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【 不定期 連載小説 】
全てのMMOを楽しむ戦士たちに、色を贈ります。
みそ×ジェミー 合同企画 FF14SS 

~僕は、彼女のことを何も知らない~
『明日の朝日は、そこにありますか』

[ 第6話 ]  制限時間



<登場人物>
・リュウ: ミコッテ♂を使うプレイヤー。リアル世界に嫌気が差している。
・タマキ(茉莉環):リュウが出会った不思議なプレイヤーキャラ。

・ゼン:リュウが所属しているLSのマスター。ハイランダーの男性。
・ぐっちゃん:アウラ女性。人懐っこい元気な性格。
・サイフォス:冷静なLSの仲間。リアルでは教師。ハイランダー。
・アダマス:ミコッテの女性。猫言葉を使う。
・ミラ:ミコッテの女性。サバサバした性格の姉御肌。
・ユフィ:思慮深いララフェルの女性。冷静な発言をする。
・ユキノ:ルガディンの女性。友情に厚い。

・エドワード:GMの男性。ある組織と通じているようだが…。



「どういうことなんだ……? タマキちゃんが、もう少しで死んじまうって」

その日の夜、FCハウス、その個室に集まったメンバーを見回して、ゼンは言った。
集まっていたのは、リュウ、ゼン、ぐっちゃん、サイフォス、アダマスの五人だった。
暖炉の脇の椅子に、タマキが足を抱えるようにして座っている。
彼女は周りを見てから、静かな声で続けた。

「その通りの意味なんです。私は……いえ、私達は、日本政府が『被験体』として選んだ、テストプレイヤーなんです。『テスター』って呼ばれてます」
「テスター……? ゲームを使って、何か実験してるっていうのか?」

リュウが口を挟むと、タマキは少し考えてから視線をそらした。

「何なんだ? さっぱりわけがわからないぞ」

語気を荒くするリュウ。
アダマスが口ごもってから、押し殺した声で言った。

「冗談だとしたら笑えないニャー。ようは、スクエニが政府と提携して何か、倫理に反するようなことしてるわけでしょ?」
「そうなるね……」

ぐっちゃんが頷いてため息をつく。
タマキはまた少し沈黙してから続けた。

「具体的に、日本政府の誰が、どういう経緯で私を選んだのかとか、そういう難しい話はわからないです。契約を結んだのは、私のお父さんとお母さんですから」
「子供を……その、実験に参加させたのか?」

言いづらそうにゼンが言うと、タマキはなんでもないことのように頷いた。

「そうみたいです」
「そうみたいって……」
「いずれにせよ、私は被験体に選ばれました。そして、今回のプロジェクト。五人のテスターの一人として、このゲームに降ろされたんです」
「それは、どんな実験なんだ?」

サイフォスが聞くと、タマキはそれに答えた。

「人の脳をインターネット上に記録して、人工の……人に近いAIを作る計画です。そのために、私達の脳波はすべて測定、記録されてます」
「なんだって……」

リュウが呟く。
息を飲んだ周りを見回して、タマキは続けた。

「そのためには、データを取るのが必要になります。私たちはMMOの中で生活することで、そのデータを提供することが仕事なんです」
「……随分と非人道的な実験だな。そんなことが許されるわけがない」

サイフォスが吐き捨てるように言う。
タマキは少し悲しそうな顔をしたが、首を振った。

「いえ……非人道的じゃないですよ」
「どういうことだ?」
「私は、最初にお話した通り、心臓に疾病があります。移植のドナーが見つかれば助かる確率もありますが、このままではあと半年くらいで死にます。ゲームをしていられるのは、二ヶ月が期限です」

何でもないことを言うような調子だった。
淡々とした無表情で、タマキは言葉を発した。

「多分……他のテスターも同じような人達です。ですから、私達は自分でデザインしたキャラをあてがっていただいています。そして、ゲームのデータをある程度書き換えてしまう、権限パスを持っています」

タマキはそう言って、花瓶から花を摘みだした。
そして

「構成利率を変更。すべての設定をニュートラルにした後、モードパス9987371で再構築」

そう言って目を閉じる。
手と花が白い光りに包まれ、そして一瞬後、彼女の肩の上には、ミニオンのレッサーパンダが乗っていた。

「ええ? どうなってんのそれ」

ぐっちゃんが声を上げる。

「花の構成データに干渉して、急造のミニオンデータを注入したんです。この世界はデータで構築されていますから、干渉パスさえ持っていれば、大概のことは可能です」

レッサーパンダが光の飛沫になって消える。
サイフォスが考え込みながら言った。

「成る程。リュウ達が戦ったというアグリッパは、君が今やったように、他のテスターが再構築して、データを書き換えたものだったというわけか」
「多分……そうだと思います」
「しかし分からん。データを取るだけのテスターなら、どうしてそんなGMまがいの権限を与えられているんだ?」

