2007年07月31日

ファンタズマゴリアはすごマリア(ビジュアル系バンドのことではありません)

phantasmagoria音楽。という言葉は音を楽しむと書く。が、その楽しみ方にはいろいろあって、机に座って書物をひもときながら「なるほど、この音はこの辺りの音源の影響が62%ぐらいあって派生したものであろうし、この音をクリエイトした人物が誕生した時代背景も23.5%ぐらいは入っていると思われ、さらにこの時代の首相は誰それであったから、世界は第三次恒久平和条約締結前夜の興奮に満ちており、その影響も7%ぐらいは入っているに違いない」などとつぶやきながら知的に楽しむ人々、「お、なんか知らんけどかっこいいやん」という、まこと抽象的で知性の欠片もない直感のもと、書物を捨てて立ち上がり、尻を振って阿呆のように踊る肉体派の人々、などがいるわけですが、わたしが前者と後者のどちらに該当するのかといえば、わたしは相手の氏素性を知ってから恋に落ちるタイプではないし、第三次恒久平和条約の締結とわたしの色欲がさほどリンクしているとも思えないので、肉体的な楽しみ方しかできないでしょう。幼少の頃より、勉強するのが一番嫌いですし。

んで、この肉体的音楽法の天才は誰であるかといえば、それは言うまでもなく、赤子です。なぜなら、彼らは人間とアニマルの中間に位置する生き物だからであり、アインシュテルツェンデ・ノイバウテンの言った半分人間ってのは、あれは赤子のことであったのか。とつくづく感じている今日この頃なのですが、この赤子という生き物は、自分が聞いている音がいったい何であるのか、どこからどのようにして聞こえてきているのかさえわかっていません。ただ、なんかノリノリな感じになって尻のあたりがむずむずしたり、言い知れない不安感に襲われたりして、それがそのまま行為・行動として肉体に表出してきます。つまり、彼らは音を「鑑賞」するのではなく、「反応」しているのです。

彼らは、母乳をもらっている時と同じホルモンが分泌されてしまうほどの安心感を覚えるサウンドであればすやすや眠ってしまうし、「なんか知らんけど、これダンサブル」という、原始的信号がぴりぴり体に走れば、膝を曲げたり伸ばしたりして尻をぶんぶん上下させ、ところどころで「ひゃー」とか「きょー」とかいう、雄たけびに近い合いの手を入れながら踊り狂うのです。

今週一歳になるうちの坊主に関していえば、彼はロックンロールで踊るなどという無粋なことはしないのですが、ラテン系、ジャズファンク系、ジャズパンク系を耳にすると、何か憑き物がついているのではないかと思うほど踊るのであり、きっとスケベになるに違いないぞ、この男は。と今から楽しみにしているのですが、その彼が、最近異常なる肉体的興奮をもって「反応」した音源があります。

一曲目が始まるといきなり機関車トーマスのおもちゃをテレビのスクリーンにぶち投げて立ち上がり、ティー・テーブルをパーカッション代わりにばんばん叩きながら尻を上下させ始め、二曲目が始まるとわずか10秒ほどで泣き出し(泣く、という行為も、究極の音への肉体的「反応」です)、三曲目でまた立ち上がったかと思うと、「んむわああああー」「ぶわああーえーー」などと自らの声を楽器にして演奏に参加しながら、偉そうに腰に両手まであてて、ぶんぶん尻をふり始めました。(彼のキチガイぶりは「Seven Beats To Heaven」で頂点に達したと書いておきましょう。「ma-n-chi」でも非常に興味深い足の屈伸運動を見せていました)

Acoustic Ladylandへのわたしの愛は2年ほど前にここで書いたことがありますが(ところで、彼らの新譜も素晴らしく、うちの坊主を恍惚とさせる一枚です。聴いてみたい方はこちらへ)、しかしながら、日本にもこのような方々がおられたのですね。

おそるべし内橋和久。

一歳児を踊らせ、泣かせ、狂わせる、そのサウンド。

ファンタズマゴリアはすごマリア。

追記:うちの坊主のお気に入り。という視点になりましたが、おかあちゃんのほうはAltered StatesのBluffsも気に入っており、Disc1はけっこうヘビー・ローテです。しかし。「うちの夫は天才音楽家」と妻に言わせてしまう方は、このような音を奏でる方でいらしたのですね。

追記その2:訃報ラッシュの一日でした。ベルイマン死去のニュースでは、ケン・ラッセル御大がコメントに出まくり。その一方で、「EastEnders」のフランク・ブッチャーことマイク・リード死去。「EastEnders」は、あんなさりげない訃報画面を番組のラストに出すだけでなく、番組中でフランク・ブッチャーの葬儀を行うべき。ロンドン市長にも推されていた人物ですぞ、フランクは。

  

Posted by mikako0607jp at 08:23

2007年07月30日

BBCの英国映画まつり速報 第一週:スリラー

http://www.bbc.co.uk/britishfilm/summer/thriller.shtml

「60年代、70年代のロンドンのワーキング・クラス・ギャング映画には、ミドルクラスのお坊ちゃんたちが憧れる、デスパレートなDepressionとViolenceとSense of humour(憂鬱と暴力と笑い)があったんだよ。ロンドンの貧民区に生まれたことは格好いいことなんだと思わせてくれた時代だった。金と未来は全然ないけど、とりあえず今は格好いい。みたいな。真っ暗でやけくそのプライドがあった」。

