねばと決心する。

「楢山節考」-4  後4日で正月という日、おりんが「明日山へ行く」と言い出した。辰平を急かせて山へ行ったことのある人々を招き、酒を振舞ってお山まいりの作法を教示された。次の夜、おりんはしぶりがちな辰平を責めたてて楢山へ向った。
  辰平に背負われたおりんは一言も発せず、険しい山道をひたすらに辿った。楢山の頂上近くになると、辺りには死体や白骨が見え始めた。おりんは死体のない岩陰に降り立った。
  その顔にはすでに死相が現われていた。おりんは辰平に山を降りるよう合図した。涙ながらに山道を戻った辰平は、七谷という所で銭屋の伜が又やんを崖からつき落そうとするのを見た。憤りが辰平の身内を走り、又やんの伜に躍りかかった。
  だが、銭屋の2人を呑んだ谷底には、鳥が雲のように群っていた。そこへ雪が降り出した。辰平は禁を犯して山頂まで駈け登り、念仏を称えているおりんに「雪が降って来て運がいいなあ」と呼びかけた。おりんは肯いて、辰平に帰れと手を振った。
  村に帰りついた辰平は、玉やんと並んで楢山を望み見ながら、「わしらも70になったら一緒に山へ行くんじゃね」と呟きながら合掌するのだった。


「楢山節考」


















<一言> 
   
  暗くて重い物語である。大きな山場がある事もなく話は淡々と進む。しかし、親を捨てることで葛藤する子共の気持ちが交錯する。
  親などどうでもよい、役に立たない婆は早く山に行けと言う子共も存在する。そこには、親子の愛もあれば、家族であっても憎しみもあるという複雑な状況が存在する。

「楢山節考」-2  父親を山に捨てに行く息子が、嫌がる父を簀巻きにしようとして谷底に突き落とし、その後で自分も谷底に落ちてしまうという場面がある。嫌な場面ではあるが、人間の恐ろしさ悲しさ或しいは愚かさを感じさせられて胸が苦しくさえなる。
  いずれにしても、こうした凄まじい状況が実際に日本にあったということ。今また、「平成の姥捨て山」の現状が露見しいることからして、単に凄まじいを過去のものとしては済まされないものがある。古き時代の映画で終らない、それこそ貴重な一作と言えるのではないか。
  主演の田中絹代は、この役を演じる為に自らの前歯3本抜いて年老いた老婆の役を演じたという。二度と生えてこない前歯を抜いて役を作ったのだから、その執念にも似た情熱には、ただ平伏してしまう凄まじさを覚える。
  題材からしてモノクロが適切とは思う。だが、楢山参りの掟を告げられるシーンでは、人々が緑がかった色で、炭火だけが赤くなっているシーンが、緊張感が盛り上がり迫力満点で怖いくらいである。
   
「楢山節考」深沢七郎実際にも作中で使用されている歌「楢山節」は、深沢七郎が作詞作曲をした。

かやの木 ギンやん ひきずり女                       
アネさんかぶりで ネズミっ子抱いた

塩屋のおとりさん 運がよい
山へ行く日にゃ 雪が降る

楢山まつりが 三度来りゃる
栗の種から 花が咲く

山が焼けるぞ 枯木ゃ茂る
行かざなるまい しょこしょって
  :
  : 
なんぼ寒いとって 綿入れを
山へ行くにゃ 着せられぬ

「楢山節考」深沢七郎(内容)  リメイクされた今村昌平監督の作品(1983年)は、鼠・蛇・蛙・狸・梟・などの生態、特に交尾のシーンや他の動物を食べている場面が頻繁に挿入される。人間もこうした動物と同じように、生と性のどろどろした営みの中で生きている、との監督特有の感覚だろう。
  乏しい食料を泥棒する一家に対する「村の掟」で残酷な仕打ちがあるものの、途中までは「姥捨」についての暗い面はあまり出てこない。却って、笑えてしまうようなユーモラスな面があり、木下版に比べると話が多少膨らんでいる。
  女達の濡れ場的な場面も登場する。夫の遺言で祟りを防ぐために男に体を開くおえい(倍賞)、その彼女に順番を抜かされるほど嫌われている利助(左)を慰めることを頼まれたおかね(清川)など。彼女らは、性の大らかさを見せつつ、生命力の強かさも兼ね備えた女でもある。     
  辰平(緒形)がおりん(坂本)を背負って山に行く場面は、実際の山を歩いている。木下版がセットだったのに対して、リアルな表現と言える。
  木下作品は見事な芸術作品である。対する今村作品も、この監督にしか作れない価値のある作品ではないかと思う。


「楢山節考」















「楢山節考」-1<参考>

  中央公論第1回新人賞を受賞した深沢七郎の同名小説に「東北の神武たち」を加えた映画化。脚色・監督は「風前の灯」の木下恵介。撮影も同じく「風前の灯」の楠田浩之が担当した。
  主演は「悲しみは女だけに」の田中絹代・望月優子、「その手にのるな」の高橋貞二、その他東野英治郎・宮口精二・伊藤雄之助などのベテラン。色彩は富士カラー。
  歌舞伎様式を取り入れて撮影された犒狠羞爿瓩侶措阿箸覆觝酩福2伐亜ι景・自然物・、道など全てをセットで作った。背景の照明の色を変化させて、様々な感情や場面の変化を演出している。


