2017年10月26日

上あごのお話


私たちオステオパスには「歯」に対して直接治療することはありません。

しかし!


歯の歯根膜を通して様々な全身の不調和を治療することができます。

また

調和の取れた咀嚼を促すことによって

頭蓋骨の、ひいては全身の緊張を緩和することができます。



歯には下記のような生物にとって大切な役割があります。


獲物をつかまえるため。

食べ物を食いちぎるため。

食べ物をかみ砕くため。

攻撃したり,身を守る武器として。

物をくわえて運ぶときに使うこともあります(人間の手のかわり)。

 

大人の歯の数は、親知らずを含めて上下左右で8本ずつ、合計32本あります。親知らずは全てのひとに生えてくるわけではないので、親知らずの本数によって歯の数は変わり、親知らずのない方は上下14本ずつ、合計28本の歯があります。

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我々人間を含む哺乳類の歯は、その形状、歯列、役割から大きく分けて、

*切歯 :前歯のことです。食べ物を切り刻むときに
     使われます。

*犬歯 :「牙」です。食べ物を切り裂くときに
     使われます。

*臼歯 :食べ物をすり潰すときに使われます。

の三種類に大別されます。

 

ほとんどの動物の歯は、動物の食環境など、その種の都合により特化していたり、必要の無い歯は退化したりしていて、その数も形も同じではありません。


例えばネズミやビーバーなどの齧歯類では上下一対の切歯(門歯)が異様に発達し、それは終生伸び続け、のみ状に鋭くとがっています。その形状は硬い胡桃や木の芽をかじるのに適しています。 

しかしネズミ達には犬歯はありません。

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また、シマウマやウシなどの穏やかな草食動物は申し訳程度の平べったい切歯をしていたり、ウシなどは切歯がないので,歯ぐきが硬くなり、歯床板といわれる状態になっていて歯の役目をはたしています。しかし奥には草をすり潰すためのしっかりした臼歯が目立ちます。

 

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人間の子供の歯は上下左右で五本ずつ、合計20本ありますが、切歯の数と犬歯の数は大人と一緒で切歯4本、犬歯二本。違うのは臼歯の数だけで臼歯は二本しかありません。

 

ところで、人間の噛む力ってどのぐらいあると思いますか?

思いっきり歯をかみしめた時、人間では約70Kgの咬合力が発生するといわれています。

もちろん、人それぞれですが、大体20歳~30歳の男性の場合、前歯で10kg20kg・犬歯で20kg25kg・奥歯で30kg60kgもあるそうです。概ね、自分の体重ぐらいが最大の噛む力、ということのようです。

 

このように人間の、いや、動物の咀嚼時の力は想像を絶するものがあります。

例えばカバ。カバは体長約3.54mで体重約1.22.6トン。陸上動物としてはゾウに次ぐ重さがあります。その容貌からカバは豚と同類のイノシシ科に属すると思われていましたが、DNA的には牛に近い草食動物だったそうです。草食動物ですがカバ は1000gもの噛む力があります。

 

 

これら動物の噛む力はすべて頭蓋骨に掛かってきます。


頭蓋骨は一つの骨でできている訳ではなく、顔面頭蓋(9種15個)脳頭蓋(6種8個)というように多くの細かい骨が縫い合わさって出来ています。これを「縫合」といいますが、この縫合は、頭蓋骨に係る咀嚼時の力を分散するためにあるともいわれています。

逆説的に、歯の欠損が多くて、咀嚼の力が頭蓋骨にかからなくなると、その頭蓋骨の縫合は収縮し、頭が硬くなります。


咀嚼はまた、脳に血液を送る働きもしています。「脳への血流」という観点からすれば、アゴはいわば「ポンプ」です。ガムを噛んでいると眠気が覚めるのは、噛むことによって脳にたくさんの血が送り込まれるからです。


流動食しか食べられないお年寄りが認知症になるケースが多いのは、アゴを動かす回数が少ないことが大きな要因の一つだと言われます。3分間ガムを噛むと脳内の血行がよくなるという実験結果がでています。ガムには、「心拍数を安定させる」「集中力を高める」といった効用もあります。噛めば唾液の分泌が増えて、口の中の雑菌が洗い流されます。これは歯周病などの予防になります。


