私の読書日記

本との出会いを通して

2005年09月

椿山課長の7日間

浅田次郎著
とてもおもしろい小説です。最近読んだ中で一番でした。浅田氏の本では「鉄道員」があります。その中にいくつか短編小説があり、深く感動したのを覚えています。人生の裏側も描き出すことが氏の特徴だと思います。
この小説では死後のことがおもしろおかしくまた家族の絆がテーマとなって深く感動を呼びます。私は愛する兄の他界により、現世と来世のことを考えるようになりました。登場人物が3人とも納得して極楽浄土または地獄に行きます。中陰という現世と来世の中間点で極楽浄土に行く前の審査をして、必要な時は講習を受けるという奇抜なアイデアにあふれていて笑いがこみあげました。また小学生で交通事故で他界した少年がもう一度現世にもどしてもらって、本当の親に「ありがとう、ごめんなさい」を言う場面は本当に泣けました。この本を読んで兄の死に対して少しの慰めをいただきました。ちゃめっけのある兄はあの世でいろいろな人に出会い、よい日々をすごしていると感じさせてくれる本でした。

十年目のメッセージ

田中省三・田中智津代著
著者は私の兄です。兄は2年半前に腎細胞癌の転移により他界しました。兄は生前内科医をしていました。癌闘病中書いた本が何冊かあります。これもその中のひとつです。医学書というと難しい印象を持ちますが、この本は看護師の妻との会話の形で構成されています。だから分かりやすいです。
さて今日血液の検査結果を聞きに行きました。項目のほとんどは問題ないとのこと、しかし血糖値が120であり高いとのことでした。さっそく「十年目のメッセージ」を読んでみました。そこには分かりやすい説明があり数値に関しては空腹時は110未満、食後では120が境界線であったように思います。検査は食後に受けましたので、この件に関してはセーフと思います。ひとつの心配がこの本で解消できました。糖尿のほか普段よく罹る病気について説明があります。

マタイによる福音書21章28節から32節

「ところで、あなたたちはどう思うか。ある人に息子が二人いたが、彼は兄のところへ行き、『子よ、今日、ぶどう園へ行って働きなさい』と言った。兄は『いやです』と答えたが、後で考え直して出かけた。弟のところへも行って、同じことを言うと、弟は『お父さん、承知しました』と答えたが、出かけなかった。この二人のうち、どちらが父親の望みどおりにしたか。彼らが「兄の方です」と言うと、イエスは言われた。「はっきり言っておく。徴税人や娼婦たちの方が、あなたたちより先に神の国に入るだろう。なぜなら、ヨハネが来て義の道を示したのに、あなたたちは彼を信ぜず、徴税人や娼婦たちは信じたからだ。あなたたちはそれを見ても、後で考え直して彼を信じようとしなかった。
ひとは過ちを犯したとしても、悔い改めることにより救いの道は拓けると教えてくれています。毎日、思いと言葉と行いにより過ちをしない日はありません。それに気づくか気づかないかという問題もありますが。いつも謙虚に生きていきたいと思います。

お神酒徳利

山本一力著
深川駕籠かきの「新太郎」と「尚平」がさまざまな事件や出来事に遭遇するお話です。山本氏の作品はいつも爽やかな読後感があります。今回も例外ではありません。勧善懲悪、下町人情などが色濃く描かれます。文章もうまいです。すっきりした文章の中に情景が鮮やかに脳裏に浮かび上がります。少し疲れ気味の状態でこの本を読みリフレッシュできました。「おゆきさん」のような気風のよい女性にもあこがれます。江戸時代は灯りが少なくてとても暗い中で生活してたこと、しかしいつの時代であっても楽しいことを見つけるのが人間なのでしょう。現代では味わえない良さもたくさんあったのでしょう。江戸時代に生きていたひとは今はいません。小説家は実際見ていないことを時代考証という方法と想像力を駆使して物語を自在に作るのでしょう。そのダイナミズムに心惹かれます。

みぽりんのえくぼ

岡田典子文・岡田美穂絵
岡田美穂さんは13歳で他界。(脳腫瘍)2歳のとき、白血病に罹り、骨髄移植により完治しましたが、10年後に今度は脳腫瘍に罹りました。闘病中描いた絵手紙がとても味わいのある作品で心を打たれます。死はこのような天使の心をもつ少女をもこの世から引き離してしまいます。美穂さんの絵の素晴らしさに打たれました。いのちの最後まで絵を描くことが美穂さんの心の癒しとなったのではないでしょうか。美穂さんが残していった絵によって私は美穂さんを知りました。旅先の本屋さんで偶然見つけた本でした。美穂さんの魂の安らかでありますように。美穂さん、素晴らしい絵をありがとう。
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greeen

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