草彅さん

8/4(金)は、東京ピストルの草彅さんと、R不動産をプロデュースするスピークの林さんが再開発の街を歩くという企画に参加させていただいた。

というか、お誘いを受けて参加したら「じゃ、今日は三原さんが案内役ね!」ということでまさかのナビゲーター丸投げ。 

その事実に愕然としつつ(笑)、不動産関係者やクリエイター、飲食店経営者など、まちづくりに興味を持つ約10名の方とともに、立石の街を練り歩いた。


↑貼り紙だらけの外観に目が釘付けの一同。

個性的な店が多い立石でも、一番ディープな雰囲気が堪能できるのは「呑んべ横丁」だ。


もともとはデパートであり、金魚店や糸屋、作業服店などが集まっていたが、時代の流れとともに飲み屋が増えて今の呑んべ横丁になった。
再開発では区役所ができるエリアとなっている。



林さんは「ここは確かに防災面には問題あるね。消防車も入れないだろうし。でもドローンで放水するとか、耐火・耐震性の高い木造建築というのも可能ではあるんだよ。そういう可能性も探って欲しいよね」と話す。

林さんがプロデュースしている「R不動産」が、この横丁をリノベーションしてくれたらどんなに素敵になるだろう……と思わずにはいられない。 


■立石住民の活力の源「宇ち多゛」のモツをくらう

立石は、1911年ごろから始まった荒川放水路掘削事業でたくさんの労働者が集められた土地である。彼らが好んだのは、安いモツとハイボール。その名残で今でもたくさんのモツ焼きの店がある。中でもストイックにモツを味わう店として有名なのが「宇ち多゛(うちだ)」である。

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小さな店のため、大人数では入れない。
2~3名ずつに分かれて「宇ち多゛」へ突入した(地元ではこれを「うちいり」と言う)。 

この店は注文の仕方が難しいのが特徴だ。 メニューにはモツ焼きと煮込みとしか書いていないが、実は100通りくらいの頼み方がある。 

①モツの部位(カシラ、ガツ、シロ、アブラ、レバーなど)
②味付け(タレ、塩、酢、味噌)
③焼き方(若焼き、普通焼き、よく焼き)

この①~③を組み合わせて注文する。
とりあえず「煮こみ」と串焼きを何本か注文。

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狭い店内で肩を寄せ合うようにモツを食らうおじさんたちを見回し、草彅さんが「この雰囲気たまんないね! まさにおじさんとモツの聖地だね」と言っていた。 

女性二人のペアは、隣の席のおじさんがおすすめや注文方法を教えてくれそうだ。 立石のおじさんは見知らぬ人にもフレンドリーなのである。


■立石は再開発で高層ビルだらけの街になる

うちだを出た後は「まちづくり事務所」を見学。 偶然通りかかった事務所の方が会議室に通してくれて、立石に住んでいる私も知らなかった再開発の現状を教えてくれた。

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再開発の計画が進んでいる立石駅の北側エリアが区役所とタワーマンションになるという話は聞いていた。 

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だが立石の南側エリアも、タワーマンションになる計画が進行しているようだ。すでに南口東エリアの地権者の8割がその案に賛成しているという。

今年の2月に準備組合が発足し、6月に事業協力者が清水建設に決定した南口西エリアも、大型商業施設の路線で検討しているとのこと。

最終的には立石エリアに4つの高層ビルができるそうだ。

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まだ計画段階だが、これを見る限り、今までの立石の面影はまったくない。

「タワマンやショッピングモールばっかり作るな」というのは、地権者の財産権の侵害になりかねないし、部外者がとやかく言えことではないかもしれない。

しかし、どうにかして「せんべろの町、立石」を愛する人たちの居場所を残したい。
再開発後、今ある店はどうなるのか聞いてみた。

私「立石で営業している個人店はどうなるんですか」 

事務所「マンションや商業施設の低層階に入ってもらうことを検討しています」 

私「でも、高層ビルになればなるほど、共益費がかかるし、家賃もはねあがりますよね。区からの補助はあるんですか?」

事務所「とくにありません。こういう事情で個人商店を支援する制度自体がないのです」 

私「それなら、個人店が入店したとしても、事業として継続するのは難しいですよね。早々に撤退して大手のファミレスとかになるんじゃないですか?」  

事務所「そこは個人の努力でなんとかするしかないですね」  


個人商店が資本力で大手に太刀打ちできるわけがない。 おそらく今立石にある数々の個人店は、数年で駅周辺から姿を消すだろう。 

地権者やディベロッパーにとって、一番ラクでわかりやすくて儲かるのは高層ビルを建てることだというのは間違いない。 

その事実を踏まえた上で何ができるかを考える必要があるなと感じた。

注:今回得た情報はあまり表に出してほしくないとのこと。その一方で「住民にはきちんと説明したいし、認知度を向上したい」とも言っていた。矛盾をはらんだ発言である。悩んだ末、再開発全体のイメージが湧く話だけ抜粋している。


