2009年05月23日

ビートルズ リマスター番外編 こんなリマスターは許せるのか!?

夜明けのティーンエイジャー どうですか?その後体調はよくなりましたか?
路傍の石 なかなか復活しなくて、と思っていたらひどい風邪を引いてしまってね。
夜明け  えっ!?ひょっとして新型インフル・・・。
路傍  いや、それはないない(笑)。今のところ熱はないし、取り敢えずこうして起きてしゃべることができるからね。ところで今回のインフルエンザのウイルスの型が、その昔世界的に大流行したスペイン風邪の変種であったことがわかったそうだね。その後主流となったアジア風邪と入れ替わるようになくなっていったらしんだけど、そのターニングポイントが57年なんだって。だから、どうやらそれ以降に生まれた人に免疫がなくてヤバイらしいよ。そうしたら62年生まれの拙ダメじゃん!あ〜。どーしよー(おろおろ)。
夜明け この期に及んで慌てたってしょうがないよ。この爆発的な流行の兆し前に、みんなで知恵を絞りながら少しでも予防に努めるしかないと。そういうことですよ。さて、今回のテーマは核心であるデジタル・リマスターについて、再度突っ込んで話していきたいと思います。デジリマの周辺事情を一刀両断!ということで、ちょうどストーンズ70年代のデジリマのリリースも始まったことで、どうだったのかね、あっちは。
路傍  先日聴きましたけどね。ファンのあいだではそこそこ評判いいみたいだけど、聴く人の耳と再生環境によって違いはあるとはいえ、今回のストーンズはひどいと思ったよ。こんなデジリマがいいなんて言い出したらみんなよくなっちゃうよ。それくらいよくないのというのが拙の感想だね。今回は番外編として、ローリング・ストーンズのデジリマの話題です。


夜明け これまでストーンズのデジリマの評判は頗るよかったよね。60年代デッカ時代のリマスターはボブ・ラディッグによるもので、あれはSACDを前提にしたDSDマスタリングだった。通常CDのPCMマスタリングとは理論的に根本から異なる高品位マスタリングということで、マスター・テープの選別から慎重に時間を掛けて行われて、だからCDレイヤーで再生しても本当に素晴らしい音で、これぞデジリマの鑑というような音だった。今回はどんな手順を踏んで誰がリマスタリングをしたの?
路傍  そこに大きな問題があるんだけど、その説明の前にまずは音を聴いてよ。ここにあるのは『GOATS HEAD SOUP』(山羊の頭のスープ)『IT'S ONLY ROCK'N ROLL』。比較試聴用に70年代末期東芝EMIからリイシューされた国内アナログ盤を準備したよ。
夜明け えっ!?UKオリジナル盤じゃないの?だったら意味ないんじゃない?
路傍  まぁ、そう言わないで(笑)。この2枚に関してはオリジナル盤とほとんど遜色ないことが確認済みなので大丈夫。まず『山羊の頭のスープ』の1曲目「ダンシング・ウィズ・ミスターD」から行こうか。

GOATS HEAD SOUP

夜明け
 さすがデジリマ。音圧も高くて迫力ある音だねぇ。それに比べるとアナログのほうは音が小さくて線が細いよね。
路傍  ごめん。これじゃ比較にならないね。じゃあアナログの音量をCDと同じに揃えて聴いてみて。
夜明け おお!こうして聴くとさすがにアナログの鮮度のよさが際立つね。ミックの声の輪郭もきっちり立ってるし、全体の音場感もエコーの感じがナチュラルで広がりがあるね。それに比べるとこのデジリマのほうは音変じゃないか?明らかに音のエッジがへたって死んでるよ。バックのギターもドラムも団子状に固まって全然ほぐれなくて解像度悪いよ。なんだよ、この音!つーか、このCDプレーヤー壊れてないか?
路傍  大丈夫だよ。いつも通り正常に動いてるよ(笑)。このデジリマだけ聴いていると迫力があって音も前に出てくるから、それだけでデジリマの効果があるように聴こえるんだよね。でもよく聴くとその実態は音圧上げてるだけで個々の楽器の音の鮮度がまったく感じられない。「悲しみのアンジー」のアコギはアナログだと繊細な音質で余韻も伸びているのに、デジリマだと音質がなまっていて音量だけがでかいという。マスター・テープの劣化に対するエンハンスが不十分なのか、あるいはマスタリングの技術では限界があったのか、辛うじて音痩せを補正して音圧上げただけの音にしか聴こえないのが悲しい。
夜明け じゃあ次に『IT'S ONLY ROCK'N ROLL』のほうはどうだろ?「IF YOU CAN'T ROCK ME」から聴いてみよう。この曲って独特のミックスになってるんだよね。ボーカルにリミッターをかませて音のピークを意図的に歪っぽく潰してる。猥雑な雰囲気が出るようにわざと分離の悪いミックスをしてるんだよね。で、デジリマのほうはどうかな?元々の解像度がよくないから比較にならないな(笑)。あまり違いがないね。少なくともデジリマのほうが解像度が上がってクリアになってるなんてことはない。もしそう聴こえるとしたら、これも音圧を上げて音のピーク成分が多くなってるからそう錯覚するだけじゃないのかな。