「楢山節考」記念碑「日本映画300」   (佐藤忠男著/朝日文庫)

 時は、風俗から見ると江戸時代か?所は信州の山の中、ある貧しい寒村である。老人は70歳になると山に捨てられる習慣がある。
 おりん婆さん(田中絹代)は、息子(高橋貞二)にも嫁(望月優子)を貰い、もう働き手としては役に立たない年になっていて、そろそろ神様の待っているお山に捨てられなければならないのだが、孝行者の息子は、なかなか捨てに行こうとしない。
  婆さんは、自分がまだ歯も欠けていないくらい健康なのを恥ずかしがって、自分で石臼に歯を打ちつけて欠けさせる。いさぎよく捨てられなければならない年になって、まだなんでも食えるというのでは恥ずかしいのである。
  彼女には、山に捨てられる覚悟はもうすっかりついている。だから、隣の爺さんが捨てられながら逃げてきたのを見て、なんという恥さらしな不甲斐ないことかと嘆く。彼女はすすんで山へ行くと言い、山へ行ったことのある人たちを集めて捨てられるときの作法を教えてもらう。
  そのあと、息子は彼女を背負って裏の山に登る。そして、定めた場所に彼女をおいて息子が山を下りかけると、空からチラチラ雪が降ってくる。雪が降ると、捨てられた老人はすぐに死んで醜態をさらさずにすむ。
  だから、たいへん運がいいと言われている。息子は、母の心掛けの良さと自分の孝行が天に通じたのだと思い、いったん捨てたら運び手は決して老人のそばへもどつてはならぬという掟も破って婆さんのそばへかけもどり、「良かったなあ良かったなあ」と絶叫する。
  婆さんはかすかにほほえむが、黙って、もう帰れ、と手で追う。息子は悲しみと喜びのこもごもにたかまる気持にせきたてられ、一気に山をかけ下りる。
  この不思議な情愛に充ちた恐ろしい物語を木下恵介は凝りに凝って演出した。まず、全体に歌舞伎の調子をとり入れた。ラストシーン以外はぜんぶセットで、人工的な風景のなかで物語が進行する。場面の転換にも、風景のセットを車で横に動かしてその奥にまた風景が現れるというような舞台転換の方法が使われている。
  音楽にも三味線を使い、暗たんたる無常感が強調されている。カラーも日本の昔の版画の陰うつな味を生かしている。
  田中絹代は、犂遒鵑濃爐魴泙┐覘瓩箸いο掲未鮓事に好演している。幾つかある彼女の汚れ役の中でも、極め付きの代表作の一つと言えるだろう。


「楢山節考」













「楢山節考」-2












「楢山節考」-3












「楢山節考」ポスター「楢山節考」ポスター

















「楢山節考」パンフ「楢山節考」パンフ






















                     
「楢山節考」広告「楢山節考」DVD
















<リメイク>

「楢山節考」1983スチール











『楢山節考』   1983(昭和58)年 東映   1983年キネマ旬報ベストテン5位/1983年カンヌ国際映画祭パルム・ドール受/1983年日本アカデミー賞作品賞・主演男優賞(緒形拳)受賞
<今村昌平監督>
今村昌平監督<監督>今村昌平
<製作>友田二郎
<脚本>今村昌平
<企画>日下部五朗
<撮影>栃沢正夫
<音楽>池辺晋一郎
<美術>芳野尹孝
<録音>紅谷愃一
<照明>岩木保夫
<編集>岡安 肇
<スチール>石黒健治
<監督助手>武重邦夫・池端俊策

「楢山節考」深沢七郎著
「楢山節考」深沢七郎<原作>深沢七郎『楢山節考』+『東北の神武たち』

<出演>                                  
緒形 拳・坂本スミ子・倉崎青児・左とん平・あき竹城・高田順子・嶋守 薫・辰巳柳太郎・深水三章・横山あきお・志村幸江・岡本正巳・江藤 漢・清川虹子・倍賞美津子・常田富士男・小林稔侍・三木のり平・ケーシー高峰・殿山泰司・樋浦 勉・小沢昭一


「楢山節考」(1983)













「楢山節考」1983-1「楢山節考」1983-2







「楢山節考」1983-3「楢山節考」1983-4







「楢山節考」1983-1「楢山節考」1983-2







「楢山節考」1983-3「楢山節考」1983-4









「楢山節考」1983-5「楢山節考」1983-6















「楢山節考」1983-1「楢山節考」1983-2









「楢山節考」1983-3「楢山節考」1983-4









「楢山節考」1983-2「楢山節考」1983-1










「楢山節考」1983-3「楢山節考」1983-4








「楢山節考」1983ポスター「楢山節考」1983ポスター




















「楢山節考」1983ポスター「楢山節考」1983ポスター

















「楢山節考」1983パンフ「楢山節考」1983ちらし

















「楢山節考」1983ちらし「楢山節考」1983看板











「楢山節考」1983BVD「楢山節考」1983DVD
















「楢山節考」1983DVD「楢山節考」1983DVD