2003年、2006年に次いで三演目となる今回の上演。
私は、2006年に次いで二度目の観劇です。
今回の東京公演は、先ず下北沢・本多劇場。
場所を移して紀伊国屋サザンシアターで上演されました。

“進化する舞台”

それはもちろんどんな舞台にも当てはまるのかもしれませんが…。
キャストは、加藤健一と鼻中洋の二人。
そう、二人芝居です。
彼らが取り組んだこの舞台は、間違いなく顕著に見事に進化を遂げています!

東京での上演の後半、紀伊国屋サザンシアター10月23日ソワレを観ました。

ロマン主義の代表的な詩人、ハインリヒ・ハイネ。
ロマン派音楽を代表する作曲家、ロベルト・シューマン。

「詩人の恋」は、ハイネの詩にシューマンが曲を書き、連作歌曲として発表された。

『シューマンは文学的教養が深く、詩の内容を深く理解することができた。
そのためシューマンの歌曲は、詩と音楽の理想的な結合をなしている。
またシューベルト同様、ピアノ伴奏は時に伴奏の域に留まらない重要な役割を担っている』
(Wikipedia解説より)

なるほどねぇ…。
そんなところも含めて、マシュカン教授はスティーブンにこの曲を演奏させたのかもしれません!


かつてピアノの神童とまで言われたスティーブン。
しかし彼はピアニストとしての自分に全く自信を失い、クラシック伴奏者に転向しようと考えていた。
そんな彼が必死の想いで藁にもすがらんばかりに教えを請おうとした時、紹介されたのがウィーンに住むマシュカン教授だった。
マシュカンは、教授とはいえピアノは下手くそ。
声楽家としても峠を越えたヴォイストレーナーだった。

マシュカンを訪ねて一目逢うなり、スティーブンは絶望した。
“こんな男に何が教えられるんだ”
“しかも、このピアノの下手くそ振りはどうだ!”

そうして、立ち去ろうとするスティーブンにマシュカンは構わず声をかける。

「さて、レッスンを始めよう!
どっちにしても、君が頼みにする教授はバカンスで教えては貰えない。
ここでのレッスンが終了しないことには、次には進めないよ。」

そして与えた課題は、「詩人の恋」全曲を“歌う”ことだった!

反発し、反抗し、投げやりになるスティーブン。
しかし、レッスンが進むうち、スティーブンにもマシュカンにも変化が現れる。

「詩人の恋」

その詩に込められた祈り、曲に込められた想いを読み解くうち、スティーブンの心には変化がもたらされていく。
更に明らかになるマシュカンの過去!
果たしてスティーブンは、マシュカンの元で、この連作歌曲を仕上げることができるのか?!


“音楽劇”には、素晴らしい楽曲が不可欠です。
そして、心に響き揺り動かす歌唱が必須です。
更に、今回の舞台では、“神童”と呼ばれたピアニストだったという事実を観客に納得させるピアノテクニックが必要です。
この舞台には、これら全てが揃っていました!

カトケンさんと畠中さんは、初演当初からプロに付いてレッスンを重ねているそうです。
畠中さんは元々がミュージカル俳優。
歌の上手さは折り紙付き。
でも、歌曲となると又、表現は違ってきます。
更に物語に登場した当初は、歌手の役ではないのであんまり上手くっちゃウソっぽくなるんです。
カトケンさん演じるマシュカンは、クラッシックのヴォイストレーナー。
峠を過ぎたという設定ながら、当然クラッシック歌手としての歌を髣髴とさせる歌声を披露しなければなりません。
加えて、畠中さんはピアノと戯れるような見事な演奏を披露しなければならないんです!

もうもう、どんだけハードル高いんだと思ったんですが…。
これがチャンとクリアされちゃってたんですよねぇ。(しみじみ)
だから余計にキッチリ物語りに引き込まれてしまうんです。

怒れる青年スティーブン。
これは嗜好の問題ですが、私としては、それは外見からも髣髴とさせて欲しいんです。
となると?
洋服の中で身体が泳ぐようなスリムなスタイルであって欲しい!
(すみません。イメージ的にココは必須だと私は思ってます)
で、当然ながらコレを、畠中さんは今回もクリアしてくれていました。
だから、外見にどうこうと思いあぐねる必要が無く、役にリンクして直ぐに“スティーブン”として見れてしまったんです。
そして、ここが畠中さんの真骨頂なんですが、演じていくうちに物語が進むうちに、ドンドン素敵に見えてくるんです!!!
初めて畠中さんを意識した「天翔ける風に」の時もそうでした。
今回も、やっぱりそうでした。

そして、やっぱり何より声が好き!

特に、「Ich hab' im Traum geweinet (僕は夢の中で泣いた)」での、胸をしめつけるような切なさや優しさに溢れた声には心底、魅了されました。
なんだか今、思い出しても、涙がこみ上げそうになってきちゃうんですよね…。
スティーブンが抱えている苦しみや悩みがこの曲に重なって、畠中さんの声と想いに重なって、本当、沁みました……。

芝居はキャッチボール。
カトケンさんと畠中さんは、素晴らしいバッテリーだと今回の上演でも確信しました。
公演は、大宮から東京、その他各地を回って12月17日にツアーを終えたそうです。
各地での上演は鑑賞教室を中心にした上演のため、一般のお客様にもっと観て欲しかったと個人的には思ってもしまうのですが。。
でも、これをきっかけに演劇に触れられるなんて、メチャクチャ素敵な出逢いだと思います!
羨ましいです!!

話しが逸れました。(汗)

畠中さんは、キャストインタビューの中で、「又、演じてみたい」と語っていました。
でも、私が感じるスティーブンの年齢設定からすると、今から何年後かになったら少し厳しいんじゃないかなと。
カトケンさんのマシュカン教授は、実年齢との差が縮まり更に深みが出るでしょうけれど…。
でも、役者さんは“演じてナンボ”な人達ですし、“別人格”にさえなり切ってしまう人達ですものね。
もしも又、上演されたら、やっぱりその成果と進化を目撃せずにはいられないでしょうね!と思います。(ぶい)

因みに私の2006年上演を観た感想→
当時も熱く語っています。
(^^;

公演概要:加藤健一事務所公式サイト内。
キャストインタビュー&稽古場日記:公演概要からリンクされています。時間を追うごとに、外見が“おじさん”から“青年”に変化していく畠中さんが注目です!
「詩人の恋」:Wikipediaでの解説。内容を知ると益々物語りに色んな意味合いを感じられて想いが広がります!
ロベルト・シューマン:同じくWikipediaでの解説。音楽教室にあった肖像画の中に居ましたよね。
加藤健一事務所:公式サイトです。

今年も後一日!
やっぱり途中のままで帰省になってしまいました。(よろり)
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