IT'S ONLY ROCK'N ROLL

路傍
  まったくその通りだよね。実は音圧を上げる利点はそれに尽きるんだ。音圧をアップさせて全体の音のピークが上がると迫力満点になって音もよくなったように感じる。それって人間の耳の特性に適ってるんだよ。人間の聴覚の周波数特性は、音圧が下がるに従って中域に比べて低域と高域が聴こえにくくなる性質があるんだよね。特に低域ほど音圧の低下に比例して聴覚の感度が極端に落ちて聴き取りにくいんだ。これをラウドネス曲線っていうんだけど、音楽を大きい音から徐々にボリュームを絞っていくと何となく実感できるね。小さい音ほど低音が足りなくなって音の線が細くなって聴こえるでしょ。で、このときに低域の音圧を上げてやると音量が小さくても全体のバランスが取れていい音になる。この理屈を応用したのがオーディオ・アンプやCDラジカセに付いているラウドネスだとかバスブーストとかいう機能なんだね。ところが近年のCDの音作りって、マスタリングの時点で低域を中心に音圧を上げる傾向にあって、つまり今や世界的にイヤホンやヘッドホンで聴く携帯オーディオ全盛になっているために、そんな場合小さめのボリュームでもしっかり低域を聴かせられるようにそうしてるんだね。ところがこれをわが家で普通にスピーカーから鳴らすとやたらと低域がブーミーになってしまって、さらに音像の輪郭がぼやけると、そういうことじゃないかな。話が長くなったね。
夜明け ここでそのあまりの理屈っぽさに半分以上の人はこのブログから去って行ったね。だからつまらないって言われるんだよ。
路傍  なんだとぉ〜!でもいいんだ。ここは拙が自分で読みたくてやってるんだから(笑)。じゃあ気を取り直して、次に4曲目の「ティル・ザ・ネクスト・グッドバイ」を聴いてみようか。
夜明け うん。さっきの『山羊の頭のスープ』ほど音質の劣化はないみたいだね。それでもアナログで感じさせる音場感の広がりというか空気感はあまりなくて、やっぱり全体に団子状に固まってほぐれない。アナログだとアコギの音像がきちんと立ってほかの楽器と混ざらないできれいに分離しているのに、デジリマになると全部が重なって一緒くたになって聴こえるんだよね。ドラムやベースが鳴るとブーミーな低音のせいでアコギの繊細な音が掻き消されているように聴こえてしまう。アコースティックで美しい曲なのに勿体ないことするよな。音楽を理解してやってるのかと怒りすら覚えるよ。
路傍  ちなみに『IT'S ONLY ROCK'N ROLL』UKオリジナル盤の音は東芝盤よりもさらに”しなやか”で”まろやか”な聴き心地のいいきれいな音なんだよね。むしろ東芝盤のほうがエッジが立ったロック的な音だね。どっちにしても多くの人が言うようなモコモコした音なんかでは決してないし、このアルバムの多彩な音楽性に相応しいミックスとマスタリングがされていたんだと思うね。
夜明け そうなんだよね。『山羊の頭のスープ』『IT'S ONLY ROCK'N ROLL』も音が悪いなんて声をよく聴くけど何でだろうね。サウンド・プロダクションのクオリティは決して低くないし、これに比べたら70年代前半に数多あるシンガー・ソングライター系にはそれこそモコモコした悪い音のレコードなんてたくさんあるよ。
路傍  ストーンズ『BLACK AND BLUE』以降、音作りをどんどん都会的で洗練されたものにしていったじゃない。それと比較すれば確かに70年代前半までの音のテイストは少し古く感じるよね。だからじゃないかな。今回ストーンズのデジリマはこの2枚を買っただけだったけど、これを聴いてそれ以外は敬遠することにしたよ。なんか結果が見えちゃった気がしてね。前回のデジリマは15年以上前に、その後のデッカ時代のデジリマと同じボブ・ラディッグが引き受けたんだけど、あっちは決して悪いものじゃなかったよね。今から見れば足りない部分もあるけど、概ね丁寧な仕事がされたと思う。だから今回やるのであればもう一度ボブ・ラディッグにやってほしかったんだけど、今回はマーカソン・マスタリングというマスタリング専門のスタジオに依頼したんだ。

