2017.7.21 07:00【矢板明夫の中国点描】

http://www.sankei.com/world/news/170721/wor1707210002-n1.html

なぜ劉暁波氏は最後に海外治療を望んだのか 決して祖国を離れなかった民主化リーダーの「最後の願い」

ノーベル平和賞受賞者の劉暁波氏は、国外に逃れない理由を「子供たちが殺されたのにひげの生えたやつが生き延びた。理不尽なことだ」と説明したそうである。天安門事件では大勢の若者が殺された。劉暁波氏は北京師範大学の人気講師として、若者たちを先導した責任を感じていたらしい。子どもたちが殺されて自分が生き延びるのは理不尽だと考えて外国へ逃れなかったということらしい。私は世間に注目されることのない名もなきブロガーだから気楽に書けるし、だから率直に劉暁波氏は中国当局に殺されたのだろうと書いた。しかしジャーナリストとなると根拠もなしにそうした発言をするのはリスクが大きすぎるから、劉暁波氏の死は病死ではないということを言う記事はなかった。僅かにこの矢板明夫氏だけが、薄煕来も劉暁波も獄中で重篤な肝臓癌になっていることを指摘して、ミステリーだと書いている。

中国に対して関心のない人は、薄煕来と言ってもピンとこないかもしれないが、江沢民の後継者とも言うべき人で、失脚していなければ習近平を脅かす最も有力な政治家である。中国ではもうすぐ北戴河会議が開かれ、産経オンラインなどでは今それに備えて習近平と反習派との激しい権力闘争が行われているという見方で、中国国内の事件をいつもそうした権力争いに結びつけて書いている。しかし私が読んだ中国メディアの日本語版では、習近平は権力をほぼ完全に掌握していて、今回の北戴河会議では特に揉めることはないだろうと書いてあった。私も、大した根拠はないが、反習近平派などと言うべき一大勢力があるような感じは受けない。胡錦濤前国家主席を後ろ盾とする李克強首相が今のところ権限を大幅に削られながらも政権中枢にとどまっていることが、中国通ではない私の理解を超えている。

過去には得体の知れない注射で要人が… 劉暁波、薄煕来の2人が獄中で肝臓がんはミステリーだ

http://www.sankei.com/premium/news/170705/prm1707050006-n1.html

証拠を示すことは誰にもできないが、中国で共産党に逆らう者は、殺される。以前は死刑にされたが、今はもっとスマートに病気で殺される。軽微な罪で短期の懲役刑を与えれば、後は世間の目が届かない刑務所の中で何をしようとも、誰にもわからない。本人にもわからないように病原菌を投与することなどいとも容易いことだろう。中国政府だって、本当は北朝鮮の金正恩のように残虐で派手な殺し方をして溜飲を下げたいと思うこともあるだろうが、そんなことをしないでそっと命を奪うほうが賢いということをわきまえるようになった。

諜報員を使って欧州に逃げた人を毒殺するのはロシアやその前身のソ連のKGBのお家芸である。秘密裁判で死刑にして命を奪うよりも、毒の付いた尖った傘の先っちょで、人混みに紛れてちょこんと突っつくほうが面倒がない。死亡後には分解して形を変えてしまい、死体を解剖しても検知できないような毒を使うなら、そのほうが遥かにスマートである。しかし、そういった便利な毒物はなかなかないだろうから、珍しくもない病気で、しかも不治の病を引き起こす病原体を注入するほうが簡単である。亡命した人を対象にする場合はちょっと無理なことだろうが、どうにでも好きに扱える自国の刑務所内にいる人を相手にするならば、この病原菌を一服盛るやりかたは、理想的な完全犯罪となるだろう。食べ物に睡眠剤を混ぜて、眠ってから悪性のがん細胞入り液体をしかるべき所に注射するだけで良い。眠っていれば、注射されたことすら気づかないし、眠り薬を飲まされたことも気づかないだろう。注射針の跡なんて、数日すれば治ってしまって、誰にもわからない。

劉暁波氏は、最後に外国での治療を望んだのは、妻の劉霞市を国外に逃したかったかららしい。それは人間としてよく分かるし、非難されるべきことではない。しかし、自分の扇動により多くの若者が殺されたから、自分は殺されることを覚悟で国外には出ないのだと言うなら、結婚するべきではなかったと言っては厳しすぎるだろうか。命を賭さなければならない民主化に命を捧げるということは、道連れを作ってはいけない。まあ、命を賭して何かをしたことなど無い私がこういうことを言う資格など無いのだが。