BBC2放映のドキュメンタリー「British Film Forever」のシリーズ一回目「Week 1:Thriller」を観ながら、連合いがそう言いました。ジョン・ライドンとジョー・ストラマーの立ち位置関係なんかも、一聞にしてストンと落ちるような言葉ではないですか。

「UKギャング映画における暴力は、漫画的な米国映画のそれとは違い、気の滅入るリアルさを持っていた」

「ハリー・パーマーは、鬱気質のジェームズ・ボンドだった」  (共に番組ナレーションより。ハリー・パーマーをご存知ない方はこちらへ

英国のテレビ史上最大の英国映画の祭典。と言われているBBCの「Summer of British Film」は、7週間にわたってジャンル毎に英国映画の歴史を振り返るドキュメンタリー「British Film Forever」と、毎週のジャンルに沿った英国映画の集中放映で構成されているわけですが、この「British Film Forever」が第一週目からつい本気になって観てしまうほど素晴らしい内容で、「The Long Good Friday」から始めてヒッチコックまで遡り、一気に昨年の「London to Brighton」(MovieWalkerさんへのゴシップ記事で何らかのネタに無理矢理結びつけてこっそり触れたことのある作品ですが、有名女優が往来で乳を出したとかトイレの中で挿入させたとかいうような万人受けする話ではないので、99%のユーザーの方々は興味なさげに読みとばしておられたでしょう。でも、これは英国の映画評論家たちから2006年のベスト英国映画に選ばれた作品です。しかも監督は新人)まで駆け上がってくるという、まことに細やかな配慮のなされた、英国映画好きはバイブルにすべき番組です。

以前もここに書きましたが、ここ数年、英国のテレビ界ではロック・ヒストリー番組の流行というのがあって、いまや何を見ても再放送にしか見えないほど作り尽くされていますが、こうした包括的で、しかも「The Culture Show」のような番組のスタッフによる”マニアも満足させますよ”的な視点で製作された英国映画のヒストリー番組というのはありませんでしたので、わたし自身も今年は、英国映画の夏。にしよっかなーと思っています。

番組中でインタビューを受けている英国映画界関係者の人数も200人だそうで、まさにメジャーもマイナーも総ざらえ。という感じです(今週末放送の「ロマンス」のジャンルでは、なぜかマルコミイことマルコム・マクラレンも喋っているところが宣伝用ビデオに映っておりました)。先週の「スリラー」ジャンルでは、「Casino Royal」のくだりで、「自分の尊敬する俳優が成功しているのを見るのはうれしい」とケイト・ウィンスレットがダニエル・クレイグについて語っており、このあたりの英国映画人のクレイグに対する目線は、あの映画が出てくるまで、日本ではまったく知られていなかったものだろう。と思いました。

以下は、番組中紹介された映画でわたしがお勧めしたいもの&未見なので俄然観るつもりになったもの。

*お勧め編

「The Long Good Friday」(ヘレン・ミレン!! の婀娜)
「Get Carter」(1971年のほうです、当然。バサバサ感にやられます何度観ても)
「Brighton Rock」(ラストの、I love you, I love you, I love you, I love youの反復)
「The Krays」(スパンダー・バレエ兄弟の意外な凶暴性を見くびってはなりません。弟のほうは「EastEnders」の共演者たちには嫌われたようですけどね。嫌な奴なんだとかで)
「Mona Lisa」(久々に二ール・ジョーダンまつりがしたくなってきました)

*俄然観る気にさせられた編

「London to Brighton」(で、もう観たわけですが。これはタイトルだけのレビューじゃなくて、ちゃんとレビューします)

  
Posted by mikako0607jp at 08:36

2007年07月23日

タイトルだけの映画レビュー。そしてBBCの英国映画まつりの話題など

After the Wedding1.レザボアのぬいぐるみ・・・「Departed」

2.ジュード・ロウは松田聖子なのか?・・・「Holiday」

3.ロッキー・やるボア・・・「Rocky Balboa」

4.レディコミOR壮大なるギャグ?のミステリアスな揺さぶり・・・「After the Wedding」

5.2007年に観ても2006年の最高傑作・・・「Pan's Labyrinth」

6.だみだこりゃ。・・・「Zidane: A 21st Century Portrait」

7 腐ったオルゴールから乙女の祈りがどろどろとエンドレスで・・・「Marie Antoinette」

8 汝、実子に作品など捧げるべからず・・・「Babel」

*もう忘れた映画がかなりあるのですが、思い出したらまたタイトルだけでレビューしたいと思います。

*上記で印象に残ってるのは4と5。4は今年のアカデミー賞で外国語映画賞にノミネートされたデンマーク映画(写真)。摩訶不思議な後味が印象的でした。あんなレディースコミックみたいな話をあんなにまじめに撮るわけがないから、きっとおちょくりだったんだろうなあ。でも、おちょくりだったとしたらそれはそれであまりに普通だし、マジでやってたって方が実はよっぽど怖いかも。みたいなぐるぐるのラビリンス状態で、まさにデンマークの迷宮でした。で、「パンの迷宮」(5)のほうは、いまさら言及するまでもなく素晴らしかったです。

