2007年03月11日

小説『自分探しの旅』大学編その

「そうだな、まだハッキリとは決めてないけど。志望校に現役合格したおかげで職業の選択肢はかなり広がったんじゃないかな。たぶん公務員か電力会社かだな。今どき安定している就職先が一番さ」

「ふぅ〜ん、そうなんだ。特にやりたかった事とかなかったんですか。先輩は文筆の腕前は特別だったのに。学生小説コンクールでも入賞したし、文学賞に応募したときなんか二次選考まで残ったでしょ。あのときは感激しましたよ」
 がらにもなく、つい熱く語ってしまった。

「そうだなぁ……。そう云う選択肢もない訳じゃなかったけど。現実的には難しいんだよ。その夢は今でも捨てきった訳じゃないけどさ。世の中ってのは俺くらい書けるヤツなんて掃いて捨てるほど居るんだよ。その中で運のいいヤツ、運を引き寄せられるコネを持ってるヤツ、そんなヤツらが陽のあたる場所へと歩いてゆけるんだ。でもその表舞台ではそんなヤツ達がごまんとひしめいているのさ。当然自分の書きたいものなんて書かせてもらえるはずもないし。生き残るだけでも至難の業さ。結局のところ俺は負け組へと逃げてるのかもしれないな」
 あたしは驚いた、まさか先輩の口からそんな言葉を聞くとは思ってもいなかった。

「奈緒こそ頑張れよ、俺は結構認めてたんだぜ、お前のことさ」

「せんぱぁーぃ。さすが新大学生一歩手前。お世辞がお上手になりましたね」
 冗談だと分かっていても先輩の意外な一言が嬉しい。

「お世辞じゃないさ、俺は挫けてしまった人間だけど。だからこそ奈緒には夢を叶えて欲しいんだ。しかし普通の人間は、結局のところ、いつ現実に目覚めるかだな。そして安定した未来に手を伸ばす」

 こんな話題についてマジメに言葉を交わしたのは、あたしが覚えている限り生まれて初めてかもしれない。

「前原先輩に訊きたいことがあるんですけど……、大学へ行く本当の理由てなんですか」
 先輩は湯呑をテーブルに置くと腕を組んで考え込んだ。

「理由か……。そう訊かれて気が付いたけど。その質問の答えを本気で考えたことはなかったな。俺の場合は、最初から目の前に存在する壁だったし。当然通過して当り前のことだと認識していたからな」

「それって、中学の頃からですか?」




なんか疑問の焦点が定まらない……。
小説形式で自問自答して答えを探すのって。難しいなぁ。


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