2005年06月26日

四つのお願い ちあきなおみ

 
―― なんじゃ、この辞表は?

所長!長い間お世話になりまつた。

―― いきなりこんなものを出されたって、ワシゃ何も聞いとらんぞ。

脅しの電話やら変な間違い電話ばっかりで耐えられましぇん。お陰ですっかりノイローゼでつ。

―― おまえとワシのふたりだけでこの探偵局を守ってきたというのに。よし、ではこうしよう。今までワシには言えなかった何か要望とか願いごとがあるだろう。ワシに受け入れられることだったら話を聞こうじゃないか。

お願いごとでつか?

―― そうじゃ。何かあるだろう。どうなんじゃ?

ひとつ、いつも電話番ばかりでつまらないでつ。

―― なるほど。

ふたつ、特に夜の電話番がつらいでつ。

―― それと?

みっつ、そんなときに相手が女性だったら怖くて逃げたくなりまつ。

―― ほかには?

よっつ、もう事務所にひとりで電話番をするのは懲りごりでつ。

ジリリリーン・・・

ひぃぃぃーー!!

―― わかったわかった。今日はワシが電話に出よう。あ〜もしもし?パヤパヤ昭和歌謡探偵局じゃが?・・・・・・ふむふむ、今かわりましょう、少しお待ちを。おまえ宛ての電話じゃよ。

ボクでつか?もしもし、お電話かわりまつた。

「あたしの四つのお願い聞いてくれた?月々5,000円の掛金なら病気や事故のときの保障も手厚いわよ。とりあえず契約書にハンコを頂戴ね。そのお願い聞いてくれたら――
あなたに私は 夢中 恋をしちゃうわ♪

どひゃーー!!毎日訪問に来る生命保険の勧誘でつ〜。ぶくぶくぶくぶく・・・(撃沈)。 
 
ちあきなおみ 四つのお願い

ちあきなおみ
です。

ちあきなおみのイメージはいくつかありました。
最初のデビュー曲「雨に濡れた慕情」は秀逸なジャズ・アレンジでヒットしましたが、
やがて「四つのお願い」でお色気路線に方向転換。
これも時代の要請だったんでしょう。ヒットしました。

「X+Y=LOVE」とかね、
イコールラヴ ラヴラヴアイラヴユー♪なんて口ずさんでいると、
そんな歌うたうんじゃない!ってんで、よく親から引っ叩かれたもんです。
当時は、周囲の親やPTAからは、
ちあきなおみ奥村チヨなんていうのは子供を毒す害悪と目されていたようです。
オトナの恋の歌ですからね。
そんなのを子供があたりを憚らずに大声でうたってはいけませんですね、確かに(笑)。

そして、ちあきなおみは「喝采」で見事なイメージチェンジを図ります。
1972年、拙が小学生高学年だったときにリリースされた「喝采」を
耳にしたときの衝撃を今だに忘れることはできません。
国語力が人よりも劣っていた拙に、
歌詞の意味を完全に理解できていたとは思えませんが、
それでも瞬時に心を鷲掴みにされるや琴線が震えたのです。
これぞ昭和歌謡史に残る屈指の名曲にして名唱です。

「喝采」でのちあきなおみの厳かに歌い上げる声に、
俗世間の喧騒を越え遥か天上に登りつめていくかのような無常の美を感じます。
ちあきなおみの声に宿るもの。
それは言霊とでも表現すればいいでしょうか。

その翌年に歌われた「夜間飛行」もまた素晴らしい名唱でした。
目を背けたくなるようなドロドロとした情念。
己の肉体に刃物を突き立て血を流して苦しみ、
その苦しみの果てに選択したものは死だったのか?
魂は解脱し、やがてこの地上から飛び立っていく。
そんな救われない悲しさまでも狂おしい美として切り取ってみせてしまうところにも
ちあきなおみの非凡さが表れているように思います。

その後も忘れ難い多くの名曲を残しながら、
演歌の世界にも傾倒していきますが、
そんな中でフォーク界の鬼才友川かずき作詞・作曲による「夜へ急ぐ人」では、
おいでをする人 あんた誰♪と歌いながら狂女を演じて話題騒然に。
これは見た人すべての度肝を抜く怪曲でした。
ちあきなおみの表現の広がりと深さは留まるところを知らないかのようです。

ところが、1992年に14年間連れ添った俳優の郷治氏と死別。
その後は芸能界から身を引き、以後その姿を見せることがないまま今に至っています。
オリジナル・アルバム4タイトルが紙ジャケ再発されて再評価の機運も高まる現在、
ぜひ多く方にちあきなおみの素晴らしさに触れていただきたいと思います。
 

mickbanzai at 21:07│Comments(1)TrackBack(1)

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1.   [ TEA FOR ONE ]   2005年07月05日 15:31
 このビル・エヴァンスの『ワルツ・フォー・デビー』を模したアルバム・ジャケットは、ちあきなおみです。 長い芸歴の中で一番の異色作が、この1977年の『あまぐも』。 団塊の世代の彼女が、同世代のシンガーソングライターたちのメッセージソングに連帯感を持ったのかど

この記事へのコメント

1. Posted by mickmac   2005年06月27日 00:49
偶然でしょうか、今日は仕事場で『戦後の光と影』を聴いておりました。
「カスバの女」「フランチェスカの鐘」に聴きいって仕事なんか出来るのか、ってところですが……笑。

彼女の曲で一番好きなのは『紅い花』かな〜。
『朝日のあたる家』は凄みがありすぎ……浅川マキと双璧ですが。
彼女のシャンソンもいいですよ。

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