*土曜日放送のBBCの「The Culture Show」(この番組はリアリティー・ショーだのバラエティー・ショーだのがひしめいている土曜日のゴールデンアワーにあって、清涼剤のような番組ですね。今シーズンの放送は終わっちゃいましたが)で、British Film Mapってのをやっていました。Mark Kermode(この方はわたしの好きな映画評論家です。やたらと過激な言葉をロケット発射して注目されようとがんばる評論家とは違い、”「The Wicker Man」(1973年のほうですよ、当然)はホラー映画の「市民ケーン」だ”みたいな、思わずにやり。とさせられるこなれた表現をなさる方なのでほっとします)が、有名な英国映画のロケ地として使われた場所を訪ねて回る。という企画。

BBCのサイトにも今回の番組で使われたBritish Film Mapが掲載されておりますので、お暇な方はどうぞ。英国在住の方は、うちの近くにあの映画のロケ地があった。みたいな発見もあるやもしれません。

http://www.bbc.co.uk/arts/filmmap/

*さて、いよいよ今週末からBBC2が「The Summer Of British Film」と称する英国映画まつりを始めます。ドキュメンタリー・シリーズ「British Film Forever」(これはインタビューを受けている顔ぶれが重厚にして絢爛豪華ですし、英国映画好きは必見のようですね)や、英国映画の集中放映などがその中身のようです。今年はぐずぐずして今ひとつ夏らしくない夏(ってか、昔は毎年そうだったんですけどね)なので、自宅で英国映画まつりってのもいいかもしれませんね。

http://www.bbc.co.uk/britishfilm/summer/about/

  
Posted by mikako0607jp at 09:54

2007年07月21日

天才と聡明と野生。(大貫妙子は好きでした)。のUA感想

時:1984年
ところ:日本国福岡県福岡市中央区某所

見栄晴「いか子ちゃんはケイト・ブッシュとかも好きやない?」
いか子「はい」
大仏「見栄晴もそうなんよ。あと、こいつはこっそり車の中で大貫妙子とか聴きよったりして・・・」
いか子「ええっ」
大仏「意外やろ」
いか子「いや、実は、わたしも好きなんです。失恋したときに部屋の電気を消して”黒のクレール”を聴いていたところを妹に見られてしまい、以降”黒のクレ子”と呼ばれているぐらい・・・」
見栄晴「”ピーターラビットと私”とかもよかもんねえー」
大仏「なんがピーターラビットやお前、ドブネズミんごたあ顔しとってから」
見栄晴「大貫妙子って実はすごいとよね。コード進行とか、普通そこには行かんやろ、ってところにスルッと、さりげなく移って行くもんね。この”さりげなく”ってのが一番すごいところでね。聡明なソングライティングってのはああいうことを言うと。めんたいロックのアーパーとかには500年生きてもわからんめえばってん」(注:当時彼は、フッカーズ解散で帰福していたフルちゃんことフル川氏とのバンド活動でストレスをためていた。フルちゃんは顔はきれいな人だったが、わりとそれだけ。の人だったし、見栄晴は一部で”博多のポール・マッカートニー”と呼ばれるほど作曲の才はあったが、いかんせんルックスが見栄晴だったので自分がフロントマンになるとバンドが売れないという宿命を背負っており、フルちゃんとは足りないところを補い合える関係でありながら、黒子に徹することにムカつきを感じていた)
大仏「いか子ちゃん、矢野顕子は?」
いか子「あ。駄目。声の響きとかも。ごはんができたよーおおんん、とか言われても、アタシ別に腹減っとらんもんって感じで」
見栄晴「矢野顕子は天性の人って感じやけん、さりげなくないもんね。天才タイプか聡明タイプかで好みが分かれるところやろ」
いか子「じゃあ、坂本龍一は聡明タイプより天才タイプが好きだったってことですね」
大仏「いや、男はだいたいそうやない?天才タイプはけっこう抜けたところがあったりするけん、一緒にいて楽やん。聡明タイプはずっと聡明やけん、疲れるよ」
いか子「あ、それ、”ガラスの仮面”のマヤと亜弓さんに置き換えるとわかりやすいかも」
見栄晴「ああ、あれもこっそりマヤちゃんばっかりモテようもんね。それも色男ばっかり」

*というわけで、一曲目の出だしから、そうさなー、わたしゃ大貫妙子も好きだったんだよなー、などとしんみりしてしまったUAの「Golden Green」。ウィーンのKaeちゃんが、本当に送ってきてくださったのであります。

* ぴったりした靴さえあれば大丈夫

  漕ぎ出した舟のサイズは波紋で測る

  したたる栄養をあなたにあげよう                (すべて「Panacea」より)

らの言葉に強くKaeちゃんを感じました。したたる栄養をわたしにもください。Please。
しかしこういう日本語を英語にするのは、むずかしい。むずかしい。と思いながら拝聴させていただきました。次は、Kaeちゃんのつむいだ言葉が日本語で肉声として発されるのを聴いてみたいです。Kaeちゃん関係の楽曲だからというわけではなく、この曲は出だしから「お、」と声が出ました。イントロでつい発声してしまったのは、この曲と一曲目だったのです(で、紙の上に印刷されたものを見て、どちらも内橋和久氏作曲だったと気づくわけですが)

*というわけで、内橋和久氏ことKaeちゃんの連合いさん全作曲&プロデュースのUA「Breathe」のほうは、”決して寝ない強情なクソガキ”として有名なうちの坊主を見事に寝かしつけましたよ。しかも幸福そうな顔ですやすやと。きゃつを就寝させる音源としては、これまでにもドゥルッティ・コラムがあったのですが(ただ、こちらのほうは寝顔がそこはかとなく陰気)、どうもサウンドに強情緩和効果があるようですね。

