トルニタリナイコト@MimeiTagawa

Mi:media −田川未明OfficialBlog



美容院でシャンプーをしてもらうのが好きだ。人の手で洗ってもらうと、どうしてこんなに気持ちが好いんだろう、と、うっとりする。

が、しかし。数年前、耳管開放症になってから、なぜか耳に水が入りやすくなった。水が入ったのがきっかけで再発したこともあるので、髪を洗うときは気をつけている。でも、美容院のシャンプーにいちいち注文をつけるのも気が引ける。美容師さんはシャンプーのプロでもあるし、だから不用意に耳に水をかけたりはしないはず。そう思っても、やはり気になる。洗ってもらっているあいだ、耳ばかり意識して、緊張してしまう。

仕方なく、美容師さんに事情を打ち明けると、彼女は事もなく頷いて、言ってくれた。「じゃあコットン(カット綿)で耳栓しましょう」 そうか、その手があったのか。おかげでそれからはリラックスして、シャンプーの気持ちよさを存分に楽しめるようになったのだった。

で、本日もその美容院へ。と、けっこうな混雑ぶり。カットしてヘアカラー液を塗布するまでは、いつもの美容師さん。そして、「あちらでお流しします」とやってきたのは、いつものシャンプーガールではなくシャンプーボーイ。新顔ではないけれど、まだどこか初々しい。首のタオルを丁寧に巻き直しながら、訊いてくる。「ええと、お顔のガーゼは口を塞がなければ大丈夫でしたっけ?」 え? 一瞬何を訊かれたのか分からなかったけれど、すぐに、ああそうか、と合点した。

たぶん彼は、「このヒトはシャンプーの時、何か気をつけなくちゃいけないことがあったはず」と思ってくれたのだ。きっとあたしの他にもそういうお客さんがいて、そのヒトの注文は「顔にガーゼを掛けるとき、口を塞がないでほしい」ということなのだろう。

そうか、こういう注文はあたしだけじゃないんだな、それぞれ色んな悩みや事情があるものなんだ。そう思ったらかえって気が楽になり、笑顔で首を横に振り、「コットンを」と言いながら、自分の耳を指さした。あ、あ、そうでした、失礼しました。えらく恐縮した彼は、椅子に寝そべったあたしの両耳に、そぉっとコットンをあてがった。詰めるというより、当てた、という感じ。

案の定、すぐ落ちる。しゃかしゃかと髪を洗うとコットンが落ち、慌てて新しいコットンを耳に当て、しゃかしゃか洗い始めると、また落ちる。おまけになぜか顔の上のガーゼを折り曲げて、口元を出そうとする。あれやこれやに気を取られて混乱し、最初に訊いてきた他のヒトの注文(ガーゼで口を塞がない)まで施そうとしているもよう。

このままでは埒が明かない。仕方なく、「耳栓、自分でして良いですか?」と訊いてコットンを自分で耳に詰め、「あと、ガーゼは普通に掛けていいですよ」と笑いながら言うと、あ、ああ、失礼しました、と又もえらく恐縮する。なんだか可笑しいやら申し訳ないやらで、「お湯加減はいかがですか」「お痒いところはないですか」などと訊いてくるたびに、「はい」と大きく答えてあげることにする。大丈夫だから、慌てなくていいからね、と、そんな気持ちを込めながら。

そうしてシャンプーが終わり、トリートメントも流し、さて終了かと安堵するような思いになったとき、彼は言ったのだった。「きもちわるくないですか」。 は? 一瞬吹き出しそうになり、でも怺えた。怺えて、はい、と返事をした。

たしかに「洗い足りないところはないか」という意味で、「気持ちの悪いところはないですか」と訊かれることはあるけれど。さっぱりと髪を洗ったあとに、「気持ち悪くないですか?」と訊かれるとは思わなかった。可笑しくてしかたがなかったけれど、でも、一生懸命な彼を笑う気にはなれなかった。

ヒトの髪を洗うとか、ヒトの耳に耳栓をするとか、そういうのって難しいことだよなぁ、と改めて思う。人それぞれ「感覚」は違うのだから。「気持ち好い」とか「ちょうど良い」という感覚は、当人以外は分からない。練習や経験を積んで慣れていくしかない。慣れていくうちに、按配を知り、身につけるしかない。

向き不向きは確かにある。器用、不器用、ということも。でも、やりたいことであれば、続けるしかない。好きなことなら、日々精進。そのうちきっと成るように成る。がんばれ、シャンプーボーイ。がんばろう、あたし。そんなことを思いながら、軽くなった髪を揺らして(いつもより時間がかかったので重くなった腰をかばいながら)、春風の中、帰ってきたのでありました。

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
写真の木蓮は、美容院の帰り道で。

耳管開放症は、『ごく最近まで非常に珍しいものと考えられ、病院でもなかなか診断がつきませんでした。ところが最近の研究では、軽症者を含めると推定患者数600万人、およそ20人に1人に達することが分かってきました。』とか。(あたしの場合は、これまた更年期の症状のひとつらしく、幸い今は治っております)。
お悩みの方は、こちらに詳細が。
『ためしてガッテン - NHK』 http://bit.ly/1hQhppR

◆更新シテマス
【夢見食堂】―夢見荘亭主の簡単ゴハン―
「ナス入りミートソース」
http://mimeo.blog.jp/
「畳」の部屋、ほんとに欲しい。
いつかリフォームするときは、復活させたいものです。
でもそうすると、ゴロ寝してばかりになりそうだなぁ(特にあたしは)。
mixiチェック Share on Tumblr

ハナニラ


大好きなハナニラが花盛り。ついつい、よその庭をのぞいてしまう。柵のあいだから、こそっと撮らせていただいたり。まるで不審者のよう。

(何度も言うようだけれど)かねてよりずっと思っていた。もし庭のある家に暮らすなら、地面いっぱいハナニラで埋め尽くしたい。この町に越してきて初めての春、ご近所でまさにそんな庭をみつけ、思わず歓声をあげてしまった。この季節、前を通るたびにのぞきこまずにはいられない。

ハナニラ


この花、英語では「spring star flower」 春の星の花。なのに日本では、葉を摘むとニラのような匂いがするから「ハナニラ」なんて。ちょっと、あんまりじゃないでしょか。あんまりな名前といえば、この美しい瑠璃色の花「オオイヌノフグリ」も、別名では「星の瞳」。

オオイヌノフグリ


春は、大好きな草花がそこかしこに繁るから、あちこちのぞいては立ち止まり。歩くのに時間がかかります。
「みちくさ」という言葉を思い出す季節。それが、春。


mixiチェック Share on Tumblr

このページのトップヘ