■「タワマンが大好きな人っているんだよ」

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その後「蘭州」へ移動し、水餃子と焼き餃子、ニラ餃子を食べながら熱く語った。

「タワマンばっかり建ててどうするんだ!」と憤慨する私に、「タワマンが大好きな人種っているんだよね。俺たちみたいにゴチャゴチャした街が好きって層はむしろマイノリティかもしれない」と林さん。

タワマンばかり作ったら、空室率が高まるんじゃないかという質問に関しては「今後全国的に空室率は上がるけど、東京だけは下がらないと思う。その傾向は15年は続くね」という見解を示した。


京王電鉄の田原さんは「タワー以外の可能性を示し、メリットを訴えることでしか、この流れを変えることはできない。反対意見や理想論だけでは、なかなか話を聞いてもらえないのが現状」と話す。

彼は林さんや草彅さんと組んで、下北沢の高架下にイベントスペースを作っている。3年間の期間限定で生まれた『下北沢ケージ』は、交流の拠点として新たな文化を生み出している。

「本当は高架下に駐輪場でも作ったほうが儲かるんだよ(笑)。でもそれでは面白くない。下北らしい文化的な使い方をすることで、どんなメリットがあり、収益が得られるかを理解してもらう働きかけが必要なんだよね」とのこと。

本気で何かを変えようと思ったら、事業の仕組みや相手にとってのメリットを理解し、懐に入ることが大切なようだ。

下北沢ケージのサイトはこちら


「インバウンド消費を取り込んでみては?」

「蘭州の餃子、神!」と絶賛しながら食べた後、向かったのは「鳥房」。とりあえずお土産用の半身の唐揚げを注文し、もっとモツを食べたい人は「江戸っ子」に。寿司を食べたい人は「江戸安」に向かった。

江戸安で合流した後藤さんが、大将に「若いのにタトゥーなんてしちゃダメだよ。プールとか温泉入れないでしょ。子供できたとき後悔するよ」って説教されているのには笑ってしまった。 個人的には、こういう店と客の距離感が大好きだ。

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(桜木さん撮影写真)

後藤さんはゴールデン街で日本酒バーをやっているのだが、彼の意見も大変面白かった。 

ゴールデン街も再開発の話が毎年のように来るそうだが、外国人の関心度が高いエリアのため、手がつけられないらしい。

「日本人って、外国人の言うことは意外と聞くんですよね。だから外国人を集めちゃえばいいんですよ。この立石の雰囲気って絶対外国人が好きだから」

後藤さんは、「日本」「SAKE」というキーワードで検索したときに、ゴールデン街の店が上位に来るように、外国人向けの観光案内サイトやSNSで英語の記事を投稿した。

また、チャージというのは外国人には理解しがたい概念なので、お店の看板に「ノーチャージ」と書いたらフリーの客が増えたという。

店は土日だけの営業にもかかわらず、3年間で1万5000人の外国人が訪れたそうだ。今後はAirbnb とも連携し、さらにこの動きを加速させるとのこと。

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後藤さんいわく、インバウンド需要を呼び込むために、一番大切なことは「受け入れ側の気持ち」だという。店側に歓迎する気持ちがあれば、言葉は通じなくても意外となんとかなるものである。

立石は、外国人に人気の観光施設、スカイツリーから電車で10分、浅草から15分という好立地にある。  

外国人向けのサイトを作ると同時に、お店の人の意識を変えていくことができれば、外国人が訪れるまちづくりができるかもしれない。


■最後は「知花子」でベロベロに……

江戸安を出た後、再び呑んべ横丁へ。

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14人くらいで『知花子』に行き、終電間際までカラオケ&飲みまくり。
解散した後、片付けに行ったら、ママは「今日は賑やかで楽しかった」 と大喜びだった。

今回のツアーで一番心に刺さったのは、林さんの「三原さん、勉強しすぎるなよ」という言葉。 

「勉強も大事だけど、しすぎると『やっぱり老朽化した木造住宅は解体するしかないよね』とか『タワーマンション建てるしかないよね』という結論になる。だから、あまり勉強しすぎずに、そのまま感じたことを発信してもいいんじゃない」という言葉をかみしめながらの解散となった。

いろんな立場の人から意見が聞ける、すばらしいツアーを企画してくれた草彅さんには本当に感謝している。 

草𦿶さんが帰り際に、「ここは数年後には無くなっている街なんだね」とポツリと呟いた言葉が、一抹の寂しさとともに胸に響いた。