*少し前の話になりますが、日本に帰省中、わたしのーお墓の前でええー泣かないでくださいいいい、という楽曲を歌う男性の姿をテレビで見て、”ああ、ついにこういう歌詞の流行歌が出てくる時代になったのか。マジで高齢化社会なのね、日本って”と本気で思ったのですが、後で聞いてみればそういうわけではなかったそうで、米国同時多発テロの云々ソングだったらしく、なーんだ、けっこうありきたり。と軽くがっかりした。というぐらいにわたしは日本のミュージック・シーンについて知りません。

よってUAという女性についても、どのような素性の方であるとか、どのあたりの位置づけの方であるとかいう、音楽ジャーナリズム的情報が全然わからないわけですが、二枚のCDを拝聴する限りにおいては、この方は天才とも聡明とも違う、野生タイプの方ではないかと思いました(野性ではなく、野生。です)。

野に生えているものが人様の前に提示され場合、入れられる器の材質や形状、色彩などによってその見え方や印象が大きく変わってしまう。言い方を変えれば、器の焼き手の天才OR聡明によって大方が決まってしまう。というのが、野生のものの持つ宿命であり、”儚さ”という名のパフォーマーの色気でもあるわけですが、彼女を入れる器の焼き手が天才タイプであるべきか聡明タイプであるべきかということは、わたしのような一発の屁にも劣る素人のおばはんが書くべきことではございませんので、割愛させていただきます。菊池成孔とのコラボCDもちょっと気になるところですが。
というわけで、Kaeちゃんの連合いさんの音楽についてはまた別途。ファンタスマゴリアはすごマリア。

追記:大貫妙子といえばEZAKI氏なのですが、最近の文庫ブログの更新状況を鑑み、お忙しいのかしら。と拝察しております。そろそろ苗場ですか。ドゥルッティも出るようですし。ダミアン・ライスなんてところが意外に気になったりして(レニー・ゼルウィガーと噂になったことがあるからと言って見くびらないほうがいいです。このアイリッシュは)。

  
Posted by mikako0607jp at 10:03

2007年07月17日

ミドルクラストンベリー、そしてプリンスの新聞おまけ新譜の話題など

*グラストンベリーがミドルクラストンベリーになりつつある。という新聞記事が出ておりまして、グラストがオンライン・チケット販売に踏み切ったため、自宅やオフィスにスピーディで高価なインターネット・コネクションを持っているミドルクラスの中年ミュージック・ファンがチケットを買い占めており、お金のない若者たちがチケットを買えなくなってしまっているとのこと。

そのため、今年のグラストはなんか例年と客層が違い、品がいいというか大人というか、泥だらけになってもいちいちFワードなんか発さずに「これがグラストの思い出になるんだよ」か何か言ってうっとりしながら、「昔を思い出すねえ」とうれしそうにドープを回し吸っているミドルクラスのおっさん&おばはんだらけになってしまったとかで、この層を狙ってシャワー、トイレおよびシャンパンつきのVIPテントなるものまで登場する有様で、「このままではフェスティバル全体の雰囲気が変わってしまう」と心配した主催者が、来年はチケットの40%を電話販売に回し、十代の子たちが携帯で購入できるようにするんだとか。

このミドルクラストンベリーたち。いるよなああ。いるいるいるこういうタイプ。と知人の顔がうようよ思い浮かぶわけですが、実は週末はSummer Ballなる催しでロンドンに出かけておりまして、だいたいわたしはこういう金持ちの催しに参加するのは反吐が出るほど苦手なのですが、連合いの幼馴染に何人かご成功なさった方々がおり、その縁で招待されると断れない場合もあるわけで、ほんなこと言ったってこちとら成功どころか失敗だらけの人生なので舞踏会のおドレスなんか購入する金もないし、しょうがないからスーパー(おなじみASDA)で10ポンドのサマードレスを買って自分で切ったり縫ったりして改造して行ってまいりました(四半世紀前からファッションに関してはまったく同じことをしてますね。考えてみれば。いっそのことスリップ姿でブーツはいて行ってこましたろかと思ったけど、わたしも一児の母ですから。ははははは)。

ほんでまあ、このSummer Ballなわけですが、ボールと言っても社交ダンスとか踊ってるわけじゃなく、要するにミドルクラストンべリーたちが、ナツメロ・ロックとかちょっと若ぶって今流行中のロックとか、そういうのをかけてシャンパン飲みながら踊っているだけなのです。タキシードやおドレス姿で。パブリック・スクールのボールとノリとしては一緒ですね。でもこちらはナツメロ世代のボールですから、パンクも当然ながらかかったりして、うおおおおおおおっ、と出てきて、DESTROOOOOYと踊り狂うタキシードおやじなどもおられましたよ。わたしはあんたたちが叩き壊したい。と思いながら、窓の桟に腰掛けて眺めてましたけど。

*デイリー・メイルの日曜版のおまけとして配布されたプリンスの新譜。これはUKではかなり驚愕のニュース・ネタになった話でして、プリンスが10曲入り新アルバムをまるごと新聞のおまけとして無料配布してしまい、本人は「ダイレクトなマーケティングだ」「ヒットチャートなどというものはもはやファンやアーティストとは何の関係もないものになってしまっている」とおっしゃっておられるようですが、レコード会社関係者は大激怒。と話題になっており、早速わたしも購入いたしました。

