東京公演:2006/11/20〜12/7 PARCO劇場
※以降、大阪・名古屋・広島・仙台にて公演

[スタッフ]
作:ハーヴェイ・ファイアステイン/上演台本・演出:鈴木勝秀
オリジナル翻訳:青井陽治/美術:ニール・パテル/音楽:横川理彦/衣裳:前田文子/照明:倉本泰史/音響:井上正弘/ヘアメイク:近藤英雄/演出助手:長町多寿子/舞台監督:徳永泰子

[キャスト]
アーノルド:篠井英介/エド:橋本さとし/アラン:長谷川博己/ローレル:奥貫薫/ディビッド:黒田勇樹/ベッコフ夫人:木内みどり

演奏:エミ・エレオノーラ(VOCAL&PIANO)


1986年の日本初演から、20年です!
“光陰矢の如し…”
でも、私にとっては今も印象的で大好きな作品です。

1988年、初演の加賀@アーノルドで再演、1998年には、加藤健一事務所で上演されました。
初演を観て以来、作品に魅了されていた私は、どれも見逃すことはできませんでした。
映画では、マシュー・ブロデリック@アランに魅了され、アン・バンクロフトの存在感に唸りました・・・。

今回は、パルコの「新」スタンダードシリーズとして上演されました。
現代演劇の女形“篠井英介”が挑みます。
もちろん、見逃すなんてできません!
東京公演の千秋楽目前、12月5日ソワレを観ました。

【追記(06/12/19)】
すんごいウッカリです!
本作で最後に語ろうとしていた、“篠井英介”さんについて書いていませんでした!!
(@@;(><)
作品への想いが強過ぎてしまったのか…。
(何を言っても言い訳ですが・爆)
キャストの最後に追記しました。


「トーチソング」とは?
“片思いや、失恋をうたった歌”

物語は、時系列に3つのエピソードで綴られるオムニバス。
同性愛者のアーノルドが、自らの想いや恋や考えを語り、彼の人生に深く関わった5人が登場します。

第一話
最初に登場するのは、クラブ歌手として唄っていたアーノルドが何度目かに恋に落ちた教師のエド。
エドは、バイセクシャル。
アーノルドとの関係を続けながら、両親や周りへの想いから結局、アーノルドと別れ、友人から紹介されたローレルとの交際を選び取る。
しかし…。


第二話
ローレルと一緒に暮らすエド。
アーノルドは、エドとの別れに傷つくが、アランとの出逢いで幸福な時間を送っていた。
ローレルは、エドから聞かされていた、かつての恋人アーノルドを、週末、招待しようとする。
気が進まず招待を断ろうとするアーノルド。
しかし、アランは自分も同行することを条件に、ローレルからの招待を受けようと提案する。

かつての恋人同士と、今の恋人同士。
4人は、様々な想いを交わし合う中で、自分の気持ちを見詰めていく。


第三話
アーノルドの弱点の一つは、母親であるミセス・ベッコフ。
敬虔なユダヤ教徒、夫と築き上げた長年の夫婦生活…。
自分には、起こりうる可能性さえ考えなかったゲイの息子。
そのミセス・ベッコフが、アーノルドのアパートにやってくるというのだ!

アーノルドは、最愛のアランを失っていた。
今は、ディビッドを養子として迎えようとプログラムを受けていた。
ローレルと結婚したものの、終止符を打とうとしているエドも又、アーノルドのアパートにやってきていた!

アーノルドのアパートで、4人は顔を合わせることになる。
受け入れ難い自分とは違う価値観。
母と息子は激しく気持ちをぶつけあう。
母には告げなかった明かされるアランの死の真実。

互いを受け入れること、認めることは出来るのだろうか?!


今まで観てきた3演は、程度の差こそありますが、やはり誇張やコミカルな演出がありました。
今、考えると、当時はまだ認識が低かった“同性愛”への抵抗感を和らげ、この物語が真に語ろうとする人間同士の理解に目を向けてもらうための手立てだった気がします。

あれから20年。
今回、創り手は、奇抜さではなく、“相互理解”に挑む親子や恋人同士の日常的で普遍の物語として、もっとシンプルに伝えようとしたのではないでしょうか?

だから、逆にいえばとても日常的に静かに、しかし濃密に物語が積み上げられているように感じました。


・橋本さとし
シンプルで日常的な作りになった今回の演出にあって、物語のスパイスとなったのは、やはり彼の持ち味であるコメディセンスやチャーミングなキャラクターだったと思います。
強引なところもあるくせに、土壇場には逃げ腰で、“シッカリしてよ!”と詰め寄りたくなる雰囲気。
それが、愛すべきキャラとして存在していたことは、重くなりがちなストーリーの中で救いでもありました。

来年は、いよいよ「レ・ミゼラブル」のジャン・バルジャンです!
今回の佇まいを観て、私は更に期待が高まりました。
今までにとは違う“バルジャン”を観れそうな気がしました!