 

2017.7.21 11:33【北ミサイル】

北の潜水艦が日本海を48時間連続航行 SLBM発射準備か

記事にはアメリカ国防当局者の話ということで書いてあるが、これは恐らく日米の連携した情報収集の結果ということに間違いはないだろう。アメリカが衛星写真で何らかの動きを察知し、その連絡を受けた日本の海上自衛隊が北朝鮮潜水艦の運行を捕捉して、つけ回しているということだと思う。日本海に出張ってきてそこからミサイルを発射すれば、北朝鮮国内から発射するよりも遥かに着地点を伸ばすことが出来るのは言うまでもない。前回発射されたものは大陸間弾道弾であることが米軍によっても確認されたが、それに装着された核爆弾が、大気圏再突入に耐えられるかは疑問が持たれている。北朝鮮の技術はまだそこをクリアーしていないのだと見られている。それなら、大陸間弾道弾でなくても潜水艦でアメリカ本土近くまで行ってミサイルを発射出来ることを示してやろう。今回はまだ初っ端だから、日本列島の東側まで足を伸ばす必要はないだろう、それで十分アメリカさんを脅かすことが出来る。多分、そんなところではないだろうかと私は考えている。

日本の自衛隊が持つ、潜水艦の捕捉能力は世界トップクラスだそうである。潜水艦は、エンジン音、スクリュー音など、可能な限り小さくなるように設計されている。敵に察知されずに行動できるということが潜水艦の最も大きな利点だからである。しかし、一方で音を小さくする技術があれば、他方で微細な音を探知する技術というのもある。日本の探知能力はとりわけ優れていて、潜水艦一つひとつの音の違いを区別することが出来るらしい。金正恩としては、誰にも知られずにある時突然とんでもないところからミサイルを発射してアメリカの肝を冷やしてやりたいところだろうが、残念ながら、北朝鮮は潜水艦の開発にまで軍事費を回す余裕が無いらしい。全体として貧しい国だから、北朝鮮の軍事費は1点豪華主義で、核とその運搬手段であるミサイルに集中していて、その他のところまでは及ばないということである。その結果、アメリカのとある研究所の発表によれば、北朝鮮の軍隊は世界で3番目に弱いのだそうだ。軍人の食べ物が満足ではないから、戦争に耐える軍隊ではないということらしい。

そこには、アメリカの希望的観測も多分に混入していることだろうが、少なくとも秘密行動が絶対条件となる潜水艦の動きが全部補足されているということは、否定出来ないようである。金正恩としては悔しいことだろうが、それでも実験なのか実際の攻撃なのかわからないミサイルを撃ち落とすという暴挙はなかなかできないだろうし、潜水艦からミサイルを発射して成功すれば、それはそれでアメリカに対する多大の威嚇になる。

北朝鮮は周知の通り、既に何発かのミサイルを日本の経済水域に落としている。いずれも高々度に向けて発射しており、通常の角度で発射すれば、ハワイまでは届かないにしても相当近くまで行くそうである。何故それをしないのか?私は、まだ北朝鮮の技術が確実ではないので、通常の角度で発射して誤ってそれが日本列島に落下することを恐れているのではないかと推測している。もし技術に自信があるなら、日本列島を飛び越えて太平洋に着弾させればよいのだから。もし誤って日本列島に落下したなら、相当強烈な対応がありうるのは誰が考えても明らかだろう。

さて、こうした事態になった今、アメリカはどうするのだろうか。北朝鮮の核保有を認めた上で北朝鮮を利用する方策はないものだろうかということを、恐らくアメリカは本気で必死に模索していることと私は想像している。技術の進歩した現代にあって、核兵器の開発と保有を禁止するというのは、あまり現実的な話ではないのである。北朝鮮に限らず、国力を集中して努力するなら、核兵器の開発が可能な国はたくさんあるだろう。北朝鮮がやっていることは、国内での恐慌政治は別にすれば、巧みな外交であり、他の国と決定的に違うことはない。国内での暴虐の限りを尽くした圧政など、アメリカにとっては痛くもない。それに中国だって国内での暴虐なら、北朝鮮と大した違いはないではないか。