が、しかし。プリンスのやったことは非常に画期的だと思いますが、これ、おまけにつけるのはデイリー・メイル紙でよかったのでしょうか。きちんと英国の新聞というものを調査した上でのチョイスだったのかしら。という点が非常に気になります。

デイリー・メイルという新聞は英国在住のみなさんはご存知でしょうが、タブロイドと表現されることがよくありますが、実際には昔からタブロイドと高級紙の間に位置してきた新聞(Daily Expressもそうですね)。サイズはいつもタブロイドでしたが、ページ3に裸の姉ちゃんが出てくるわけでもないし、まじめな政治ネタ、社会ネタがほとんであり、特に強いのは王室関係記事で、英国の新聞の中では最も”右寄り”と言われている新聞なわけです。(とはいえ、女性関連記事(ファッション、ゴシップ、美容、ライフ)に強く、女性読者が多いことでも知られており、その意味ではプリンスの”女性ファン狙い”だったといえないこともないでしょうが)

で、例えば、前述のミドルクラストンベリーたちはThe Independentとかを読んでいることが多いわけですが、メイル紙なんてのは、案外と庶民の、それも年金生活者とかが読んでいることが多い(だって女王様大好き新聞ですから)ので、わたしなんかも舞踏会の翌日に連合いの友人宅(こっちはロンドンのイーストエンドに住んでいる根っからの労働者階級)に遊びに行ったら、70歳になる連合いの友人の父親がメイル紙を買ってきていて、プリンスのCDがそこら辺に広告紙と一緒にうち捨ててあるような有様でした。こういう風にUK内のいたるところで絨毯の上や屑篭の中にうち捨てられ、最終的にはゴミの日に出されてしまうプリンスの新譜の山が、目に浮かぶような気がしました。

ゴミ埋立地に埋められてしまうには、もったいない出来とクオリティーのアルバムだと思うので、残念に思います。あ。言い忘れましたが、わたしはけっこうプリンスは好きですよ。同じ生月日(年は違いますが)を持つ者として常にその動向を気にしていますし。

  
Posted by mikako0607jp at 09:11

2007年07月13日

諸連絡

*Alison Jacksonのパロディ映像についてメイルをいただいたので、この場でお答えさせていただきます。というか、見てもらったほうが早いですから、一例をリンク。このようなものです。

The Private World of Tony Blair and George Bush

http://www.youtube.com/watch?v=c61O9TdFWyg

*いま日本にいるはずのKaeちゃん。本日(木曜日)無事に到着いたしました。あんなにいっぱい・・・。恐縮しまくりです。うちの坊主がTeething用のおもちゃをやけに気に入って、つなげたりばらしたりして遊んでいます。

じっくり聴いて、この場で感想を書かせていただきます。仕事が落ち着いたらゆっくりメイルします。とり急ぎ。

 

  
Posted by mikako0607jp at 09:05

2007年07月11日

やはり現実はコメディを超えていた。ブレア&スピン・ドクター編

赤タイ・ブラザーズのひとりでもある。というわけで、現実はコメディーを凌駕する。が今月のテーマになってしまいましたが、今日も朝っぱらからあまりに面白いものを読んでしまったのでついついまた出てきてしまいました。

ここ数日、英国ではブレア前首相のスピン・ドクター(情報操作担当側近)だったキャンベル君(写真)の著書「The Blair Years−Alastair Campbell’s Diaries」出版の話題で盛り上がっており、月曜日に某高級紙が同書の独占一部掲載を行い、火曜日の今日は他の新聞もこぞって内容を抜粋して掲載していたのですが、ちょっとこれ、読まれましたか、英国在住のみなさま。

先日とりあげたAlison Jacksonのそっくりさんを使ったパロディー映像などより、現実のブレアちん周辺はもっとおもしろかったみたいで、随所で大笑いさせていただきました。

*例えば、労働党が1997年の総選挙で政権を取るために、ブレアと現首相ゴードン・ブラウンが、どちらが党首になるかで話し合いをしている場面の描写ですが

”トニー・ブレアは、自分が党首に立つべきだと主張した。そうする方が、党が選挙に勝てる確率が高くなると考えていたからだ。しかし、ゴードン・ブラウンは納得しない。そのうちブラウンはトイレに行った。が、何分たっても部屋に戻ってこない。手持ちぶさたで両手の親指をくるくる回しながら座って待っていたブレアは、もしかしたらブラウンは逃げたのではないかとさえ訝っていた。”  ”ついに電話が鳴った。ブレアが取らなかったので、電話は留守電に切り替わる。すると、ブラウンの亡霊じみた低い声が聞こえてきた。「トニー、ゴードンだ。トイレの鍵が開かない。閉じ込められてしまった」。二人は結局大笑いすることになる。トニーは(トイレのある)階上に行って、「同意するまで出してやらないからな」と言っていた”

*キャンベル君とブレアちんは、ご存知のとおり、首相とアドバイザーの枠を超えた”マブダチ”であったわけですが、その関係は長年連れ添った夫婦にも似ていたようです。

”1996年1月5日 東京 日本人は、トニー・ブレアは新しい、魅力的なタイプの指導者だと考えているようだ。しかし、もし彼らが、滞在先の寝室のベッドに腰掛けているトニーの姿を見たら、どう思うだろう?パンツ一丁で地震防災用のヘルメットをかぶり、日本語がしゃべれるふりをしている彼を・・・”

