January 13, 2006

Calpus Alpis

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 初めて嶽本野ばらの本を読んだ。タイトルは「カルプス・アルピス」という。とても短いので1日で読み終えてしまえるし、1日で読んでしまいたくなる本。

 まず初めに7枚の挿絵に目を奪われる。その絵を描いたのは田仲容子という人らしい。初めて聞く名前。素敵な絵を描くんだな、と思いつつ、本を読み出したが、読み終えてから「そうだったのか。」と彼女の霊気を感じるような、この本にとっての彼女の圧倒的な存在感に驚かされることになる。

 小説は6章+あとがきに分かれていて、それぞれのエピソードは1つずつ挿絵からインスパイアされたもの。今まで「乙女のカリスマ」とか呼ばれて有名な作家として噂だけは知っていたものの、彼がこんなに優れた想像力を持っている人だとは思っていなくてかなりびっくり。

 そして文章だってなかなか好ましい。特に

自分が選択しないで出てしまった答は、自分を傷つけるものであっても、僕はその答を前に、自分は被害者だとめそめそ泣いていればいい。でも自分が選び取ったカードが導き出した悲しい出来事は、自分がそれによって傷つこうが自分で責任を負わなければならないのです。弱りきった心に、容赦なく全ての罪の根源はお前にあると、多くの人から鞭打たれることもあるでしょう。しかしそれに歯を食い縛り、無言でひたすら耐えなければならぬのです。僕は思い荷物を背負うだけの覚悟が持てず、加害者になるよりは被害者でいたほうが楽だという処世術を拠り所にしてきた卑怯者だったのです。
 
 この文章は私が最近思っていたことをすごく上手に表現していて、心を見透かされているような気持ちになった。

 それに人の魂について書いているところもなかなか素敵だった。重量を持ちながらも実体を持たない魂。それは求め合う二つが折り重なることで初めて実態を有するのかもしれない、なーんて、乙女とはほど遠い私だけど、ちょっとときめいてしまう。

 そしてこの本に込められた想いをあとがきから読み取り、涙がこぼれてしまった。あらら、遅ばせながら野ばらちゃん、気に入っちゃったりして。

 もっと彼の作品を読んでみたいと思ってアマゾンで著作を調べてみるといろいろ読みたい本が出てきた。残念ながらロスの図書館から借りられるのは「下妻物語」と「鱗姫」だけ。とりあえず次は「鱗姫」でも読んでみよう。

 ちなみに田仲さんの挿絵や小説中に出てくる楽器、テルミン。ずっと気になっているんだけどいまだかつて(テレビ以外で)お目にかかったことも音を聞いたこともない。映画も見たいと思っているんだけど、普通のレンタル店には置いてないのよね。


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