2008年02月04日

カロッサ「ルーマニア日記」

 NHKテレビで藤沢周平の紹介をしていて、藤沢周平が青年時代に読んで大きな印象を受けたと語っていることを知った。全集で当たってみると「青春の一冊」というエッセイ(別冊文藝春秋平成元年10月号、新潮文庫「ふるさとへ廻る六部は」所収)である。
 カロッサはドイツの医師で、「ドクトルビュルゲルの運命」という医師を主人公とした作品があり、「ルーマニア日記」は、第一次世界大戦に医師として従軍した話である。淡々とした詩的で静かな自然描写であり、主人公が死者のノートから発見したとする断片の文章など、観念的・神秘的で理解するのか難しい。ただ、戦争というどうしようもないあまりの悲惨・残虐に対して、神秘的・超越的なものしか人間には頼るものがないのではないかという感覚はよく出ている。
 同じ第一次世界大戦をドイツ軍の側から描いた「西部戦線異状なし」(レマルク)と比べるとその対比は鮮やかで、「西部戦線」の方はもっと描写が即物的で、活動的である。38歳で医師として従軍したカロッサと、10代で学徒出陣したレマルクとの違いともいえるが、根本的ところでは、詩人であるカロッサと、ジャーナリストであったレマルクとの視点・文体の方法上の違いが大きいようだ。
ルーマニア日記 (岩波文庫 赤 436-2)


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