また、適度な咀嚼は歯列に良い影響を与えてくれます。
部分入れ歯を装着しているひとが、何日間か入れ歯を装着しないで不完全な状態で食事をすることになれてしまうと、久しぶりに入れ歯を装着したときに、歯間が狭くなっていて入りずらいようなことがあります。
これなども不適切な咀嚼によって縫合が硬くなり、その影響で歯根膜が緊張して起こる現象です。

 

先ほど述べたように、我々哺乳類はその特定の動物が関わる食環境によって歯の生え方や咀嚼時の力が大きく異なります。


一般的に、咀嚼に関わる力は上顎骨から「頬骨」に分散されるので、より咀嚼力の強い動物の頬骨は太く厚みがあります。

下の図で、ウシの頬骨とイヌの頬骨との差を見てください。大きな頭蓋骨のウシの頬骨がその図体に似合わずにいかに小さいか。


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多くの哺乳類では、咀嚼の力は主に犬歯、臼歯に係ります。そのためネコやイヌ、熊やイノシシなど牙を持った動物は頬骨の頬骨体部が発達します。

 

草食系のウマや、ウシ、キリンなど、その体格からは考えられないような貧弱な頬骨しかありません。例外はネズミやビーバーなどのげっきん類です。これらは頬骨弓部が異常に発達します。これなどは咀嚼の力が頭蓋の中でどのように伝達され相殺されているかの良い例でしょう。


   犬歯の役割


歯の中で、犬歯はちょっと特異的な歯です。犬歯というより、「牙」といったほうが通りが良いように、これを持つ動物は皆猛獣のように獰猛で、その牙を見ただけで恐怖を感じてしまうかもしれません。


犬歯を持たない動物は多くの場合、草食系の穏やかな動物であることが多いようです。


ウシやウマには下顎に犬歯らしいものはありますが、どちらもメスにはありません。


我々、霊長類にも上顎の牙は存在します。

牙は主にオスに見られ、メスの牙はどんどん小さくなってしまいました。我々は基本的には雑食なので、捕食のための牙は必要ないようですが、やはり武器としての牙が必要なのかもしれません。


女性はもっと別なものを自らの『武器』として備えているのかもしれませんね。

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犬歯の形状は本来、食べ物を切り裂いたりするためにあります。そのため、歯に関しても歯根部分は、すべての歯の中で最も長く、また頑丈な作りをしています。

 

また、犬歯は咬み合わせの位置を保ち、あごの動きを正常に行うという大切な役割も担っています。
普段は意識していませんが、人間は食べ物を食べる時、顎を上下に動かすだけではなく、左右にも動かして食べ物を噛み砕きます。

上下の歯は、顎を噛み合せた時には、すべての歯が噛み合っています。ところが左右に顎を動かした時には、上下の犬歯だけが噛み合って、上下の奥歯にはわずかに隙間ができるのです。 つまり、左右に顎を動かしてその位置で顎を止めると、犬歯だけが噛み合い、奥歯は噛んでいない状態になるのです。


この現象を「犬歯誘導」といいますが、これがきちんとできていない場合、寝ているときに歯ぎしりをしている可能性があります。


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私にとってすべての歯の中で一番興味深い歯がこの「犬歯」です。

 

何故ならこの一番強力な歯にかかる咀嚼の力がどのように頭蓋骨に伝播され、それがどのように受け止めているかを知ることができると、頭蓋骨の骨梁の方向性を理解できるからです。


またこの犬歯の歯根部の神経は身体の中の末梢神経で唯一、神経節を中継しないで直接中枢神経に繋がっている神経として有名だからです。


噛む衝撃は頭蓋にとってストレス?