アメリカは、対北朝鮮という意味で中国を利用しようしようとしてきた。今、発想を逆転させて、対中国という意味で北朝鮮を利用できないものか?そう考えて、何がおかしい?政治に疎い田舎の爺である私でも思いつくようなことを、アメリカの政権の内外に居る多数の優秀な頭脳が、思い付かない訳はない。私はそう思う。

北朝鮮を部分的に或いは全面的に軍事攻撃する、金正恩を暗殺して排除する、北朝鮮内部で工作してクーデターを起こさせる、中国に圧力をかけて北朝鮮との貿易を全面的に停止させるなどの選択肢は、いずれも現実的ではない。北朝鮮では今年のはじめにクーデター未遂があったそうである。そうだとすれば、それはトランプ政権の後押しがあったのかもしれないし、そうでないとしても金正恩は一層締め付けを強化しただろう。中国の全面貿易禁止は戦争よりも効果があるが、北朝鮮は北京やその他の主要都市にミサイルを打ち込むことだろう。北朝鮮にどれくらいの石油が備蓄されているか知らないが、それがなくなるまで何もしないでいるということはありえない。

つまり、考えられる諸方策はいずれも現実味がない。そうだとすれば、アメリカは発想を転換して、北朝鮮の核保有を認める前提で、いろいろなことを考えるはずである。アメリカとしては、北朝鮮の核保有を認める可能性など匂わせたりしないし、民間のシンクタンクもそういう方向を仄めかすものはないようだが、恐らく実際の事態はそういう方向に向かう(或いは既に向かっている)のではないだろうか。私は、そのように推測している。

蓮舫氏が記者会見して自分の戸籍の一部を示した。また、過去の発言について「これまで自身の説明が二転三転したことについて「事実の確認をせずに発言してしまった。一貫していない説明があった。あやふやな説明によって『本当だろうか』と思う人がいた」と述べ、対応の不手際を認めた」そうである。

yahoo user e168aという人が、蓮舫氏の過去の言行をまとめている。非常に有用なものなので、此処に再掲させて頂く。

http://blogos.com/article/235327/forum/

 参考までに、村田蓮舫さんの国籍に関する過去の発言をまとめておきます。

1987年 週刊宝石918日号「ときどき中国人だったり、日本人だったりするんです。」

1992年 朝日新聞夕刊625日「日本のパスポートになるのがいやで,寂しかった」

1993年 316日 ニュース番組「ステーションEYE」のメインキャスターに起用され「在日の『中国国籍』の者としてアジアからの視点にこだわりたい」と発言。

1997年 CREA 2月号「自分の国籍は台湾なんです」と発言

※蓮舫氏は「だった」が編集の過程ではずされたと釈明

1999年 グラツィア8月号「中国人であるというアイデンティティー」と発言

2000年 週刊ポスト1027日号「アイデンティティは『台湾人』だ。」

2004年 参議院選挙の公報「1985年台湾籍から帰化」と記載。

2010

・中国網(チャイナネット)日本語版にて、『華僑大臣』として紹介される。

・中国共産党機関紙201010月にて「華僑の一員として、日中両国の友好と協力の推進に力を尽くす。」

・中華系航空会社機内誌20108月「ずっと中華民国国籍(台湾国籍)を維持してきた」

2016

 93           「私は生まれた時から日本人です」「高校3年で18歳で日本人を選びました」

 913日 台湾国籍が残っていたことを認め、台湾国籍を放棄する手続きを取っている

 923日 台湾当局から台湾国籍の離脱証明書を受け取り区役所に提出。

 107日 日本国籍の選択宣言

yahoo user e168aさんが、まとめてくれた過去の言行は、「事実の確認をしなかった、一貫していなかった、あやふやだった」といった言い訳で説明できることのようには到底見えない。