問いかけられ、タマキは

「それは……」

と口ごもった。
少しの沈黙の後、彼女は息を吐いてから続けた。

「私にも、そこまでは……ただ、一度政府の人が来た時に言っていました。『この実験は、未来の可能性をつくるためのものだ』って。私にもまだ、意味はわからないんですが……」
「ふぅむ……」

ゼンがため息を付いてから周りを見回した。

「タマキちゃんの事情はわかったが、どうしたものかな。軽い気持ちで接してたけど、結構ヘヴィだな」
「ごめんなさい……これはゲームだって分かってるのに。でも、皆さんには迷惑をかけてしまいました。以降私には関わらない方がいいと思います……」

タマキの脳裏に、嫌悪を発したララの顔がフラッシュバックした。
少し沈黙が場を包む。
それを破ったのはアダマスだった。

「ゲームなんだから、そんな難しく考えることはないと思うニャー」
「え……?」

顔を上げたタマキに笑いかけ、彼女は続けた。

「正直、タマキちゃんが今置かれてる状況とか、そういうの難しくてよく分からんニャ。でも、確かなことは、ここはゲームってことだニャ。だから、そんな辛気臭い顔しないで、楽しんだほうがいいと思うなあ」
「楽しむ……?」
「折角周りが持ってない力を持ってるんだから。それってすごいことだと思うニャ。役得だニャ」

それを聞いて、リュウがクスッと笑った。
そして太ももを叩いて立ち上がる。

「その通りだ! 二ヶ月しか時間がないっていうんなら、存分にそれを楽しんだほうが建設的だな」
「まぁ、アダマスの言うとおりに、ここはゲームだしな。リアルは優先ではあるけど、それを忘れて楽しむ場だよ。タマキちゃんは大きな勘違いをしてる」

ゼンがタマキを見て頷く。

「勘違い……?」
「ああ。そもそもからして、MMOはリアルの延長線じゃない。全くの別世界だよ。君は、この世界に一から産み直されたんだ」
「そうそう。だから泣くことはないと思うな」

ぐっちゃんが頷く。
タマキは目に手を当てて、俯いた。
サイフォスが息をついて口を開く。

「まぁ……当面はどうするかだな。さっきタマキちゃんから聞いた、赤髪のテスター。その彼は羽を持っていないってことだが、タマキちゃんとはデザインが違うのかな」
「どうでしょう……でも、私……この世界に構築される時にちょっとバグがあったらしくて、羽を引っ込めることができないんです」

申し訳なさそうにタマキが言う。

「それ出し入れできたんだ。便利……」

ぐっちゃんがそう言ったのを確認して、サイフォスが立ち上がった。

「悪い、ちょっと離席する」

そう言って部屋の隅に言って、離席を示す赤いアイコンを頭上に表示させる。

『リュウ、俺だ』

そこでサイフォスから通信が入り、リュウは慌てて、周りに気づかれないように個別通信を返した。

『どうした?』
『ここに連れてくるまで、断片的に聞いただけなんだが。タマキちゃんをスラムに連れて行ったのは、ララみたいだ』

それを聞いて、リュウの心に冷水をぶちまけられたかのような感覚が広がった。

『あいつ……!』

思わず毒づいたリュウに、サイフォスが静かに言った。

『この件は、俺とタマキちゃん、そしてお前しか知らない。ゼンにも言ってない』
『何でだ? 今度という今度は許せないな……あいつ、前の一件から全然反省してないじゃないか!』
『かもしれないが、何か事情があるのかもしれない。俺達のコミュニティの仲間だしな。悪戯に責め立てて、取り返しの付かないことになるのも困る』
『それは……そうだけど……』
『どうする? 俺から聞いてみるか? それともお前があの子に話をするか?』

問いかけられて、リュウは心の中でため息を付いた。
そして少し考えてから言う。

『いや……お前が言うとあいつは多分逆上する。俺からちょっと話をするよ』
『分かった。ゼンにはそれとなく伝えておくから』
『悪いな。頼む』

そう返して通信を切る。
頭を抱えたい衝動に襲われたが、ぐっちゃん達と楽しそうに話をしているタマキを見て、無理やり笑顔を作る。

なんてこった。

それが一番の感情だった。
よりにも寄って、あいつがタマキを連れて行ったのか。
タマキは、おそらく気を使ってサイフォスにだけ言ったのだと思われる。
しかし……。
リュウは、心の奥に湧き上がったドロドロした感情を無理矢理に飲み込んだ。
タマキが、こんな事情を持っているなんて知らなかった。
あと二ヶ月しか時間がない?
だとしたら、自分達がしてやれることは一体何だろう。
そんな大事な時に、ララはタマキを見殺しにしようとしたのだ。
許せなかった。