”2002年4月5日 トニーに会いに、彼のフラットに行く。またもや「オースティン・パワーズ」のワンシーンのようだ。彼は黄色と緑のパンツ一丁である。すごい間抜けに見えるぞ、と僕は言った。彼は、僕はただ嫉妬しているのだと言った。−こんな肉体を持った首相が何人いると思うかい?だって”

”2003年8月29日 僕が去ろうとすると、トニーが「僕が君に毎日電話をするだろうってことは、わかっているだろう」と言った。「ああ。だけど、僕がそばにいない時もあるということを君がわかってくれたらと思うよ」と僕は答えた。”

基本的にパンツ一丁が好きみたいですね。ロック・スタアになりたかったブレアのナルシストぶりが伺えるエピソードの数々です。東京で書かれた日記の「ブレアを新たな、魅力的なタイプの指導者だと考えている日本人」の一人に、村上龍みたいな人がいたわけですねええ。

*というような話ばかりなわけではなく、当然まじめな話も書かれているわけですが、ダイアナ妃がチャールズ君を飛び越えて一気にウィリアムを国王にさせたがっていることを、大胆に、そしてあの上目づかいの目線でねっとりと、ブレアにほのめかしていた。というくだりや、クリントン元大統領(この人は、奥方が大統領に就任されたりしたら、省略形としては”クリントン夫”みたいな言葉が使用されるようになるんでしょうか)が、ブレアのアドバイザー的役割を果たしていた。という話なんかはけっこう面白そうなので、本を読んでみたい気分になってます。って思うこと自体がもう、すでにスピン・ドクターの思惑にはまってしまってるんですけどね。

*BBCも、「The Alastair Campbell Diaries」というタイトルの番組を水曜日の晩から放送するようですが、これは何もAlison Jacksonがキャンベルの日記を再現するというわけではなく(そうだったらいいんですけどね)、まじめなドキュメンタリーのようです。

  
Posted by mikako0607jp at 07:30

2007年07月10日

盛り下がったLIVE ASS。そしてマドンナと英保守党の接近

*先週はダイアナ・コンサートかと思えば、今週はLive Assかよ。えっ?尻じゃない?じゃあ何なんだよ、EARTH?アル・ゴアとマドンナのコンビい?なんかマドンナは彼に再び大統領選に出馬しろとか言ってたらしいじゃん。バカ丸出しだよなー。こういうバカたちの考え付くことにブリティッシュが乗っていいのかよ、我々シニカルなブリティッシュが。あ、でも、Arctic Monkeysは出演断ったらしいよ。ステージのライトだけで10軒の民家に相当する電気使用量なのに、偽善だろ、こういうのは。とか何とか言って。Radioheadは黙って断ってきたらしいね。新聞に書いてあった。

みたいな会話を交わしながら、先週末はバーベキューのお誘いを受け(今度は思い切りワーキングクラスのお宅)ロンドンに行っておりました。

*さて、その尻ライブことLive Assですが、BBCのテレビ視聴率もさんざんだったようで、マドンナが出演した時間帯でさえ、前週のダイアナ・コンサートの3分の1にも満たなかったとか。BBCはダイアナ・コンサートの悪趣味さ(趣旨、その他の部分で)でも相当叩かれ、今回のLive Assはそれ以下。とボロクソに新聞各紙に書かれているようですが、確かに、「ダイアナの伝説のために」とか「地球のために」とか、目的さえあればもう何でもいいって感じで、ある意味ここでも、コメディより現実のほうがもっとコメディっぽい。がリピートされています。どうして単なる「夏まつり」とか「盆踊り」とかじゃ駄目なんでしょうかね。音楽ってのは本来そういうもんだと思いますが。

*が、わたしが一番気になっているのは、一部新聞にちらっと出ていた、マドンナが保守党党首デヴィッド・キャメロンをディナーに誘った。という話。

デヴィッド・キャメロンについても昨年から何度かここで書いてきましたが、彼は、自分の鞄と着替えを背後からメルセデスで運ばせながら、ピタピタのサイクリングパンツ姿で国会に自転車通勤しておられる環境活動家で、その若さ(1966年生まれ)と若い頃のトニー・ブレアを模倣した巧み(にしてまぬけな)なイメージ戦略で、「来年の秋総選挙が行われた場合には、新首相のゴードン・ブラウンは彼に負けるのではないか」と予測する人もけっこういたりするほど、ミドルクラスの若者層を中心に人気を伸ばしている御仁。

ブレアちん退任で10年待たされたブラウンくんがようやく首相に落ち着けば、ブレア&ベッカムのセレブ系ブリテンの時代は終焉を迎え、ブラウン&テリーの質実剛健系ブリテンの時代が来る。と昨年W杯後に書いた覚えがありますが、もしも来年の総選挙でデヴィキャメ率いる保守党が政権を取ったりしたら、その構図もまた大きく変わりますなあ。

ひょっとするとマドンナが選挙運動を手伝って、「Save our ass!!」とか言って環境政策重視の保守党への投票を呼びかける。なんつうのも、あり得ない話じゃないですね。わたしは自分の尻ぐらい自分で守りたいと思いますが。

ポップ・スターとかロック・スターとかいう人たちは、本質が独裁者というところはありますから(少なくとも、自分の一挙一動に盛り上がり、感心し、尊敬してくれるファンにとっては紛れもない独裁者です)、マドンナみたいに独裁者としてのスケールが大きく、独裁者歴も長い人は、最終的には政界も操りたくなるんでしょうね。「マドンナが評価してるから、デヴィキャメの保守党に投票しちゃお」みたいな人が英国に多く存在しないことを祈るばかりです。