私は、かつて、二重国籍者のパスポートの問題から蓮舫氏の説明に疑義を提出した。今、私の息子について日本国籍を取得する手続をしているところだが、それが首尾よく行くと、息子は二重国籍に成る。フィリピンに帰る時(一時的に里帰りするという意味)、パスポートの問題はどうなるのだろうと疑問をいだいて調べたことがある。すると、二重国籍者は、両方の国のパスポートを所持して旅行するということを知った。その理由についても前に述べたが、蓮舫氏を例にとって説明を再言すると、彼女が台湾に里帰りする(彼女は実際に何回も台湾に旅行している)時は、日本の空港で日本のパスポートを提示して出国のスタンプを押して貰う。台湾に着いたら今度は台湾のパスポートを提示してそれに入国のスタンプを押して貰う。もっと細かなことを言えば、彼女は入国管理の台湾人用ブースに並ぶのである。そこは、海外旅行に行って戻ってきた台湾人のためのブースである。そこでは、押捺されるスタンプに滞在許可期限がない。本国人に滞在期限というのはおかしいからである。つまり、外国からの旅行客である外国人とは押すべきスタンプが異なるので、それとは区別した台湾人用のブースがもうけられている。台湾から日本に戻る時は、同じである。台湾を出る時は台湾のパスポートを提示し、日本に戻ったら日本のパスポートを提示して入国(スタンプは「帰国」と書いてあったように思う)のスタンプを押して貰う。

パスポートを2通所持して旅行するのは面倒だから、実際には1通しか所持しない二重国籍者もいる。何も問題を起こさず戻ってくれば不都合は生じない。しかし、本国人なのだからいつまで滞在しようと自由であると考えて、うっかりパスポートに押されたスタンプの期限を徒過してしまったときには問題と成る。恐らくこうしたケースは少なくないだろうし、従ってその扱いも定まっているものと思う。しかし、初めてのケースとして考えた場合には、これはなかなか悩ましいケースである。本国人に滞在期限というのはおかしいから、それを徒過したことを咎めるのは疑問だし、かと言って、外国のパスポートを提示して滞在期限付きのビザを取得し、その期限を徒過したのは本人であり、それに対してペナルティを課すのは理由があるようにも見える。要するにそういった問題が起こるから、二重国籍者は2通のパスポートを所持して旅行せよということに成る。

蓮舫氏は、台湾では日本における以上の有名人である。しかも彼女の日本のパスポートには「村田蓮舫」と名前が記載してある。今はどこの国でも名前くらいはデータベースにインプットするようになっているから、蓮舫という名前を漫然と見逃すということはありえないのである。従って、そのようなパスポートを提示して台湾入国のビザを申請すれば、台湾のパスポートを提示してくださいと言われる。以上の次第だから、日本のパスポートで彼女が台湾に入国したということはおよそ考えられない。

蓮舫氏は昨年台湾国籍の喪失許可申請を出したそうだが、私は以上のような知識に基づいて、許可申請の時まで蓮舫氏は有効な台湾パスポートを所持していたに相違ないと推測した。この推測に間違いがないことは、ほとんど確信に近いくらい自信がある。

ところで私の確信を裏付ける記事を見つけたので紹介したい。

<二重国籍問題>蓮舫が公開した書類が偽造?捏造?ではないかと台湾人女性が疑義 ネットで話題に

https://anonymous-post.news/archives/816

池田 信夫20170718 23:30【更新】蓮舫代表は国籍離脱について嘘をついている

http://agora-web.jp/archives/2027277.html

両方共蓮舫氏の示した国籍喪失証明書の胡散臭さに焦点を当てているが、いずれも現在有効なパスポートを所持していないと台湾の国籍喪失許可申請は出来ないと言っている。従って、蓮舫氏の言うとおり、はるか昔に失効した台湾のパスポートが家の中から出てきたというのが本当なら、まずもってパスポートの発行を申請してから、それを添えて国籍喪失許可申請することになるのだという。そこで、台湾当局に便宜を図らってもらうくらいの力を蓮舫氏が持っている(だから有効なパスポート無しで手続きを進めたのだろう)という前提で色々述べているが、私はそんな邪推をする必要はないと思っている。端的に彼女は、台湾のパスポートを何度も更新して、国籍喪失許可申請の時点で有効なパスポートを所持していたのだと考えれば、すべてが上手く説明できるじゃないかと言いたい。つまり私は、台湾国籍などとっくに放棄していたものとばかり思っていたという蓮舫氏の釈明は真っ赤なウソに違いないと思っている。上にアドレスを引用した2つの記事は、なかなか興味深いことを述べているからぜひ読んでほしい。蓮舫氏は昨日の記者会見で、再び真っ赤なウソを重ねた疑いが濃厚である。

