2008年03月08日
ジーキル博士とハイド氏
スティーブンソン/田中西二郎訳(新潮文庫)ジーキル博士は、裕福で誰からも敬愛される紳士である。しかし、それは表の顔で自分の中に享楽的で背徳的な面が押さえつけられていることを自覚していた。その自分の内なる邪悪な面を解放する魔法の薬を発見する。そうして生まれたのがハイド氏である。この薬を飲むと、性格や形相だけでなく、からだの大きさや運動能力さえ変わってしまうのだ。博士は自分の享楽的な欲望を押さえつけられなくなり、我慢できなくなるとこの薬を飲み邪悪なハイドに変身し、悪徳の限りを尽くす。
そして、ついに悲劇がやってくる。ハイドは、温厚で誠実だと世間の人に思われているもとのジーキル博士に戻れなくなるのだ・・・・。
だれでも人間なら持っている二重性、世間に良い子に思われていたいという仮の自分というものを意識する瞬間があるものだが、この小説はその人間のもつ根源的な二重性を見事に形象化した傑作である。