養育費・婚姻費用

養育費算定、見直し検討 最高裁司法研修所

最高裁司法研修所が現在裁判所で広く用いられている養育費・婚姻費用の簡易算定方式の見直しを検討しているという報道がありました。(産経新聞平成30年8月28日)

来年3月29日までが研究期間で5月には報告書をまとめるという具体的な話です。

これまで裁判所の算定式で算出される額が低すぎるという議論は相当されてきましたが、やっと最高裁が動いたということで、検討の結果増えることはあっても減ることはないと思います。

そうなると実務的には2つの問題が出てきます。
1つ目は新しい算定式が採用されるまでの間低くしか算出されない現在の算定式で決めるべきなのかという問題です。
2つ目は新しい算定式が採用された場合これまでの算定式で決めた養育費・婚姻費用をどうするかという問題です。

前者はそもそも新しい算定式がどうなるかわからないので、新しい算定式を前提に計算することはできないが、明らかに低くなる現在の計算式で決めてしまってよいか悩ましい問題が発生します。
来年の5月というのはもう1年ないわけで、それまでの間事件を引っ張るかどうかという場面も5月が近づくにつれ出てこようかと思います。

後者については裁判所がどう扱うのかよくわかりません。
法律であれば施行日を基準にするが、これは法律ではないものが法律のように取り扱われてきたものです。
また、婚姻費用・養育費は継続的に発生するということも問題を複雑にすると思います。
観測報道が出たばかりであり、まだこのことについて論考した論文等は見ないのですが、研究の必要があると思います。
 

事例紹介(養育費の減額請求)

依頼者様から許可をいただいたので紹介します。

元夫から養育費の減額を求めて調停を申し立てられた事件が先日終結しました。
元夫の言い分は離婚後再婚し、再婚相手との子供もできたということでした。

裁判所が算出する養育費・婚姻費用には基準とする算定式があり、養育費を支払う側に他にも扶養する人がいる場合負担すべき額も計算式に基づいて算出することができます。

裁判所はこの算定式に基づいた算定表を公表しており、広く使われていますが、このような例外的な場合は算定表では算出できず、計算式に基づいて計算しなければなりません。

私は夫の言い分を前提として裁判所の基準に基づく養育費を算出したらどうなるのかをまず検討すべきと主張し、計算の基礎となる現在の収入を証明する源泉徴収票を提出するよう求めました。

その結果、夫の言い分を前提としても元々取り決められていた養育費よりもむしろ多い額が算出されることがわかりました。

裁判所は元夫に調停の取り下げを勧め、元夫も応じました。

よくネットとかに再婚して扶養する人が増えたら前に取り決めた養育費の減額を請求できるとか書いてあると思います。
一般論としては正しいのですが、現在の収入(本人及び再婚相手)ともともと取り決めていた養育費の額によっては必ずしもそうとはいえない場合があります。
一般論をうのみにしない方がよいという例だったと思います。


 

婚姻費用と養育費で払う側が違う場合

子供がいる夫婦の離婚前の別居において、多くのケースでは母親が子供を連れて別居していますが、中には母親が単独で別居し、父親が養育している場合もあります。
このような場合、多くの人が婚姻費用はもらえないと思われているようですが、双方の収入によっては婚姻費用は貰うが、夫が親権者としての離婚成立後は養育費を払うという場合がありえます。
婚姻費用の趣旨は生活保持義務の履行であり、配偶者に同等の生活を送らせるという建前だからです。
夫が正社員で妻がパートというような世帯ではむしろ多くの場合婚姻費用はもらうことになると思います。
これは一般的な養育費・婚姻費用算定表では算出できませんので、基礎となる計算式を理解して計算する必要があります。自分では難しい場合が多いと思いますので、自分はどうかと思われる方は、ぜひ一度ご相談ください。


養育費の減額を求められた場合

いっぺん決めた養育費について、減額してほしいという申し立てをされることがあります。
法律上は事情の変更があれば減額をできるということになっています。
事情の変更とは転職等大きく収入が変わった場合と、再婚して連れ子と養子縁組する等、被扶養者が増えた場合があります。

リストラされたとかいう話だとやむを得ない面があるかもしれません。
しかし、再婚して養育費を減らしてほしいという話は求められる側からすると微妙な面があります。
再婚するかしないかは自由意志によるわけですから、不可抗力とはいえないのではないか、にもかかわらず養育費が減らされるべきなのか、と思われるのはもっともだと思います。

判例は一般に被扶養者が増えたことによる養育費の減額を認めていると思います。
通説的には再婚の自由はあるのだから再婚による事情の変更も認めていいのではないか、ということになるのかもしれません。

この点、養育費の減額はあくまで「することができる」のであり、事情の変更があったからといって減額しなくてはならないわけではない、自らの意思で再婚・養子縁組をして被扶養者を増やしておきながら減額の請求をすることを認めるのは慎重であるべき、とした審判例もあるようです(熊本家裁平成26年1月24日)。
個々の事案で前提事情も裁判官も違いますので、同じような判断が必ず出るとはいえませんが、してみる価値はある議論だと思います。

また、1億総活躍の時代において、再婚自体が減額すべき事情の変更に当たるのか、というのは検討を要すると思います。
少なくとも再婚相手の収入に関する証明を確認し、実際の収入が少ないとしても、子供が小さい等の特段の事情がないのに専業主婦をしている場合、潜在的稼働能力を前提に計算すべきなのではないか、ということは主張できるのではないでしょうか。

 

婚姻費用廃止論

新潮社のフォーサイトというサイトに載っていた「まず婚姻費用を廃止しよう」というコラムを読みました。
内助の功という考え方はおかしい、婚姻費用というのは廃止しよう、という主張です。
私はその考え方自体は議論の余地があると思います。
キャリアウーマンがヒモ夫と別居したら男女平等の考えからいうとやはり婚姻費用を払うことになるのではないか、と考えると婚姻費用の制度にはおかしなところもあります。
昭和な夫婦を前提とした離婚関連の諸制度はある時期に見直さざるを得ないのではないでしょうか。

ただ、私が違和感を感じたのは筆者が「婚姻費用の権利者は、別居して、音信不通になり、新たな生活をはじめていたとしても、結婚契約を解消しないというおかしなインセンティブを持つことになるのだ」と婚姻費用の制度があるために婚姻が破綻しても妻が離婚に応じないと主張している点です。

これは私が離婚事件を取り扱っている実感とは全く逆で、離婚したい妻と離婚したくない夫の組み合わせが圧倒的に多いのです。
現状婚姻費用は離婚したくない夫に対して「破綻した婚姻を続けていたら婚姻費用を取られるだけから離婚に応じた方がいいのではないか」と離婚を促す役割を担っています。
婚姻費用の制度を廃止したら間違いなく今より離婚事件は停滞して時間がかかると思います。

なぜこのような勘違いが生じるのかというと、これは想像力の問題で、世の中の女性が損得を超えて実際に何を大事に考えて行動するのかということをわかっていないのです。
そして、残念ながら離婚したくない夫の多くもそうであるように思います。
 
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