 

さて、考えるだに苦いものが口中にこみ上げてくる蓮舫氏のことは終わりにして、考えるだけで顔がほころんでしまう自分の息子のことに話題を変えよう。

昨日私は昼過ぎに学校から電話をもらった。担任の先生だったが、息子が給食の後戻して今保健室に寝ているから迎えに来てほしいというのである。苦労した仕事が終わって体も脳みそもふやけていた私は一挙に緊急モードにギヤチェンジした。急いで自転車に跳び乗って出かけると、夏休みが近づいたせいで子どもたちが掃除をしていた。そのうちの一人に保健室はどこか聞くと親切に案内してくれた。入ると保健室は、私が想像していた小じんまりした部屋とは大違いの広い部屋だった。一般の教室よりもっとずっと広い。ベッドが3つくらい並んでいて、真ん中のベッドに子供が寝ていた。担任の先生ともう一人の先生がそこで寝ている子供を覗き込んでいたから、あれが私の息子だなと思って近づいていくと、大きなタオルケットにくるまれて丸まって寝ている息子がいた。そっと顔を近づけて「大丈夫か」と囁くように言うと、目を開けず声を出さず、顔を2回コクコク動かして頷いた。彼は眠っている時に話しかけるとよくそういう反応を示す。聞こえていても眠くて声を出せないと顔を動かして答える。髪の中に指を差し入れて手ぐしでとかすように動かすと、表情が柔らかくなった。私も妻も息子が寝ている時によくこれをやる。赤ん坊の時からこれをやってきたので、彼はそれをとても好むのだ。

担任の先生がランドルセルなどを保健室まで持ってきてくれたので、すぐにでも帰りたかったが、保健室の中は寒いくらいに冷房がきいている。一方外は炎天で、めまいがするほど暑い。それでしばらくこのまま寝かせてやりたいのですがと言うと、優しさを絵に描いたような顔をした保健の先生は、いいですよと快諾してくれた。担任の先生は忙しいので、既に教室に戻っている。私は、ランドセルなど息子の荷物を持って一旦家に戻った。そして又学校に戻ると、保健の先生はいなかったので、子供の寝ているベッドに近づいて、顔を覗き込んだ。

見て楽しいものというのはたくさんあるが、私にとって、自分の子供の顔くらい見飽きないものはない。大好きな女の裸でも、触っては駄目、見るだけよと言われたりしたら、すぐに見飽きるが、子供の顔は単に眠っているだけで表情が変わるわけでもないのに全然見飽きることがない。いつの間にか保健の先生がそばに来ていて、一緒に息子の顔を覗き込んでいた。そして、どこからそんな声が出るの?と聞きたくなるような静かな声で、「この子を見に、ほとんど全員の先生が来たのですよ」と言う。息子のことは全校の先生がみな知っているのだそうだ。「わー、長いまつげしてる。羨ましい」と何人もの先生が言ってましたよと教えてくれた。確かに息子のまつげは、まるでつけまつげのように長くてきれいにカールしている。「女の子だったら、ちょっとした財産でしょうけど」と私は言った。「愛情いっぱいに育っていて、先生みんなに可愛がられているんですよ」と言うので、「そういうことが分かるんですか」と聞いたら「それはもう、よく分かります。優しいし、妙に目立とうとするところは無いし………..」と言う。そうか、そんなもんなのか。

いい加減なところで起こして家に帰ると、すぐに横になって4時間も寝た。起きてからお菓子など食べていたが、2回にわたって戻したので、今日は初めて学校を休ませた。こどもクリニックが直ぐ側にあるので連れて行ったが、もう殆ど治っていますということだった。明日はもう終業式で、明後日から夏休みである。

息子が金曜日に学校から紙袋をもらってきた。中にはたくさんの書類が入っていることが、厚みで分かる。袋の上に紙が貼り付けてあり、その上部に「がんばろう!なつやすみ」と書いてある。その下に「○○しょうがっこう 1ねんせい わくわくセット」とあり、そのすぐ下に黒白反転文字で、つまりひと目で分かるように強調されている字で「ふくろのなかにはいっているもの⇒☆は8月24日にだす」と書かれている。