頭蓋骨はたくさんの骨に複雑に分かれていて、その骨の間に存在する縫合の多くは、縫合自体がクッションとして働き、それによって咀嚼時にかかる力を上手に受け止めています。それによって噛みしめる時のストレスが脳を覆っている頭蓋骨に干渉しないようにしています

 

動物はモノを噛むときに下あごを動かして咀嚼します。そのためそれらの動物には下顎の犬歯から起こって下顎の関節突起に向かう力強い骨梁が下顎骨の下顎体と下顎枝に存在します。それを受け止めるためにやはり上顎の犬歯には力強い歯根が存在し、その骨内力線は眉間を通り左右がぶつかり、またそれ以外でも上顎骨から頬骨を通り側頭骨の頬骨突起に抜ける力線が存在します。

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これらの骨梁や骨内力線は、咀嚼時に発生する力が脳頭蓋に干渉しないように設計されています。そうでなければ繊細な脳の組織は常に噛み合わせの衝撃に悩まされてしまいます。

 

神経の中枢である脳の場所はなるべく咀嚼に干渉されない場所になければいけません。食べ物を捕食し、それを咀嚼する場所と、脳頭蓋は別の場所に位置していることが望ましのです。

厳密に言うと、頭蓋骨は脳を包んでいる「脳頭蓋」と「顔面頭蓋」の二種類に分けられます。

「頭」というと、脳がある場所だと連想するでしょうが、動物の種として考えると、「頭」イコール「脳頭蓋」という動物はそれほど多くないのです。



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動物の頭って、例えばウマやウシなど、人間と比べてもとても大きく見えますが、あれ、ほとんどが顔なんです。いや、むしろ骨格から考えると顔というより鼻と口なんです。

ネコやイヌ、ウシやウマなどは脳の容量の絶対量が小さいので、「頭」の大部分は食物を摂取するところなのです。

しかし霊長類となると、それなりに脳の容量も大きくなってきます。しかも霊長類がだんだんと二足歩行をするようになると、脊柱と口腔の角度は一直線から直角に近づいてきます。

人間が立った状態で首より上に位置する頭が、ウマやウシのようにあんなに前に伸びていたら重たくって仕方ありません。ウマに比べて小さい顔のゴリラの頭の後ろに大きな骨の出っ張りがあります。我々人間にも同じものがありますが、これは頭が下を向かないように項(うなじ)の靭帯を取り付けるための骨の出っ張りなのです。ゴリラのような頭でさえ、立位において顔を水平に保持させるにはあのような強靭な骨の構造物がないと保持できないのでしょう。ゴリラよりももっと垂直歩行する我々人間は、顔の奥行を狭くしないと立っていることが出来ないのです。

我々人間の頭は、拡大する脳のための入れ物である頭蓋と、軽量化しなければならな
顔面部と、この相反する要求を一まとめにするために顔面頭蓋の上に脳頭蓋を載せました。

そのために犠牲になったのが咀嚼能力だったのです。

ヒトとゴリラの咀嚼筋と脳の関係を見てください。


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人間の脳の質量は約1,375グラム。ゴリラは約450グラム。約三倍の差がありますが、

ゴリラの頭蓋骨のほうがずっと立派です。そう見るとゴリラの頭蓋骨は脳のためにあるというよりは、まだ食べるためにあるのかもしれません。しかしこの頭蓋骨はこのあごの筋肉の弱まりが、結果的には脳が増大することを促進し、人間と類人猿を大きく分けるきっかけになったのではないかという理論が提唱されています。

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因みに、ゴリラにも立派な犬歯が備わっていますが、これはそれほど実戦では約に立たず、口を大きく開けて威嚇するときのためについているようなものだそうです。 


ゴリラの犬歯の歯冠は「牙」と言うのに相応しいように立派で、見る者に恐怖感を、与えますが、歯根はライオンに比べて約半分の大きさしかないそうです。

ニホンザルも我々ヒトもオスの上顎には犬歯が見られますが、やはり同様の使い方をするようです。

 

切歯は第三の感覚器

 

顔の最前列にある切歯には、切り裂く役割だけでなく、触覚の感覚器としての役割も存在します。

 

我々、二足歩行をする人間は手を使ってモノを触ることによってそれを感じることが出来ますが、四つ足動物にはそれが出来ません。その代わり、彼らは自分の鼻先、前歯、舌を使ってそれを感じ取るのです。