眠ってしまったのか、タマキがログアウトしてから数時間が経過していた。
先程からタマキの今後について話し合っていたが、うまく結論が出なかった。

「どうしたものかな……」

ゼンが顎に手を当ててサイフォスとリュウを見る。
ぐっちゃんとアダマスは食事時なので離籍していた。
サイフォスが息をついて肩をすくめた。

「どうするもこうするも、俺達にはどうしようもないんじゃないか?」
「それはちょっと冷たいんじゃないか?」

リュウが口を挟むと、サイフォスは首を振った。

「いや、大前提として考えろ。俺達はタマキちゃんの本名も、そのプロジェクトが行われている場所も、何も知らない」
「…………」

反論しようとしてリュウが口をつぐむ。
ゼンがため息をついてそれに答えた。

「そうだな。そして『本当のことかどうか』それさえも、俺達には分からないんだ」
「ゼンまで……!」

声を上げたリュウを制止して、ゼンはサングラスを外して目尻を抑えた。

「だが考えてみろ。例えばタマキちゃんの言っていたことが本当だったとして。俺達に、タマキちゃんの命を救ってやることができるか?」
「それは……」
「結論を言おう。それはできない。無理だ。全員住んでいるところも、仕事もバラバラなんだ。俺達には、タマキちゃんの現状をどうすることもできない。聞いてやることしかできないんだ」

サイフォスが腕組みをして、背もたれに体を預ける。
反論しようとして、リュウは下を向いて手を握った。

「それでも……それでもさ、何か……」

そこでFCハウスの扉が開き、ミラとユフィが顔を覗かせた。

「ああ、やっぱここにいたか」
「お話はサイフォスさんからTELLでお聞きしましたわ。何やら大変なことになっておられるようで」

ユフィがトコトコと近づいてきて、リュウの脇に座る。
ミラは壁に寄りかかって腕を組んだ。

「……で、どうするんだい? あたしとしてはGMに相談すべきだと思うけどね」
「何をだ?」

ゼンが顔をあげると、ミラは肩をすくめて答えた。

「何をって……タマキちゃんはともかくとして、タマキちゃんを狙ってるっていう男は、明らかに違反してるんだろ? じゃあ、それこそGMの出番じゃん? 話によるとさID登録まで消しちまうっていうじゃない。そんなのいちプレイヤーのあたしらじゃ太刀打ちもできないよ」
「確かに……そりゃそうだ」

リュウが頷くと、サイフォスも同調の頷きを返した。

「俺達、ちょっと混乱してたみたいだ。まずはGMに相談してみよう。コトがコトだけに、こっちに来てくれるかもしれない」
「それがね……もう来てるんだよ」

引きつった声とともに、ユキノが入ってくる。
その後ろには、黒い鎧に身を包んだ男性が立っていた。
彼はFCハウスを見回すと、ゼンに目を留めた。

「君が、このコミュニティのまとめ役か?」

静かな声で呼びかけられ、ゼンはサングラスをかけなおして答えた。

「別に、俺がリーダーだとかそんなことを言うつもりはないけど、一応連絡塔みたいなことはしてる」
「そうか。なかなか居心地が良さそうなハウスだね」
「あんたは?」

サイフォスが口を挟むと、黒い鎧の男は頷いて、兜を外した。
茶色い刈り込みの髪をしたハイランダーだった。

「私の名前はエドワード。GMだ」
「…………!」

改めてそれを聞いて、部屋の中に緊迫感が走る。
しかしエドワードは周りに、落ち着くように、と手で示してから椅子に腰を下ろした。

「外にこの人が立ってたんだよ。タマキちゃんに会いたいって言うから連れてきたんだけど……まずかった?」

ユキノが申し訳なさそうに言うと、パタパタと手を振ってゼンが答えた。

「いや……こっちも、GMに言いたいことがあったんだ」
「ほう……」

エドワードは周りを見回し、あたりにタマキの姿がないことを確認した。

「あの子は……ログアウトしたのか?」
「GMってそこまではわからないのか?」

逆にサイフォスが問い返すと、エドワードは頷いて続けた。

「ああ。個人プレイヤーの居場所までは分からない。会話ログだって、本部じゃないと確認はできないんだ。一般的に考えられているスーパーマンみたいなものじゃないよ。調査だって、自分の足で歩いて行う」
「へえ、案外不便なんですのね」

ユフィが頬に手を当てて口を開く。

「それで、わざわざGMさんがこちらに出向くって、結構尋常じゃないんですの?」

エドワードは息をついて周りを見回した。

「残念ながら……ね。とりあえず、ここに来た目的の一つを伝えよう」
「目的?」

聞き返したリュウに頷いて、彼は言った。

「私は今日から、君達のコミュニティの用心棒になる。LSの仲間に加えて欲しい」


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不定期更新です。
次回をお楽しみに!!

文:ジェミー(天寧霧佳)  挿絵:みそ(ここでセーブするか?



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