  
Posted by mikako0607jp at 10:01

2007年07月06日

好き。

二ール・ジョーダンは好き。どうしてこんな映画をこれまで観なかったのかと悔しくなるような映画なんて最早そうないものですが、これはストレートに標記のような気持ちになりました。「Breakfast On Pluto(プルートで朝食を)」。

最近は乳児が比較的ひとりで機嫌よく遊ぶ早朝にDVD鑑賞をすることが多く、実は映画館に行っていた頃以上にたくさん映画を観ているのですが、どうでもいいようなものばかりなため、あえて何かを書こうという気になりません。しかし、これは。早朝から「好き。」などとテレビの画面に向かって愛の告白をしておりました。

http://www.breakfastonpluto.co.uk/

(日本の公式サイトより、こちらのUK公式サイトのほうが映画の中身に沿ってます。日本のは完全にオナベギャル狙いなのが見え見えで、ちょっと別物になってしまってる感じ)

「クライング・ゲーム」、「アメリ」、オスカー・ワイルド、「ベルベット・ゴールドマイン」。

上記のうち、ひとつでも好きなものがある人には気に入っていただけるでしょう。あ、それから、ブライアン・フェリーも。やばいおっさん役で出ておられ、ソファから転げ落ちそうになって笑いました。

日本でも公開されたみたいですが、あの淡いピンク色の公式サイトでは男性はあまり観に行く気にはならなかったのでは。と思いますが、男性の方々に、日本側の配給広告戦略にだまされず、ぜひ観ていただきたい。

二ール・ジョーダンだよなあ。と久々に思ったことでした。

  
Posted by mikako0607jp at 09:34

2007年07月04日

コメディよりドラマより、現実のほうがすごい。の巻。時事問題編

*連続テロ報道たけなわのTVニュース番組で、付け足しのようにさらっと報道されていたのが、二歳の姪をレイプして殺した青年の話。日本ならこれだけでもワイドショーで大騒ぎされたり、討論ネタになったりするんだろうが、英国ではこのテのニュースがあまりセンセーショナルにとりあげられない(少し前もこっそり、4ヶ月の乳児に性的虐待を行いポルノ映像を作成してつかまったカップルの話があったよな。こうやって書いたものを見るとブラック・コメディのネタなのかって感じだけど、実話なんだから現実ってのはすごい)。この国の人々がこの種のニュースに騒がない理由は、こういう事件が多すぎる、つまり、社会が荒んでいるから。なのか、それとも社会が大人だから。なのか。

荒んでいるから大人になる。というのがきっと正解に近いのだろう。

*ブラウン政権発足後一週間が過ぎたが、先週の英国テレビ界では”トニー・ブレアまつり”が開催されており、あっちもこっちも、馬鹿の一つ覚えのようにブレアちんサヨナラ特集を放映していた。ブレイディ連合家庭育児担当大臣に就任してからというもの、以前にも増してテレビっ子、ならぬテレビばばあに成り果てたわたしとしては、育児担当大臣のたしなみとしてほぼ全番組をチェックさせてもらったが、出色の出来だったのは、

1 Alison Jackson企画・製作(ご存知、セレブのそっくりさんを用いたパロディ映像&画像をクリエイトしておられるアーティスト。この方に関しては何度も書いてきましたので、説明は割愛)の「Blaired Vision」(チャンネル4)。

http://www.channel4.com/culture/microsites/T/tony_blair/blaired.html

今回も全面的にコメディなのかと思いきや、(本物の)関係者のインタビューなども交え、意外にもまじめな仕上がり。「トニー・ブレアに対する英国庶民のPerceptionの変遷」を知りたい人は、これ一本見ておけばOK。BBCの報道番組なんかよりよほど鋭利。かつ理解しやすくまとまっている。

”鋭く、しかも、わかりやすい”というのはわたしの一番好きな表現形態なので、今後もこの風刺アーティストには注目してゆきたい。

2 「The Trial of Tony Blair」(チャンネル4。わたしが見たのはMore4)

http://www.channel4.com/more4/drama/t/trial_tony/index.html

これは再放送。以前、Big Brotherのセレブ版で人種差別問題が騒ぎになった週、チャンネル4がこっそり放送していたブレアおちょくりドラマ。つまり、ブレアが退任の意志を発表する前に、退任後のブレアの未来を予測するコメディ・ドラマを放映していたわけで、例によってブレアちん以下、ゴードン・ブラウン(当然ながらドラマでも首相になっている)、ヒラリー・クリントン(米国大統領として二期目に入っている)等、全員実名で出てくるところが相変わらず”言論の自由”命(メイじゃなくてイノチと読んでください。静香命。とかのあれね)の国イングランドのドラマであり、ちなみに国連事務総長にシュワちゃんが就任していたりする。

首相退任後のブレアちんが、イラク戦争を始めた張本人として戦犯あつかいされ、英国から常設国際司法裁判所のあるオランダのハーグへ身柄を引き渡しされるというストーリーなのだが、ブレアちんが、凄腕弁護士でもある嫁のシェリーから「あなたには優秀な弁護団が必要よ。ピノチェトを弁護した人たちを雇いなさい」とか言われてたりして、なかなか笑える。

この話も相当シュールなブラック・コメディだが、退任後のブレアちんが中東パレスチナ調停問題の特使に任命されるという事実のほうがよほどブラック・ジョークとしては秀逸である。ということにお気づきの方が何人おられるか。いやあほんとに、一番すごいのは現実である。