夜明け ストーンズの新作は近年ずっとここに依頼していたんだね。最先端の設備と技術を持っていて業界では注目の的みたいだよ。デジタル全盛の時代にあって現代的な音作りには定評があるようで、若手アーティストの作品もたくさん手掛けているんだな。
路傍  それはともかくね、ここまで話してきたように疑問が多くて、マスタリング云々以前にその元になるマスター・テープのリサーチは果たしてどこまで行われたんだろうかと。もしかしてそんなことはまったくやらなかったんじゃないかと。ボブ・ラディッグデッカ時代のリマスタリングを進める際にまず必要だったことは、かつてデッカが世界の各国に配給したサブ・マスターで現存するものを全部引き上げて、そこから損傷がなく最良の音質が保たれているマスター素材を1点ずつ検証ながらチョイスしていくことだったという話だよね。よくレコード会社は宣伝のために「オリジナル・マスター・テープからデジタル・リマスタリングを行いました」なんて格好つけて言うけど、そのほとんどは真実を正しく伝えていない。40年も昔のオリジナル・マスター・テープがまったく劣化がなく完全な状態のままなんてのは稀なことで、だから高品質のリマスタリングを求めるなら、オリジナルからコピーされたセーフティからサブ・マスター、場合によってはマルチ・トラックのセッション・テープまで遡ってそれらすべての中から少しでも劣化が進んでいない最良のものを見つけ出すということから始めるしかないんだよね。
夜明け 今回はそのプロセスを省略した、要するに手抜きをしたんじゃないかっていうこと?
路傍  そう。その証拠のひとつが『山羊の頭のスープ』「スター・スター」に20年ぶりくらいにセンサード・バージョンが使われたという事実。70年代当時、猥褻な歌詞が社会的にいい影響を及ぼさないという理由で、当時配給していた米国のアトランティックが自主規制して問題の歌詞2箇所を聴き取りにくくするよう処理したものなんだけど、その後のCDではオリジナル通りに戻されたし、ここに来て今さら蒸し返さなければならない理由なんかあったのかな。もしそうじゃないのなら、リサーチ不足のまま目の前にあったマスター・テープをただ使っただけじゃないかというね。
夜明け いや、詳しいことはわからないけど、ひょっとして今後は中国やロシアをメインの市場にして売っていくために改めて自主規制したのかもよ。それは冗談だけど(笑)。『山羊の頭のスープ』の音質が今風のリマスタリングでテイストが変わってしまったにしても、ここまで音が劣るというのも確かに腑に落ちない問題だよな。もう少し使えるマスターがなかったのかと勘ぐりたくなるのもわかるよ。
路傍  同じユニバーサルでもデッカ時代のデジリマのときはあそこまで徹底しておきながら、今回はEMIからユニバーサルへの配給権の移動に伴ってのリイシューで、何となく急場凌ぎのやっつけ仕事的な匂いがするんだよな。この件はマーカソン・マスタリングを責めるというよりもメーカーであるユニバーサルの問題じゃないのか?いや、原盤の権利はあくまでもストーンズ側にあるからストーンズ・オフィスの怠慢か(笑)。考えてもみればデッカ時代の音源も原盤の権利はアブコだった。だからあのSACDデジリマにおける計画的な采配はアブコ主導だったということか。
夜明け  あのときはデジリマの制作費を出したのはアブコってこと?今のアンドルー・オールダムとの関係はどうなってるのかな?
路傍  アブコが制作費を持ったかどうかなんて拙が感知することじゃないだろ。そんなこと知らないよ。ユニバーサルが肩代わりをしたかもしれないし、アレン・クラインが膨大な印税収入のなかから必要経費として捻出したかもしれないし。それとなんだって?アンドルー・オールダムがどうしたとか、何でもかんでも拙に訊くなよ。興信所やってるわけじゃないんだから。どうせアレン・クラインに雇われて金もらっただけだろ。かつてストーンズをプロデュースしたのはオールダムにしても財力を持ったクラインには所詮勝ち目はないんだよ。そういえばオールダムイミディエイト紛争の件は身につまされたよな。人間の栄光なんて一時だけのものであって、そんな自分に酔って身を持ち崩すとたちどころに転落人生を歩むという、ありゃ格好の反面教師だよな。

