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いつか出したい写真集があった。
一枚の写真にはかならず物語がある。二枚になればもうすこし物語がすすむ。もっとその先に、思いがけない話があるかもしれない。その思いに添って二〇〇八年に「ONCE UPON A TIME」という大判の写真集をだすことができた。やがて、その一枚ごとの写真の物語をもっとひろげていく夢をもった。これが今回の写真展の大きなテーマになった。

五つの旅―というふうにまとめたが、一枚の写真をめぐる物語は旅だけではなく、わたしの周辺にもっとたくさんある。だから、いつか、さらにまた別の世界の写真物語をつくりたい、と思っている。それはきっと「むかしむかしあるところに・・」という題名になりそうだ。今回の写真展はそんなあたらしいぼくがもっとも熱中するライフワークのスタート点と考えている。                                   椎名 誠


「五つの旅の物語―プラス1」椎名誠写真展
 2010年2月17日(水)〜3月29日(月)
 品川キャノンギャラリーS
 10時〜17時30分 休館日:日曜祝日 入場無料



今年は写真の年になりそうです。椎名さんの年賀状にはそう書かれていた。確かに年明けから写真にまつわる新刊が次々に出て、サイン会ありトークショーあり、合間にもぐら座あり(残念ながら今回は予定が重なり参加できず)で、去年にも増してお忙しそうだなぁ、と思っていた。そんな折り、ふいに届いた写真展のお知らせ。16日に特別内覧会とオープニングパーティーがあるという。で、ミメオとふたり喜び勇んで出かけたのだった。

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見よ、この居並ぶ缶ビールを(って、どこ見ているんだか)。某ビールメーカーの差し入れだそうだけれど、いかにもビール好きのシーナさんらしいパーティーで、しかもこのビールがあっという間に空になっていく様は、見ていてなんだかキモチが良かった(笑)。

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「怪しい探検隊」の頃からのシーナファンにはお馴染みの中村征夫氏。もちろん水中写真家として名高い方であるから、中村さんのファンはとても多い。確かに独特の雰囲気があって思わず見惚れ、カッコイイ、と呟いてしまったり。

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高く掲げられている本は講談社の「五つの旅の物語」(ピンぼけ写真でごめんなさい)。掲げているのは、その担当編集者。本を手に壇上に並んだのは講談社の他にも3社あり、椎名さんに見惚れていたせいか(見惚れてばかりだ)記憶が定かではないのだけど(すみません)、朝日新聞出版「いいかげんな青い空」、角川書店「世界どこでもずんがずんが旅」、柏艪舎「屋上の黄色いテント」、と、いずれも今年になってから出版された新刊ばかり。出版不況といわれるこの時代に、こんなに次々と新刊が出るなんて、本当にすごいこと。

本の宣伝ではあるけれど、どちらかといえば係わった編集者やデザイナーさん達の紹介という感じで、こんなふうにお披露目してもらえると「作り手」としても嬉しいだろうなと思う。これは売らねば、とモチベーションもあがるだろう。憧れの装丁家・多田進氏もいらしていて、おお、と思う。「屋上の黄色いテント」の装丁は多田氏によるもので、さすがに素敵。

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次に椎名さんが壇上に呼び寄せたのは、雑誌『つり丸』に隔号連載されている「わしらは怪しい雑魚釣り隊」の面々。「つり丸」編集長と並ぶ隊員達は、その昔「わしらは怪しい探検隊」の「ドレイ」だったりするのだけど、彼らも今は昇格して(?)それぞれの分野でめざましい活躍をされている。

と言ってもシーナさんの前に出ると、やはり下僕(?)となるようで、こういうイベントではいつも明るくきびきびと働いていてキモチがイイ。雑魚釣り隊のエース・斉藤海仁さんにはmixiでもお世話になったりしていたので、この日ようやくご挨拶ができて嬉しかった。「椎名さんの周りにこんなにマトモな好青年がいるなんて」とミメオが驚いたほど(失礼な―その1―)、感じの良い聡明な方だった。

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珍しくジャケット姿のシーナ氏。「シーナさんがそんなにちゃんとした恰好しているのを初めて見た」(失礼な―その2―)とミメオが言うと、「いつもホームレスに間違えられるからね」とちょっと照れくさそうに笑われていた。その貴重な姿をこっそり(?)撮ろうと、会場の後方でカメラを構えていると、すぐ横で同じようにこっそりコンデジで撮ろうとする人が。ん?と見ると、なんと中村征夫さん。堂々たる写真家がなんでこんなこっそりと、しかもコンデジで? と驚いて顔を見ると、えへへへ、とイタズラ坊主のように笑うので、こちらもつられて笑ってしまった。何てお茶目な人なんでしょか。さすがにコンデジはライカでしたが。

さて、肝心の写真展。冒頭に掲げた椎名さんのコメント通り、まさに「物語展」とでもいうような。それぞれの写真に数行のキャプションがついていて、写真を見て文章を読み、もう一度ゆっくりと写真を見る。言葉に書かれていないものを写真で見て、写真に写っていないものを言葉から想像する。そうすることで写真が伝える愛しさや哀しさはより深まり、大いなる自然がより一層迫ってきて、行ったこともない土地の会ったこともない人々の「物語」の中に、いつしか入り込んでしまっていた。

『世界各地を旅して撮りためた自然風景やそこに生きる人々の写真を地域別に「五つの旅の物語」としてまとめ、さらに「プラス1」として本展のために撮影された国内・東北地方各所の写真を加えた、合計約120点の作品』その詳細をここに書いてしまうのはもったいない。なので割愛いたしますが、ただ少しだけ書かせてもらうと、「イーゴリさんと犬の話」には思わず足がとまり、その写真と文章を何度も何度も眺めてしまった。写真家であり作家である椎名さんだからこそできる、椎名誠ならではの写真展。写真好きにとっても本好きにとっても必見です。



椎名さんのイベントでの写真は上手く撮れたためしがない。どきどきしちゃうからでしょか(笑)写真展は今回だけでなく中村征夫氏のギャラリーでも開催されるそうで、他にも写真絡みの新刊や(「波照間の怪しい夜」雷鳥社「北の旅―今夜は何処へ」PHP研究所)、それに伴うイベント等々がこれからも目白押し。うーん。それにしてもシーナさんは、なんであんなにタフなのか。

タフといえば、椎名さんに負けず劣らずパワフルに活躍されている残間里江子さんも、このパーティーにいらしていた。残間さんはクミコのプロデュースも手がけられているのでコンサートなどでお目にかかることもあるけれど、この日ちょっとお話しするうちに意外な弱点(?)を知り、なんてチャーミングな方なんだと思ったり。が、しかし、その残間さんが日々更新されているブログ「駄目で元々、雨、アラレ」を翌日読んでみると、このパーティー後もいくつかの予定をこなし、2時間仮眠をした後に午前4時からブログを書き始め、ラジオの生放送(5時40分スタート)の7分前に書き終えた、という。す、すごすぎる……。へなちょこなあたしにはとても真似できないけれど、それでも少しは見習わないとなぁ。ううむ。



最後にちょっとだけお知らせ。
言葉のエンターテイメント「裸言」に連載させて頂いている、
うそ日記「未明の嘘月」
17日(水)に更新されています。
第三回は、「風呂場の金魚と柿の種」
なんじゃそりゃ、と思われたら、ぜひのぞいてみてくださいね(笑)
どうぞよろしく。