 

切歯が鼻のすぐ下にあることに注目してください。

嗅覚は生物にとって、最も古い感覚器官であるとされています。臭いの感覚は「理性的な脳」である大脳新皮質を経由しないで、喜怒哀楽などの感情や、食欲などの本能行動などをつかさどる大脳辺縁系に直接伝わります。さらに大脳辺縁系から視床下部に伝達され、そしてすぐ下にある下垂体へと伝達されます。同時に、大脳皮質の嗅覚野にも到達し、ここで臭いを知覚し何の臭いかを判断します。

 

猫に何かを向けると、猫は鼻を近づけてきて、その臭いを試します。人間以外の動物にとって、嗅覚は、食べ物を見つける、敵味方の区別、異性の認識など、生存にとって不可欠な重要な感覚となります。私たち人間も、賞味期限ぎりぎりの食べ物があったとき、それが食べても大丈夫かどうかを、本能的に臭いを嗅いで判断しますよね。これも生きる為に引き継がれてきた反応といえるでしょう。

 

そして舌もまた重要な感覚器としての機能が備わっています。
舌に関わる神経は四つありますが、下の一番先端は三叉神経と顔面神経の支配領域になります。これは舌先の知覚の感覚器です。

舌先の触覚の鋭敏さは説明するまでもありません。


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この鼻と舌の間にある切歯も実は感覚器としての役割を持っているのです。

 

切歯は元々は獲物を掴んだり、皮をはいだり毛をむしったりするために使われていました。親猫が子猫を運ぶとき、優しく労わってくわえて運んでいますよね。あれは切歯を使ってその微妙な噛み加減を調節しているのです。甘噛みも切歯を使っています。あれを犬歯でやられたら相当に痛いに違いありません。

 

このように動物の鼻・歯・舌は感覚の最前線としての大切な機能があるのです。

補食する対象を切り裂き、仕留める、強力な犬歯と、硬い食物をもすり潰す臼歯。

それとは対照的な繊細な働きをする切歯。

この相反する機能を持つ歯の土台となる上あごの骨はどういう仕組みになっているのでしょうか。

上あごの骨である上顎骨は左右二つの骨から成り、真ん中で縫合しています。動物の歯はすべてこの上あごから生えていますが、実はこの上あごは多くの哺乳類では、切歯の土台となる「前顎骨」と犬歯、臼歯の土台となる「上顎骨」の二つの骨から構成されています。


多くの動物では、この繊細な前顎骨は比較的骨密度は薄く、強靭な咀嚼を受け持つ上顎骨の骨密度は緻密であることが多いのです。




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なぜ、ここに歯並びを二つに分ける縫合が存在するのか?

それは神のみぞ知ることなのでしょうが、動物たちの歯並びと、その固有の種が置かれている食を含む環境からひとつの推察が出来ます。

それは
切歯の「感覚器」としての機能と、犬歯や臼歯の持つ役割とを考えると、それらの土台となる骨にかかる力の大きさが大きく異なる、ということです。

先ほど述べたように、動物の犬歯や臼歯には咀嚼時に大きな力がかかります。
この力は上顎骨ー頬骨ー前頭骨、側頭骨とに縫合を介して伝達し、分散していきます。


これは咀嚼のストレスを脳頭蓋にできる限り干渉させたくないからです。


一方、切歯のある前顎骨はその繊細な感覚を鋤骨ー篩骨と眉間に伝達し易いようになっているのです。

我々の上あごには切歯と犬歯との間に『切歯縫合』という前顎骨の名残の骨との縫合がありました。


過去形になってしまうのは、我々の前顎骨は、乳幼児期から成人になるに従い、永久前歯の萌出前にほぼ上顎骨と癒合し、一つの骨となってしまうからです。


長い間、人間には切歯縫合が存在しないと考えられてきました。これを発見した人はかのゲーテであるそうで、いまでもこの縫合を「ゲーテ縫合」と呼ぶことがあるそうです。


若きウェルテルがロッテと初めてのキスをするときに見つけたかどうか知りませんが、人間にはもう切歯に要求される感覚器としての機能が必要ないと判断されてしまったのかもしれません。
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ではなぜ、乳幼児にはこの切歯と犬歯の間に縫合があるのでしょう?