夜明け 下世話な話になってきたところで今回はこの辺で。
路傍  おいおい。勝手に終わらすなよ。デジリマに関する続きはまだあるぞ。
夜明け 次にしましょう。もう収集つかないから。
路傍  いやだ!もっと喋らせろ。ここは拙のブログだ。好きにやらせろ!え〜い。くそ!続けさせろって言ってんだろ!じぐじょおおお〜〜〜〜!!!(大泣)
夜明け 可哀想に・・・どうやらさらに進化した豚ウイルスに脳を侵されたようだな。南無阿弥陀仏南無阿弥陀仏・・・・・・。


追記
深夜にあらめてストーンズのデジリマを、アンプのボリュームを音が室外に漏れないように絞って聴いています。するとどうでしょうか。面白いことにこれがなかなかどうしてちっとも悪くないんですよ。ドラムからベースまで全部の楽器の音が分離してよく聴こえるような気がして、さっきまであれほど貶していたのがウソみたいに良いんです(笑)。結局そういうことなんですね。このCDはフルボリュームで聴いてはいけない。そういう鳴らし方を想定したリマスタリングではないと。これから寝るときにCDラジカセでも聴いてみようと思います。


mickbanzai at 22:10│Comments(2)TrackBack(0)

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この記事へのコメント

1. Posted by atsu-y   2009年05月24日 12:59
お久しぶりです。久々のストーンズですね。
わたしも音量をそろえてアナログや過去のCDと比べて聴きましたけど、あまりに感想が違いますね(笑)
特にこの2枚はオリジナル・アナログも過去のCDも音が悪かったので、そこまで悪くはないと思いますが。
ところで"Star Star"のセンサードって、アナログのとはちょっと違うと思いませんか?
2. Posted by 路傍の石   2009年05月24日 13:29
5 atsu-yさん、どうもご無沙汰です。
> わたしも音量をそろえてアナログや過去のCDと比べて聴きましたけど、あまりに感想が違いますね(笑)

タイトルによってバラつきがあるということでしょうか。それと再生する環境によって音がここまで違って聞こえるということに戸惑いを感じますね。

> 特にこの2枚はオリジナル・アナログも過去のCDも音が悪かったので、そこまで悪くはないと思いますが。

拙のインプレッションは、デッカ時代のデジリマが奇跡的に素晴らしかったこととの相対的な評価も含んでいます。もっといい音にできたはずだと。ところでさっきも『山羊の頭のスープ』のデジリマを聴いていたんですけど、個人的にこの輪郭がボケた音だけは許せませんね(笑)。

> ところで"Star Star"のセンサードって、アナログのとはちょっと違うと思いませんか?

そうですか?実は高校時代に買ったオリジナルUS盤は手放してしまって今は手元にないんです。今さら買い戻して比較するのも何だしということで(爆)。

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