2019年05月
2019年05月09日
君はとっても強い子だ。
先天性横隔膜ヘルニアで手術。
胃食道逆流症で手術。
小さい身体に大きな手術が2回。
検査もたくさん受けている。バリウムは嗚咽しながら何回も飲んでいた。
2回目の手術後から何も食べれなくなる。
周期性嘔吐症と診断された。
点滴で栄養補給する毎日。少しずつ食べれるようになるも嘔吐する。
「手術に問題はないんだけど」とお医者さんは首を傾げる。
病院では施しようがないので自宅休養することになった。
初めて来られた時は5日元気で発作5日が周期的に続く。発作中はお茶と小さなラムネを口にするだけ。頻繁に嗚咽し、ずっと横になっている。幼稚園は行けない。
お父さん、お母さんには不安が漂っている…。4歳の息子が食事もとれず、苦しそうに寝ている。そんな日を何十回と目の当たりにしてるんだ。そら不安になるよな…
だけど、いらない。
これじゃ君は治りたいけど治れないよね。
だから、僕は心の底から「絶対に治る!」と君がいる前でお父さんとお母さんに伝えた。
一番怖くて不安なのは君だもん。大人が安心させてあげないと。これでもかって温かく包んであげてほしい。
昨日、11日元気で発作が2.3日と嬉しい報告。元気な日が多くなっている。記録更新だ!食べる量も増えてる。漏斗胸も数㎝治ってきた。
この日はおもちゃのパトカーを7台見せてくれた。最近のミニカーは走らせると音が鳴る。「すごいな。かっこいいね。」と言いながらベットに座りミニカーで遊ぶ君を治療する。
もう一段階治るぞ。
ちょいとベットに上向きで寝ようか?
ひょいと寝転がるが、それは下向き。
それは横向き…。僕に音が鳴るパトカーを見せたいんだな(笑)じゃあ、横向きでいいやとパトカーの間を潜り抜け胸に手を当て、もう片方の手でおでこをそっと包む。
包んで1分。パトカーが静かになった。
さーここから。治る力は勢いを増す。
安心しなよ。不安なんか全部吹き飛ぶぐらいに温かく包むさ。
程なくして治る力は落ち着いた。当分、パトカーは鳴りそうにない。
これで終わりのようで終われない。
予定にないがやらないといけない。
君のために。
お母さんに近づき、お母さんの両手ををそっと持ち上げ右胸にあてがう。その上から僕の右手を添えた。
その瞬間、落ち着いた君の治る力は動きだした。
「お母さん、子供はなんでも真似します。」
親の歩き方、食べ方、座り方、立ち方、呼吸の仕方…。
だからお母さんは息子さんの良いお手本になってあげてください。
お母さん、喘息もってるでしょ?
お母さんも息子さんのために治療を受けに来てくださいね。
お母さんの治療も終わり、君を起こす時がきました。爆睡する君はお母さんに抱っこされ、寝ぼけた背中越しにバイバイ。
「パトカーありがとう。また来月ねー」
どんどん記録更新しよう。
ご飯もいっぱい食べよう。
うんこもぶりぶりしよう。
外でいっぱい遊ぼう。
発作なんか忘れるくらい元気になろう。
君はとっても強いくて優しい子だ。
「絶対に治る!」
僕は誰よりも君の治る力を信じているよ。
P.S
先生の笑い方は真似しなくていいから(笑)
「シッシッシ(笑)」
私が学生の頃、父は30半ばで大病を患いました。まだまだ、これからなのに子供3人残し働けない身体になってしまったのです。病気の影響で身体中がズキズキ痛み、足は象のようにむくみ、39度近くの熱が2年ほど続き、皮膚はただれ、薬の副作用で髪も抜け落ちていました。
ようやく、退院できるところまで回復しましたが、肺に水が溜まり一緒に3回救急車に乗りました。今にも止まりそうな弱々しく息ををする父。妹のウエディングドレスを見るまでは、「あちらには行かせないぞ!」と父の冷えきった足をギュッと握っていた感触は今でも覚えています。
私は病と向き合う父と寄り添うことで、とても大切なことを教わりました。
自由に歩けること。
おいしく食べれること。
気持ちよく吸って吐いて息をすること。
当たり前に心臓が動くこと。
なに不自由なく、生きてゆけることがどれだけ幸せなことで、健康がなにより一番大切なんだと父は身をもって教えてくれました。
私は父のように大病で苦しんでる方を助けたい。
大病になる方を一人でも減らしたい。
身体の不調に縛られることなく
自由に、おいしく、気持ちよく、ごく当たり前の何気ない生活を家族みんなで過ごしてほしい。
そんな想いで日々、治療に励んでいます。