授乳期の赤ちゃんにこの部に縫合があると、お母さんのおっぱいを吸うときに都合が良いのです。

哺乳には三つの段階があります。
(1)乳をくわえる(吸着)
(2)舌を波打たせて乳首をおしつぶし、母乳を引き出す
    (吸啜*きゅうてつ)
(3)母乳を飲み込む
    (嚥下*えんげ)

赤ちゃんの上あごの中の、切歯縫合の後がわの部分には「哺乳窩」というくぼみがあります。これは哺乳期の赤ちゃんだけに見られます。この哺乳窩は口の奥のほうにあり、赤ちゃんは哺乳窩に乳首をおさめ、舌を歯ぐきの少し先まで伸ばして乳首に密着させて、舌先を盛り上げて舌の波運動を行って哺乳します。

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このとき、下顎の動きに合わせて上唇の部分が柔らかく動いているのがわかるでしょう。




哺乳しているときの赤ちゃんの口は、唇だけではなく、歯槽自体も柔らかいほうがいいはずです。


我々人間を含む、母胎の乳から栄養を受け取る哺乳類は、哺乳時に切歯の部分で乳を吸います。

このときに切歯の部分にクッションがあった方が都合がいいのです。


赤ちゃんの乳歯は、一般的には早くで生後5~8ヶ月頃から生え始め、2~3歳で乳歯が20本生え揃います。
一方、赤ちゃんが離乳を始めるのは首の座り始めた生後5~6か月ころからが一般的です。


切歯が生え始めて、哺乳するときに、おっぱいが噛まれて痛くなるようになって母体はそろそろ乳離れの時期を感じ取るのかもしれません。

小臼歯には、上下の咬み合わせを決める要素があります。歯の形に、下アゴが不必要に後ろに(奥に)下がらないようにするストッパーの形が刻まれているのです。もし小臼歯がなくなったら、上下の顎の位置が決まりにくくなり、咬み合わせも不安定になります。咬み合わせが不安定になると、顎の関節にも影響が出てくることがあります。

臼歯は内臓の一部


臼歯は小臼歯と大臼歯に分けられます。


小臼歯は前歯や犬歯より少し分厚く、上下左右2本ずつ、合計8本あります。

小臼歯には、上下の咬み合わせを決める要素があります。歯の形に、下アゴが不必要に後ろに(奥に)下がらないようにするストッパーの形が刻まれているのです。もし小臼歯がなくなったら、上下の顎の位置が決まりにくくなり、咬み合わせも不安定になります。咬み合わせが不安定になると、顎の関節にも影響が出てくることがあります。
 
「第一大臼歯」は「6歳臼歯」とも呼ばれ、永久歯の中でもかむ力が一番強く、これから生えてくる永久歯の歯並びを決める大切な歯です。そして、第二小臼歯、第二大臼歯と共に上下の歯をしっかりと噛みしめたとき、その噛み合う高さを決定し、歯の高さを保つ役割を果たしています。

臼歯をよく観察すると、凸凹があり、上下の臼歯の山と谷がはまり込んでいます。
大事なのは、上の臼歯の内側(舌側)の出っ張りです。
その出っ張りが、下の臼歯の窪みにピタッとはまることが良いかみ合わせに繋がります。


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臼歯は食物をかみ砕くための役割があります。

爬虫類などでは歯は獲物を逃さないように押さえつけておければあとは飲み込むだけで済んだのでしょうが、哺乳類になってくると口の中で食物をかみ砕くという事は消化活動の一環となりました。
この口腔内消化は、吸収効率を向上させ、代謝を活性化して、身体の恒常性維持に非常に役立ちます。

