2015年08月02日

若い人は必見!今年一番の衝撃作「野火」5

約15年前、バークレーのレンタルビデオ店で「日本」コーナーがありました。そこで見つけたのが 1959年に公開された市川崑監督の野火(Fire on the Plain)でした。こちらを紹介した私のブログ記事はこちら。非常に感動した作品だったのですが、唯一難点を言えば映画が白黒だったという事。これによってリアリティがかなり損なわれていました。



今年は戦後70年。塚本晋也監督が、この大岡昇平の戦争文学作品をカラーで映画化してくれました。先日、朝日新聞の紹介記事を読んで、すぐに渋谷の映画館へ行ってきました。

第2次世界大戦末期のフィリピン・レイテ島。
日本軍の敗戦が色濃くなった中、田村一等兵(塚本晋也)は結核を患い、部隊を追い出されて野戦病院行きを余儀なくされる。

しかし負傷兵だらけで食料も困窮している最中、少ない食料しか持ち合わせていない田村は早々に追い出され、ふたたび戻った部隊からも入隊を拒否される。そしてはてしない原野を彷徨うことになるのだった。

空腹と孤独、そして容赦なく照りつける太陽の熱さと戦いながら、田村が見たものは・・・


まず1959年市川版と決定的に違うのは、フィリピンの美しい景色が随所に散りばめられている点です。この映像美は太平洋戦争のガダルカナル戦を描いたシン・レッド・ラインに匹敵します。

塚本監督はインタビューで答えていますが、あえてグロ描写をこれでもかと盛り込んでいますので、苦手な方はご注意ください。
邦画の戦争映画と言うと、お涙頂戴か美談に持っていこうとする映画が多いのですが、本作品は派手なドンパチは全く出てきません。兵器も戦車・戦艦・戦闘機は全く出てこないので、ミリタリー系が好きな方はがっかりするかも。また、戦場での友情や人間愛などもほとんど描写されず、極限状態に置かれた敗残兵の醜い本能だけが表現されています。

リリー・フランキーは優しそうな中年俳優と思っていましたが、本作品では腹にタバコの葉を隠し持って、息子くらいの若い兵士(森優作)に食料(と言っても不味そうな現地の芋)を商売させる悪役を好演。森優作さんは本作がデビュー作ということで、前半はセリフが棒読みでしたが後半のクライマックスでは鬼気迫るものがありました。現代の若者でも、二十歳くらいであんな地獄な戦場に送られたら誰でも狂ってしまうでしょう。
それから、主人公は今まで見たことが無い俳優さんと思ったら、何と塚本監督が脚本・編集・撮影・製作・主演を全て担当していたんですね。この小説をずっと映画化したかったというだけあって、迫力を感じました。

<ややネタバレあり>
とにかく食料が現地の不味そうな芋だけで、米のような贅沢品はありません。塩も貴重品で、主人公が仲間に分け与えるとみんな目をつぶって生き返るシーンが印象的。タンパク質もほとんど無く、最後は人肉を食べて生き延びます。(インテリの主人公は最後までその行為に抵抗します。)
なんで日本軍は食料や銃弾を補給しなかったのか?と不思議に思いましたが、制空権・制海権を奪われて、補給船は片っ端から戦闘機や潜水艦などによって沈められた様です。
また、前半の野戦病院の手術シーンなども、これまでの映画に無くて印象的でした。

フィリピン戦争で過酷な戦争から生還した人も現在は90歳を超えていると思います。こんな悲惨な戦争が忘れ去られる前に、若い人にぜひ見て欲しい作品です。今年ナンバーワンの作品。
野火Nobi2







  
Posted by miliken at 17:35Comments(0)TrackBack(0)