  
Posted by mikako0607jp at 07:25

2007年07月02日

ダイアナ・コンサートに、ROYALじゃなくてLOYALを想う。

というわけで、今日は何年ぶりかで”ポッシュ&コンサバ系”の連合いの友人夫婦宅に招かれ、昼下がりのサンデイ・ローストからおディナーまでおよばれ(昼もあんなに食っといて、夜もしっかり食うんだよなあ、金持ちってのは。こっちは気分悪くなっちゃって)したわけだが、きっと観てるんだろうなあ、と予想はしていたけれども、案の定、壁にかける絵画のような薄い大型TV(わたしなんか貧乏人だから何ていうTVなのかその呼称すら知らないが)で6時間も7時間も延々と映しておられました。”コンサート・フォー・ダイアナ”。

*開会の歌だかなんだか知らないけどピアノを弾きながら歌うエルトン・ジョンのバックに大写しになったダイアナの写真。そしていったいあれは何だったのかP DIDDYのダイアナに捧げるMissing You。悪趣味を通り越して妙にキッチュだったりして、それはそれで非常に宮廷的といえないこともないんだけれども、しかし、どうしてあのヤリマにこんなにLOYALな人が多いのか、わたしにとって”プリンセス・ダイアナ”というのはどうしても解せない謎のひとつだったんだけれども、少し今日わかったような気がした。

「なんでこの人が”人々のプリンセス”だの”こころのプリンセス”だの、伝説化されて慕われるんだろう。90年代のパリス・ヒルトンだったと思うけど。お騒がせセレブの走りじゃん、この人」

とわたしが言うと、集まったポッシュ&コンサバ系女性の中では、一番醒めた感じの先鋭的インテリジェンスを志向しているらしい女性が言った。

「”タブロイドのプリンセス”だったから”人々のプリンセス”なんじゃないの」

なるほど。と思わずひざを打ちたくなった。

ポッシュ&コンサバ系の集まりに顔を出していても、結局女性たちが話しているのは、やれどこそこの奥方がどこのダンナと寝たらしい。えええーっ。人は見かけによらないわねー、みたいなゴシップだったりして、言葉づかいや言い回しが違うだけで、話してる内容はたいして労働階級と違わなかったりするものだが、いわゆる”世間の目としての道徳”のフレームワークの崩壊が進んでいる英国には、階級を問わず「いろいろある」女性が多い。特に、パートナーとしての立場をつらぬく内縁関係(日本語にすると急にいやらしい響きになるね。この関係は)だとくっついたり離れたりが比較的容易だし、とは言っても法的に結婚していても離婚の多い国ではあるが、とにかく、みんないろいろあって今があるというか、脛に疵を持つ身だったりするのである。

そんな女たちが、良妻賢母ですばらしい女になんか共感するわけがない。

ダイアナの脛に疵だらけのタブロイド人生のほうが、リアルなのである。

30代から50代の、いわゆるダイアナ支持者のコア層と言われる女性たちが、ニュー・ウェンブリーで泣き叫びながら興奮している姿を見つつ、そんなことを考えていた。アンチ王室だとかなんとか言うのは後からジャーナリストがダイアナ現象を解説するためにクリエイトした説に過ぎず、ダイアナ伝説の本質は「女の疵」または「女の恥」である。それに男たちがややこしい理屈を唱えながらのっかってきただけで。

*とはいいつつ、ダイアナという人はチャリティー活動で才能を発揮した人でもあり、そのことは否み難い事実だが、ここら辺もまた英国人女性が共感できる部分であろうと思う。

私生活は乱れまくっているくせに、妙にチャリティー活動に熱心かつ献身的。みたいな英国の女性をけっこう知っているからだ。遠藤周作の小説じゃないけれども、こういうタイプの女性はクリスチャン国にはけっこういる。これはクライスト教というのが、善悪、美醜を明確に定義する宗教だからであり、「人間はみな罪びとである」というノー・フューチャーな性悪説に基づいているという事情があるだろう。「女はつらいよ」なのである。勝手にイブなんかにしやがって。

*話はころっと変わるがTake That。おっさんバンドの再結成よりも、当然ながらさらにつらいのがおっさんアイドル・グループの再結成だ。ロビー・ウィリアムズ全盛の頃にギャリー(ゲイリーじゃないっつうに)・バーロウのインタビューを読んだことがあり、ぶくぶくにたるみきった肉体で写真を撮られ、「リリースされるあてはないし、どこのレコード会社も興味をもってくれないけれど、毎日曲を書いている」と正直に言っていたのがあまりにしょぼくて妙に印象に残っていた。その後、別メンバーもセレブリティのリアリティー・ショーに出演したりして、間違っても再結成なんてことはないだろうと思っていたのに。現実ってのは、すごいものだと思う。

おっさんアイドル・グループ再結成。むかしと変わらず大ヒット。なんて、ぜったいありそうもないもんな。お笑いの方向に行くのが関の山で。

芸人としては当然ながら脱退してソロになったロビーのほうが何枚も上手だが、曲づくりという点においては、ロビーよりギャリーのほうが明らかに上。それを再び認め、素直に支持する大衆がすばらしい。こういうLOYALさは、ある国なんだよなあ。と思いながら観ていたことであった。ダイアナ・コンサートを。

  
Posted by mikako0607jp at 09:38