臼歯のない人は胃に入るまでに食物を細かくかみ砕くことができないため、胃腸障害を起こしやすい傾向があります。








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2017年10月22日

口、顎、舌、歯

最近、口の中のマイブームが続いてる。

元々、私の治療院に来られる患者さんの傾向で、特定の領域の中では「婦人科系」の次に多いのが「顎関節症」の患者さんです。

「歯」と「からた」の関係に理解の深い歯科医の先生や、近隣の歯医者さんからたくさんの「顎関節症」の患者さんをご紹介していただいているので、元々この領域に携わることは非常に多いのですが、このひと月でまた認識を新たにしました。

つくづく思うのが、「口」というのは、口の周りを含めて「内臓」の一部なんだな、と言うことです。

私はイメージとして「咀嚼」というのは一種の蠕動運動であり「舌」は絨毛の巨大化したものだと考えております。

そして舌小帯は腹膜の一部であり、咽頭縫線と前後で対を成すものだととらえていま
す。

暴飲暴食すると、内臓の悲鳴として口内炎ができてくるし、これ以上口を使ってくれるなと、言わんばかりに口角炎が痛みます。

歯根膜の張力(これが弱ると歯が疼くように痛みます)は内臓の活力に依存しているし、舌を診れば、そこには五臓六腑の状態が如実に反映されています。

口を内臓の一部として考えると、そこには人類だけが持つ特異的で構造的な欠陥がみえて来ます。

それは我々の内臓はその入り口で大きく曲がって固定されているこいうことです。

口から食物を取り入れて、肛門から排泄する。

生物の基本的な構造として、内臓とは一本の管から成り立っています。

初期多細胞生物の海綿は、単細胞生物が寄り集まって、海中のなかでポンプのような構造を形成しました。海水の流動を促し、自らの体腔のなかにそれを流入させて効果的に海水中の微生物やミネラルを吸収する方法を獲得したのです。

それからそのポンプの内側を腸として一本の管として、次第に腸を進化させ、同時にその周りに神経系や循環器系の組織を張り巡らせて行ったのです。



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体幹の軸として脊椎が出来てきて、基本的に内臓はこの脊柱に伴走するようになっていきました。

この基本構造は「魚」の頃から、二本足で立ち上がるようになる前まで変わりませんでした。

我々の祖先が立ち上がり、二本の足で歩くようになってから変化してきたのです。


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人類の発達において同様のテーマとして、目と脊柱(後頭骨大孔)の角度について、様々な提唱がなされています。

確かに視線の位置と脊柱の関係は様々な問題を生じます。

また、ルーシーがどうやって遠くを見るようになったかも、非常に興味深いことなのですが、私のようなオステオパスにとっては口が水平になった事の方が重要なことだと言えるでしょう。

ここには患者さんが訴える苦痛の元凶になる事がたくさんあるからです。

目が水平になったことは「種」としての発生学の上で、神経系の発達の最終段階で行われます。何故ならば脳が一番発達しているのは我々人類だからです。

脳はそれが高等になるに従って折れ重なって層のように、先に出来上がった脳を包みながら発達していきます。

その過程で脳の一部である「目」は現在の位置に移動してきました。

極端な例えとして、目線が水平になるということは、鉄筋コンクリートで立派なビルを建てたのだけれど、そこに設置するコンピューターが大きくなりすぎて、やむなく出来た建物の上にプレハブで建て増しをして、そこにコンピューターを無理やり詰め込んでしまい、その過程で監視カメラを水平にしたようなもので、それは「ビルド」に過ぎません。

しかし、口が脊柱に対して直角になり、口蓋が水平になるということは一度出来上がったビルの最上階の一面を取り壊して、無理やりそこを曲げてしまうようなもので、それには「ビルド」に加え「リビルド」が伴います。


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これは鰓弓が消失することによって行われます。哺乳類が後方の鰓弓を消失したことによって「首」が出来たことと同じように、第一鰓弓の一部が非常に繊細に消失したことによって我々の咽頭部は折れ曲がりました。


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口で咀嚼した食べ物を胃まで運ぶのだったら、その管は真っ直ぐなほうが良いに決まっています。

ストローを途中で折ったら飲み物が通りにくくなりますよね、マクドナルドのストローは途中でジャバラになっているのである程度それはクリアーされますが、我々の喉元も同じように折れ曲がっているのです。


