私の読書日記

本との出会いを通して

藤沢周平

密謀(下)

藤沢周平著
ついに下巻を読み終えました。
良いお天気で家事もしなければならないのに
読書とは!と自分を戒めつつも本の面白さに
負けて最後まで読んでしまいました。
直江兼続と石田光成が主人公でした。
関が原の戦いから上杉家の降伏あたりの様子がよく
描かれていました。
歴史は本当に無知でしたので、今頃になって夢中になっています。
上杉主従対秀吉、上杉主従対家康も面白かったです。
上杉影勝という人物は天下人になりたいのでなく、越後のためとか
上杉謙信の精神「義を守る」ということを貫いていたことが
分かりました。
「草」と呼ばれる忍者もストーリーに面白さを添えています。
牧静四郎、うねの2人の「草」が結ばれることを願いながら
読みました。
前田利家、羽柴秀吉、石田光成の最期をこの本で読み頭に
残りました。

密謀(上)

藤沢周平著
弟とNHKの「天地人」の話になったとき、この本の話題になり
貸してもらいました。
弟は母の介護に関するいろいろなことをやっています。
6人きょうだいの一番下で母はいつまでも弟を末っ子で自分の庇護が必要なのだと感じているようなところがありました。
弟は昨年からケーキ作りに懲りだしてチーズケーキが
とても上手にできます。
今日母の家に行くと弟の手紙があり、「ケーキをどうぞ」と書かれていて「しばらく旅に出ます」とのことでした。
弟は出不精の典型で、どこへも行かずにひたすら本の中でたくさんの
体験をして十分楽しんでいる不思議な人です。
その弟が旅?!何か心境の変化でもあったのでしょうか。
さてテレビの大河番組で妻夫木聡演じる直江兼続は興味があります。
この著書の中でも秀吉や兼続、兼続の上司の上杉景勝など興味深く記されています。
今を生きる人でない人物を「講釈師見てきたようなうそを言い」と言いたいくらい生き生きと描写していて感心します。
特に政略結婚がたびたび行われ、現代の自由恋愛による結婚と比較すると個人が尊重されていないことに気づきます。
武士は戦いが仕事で、死が常に身近にありました。
秀吉が1庶民から上り詰めて権力の座に着き、聚楽第などの
想像を絶する大きさのものを作るが、上杉景勝には興味のないことで
した。直江兼続と景勝は小さい頃からの信頼関係がありました。
謙信の生き方を継いだ景勝、兼続はすごい武将たちだったなと思います。

冤罪

藤沢周平著「冤罪」に収蔵。
昭和49年から50年にかけて書かれた短編を収蔵したもので、どれも面白いのですが、一番好きな作品はこれです。
長男が生まれた頃に藤沢氏は10数年勤めた会社を辞め、作家としての生活を始めたのでした。子育てと仕事という忙しい生活を送っていた私には、藤沢作品に出会うチャンスはありませんでした。これらの作品を読みながら、20代後半の頃を懐かしんでいます。
さて藤沢氏はもともと二束のわらじを履き続けるには体力に不安があった様子です。
辞めてみたものの、生活のリズムがなかなかできず、時間のゆとりができたのにも関わらず、だらだらと過ごした1年であったとあとがきに書かれています。
しかし、藤沢作品をいろいろ読みましたが、この本の作品はどれも人情がよく表現されていて好きです。
勘定方役人の相良氏が、藩の公金を横領した罪で、自害したと主人公は知ります。
主人公は勘定方の役人である兄の居候で、兄には5人も子どもがいて肩身の狭い思いをしています。
よい婿の口などあったらいいがと考える日々。近くに住む、相良父娘はよい親子で、娘明乃はなかなかの娘で気に入っています。
父が科人となり、明乃はどこかに引越していきます。
相良氏の死に疑問を持った主人公は色々調べて、冤罪であることを知ります。
しかし、冤罪を叫べば、相良氏の不慮の死に立ち会っていた兄にも迷惑が及ぶので、不問に付すことになります。
明乃は隣村の裕福な家で穏やかな日々を暮らしていることが分かります。
木の下で用をたしていた娘の臀部を見てしまったのですが、それが明乃本人であり、主人公の驚きとときめきは大きいものでした。
婿入りを望む主人公、明乃に「ずっとあなたのことを心配していた」と話すことで明乃の心に広がる喜び。
二人の笑い声が野に広がります。

14人目の男

藤沢周平著(「冤罪」に所蔵)
この作品は時代小説に入ります。
江戸末期の山形の各藩の様子などがわかります。
家康の危機を救ったということで、感状を賜り、厚く待遇された、14人。
子々孫々14の家は秘密に会合を寺で持ってきました。
さて、江戸も末期、幕府軍に付くかそれとも反幕府となるか、藩の駆け引きが激化していきます。
そんな折、13人が秘密のうちに斬られて命を亡くすという事件がおきます。
主人公小一郎の友人八木沢兵馬も14人のひとりだったこと、彼だけ命が残ったことから、
八木沢が密告者であると疑います。
藩は14人がよからぬ相談をして、藩に反対の立場にたつことを恐れています。
感状をいただく14家は徳川家への絶対服従でした。
時代はそれを貫くことが難しくなりつつありました。
実は小一郎の叔母、佐知は2度の結婚がどちらも夫との死別に遭い、出戻っています。
その佐知に結婚を勧めたのは小一郎でした。
14人の一人である藤堂帯刀(たてわき)の妻となった佐知。子どももでき幸せに満ちていた矢先、夫を喪ったのです。
小一郎は友人兵馬を疑い、兵馬と刺し違えることも辞さない覚悟がありました。
しかし、それは誤解でした。
兵馬は突然上司に襲いかかり、その場で小一郎に自らを討って欲しいと頼んでいました。
【感想】
歴史は苦手で、その流れを整然と整理することが困難です。
ただただ、歴史に翻弄される庶民の哀歓が強く胸を打ちます。
さむらい社会の無常観が強く感じられた作品でした。

又蔵の火

0df642c7.jpg絵はあじさいとびわ。
東京発10時の「のぞみ」に乗って名古屋へ。11時半頃には名古屋に着きます。
旅に出るという高揚感。非日常体験からくるうきうきした気持ちを味わいました。
駅弁を食べたいところですが、お昼前に着いてしまうので、せめてコーヒーを車内で注文することにしました。
景色を見ることより、今没頭している小説を早く読み終えたい一心でした。
藤沢周平作品にこの頃はまっています。
今回の本は、藤沢氏の初期作品が詰まっています。
これらは救いようのない、暗さと重みを持って迫ってきます。
後の作品では味わうことのなかった一面を知りました。
特に、「割れた月」(昭和48年の作品)では賭博から抜け出ることができない、鶴吉の人生を通して、生きることの重みを知りました。
江戸時代、貧しい庶民にとって、賭博は一攫千金の危ない魅力を持っていたのでしょう。
明治生まれの父が若い頃、競馬が好きだったと聞いたことがあります。
まだ10歳くらいの私は父に聞きました。「なんで競馬をしたの」
「それは金が欲しいからだよ」
江戸時代とは違って、四民平等の世の中となりました。
父は鉄道員となり、給与もいただける日々でしたが、子だくさんの暮らしの中ではやはり魅力があったものと思います。
それにしても江戸時代の貧しい生活の様子がつぶさに出てきて、生きていくことのたいへんさを思い知らされます。
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greeen

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