2004年12月06日

列車に乗った男

列車に乗った男ルコント監督の『列車に乗った男』です。
人と人との結びつきって,いったい何なんだろう。

田舎町に降り立ったミラン(ジョニー・アリディ)。仲間と銀行強盗を計画しながら,決行の土曜日を待たなければならない。広大な屋敷に一人で住んでいるマネスキエ(ジャン・ロシュフォール)。かつてフランス語の詩を教えていたが,土曜日の手術を控えている。何の接点もない2人。しかし,偶然に出会い,次第に,二人は心を開いていく。お互いをうらやむような,敬意を払うような,不思議な結びつき。

見終わってよく考えてみたら,この二人の物語は,出会ってから別れるまで,たった3日間であった。濃密な時が流れている。多くの語らいが二人の結びつきを実現したわけではない。むしろ,語られないことのほうが多い。寡黙な時のうつろい。しかし,小さな出来事の積み重ねが,二人の心に不思議な共感を生んでいる。全く不自然ではない。お互いのぎこちない,おずおずとした「いたわり」が僕の心にもしみとおってくる。二人の「友愛」のあたたかさとでもいうのだろうか。

『ロスト・イン・トランスレーション』で描かれていた世界と通底するものを感じる。今,了解した。ボブとシャーロットの間に流れていた感情も,恋愛ではなく,「友愛」ではなかったのか。孤独な魂のふれあい,同志愛にも通ずるような「友愛」ではなかったのか。

アラゴンの詩が,効果的,というか,とっっっても良い。

 新橋で わたしは会った
 杖もなく犬も連れず 札もさげず
 憐れみを乞う 哀れな男に
 その前を 人波は流れる

大島博光訳「新橋で わたしは会った」(『アラゴン選集第3巻』飯塚書店)
(新橋は「しんばし」ではなく,「ボン・ヌーフ」と読みます)

この「人波は流れる」で,ちょっと鳥肌がたったのです。

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 フランス語の詩を教えているマネスキエ。  アンティークな古びた館でひっそりと一人暮らしをして、たまに来る人とおしゃべりしたくてしょうがない。この町に列車から降り立った男ミラン。謎めいたアウトローの雰囲気を漂わせ、拳銃を持っている。老人は狭心症の持病のため
列車に乗った男【ネタバレ映画館】at 2004年12月06日 23:41
『列車に乗った男』を観ました。 「ルコント+ジャン・ロシュフォール」というだけでかなり期待させてくれる一本。 今回はそこにジョニー・アリディというまた味のある俳優さんが加わりました。過去には「フランスのエルヴィス」としてアイドル的な人気を博したそうです...
列車に乗った男【Zazie@Tokyo】at 2004年12月09日 10:09
はじめまして。「列車に乗った男」は、今年の僕のベスト映画。トラバさせてやってくださいね。
列車に乗った男【■ amblog】at 2004年12月27日 15:18
「列車に乗った男」★★★★ ジャン・ロシュフォール、ジョニー・アリディ主演 パトリス・ルコント監督 もし、あの時やり直せたら。 今の自分とは違う人生があったはず。 そんな甘い幻想を誰でも考えたことがあるはず。 この映画は、もう少し現実的で な...
なりたい自分になる・・・それが一番難しいこと【soramove】at 2005年04月17日 00:01
「列車に乗った男」★★★★(盛岡フォーラム3) 2002年フ
列車に乗った男【いつか深夜特急に乗って】at 2005年06月09日 18:44
今までその独自の感性で、『橋の上の娘』『歓楽通り』等の男女の恋愛映画を数多く作...
列車に乗った男【White Screen Life】at 2005年09月23日 22:34
列車に乗った男 渋いっすねえ。いやー、いぶし銀です。 初老の男と中年男を主人公にここまで見れる映画に仕上がっているのは、驚異的です。 華やかさなんて全くないんですけど、最後まで目が離せない。 偶然出会った魂のうたかたのふれあいってやつですよ。 まあ、最後....
列車に乗った男【カフェビショップ】at 2005年10月29日 15:13
この記事へのコメント
TBありがとうございます。
詩の内容まではサッパリ覚えてないのですが、
かなり映画の内容にかかわっていたのですね。。。
この映画はCGが全く無いほうがよかったのじゃないでしょうか。
それでも秀作!
Posted by kossy at 2004年12月06日 23:44
kossyさん,コメントありがとうございます。
私も,もちろん,詩の内容を覚えていたわけではありません。
公式サイトに全文があったので,そこから抜粋したのです。
でも,しばらくぶりに,またアラゴンの詩を読みたくなりました。
Posted by mikio at 2004年12月07日 10:50