きっと我々の祖先は喉の通りが悪くなる不利益よりも、立ち上がり、二本の足で歩くことを選んだのでしょう。

この基本設計の変更により、我々人類の顎まわり、口元、喉元は非常に狭くなり、そこを通る配線や配管は、往々にして圧迫されるようになってしまったのです。



目が水平になった事で、不利益を被る人類は聞いたことはありませんが、口が水平になった事でつらい思いをされている方は毎日診ています。

この鰓弓のビルドとリビルドを発生学的に突き詰めて研究すると、この領域で生じる多くの病変を面白いように取ることができます。

第一鰓弓は三叉神経
第二鰓弓は顔面神経
第三鰓弓は舌咽神経
第四、第六鰓弓は迷走神経 

舌にはそれら全ての要素があります。

耳介、耳珠の出来方は非常に多くのヒントを与えてくれます。

迷走神経、頸動脈、頸静脈、

これらは重要なせいか、特別な膜でひとまとめに包まれていますが、時としてこれが仇になることもあります。

ここでリンパの流れが悪くなって風邪が長引く人もたくさんいます。
 
人間のからだ、まだまだ掘り下げることがたくさんありますね。




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2017年07月12日

フォルクラム

関東に「京成電鉄」という私鉄があります。

東京の上野と千葉県の成田を結ぶ私鉄なのですが、東京の下町を通って千葉県の東京寄りの街に支線を延ばしている路線です。

我が治療院もこの沿線に近いところにあるのでこの電車を利用して来院されている方も多いかと思います。
また成田空港へアクセスし易い、スカイライナーという特急列車を運行しているので、ご存知の方も多いでしょう。

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この電鉄の始発駅である「京成上野」という駅はJR上野駅とは少し離れた場所にあるため、昔からあまり利用する人はおりません。そのかわりにJR山手線との乗り換えはもっぱら京成上野から一つ目の日暮里駅が都内のメインターミナルとなっています。

京成上野と成田空港を結ぶ路線がこの電鉄の本線なのですが、千葉県と東京との境にある「高砂駅」で銀座や新橋まで直通運行をしている都営浅草線と相互乗り入れをしているため、いつしかそちらの方がメインの路線になってしまいました。
ダイヤも、この銀座へアクセスし易い路線のほうをメインに考えて組まれているようで、昨今では千葉県から上野に行くには少し不便なところがあります。

元々の本線である京成上野方面の路線は高砂~日暮里間はそこそこの利用者がいるのですが、日暮里から始発駅である京成上野までは、完全に忘却の彼方へ追いやられ、途中にあった「博物館動物園駅」などは廃墟と化してしまって、いつの間にか廃駅となってしまいました。

僕の比喩の下手さ加減には定評がり、ベタなたとえ話をされると余計解らないとよくお叱りを受けるのですが。何故、こんな話題を導入したかと言いますと、我々の身体の中にも、これと同じような顛末を辿った組織があるからです。

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この図の赤い線で記されている「臍動脈管索」
この退化した組織こそ、先ほどの京成電鉄で取り上げた日暮里~上野間と同じ境遇に晒されている組織なのです。

この臍動脈管索は、胎児循環の時には、胎児の静脈血を一身に受け持ち、母体へ返す重要なルートでした。

母体からへその緒を介して臍静脈に入った栄養たっぷりの動脈血は、胎児の肝臓に入り、やがて心臓から動脈系によって全身に運ばれていきます。
心臓から下降した大動脈は腰付近で一旦左右に別れて、腸骨動脈となり、そしてまた、仙腸関節のあたりで、子宮や膀胱に向かう内腸骨動脈と、下肢に血液を供給する外腸骨動脈に分枝します。

この内腸骨動脈が子宮動脈、膀胱動脈と枝を出したのち、最後にこの二本の臍動脈となって胎盤に還流していきます。
この臍動脈こそ、人間が出来立てのころの最大級の本流ルートであったわけです。
 
