March 25, 2006
PSE問題と社会の学習能力
今日は、ブログ「新会社設立前から設立後の成功への道のり」のヒロシさんが開発された「スマイル・コーヒー」を試飲するために、福岡市の郊外のご自宅に伺った。
煎りたての酸化していないコーヒー豆で淹れたコーヒーは、紅茶のような澄んだ明るい色をしていて、しかも自然な旨みがあった。これだと何杯も飲むことができる。その上、酸化していないコーヒーは、健康にもとてもいいとのことだ。
このコーヒーを使ってのマレーシアでのオフィス・コーヒー事業は、とても有望だと思う。マレーシアに戻ったら、マレーシア華人のビジネスパートナーと真剣に検討するつもりだ。
それはそうと、ここ数ヶ月続いている電気用品安全法(PSE法)の施行を巡るごたごたは「紛争解決」(コンフリクトマネジメント)の立場から見て、とても興味深い。
紛争解決といっても、いろいろな見方(切り口)があるが、ここで使えそうなのは、「社会学習」(social learning)の考え方だ。これは、社会のなかで異なる立場を代表する人々(actors)がお互いのやりとりを通じて、社会にとってベスト(optimal)な結果を生み出すというものだ。
PSE法の施行を巡る混乱は、中古製品取引に及ぼす影響をあらかじめ考慮せずに、国がこの法律を通したことに一番の原因があると思うが、前のブログの記事「事前調整型社会から事後調整型社会へ」で書いたように、今後、国にとってこのような「想定外」のことがどんどん出てくるようになるだろう(もっとも、今回のことに限って言えば、市民の立場から見れば、国の怠慢でしかないのだろうが...)。
人間社会が「複雑系」の様相を深めるにつれ、そこで行動を取ろうとする場合、考えられる結果をあらかじめ寸分洩らさず考え抜き、それらへの対処方法を用意しておくということは不可能だし、かりに可能であってもコストがかかりすぎるし、何よりも、「想定外」の悪い結果を恐れて新しいことができない萎縮した社会になる可能性がある。
だからこそ前にも書いたように、これからは「事前調整」よりも「事後調整」のほうに力点がおかれるようになると思う。これによって、新機軸(innovations)を始めようという機運が高まり、社会は活気づくだろう。そこで、良い結果はその利益を享受し、悪い結果はそれなりに対処すればいい。
事後調整型では、失敗も成功も含め結果から学ぶということが重要になるし、何よりも、利害関係者の間のやりとりを高めて、そこから社会全体にとってベストな決定をするという方法がとられるだろう。
PSE問題で今回起こったやりとりは、リサイクル業者を中心とする反対デモ、坂本龍一さんなど音楽家たちが始めた反対署名運動、マスコミでの政府の対応に対する批判的な論陣、インターネットにおける反対意見の広まり(経産省消費経済部長のブログが書き込み殺到により「炎上」したことは象徴的だ)、経産省と各種団体との対話集会などだ。
このようなやりとりを通じて、政府を含む当事者・利害関係者は、問題について学習し(認識を深め)、みんなが納得できる解決策に到ることが可能になる。
そうなるためには、政府が、必要ならば自らの立場を変えるつもりがなければならないが、そのためには、これまでのような、「自分たちが何がベストなのか一番良く知っている」という態度を改める必要がある。ずっと以前、県職員をしていたことがあるが、新規採用職員研修での講師が開口一番に「行政は間違わないということを肝に銘じて、職務にあたってもらいたい」と言ったことが、印象に残っている。
その点、最近「行政は間違わない神話」が崩れてきたことはいいことだ。私たち一般市民は、「行政の無謬性」によりかかって国の無能さや不手際を責めるよりも、国と対等のパートナーとして「公共善」を実現するプロセスに主体的に関わるべきだと思う。
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この記事へのコメント
スマイルコーヒーがアジアの国に紹介されることはとても嬉しいです!
スマイル!ですよ!
行政のブログに書き込みで炎上?それは凄い力になりましたね!行政を動かす力も出来きたブログも社会性が高まったからでしょうね!
マレーシアの方々と前の会社で支店同士のやりとりがありましたが、親日的でそして、何より優秀なのに驚きました。
これからも楽しみにブログを拝見させていただきますのでよろしくお願いします。
これまでは、お客様は神様です」なんて言われてても、消費者は高いものを買わされたりして、神様としての実質が伴わなかったと思います。
そう、件のブログ、「炎上」したそうで、一人一人が凄いパワーを発揮する時代になってきましたね。
行政の「お上」意識が少しづつ変わってきているのでしょう。市民が情報を得やすくなって、力をつけてきたことも大きな要因ですね。
そうですね。マレーシア人は融通がきいて、ひょいひょいと仕事をこなす人が多くて、学べることが大きいです。日本とマレーシアとでビジネスを成功させたいです。