私は先週、急ぎの仕事で非常に忙しかった。原稿がpdfファイルだから字数を数えないで1ページいくらで計算して見積もりを出した。普通は、そのように見積もると規定の料金より少し、場合によってはだいぶ得をする。しかし、今回は、後になってOCRソフト(光学式文字認識ソフト)を使ってWordファイルに変換して字数を数えてみたら、2万円くらい見積もりが私の規定よりも安かった。このお客さんは、私の見積もりに対して「少し安くしてくれ」というようなことを言ったことがなく、いつも私の見積をそのまま了承してくれる。だから安すぎたことがわかった時は酷い脱力感に襲われた。

それはいいとしても、とにかくページ数から考えて納期は短すぎると思ったのだが、字数から計算すると、もっと納期が短すぎることに成るわけである。なんで毎日予定のページ数をこなすのが、こんなに大変なんだろうと訝しく思ったが、字数を基準にすれば、普段よりも多くをこなしていたわけだから、なるほどそうだったかということである。いずれにしても、当初の数日は、原稿のページ数を与えられた日数で割った数に達しなかった。しかし、いつも23日経過した頃からペースが上がるので、余り心配はしていなかった。

けれども、先週は、妻のために外科クリニックに付き合い、子供の歯医者に付き合い、それから今の時点では詳しいことを述べないが、私は国を相手に裁判を起こしていて、その第1回弁論期日があった。報道という腕章をした人が3人傍聴席に居て、「ほほう、何か大事件が同じ時刻に入っているのだな」と私は思った。と言うのは、一般の人は裁判の実際を知らないだろうが、弁論期日などというのは、互いに事前に提出しておいた書類を「提出しますね」(裁判長の言葉)「はい、書面のとおり陳述します」(原告もしくは被告の言葉)とそれだけで終わり、後は次回期日を取決めて終わりというのが普通である。だから、東京なら特にそうだが、大体日本全国どこの裁判所でも弁論期日には数件から10件近くの事件が同時刻に指定されている。東京地裁の例だと、一方の当事者が来たら出頭票にサインする。法廷には事務官(書記官ではない)が居て、事務官が両当事者の署名が揃った出頭表を順に書記官に渡していく。そして裁判官が来廷したら、順に読み上げて1番の事件から審理開始と成る。

そういう訳だから、私は何かニュースになりそうな事件があるのだなと思ったが、私の事件が終わると、3人の腕章マンもくっついて出てきて、「ちょっとお話を伺いたいんですが」と言う。へ?私の事件のために記者が来ていたの?と驚きながら、取材に応じた。名刺をもらったので見ると、朝日新聞、読売新聞、共同通信の3人の記者だった。いずれも若い男性である。この裁判は、多分和解で決着が着くものと私は予想しているのだが、そのときには、詳しくこの事件についてブログに書くつもりでいる。

1回期日だけでニュースに成るような事件ではないだろうと思ったが、一応気になるので翌日、コンビニまで行って、朝日と読売を買った。やはり出ていなかった。まあ、大手のメディアから取材を受けたのは長い人生で初めてのことだったので、出ていないだろうとは思ったが、280円を出費して確認しないわけには行かなかった。

そういったことで時間を取られた以外にも、学校の給食のメニューが麻婆豆腐だった日があって、これは息子には食べさせてはいけない食品なので、弁当を作って昼休み前に届けなければならない日もあった。そんなこんなで1日丸々仕事に費やすことのできる日が1日も無かった。しかし納期は納期、どんな泣き言を言っても通らないから頑張って、ついさっきようやく納品して、同時に請求書も送った。仕事をして1番楽しいのは、請求書を発送するときである。

つまり私は非常に忙しい1週間を過ごしたわけだが、家事仕事と子供の面倒を見るという仕事は、たとえ病気であろうとも手加減してはくれないのである。仕事が忙しいから家事を手抜きするということはあっても、全然しないという訳にはいかない。子供の世話は、手抜きすら許されない。その上子供は、仕事をしている私の方に乗っかってきて肩車の姿勢になったりして甘える。私は電気炬燵を座卓代わりに使い、壁際に座っているので、子供からすると私の肩によじ登りやすいのである。子供を肩車しながら仕事をしたことのある人は少ないと思うが、キーボードのタイプならなんとか出来る。しかし、子供が肩の上で動き回るので、マウスでクリックするのは出来ない。マウスが動いてしまって変なところをクリックしてしまうからである。

