2005年01月26日

昭和の歌謡曲 長崎は今日も雨だった 内山田 洋とクール・ファイブ

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ムード・コーラスというジャンルがあります。ぱっと思いつくままに挙げてみると、敏いとうとハッピー&ブルー鶴岡雅義と東京ロマンチカ黒沢明とロス・プリモスロス・インディオス・・・そして総本山といえば和田弘とマヒナ・スターズです。なんでも音楽的に分析すると、ハワイアンに始まってドゥー・ワップ、ジャズ、ラテン、民謡、ロック、R&Bと、まさにオール・ジャンルといえるくらいにすべてを飲み込んだムード・コーラスのシーンは、その雑食性の凄さからみて世界でも類型がないらしく、これぞ日本の歌謡史における最大のムーブメントであったのではないか、かように思うわけです。そして、ムード・コーラスの永遠不滅のグループといえば、内山田洋とクール・ファイブをおいてほかにはないのであります。拙的には内山田洋とクール・ファイブこそがムード・コーラス随一のグループであると断言させていただきます。
 
さて、記憶は1975年に遡ります。当時、フジテレビ系列の毎週土曜日ゴールデン・タイムに放映されていた「欽ちゃんのド〜ンとやってみよう」という高視聴率番組がありました。萩本欽一が坂本二郎とのコンビ コント55号から離れて初めてメインを務めるTV番組(と思いましたが、日テレ系の「スター誕生」がその前にありました。1/28追記)で、ほかにレギュラー・キャストとして前川清が出演しておりました。萩本欽一と組んでコント54号と名乗りなかなかのボケっぷりで爆笑を誘っていたことを思い出します。そして番組の終盤に、前川清がシンガーとして加わっていた内山田洋とクール・ファイブのコーナーがありました。メンバーは、前川清以外は全員担当の楽器を持って登場して、これによって、内山田洋とクール・ファイブは単なるコーラス・グループではなくボーカル&インストゥルメンタルの、そうバンドであることを強く世間に知らしめたのです。それと同時に、ふだん歌謡番組で目にしていたコーラス隊の人々が、決して”でゅわわわ〜”と発声するだけでギャラ泥棒していたわけではないんだよー、ということを切実に訴えていたのです。これにはびっくりしました(ええっ!?そうだったのお?と今さら驚いている人は、完全なモグリです)。しかも、このバンドが、とんでもないテクニシャンぞろいであったことも日本全国に知れ渡っていったのでございます。
 
前川清の歌のうまさは今さらいうまでもないのですが、番組でも頻繁に歌われたヒット曲「そして、神戸」での、悲しみ、呻き、苦しみ悶えるかの如く顔をゆがめての激唱。ときに声を歪ませ絶妙なビブラートを織り交ぜながら低域から高域まで自在に操るその喉の素晴らしさは、今もはっきりと脳裏に焼きついています。そして、75年の夏に新曲として披露された「中の島ブルース」の素晴らしさといったら言うに及ばず。メンバー随一の紅顔の美男子 岩城茂美のイントロでの衝撃的なテナー・サックスのフレーズは、紛れもなくジャズ・テナーの父 コールマン・ホーキンス直系の血を受けついでいることを物語っています。リーダー 内山田洋のギターを聴くのなら、71年の隠れた名曲「すべてを愛して」でのプレイが白眉です。歌のバックで弾く印象的なオブリガートは、ケニー・バレルか?いや、その朴訥としたブルージーな味わいは、ソウル・ジャズ・ギターの第一人者グラント・グリーン譲りでしょう。その場の空気を一瞬にして蒼く染めあげていきます。さらにもう一方で地味ながらも煌びやかな音色を聞かせる宮本悦朗のピアノは、歌謡界のウィントン・ケリーといったところ。と、もう拙の耳にはまるでジャズに聞こえてしまう内山田洋とクール・ファイブです。
 
そんなわけで画像にグラント・グリーンGRANT'S FIRST STAND(左上)とコールマン・ホーキンスHAWKINS! ALIVE!(右上 邦題『ジェリコの戦い』)をあしらってみました。こうしてみると、ソウル・ジャズ・ムード・コーラスとして君臨した内山田洋とクール・ファイブの姿が実に誇らしげではありませんか。
 
その後ソロとして独立した前川清は今も第一線で活躍しておりますが、ムード・コーラスのブームが去りその藻屑と一緒に消えてしまったのか、現在、内山田洋とクール・ファイブのCDは数種のベスト盤と1st『内山田洋とクール・ファイブ』(名盤!!)が出回るのみです。ベスト盤では『ヒット・コレクション決定盤』筒美京平作曲ソウルバラードの傑作「さようならの彼方へ」はぜひお聴きいただきたい)を推しておきます。が、やはりここは何としてでも怒涛の12枚組くらいのBOXをリリースしていただきたいですね!
 

mickbanzai at 00:22│Comments(3)TrackBack(0)

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この記事へのコメント

1. Posted by DOBRO   2005年01月26日 09:32
携帯からも書き込めるかやってみたいと思います。
クールファイブといえば、僕の一押しは「西海ブルース」でした。
2. Posted by Dr.SCOOP   2005年01月26日 10:46
路傍の石さま
あなたの守備範囲の広さに脱帽です。
歌謡曲からジャズ、ロック、ブルースへと、八面六臂の批評に感服したします。
今回は私にも盲点だった歌謡ムード・コーラスにスポットを当てて下さり、改めて驚くばかりです。
私も気合いを入れて、このあたりを聴いてみます。
3. Posted by MASA   2005年01月26日 15:08
こんにちは。
路傍さんの相変わらずの鋭い洞察力と分析力には脱帽するのみです。なるほど、コールマン・ホーキンスとグラント・グリーンかあ。
'80年代は全員パンキッシュなファッションに身を包み、久々に楽器を持ってロック色を前面に押し出した曲もありましたね。確か化粧品のCMソングか何かの曲だったと記憶していますが、あれには当時驚きました。さすがにあまり売れなかったようですが(笑)。
ムード歌謡の中ではアタマひとつ分ほど抜きん出ていた、なかなか画期的なグループでしたね。

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