May 22, 2005

サバ州コタキナバルの印象

マレーシアのボルネオ島のサバ州にあるコタキナバルを訪れた。ここは、クアラルンプールから飛行機で南シナ海を2時間半飛んだところにある。

 

KK from sky

KK Airport

 

 

 

 

 

 

 

 

 

近くに東南アジアの最高峰であるキナバル山(4,101m)がある。ここの別名は、The Land Below the Wind つまり「風下の土地」と呼ばれる。サバ州は、日本人にとっては、山崎朋子の『サンダカン八番娼館』でなじみのサンダカンという町があるところで、日本とは関係が深いところだ。また、あまり知られていないが、第二次世界大戦中にオーストラリア・ニュージーランド人捕虜たちが日本軍によって「死の行進」をさせられたところでもある(今でも現地では、毎年オーストラリア政府がその記念式典を催している。日本人は誰も参加してないようだが)。さらに、1980年代から90年代かけて、日本の商社が豊かな森林から丸太を大量に切り出し、日本に送り出したこともある。

 

初めて訪れたサバ州の首都コタキナバル(KK)は、マレーシアの他のどの町とも違っていた。まず人間が違う。この州の主要民族は、カダザンという先住民族だ。もともと州の人口の半数くらいを占めていたが、近年その割合が約30%台と少なくなってきている。先住民族としては他に、バジャウ、ムルを始め30ぐらいのグループが住んでいる。それから、中国系がカダザンと同じく30%台。それにマレー系が20%台だ。インド系はマレー半島に比べれば少ない。

 

公式にはこのような民族構成になっているが、近年、近隣諸国からの移民がどんどん増えている。その大半は地理的に近い南フィリピンからだが、インドネシアからも来ている(その多くは、正規の滞在資格をもたない、不法滞在者だ)。それで、KKの町はマレーシアのどの地域よりも「民族の坩堝(るつぼ)」の様相を示している。マレーシアでは普通どこでも公用語であるマレー語が通じるが、このような多様な人々が集まるKKではそうでもないような感じだ。事実上の共通語がなくても人間社会は成り立つものだろうか。人々の間のコミュニケーションはどのようにして行われているのだろうか。

 KK DowntownKK Downtown2

 

 

 

 

 

 

 

 

 

KKがマレーシアの他の都市と違うもう一つの理由は、この町がいわば「カウボーイ・タウン」の雰囲気をもっているからだ。荒野のなかに即席に建てられた町のような趣だ。ダウンタウンのサイズが小さく、歴史を感じさせる建物があまりない(第二次大戦中、この町を占領していた日本軍に対して、連合国軍による大規模な空襲が行われたからだという)。高層ビル群のような視界をさえぎるものがあまりなく、ここで見る空は大きく広がっている。KKのワイルドな感じをさらに増幅させているのが、波止場に広がるフィリンピン人屋外マーケットだ。食べ物の屋台を始め、海産物、野菜、果物を売る露天が広場を埋め尽くしている。あちこちから漂ってくる焼き魚の煙とにおいが、どこか郷愁をさそう。

 

KK Filipino Market

KK wharf 

 

 

 

 

 

 

 

 

フィリピンとインドネシアからの移民に話を戻すが、フィリピンからの人々は、不法移民であっても不思議なことに、ここの選挙で投票できる。彼ら・彼女らの大半はイスラム教徒で、同じポリネシア系であるマレー人と見た目ではさほど違いがない。それで、少なくとも私がマレーシアに住んでいた5年ほど前の選挙のときは、マレー人として登録され、選挙で投票できた。なぜそのようなことができたかというと、大半がキリスト教徒で中央政府に反抗的な態度を取りがちなカダザンの政治勢力を弱めるために、マレーシア政府がフィリピンからの不法移民の流れを真剣に取り締まらなかった、あるいはむしろ積極的にそのような動きを後押ししたのだという説がある。その真偽はどうであれ、フィリピンからの人々の数はとても多く、明らかに不法滞在であることがわかっていても、政府当局は簡単には手を出せない。

 

 

大量のインドネシア人の存在については、油やしプランテーションがマレーシア半島からボルネオ島に移転しつつあるという背景がある。そこでの働き手になるためにボルネオ島のインドネシアとの国境を越えて人々が入ってくる。彼らの多くはマレーシアでの就労許可をもっていない不法労働者だという。最近、領土問題でマレーシアとインドネシアの関係が悪くなって、今年初めマレーシア政府はインドネシア人不法労働者の大半を故国に送り返した。しかし、人手不足が深刻になり、いったん送り返された人々の多くが、観光や友人訪問の名目でプランテーションに戻ってきている。

 

サバ州についてさらに特徴的なのは、ここの領有権を巡ってマレーシアとフィリピンが争っていることだ。マレーシアと近隣諸国の国境線が確定していない部分はかなりあるが、一つの州の帰属を巡って争われているところは、マレーシアの11の州のうちここサバ州だけである。実際は、マレーシアがもう長い間この州を実効支配しており、最近ではフィリピンもこの問題を言わなくなった。しかし、フィリピンはまだ公式には、この州の領有権を放棄していない。

 

以上のようなことから、マレーシアという空間はここサバ州でいわば穴があいたような感じになっている。これを国民国家のほころびと考えるか、東南アジアの地域社会の新しいあり方の予兆と見るかは今のところ不明だ。

 

 

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mikionz at 11:26│Comments(0)TrackBack(1)マレーシア 

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1. 山崎朋子(作家)  [  るる☆女を語ってみました。 ]   June 28, 2005 22:12
〔愛人の変心怒り切る〕18日午前0時45分ごろ渋谷区代々木本町753で、代々木上原町1101女給大畑朋子(26)は、同****町*の***、会社員吉田茂三(29)に果物ナイフで頭などを切られ、3週間の傷をうけた。吉田は間もなく代々木署に自首した。朋子さんに男ができたの

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mikionz こと大石幹夫です!
日本を出て14年間アジア太平洋のあちこちに住み、2年間の「在日アジア人」を経験したあと、またマレーシアへ。得意な領域は、いざこざやもめごとの解決(コンフリクト・マネジメント)、コーチング、大学生や大学院生の教育コンサルタント、日本語⇒英語の工業翻訳(特に、日本の中小企業=技能集団の技術や製品を世界に紹介したい)。メールはmikionzmyアットマークyahoo.co.jp まで。
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