私はそんな環境の中で仕事をしているのである。並の男なら妻や子供に当たり散らすところだろう。しかし私は、全くそういうことはしない。息子は、妻が買い物に行くから一緒に行こうと言っても「行かない」と言う。妻が「一緒にお風呂に入ろう」と言っても子供は「あとで」と言う。けれども私が買い物に出かけようとすると「パパどこに行くの??」といってついてくる。「買い物に行く」と言うと、「一緒に行く、待って」と言う。私が黙って服を脱いで裸に成ると、息子も慌てて服を脱いで風呂場に追いかけてくる。つまり息子は典型的なパパズボーイである。日本語で言うと、お父さん子である。私はそれが嬉しいから、普通の男ならヒステリーに成るくらい忙しいときでも子供に当たったりはしない(勿論妻にも当たらない)。

ところで、夏休みの宿題に話を戻すが、そんなふうに私は忙しかったから、袋に貼り付けてある紙の表題「がんばろう!なつやすみ」というのを読んだだけで、中身は全く見なかった。さっきようやく、貼り付けてある紙を下まで読んだのだが、もう大げさに言えば、失禁しそうに成るほど驚いた。

まず、袋の中身のリストが、12項目もある。その中の幾つかを紹介すると「たからものにつける さくひんカード」「あさがおのかんさつ」「えにっき」「らじおたいそうカード」「なつのとも」「なつやすみのくらし」「ボランティア チャレンジカード」などなど。「なつのとも」というのが、言わずと知れた夏休み宿題帳である。本文88ページの立派な冊子で、一般財団法人岐阜県校長会館・発行とある。目次をちょっと見ると「つづけてできるしごとをみつけよう」「たのしくからだをうごかそう」「いしや つちで あそぼう」「しらたまだんごを つくろう」「たからものを つくろう」「あさがおと なかよしに なろう」などとある。

続けて出来る仕事?息子は、泡が出るトイレクリーナーが面白いようで、時々便器にそれを吹き付けてブラシでクリーンしている。1回にボトルの4分の1くらいを使ってしまうから、家中に匂いが充満してしまうが、楽しそうにやっているし、褒めてやると喜んでいるから、特に頼んだこともないのに毎日やっている。泡になって出る洗剤は安いものだし、おとなしく何かに熱中してくれるのは忙しい私にとっては有り難いことなので、終わると褒め倒す。これを書けばいいか。

楽しく体を動かそう?息子は毎日私の体の上で楽しく体を動かしているけどね。それで足りてる?

白玉団子を作ろう?そんなの私だって作ったことがない。まあ、白玉を食べるのは嫌いではないが。今時、ケーキでもなんでも自分で作るより買ったほうが遥かに安くて美味い。これを本当に作るのか?もう1度リストをよく読むと、「なつのとも」の注意書きに、答えを書くページ、読んだらその日付を書くページなどがあって、白玉作りは読んで、読んだ日付を書き入れるだけでいいらしい。ああ良かった。

朝顔と仲良しになろう?これも読むだけでいいのかな。息子と手を繋いで学校探検に連れ回してくれた2年生の女の子がくれた朝顔の種は、私が撒いて毎日水を与えてきた。お陰で、8粒撒いたうちの7粒は芽を出して、今はもう花を咲かせている。いろいろな朝顔の種が混ざっていたようで、花の色も大きさも違う。一番あとから花を咲かせたものは、俗にチョウセンアサガオと呼んでいるものと大して変わらないほど小さな花で、これはこれで可憐な花である。息子に見せたら、パープルだと言う。ほう、バイオレットではなく、パープルというのかと思ったら、「英語だとバイオレットだよ。日本語だと何ていうの?」と聞く。息子の中ではパープルはタガログ語だと思っているらしい。「日本語だとムラサキかな」と教えたが、「あるいは小豆色かな」と付け足したら、息子は色の名前より「あるいは」という言葉に反応して色々聞いてきた。

バイオレットとパープルと紫と小豆色は、それぞれ同じなのか違うのか、調べると分かるだろうが、私はようやく仕事が終わった開放感で脳みそも体も緩んでしまって、調べる気になれない。

誰かそういったことに詳しい方、コメントで教えてください。

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