しかしそのうちに足が出来てきて、血液の多くがそちらに流れ込むようになってきて、やがて出生して、へその緒が切られると、骨盤内蔵器に供給する枝を残して役目を終えた臍動脈は恥骨からへそまで続く左右二本の筋となって身体に残ります。

京成電鉄にたとえるならば高砂から京成上野までの本線がこれにあたります。(僕的にはm(_ _)m)

動脈の流注は、基本的に身体の深部を通過しているため、特定の部分以外(鼠径部や膝の裏など脈を取れる部分)は触診にて触知することが少し難しいかもしれません。しかも触知できるのは「点」だけであって、「線」として動脈を触知できるところなど頭表部の動脈を除いて皆無です。

ですが、動脈の残余であるとしても、この臍動脈管索は体表の、極浅いところを走行しているので誰にでも触れることが出来ます。
しかも、人体の最深部である総腸骨動脈分枝部分から矢状面にほぼ垂直に走行しているので、身体の深部にトラクションをかけることができるため、治療において、非常に使い勝手の良い組織であるといえます。

外腸骨動脈の末梢部にトラクションをかけ、その状態でこの臍動脈管索にトラクションをかけると、その間にある子宮動脈や膀胱動脈などにアクセスしやすくなります。

また、この内外腸骨動脈の分岐部は骨盤の重要なフォルクラムなので、ここにテンションをかけた状態で卵巣の後ろ側にバックボーンを作ってやると、卵巣にコンタクトしやすくなります。

卵巣は触診するのにとても難しい臓器です。
欧米のD.Oでも、触診できると断言する先生と、卵巣は触診不可能であると言う先生とに、その見解は分かれます。

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卵巣を触診出来るという先生は、セミナーの時の実技で事も無げに「ほら、これが卵巣だよ。」と触診していますが、僕は、触診不可能であると言う先生のほうが、誠実で論理的な先生だと思っています。

卵巣は、普通のやり方でダイレクトにアクセスする事は出来ないでしょう。

卵巣は中腎管由来の結合組織に前後から吊されていて、とても不安定な状態で骨盤の片隅に位置しています。

これを触診するのは、あたかも水の中に浮いているじゅんさいを箸でつまもうとするに等しいくらい難しいことだと思います。

卵巣は触れようとするとスルッとそのコンタクトから逃げてしまいます。触ることはできても、ただそれだけのことです。

その逃げる感触は、若い、健康的な女性ほど、顕著にそう感じるでしょう。卵巣に炎症などがある場合、逃げる感触がスローになります。

卵巣は非常に個体差(お叱りを受けるかも知れませんが、年齢差と言葉を変えてもいいかもしれません。)があり、同じ女性でも周期的にその触感は刻々と変化しております。

その繊細な臓器を触診して、尚且つその状態を感じ取るのは至難のワザでしょう。

しかし、この臍動脈管索と外腸骨動脈を使って腸骨動脈の分岐部にテンションをかけてやると、後方から卵巣提索にテンションがかかるので、卵巣の中枢側が固定されます。

末梢側を固定することは比較的容易なので、この方法を使うと卵巣を前後から固定することができます。この状態で卵巣を動かなくして、やっと触診が出来るようになります。

卵巣が腫れているか、虚血状態でいるか、いびつな形をしていないか。周囲の組織と癒着していないか。

この状態ではじめて卵巣のモティリティも感じ取れるようになるでしょう。

卵巣はモティリティにおいて、中腎傍管由来の卵管とシンクロしていなければなりません。

卵巣と卵管の関係こそ不可思議なものだと実感しております。

ただ、この2つの器官にはお互い固有のリズムがあるようです。

この2つのリズムが互いにシンクロして、はじめて一つの少し大きなモティリティになります。

「不妊」にお悩みの女性は卵巣と卵管がそっぽを向いて、お互いにバラバラな動きをしています。

不妊に関しては様々なファクターが混在しますので、一概には言えませんが、卵巣の卵管のリズムをシンクロさせるとそれらの臓器の活性が確実に向上します。

婦人科、生殖器の治療はこの卵巣と卵管のモティリティのバランスを回復させて、終わりたいと思っています。



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