・長谷川博己
アランは、私の中でこの物語の“肝(きも)”だと思っています。
いかにアランが素敵かで、アーノルドの素晴らしさも際立つし、印象的になると考えているからです。
鹿賀版でも、加藤版でも、もちろん映画でも、アランが素敵じゃないと、アーノルドの苦悩に説得力が出ないのです!
長谷川さん、私は今回、初めて観ましたが、チャーミングでした。
個人的な好みから言えば、目を見張るような二枚目ではないのですが、クールだけど穏やかでアーノルドへのウットリするような愛に溢れた様子は、本当に魅力的でした。


・奥貫薫
自分の恋のライバルが、同性では無い…。
信じ難い現実に直面した時の戸惑いと自分でも理解し難い憤り。
彼女のセリフによれば、そうした自体は、それほど特殊では無いようです。
確かに、多数派は異性間恋愛ではあるのですが…。
人が人を好きになって惹かれて、自分の想いを伝えて受け止めて欲しいと切望するのは、別に性別は関係ないことですから。
しかし、ローレルにとっては受け入れ難い事実だった。
奥貫さんのローレルからは、実にリアルにクリアに、その戸惑いや感情が伝わってきました。


・黒田勇樹
テレビでは、何度か見ていましたが初めて舞台で間近に観ました。
ディビッドは、黒田勇樹という役者に合っていたと思いました。
上手最前席だったので、ベンチでのエドとのシーンは、本当に目の前。
お二人の表情が、手に取るように観れて…。
というか!
“私のために演じてくれて、ありがとう♪”と、錯覚して思い込めてしまう位、幸せな一時でした。
(*ーー*)
CMで初めて見た時の美しさから、もう少しリアルな青年の美しさへ移行しましたが、今回の日常に繰り広げられた物語の中で、自然体で存在できる役者さんなのだと感じられたのは、嬉しい発見でした。


・木内みどり
ベッコフ夫人は、私の中では山岡久乃さんなんです。
でも、木内@ベッコフ夫人は、より硬質でトラッドで、でも魅力的でした。
テレビ以外で初めて拝見したのですが、魅力的な女優さんなんですね!
(今頃気付いて遅まきで、すみません)(^^;
受け入れることは出来ないけど、すごくアーノルドを愛しているのだと感じられる母親像に、共感できました。


篠井英介
花組芝居の時から、美しく独特の色気が漂う女形さんでした。
花組を退団して、“現代女形”として独自の存在感で異彩を放っています。
私は、花組時代から心惹かれていました…。
だって、動きも声もひっくるめて、やっぱり美しいんですもの!
最近作は、3軒茶屋婦人会「女中たち」。
狂気を孕んだ存在感…。
「欲望という名の電車」ブランチも、「女賊」も、そうでした。
けれど、深沢さんとの楽しさ満載の「二枚目」で見せた軽やかさも、又、持ち味なのです。
(横道話しですが、「二枚目3」は、共演メンバーの豪華さに眩暈がします)

話しが逸れました…。
今回のアーノルドは、それらとは対極にあった気がします。
創り込まれたキャラクターというより、生きることに等身大で悩む人。
そのナチュラル感は、静かに積み上げられる時間に、却ってリアルな説得力を持たせていたと感じたのです。
物語が進む中で、篠井@アーノルドの喜びや苦悩が、しみじみ私の中に染み入っていった気がしました。

来年の7月。
三度の“ブランチ”です。
もちろん、見逃すことは出来ないと思っています!!


一生懸命にひたむきに生きて。
けれど時として傷つき挫けてしまう。
日々の暮らしに押し流され、泣きながらうずくまって立ち上がれなくなりそうになった時、優しく抱きしめて「大丈夫」と思えるまで静かに一緒に居てくれて…。
“なんとか復活できるかも”と上向いた気持ちになれた時、エールを送るように背中をソッと押してくれる人。
そんな人が、自分の傍らにいてくれたら?
なんて幸せで満ち足りた人生なんでしょう…。

ま、そんなのは理想で夢で、無理難題なんですけどね。(苦笑)

でも、アーノルドが求めたのは、まさにそんな“理想の人”なのだと、今回も物語を観ながらしみじみ思いました。

「私は自分がやらなきゃいけないことは、きっちり自分でやるの。
だから、私が他人から受けたいのは、愛情と尊敬だけなの!」

求めて止まない理想だから、彼は戦いながら苦悩しながら、それでも諦めることなく人生を歩み続けます。
私には到底できないことです。
彼は挫けない人、魅力的で素晴らしい人。
私は、彼に、改めて心からの尊敬と畏敬の念を抱きました!

公演概要:パルコ劇場公式サイト内です
公演公式サイト:作品紹介、上演経緯、日本上演について更に、今回上演版の舞台写真もあります!
加藤健一事務所:公式サイトです。上演リストから公演概要を確認できます。
アトリエ・ダンカン:オフィシャルサイトです。所属タレントの項目で篠井さんのプロフィールが見れます。


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