
若山牧水がこよなく愛した晩秋のみなかみ町・谷川連峰と利根川<月夜野大橋から撮る>
旧月夜野町、水上町、新治村が合併して「みなかみ町」が誕生してから、早や6年の歳月が過ぎました。町民皆さんの協力で行財政改革も進み、学校施設の耐震化も終わり、現在は懸案の都市計画事業も進行し、夢膨らむ思いであります。
合併新町の町名は、彼の若山牧水の著書「みなかみ紀行」から名付けられました。牧水は旅と酒をこよなく愛した歌人であり、日本各地を訪れ多くの歌集を残しました。
この水源の地「みなかみ町」にも2度訪れ、奥利根の自然やそこに住む人々の営みを、更には歌の同士との出会いを「みなかみ紀行」にしたためています。
大正7年10月の旧水上町の旅では、「私は河の水上というものに不思議な愛着を感じる癖を持っている。…峠を越せば其処にまた新しい水源があり、小さな瀬を作り流れ出る風景を見ると胸が苦しくなるような歓びを覚えるのが常だった。」とあり、また「…湯檜曽の辺りでは、銚子の河口であれだけの幅を持った利根が、石から石を飛んで徒渉出来る愛らしい姿になっているのを見ると、矢張り嬉しさに心は躍ってその石から石を飛んで歩いたものであった。」と、川の上流に不思議な愛着を感じ、利根川の源流を自分の足でたどり、その情景から受けた心情を綴っています。
大正11年10月の旅は、長野県、群馬県等24日間に及び、この間、旧月夜野町・新治村を旅し、前回の旅と合わせて紀行文として「みなかみ紀行」を纏めております。
「月夜野村は村とは云え、古めかしい宿場の形をなしていた。昔は此処が赤谷川(あかたにがわ)流域の主都であったものであろう。宿を通り抜けると道は赤谷川に沿うた。…」とあります。
また、地図上に法師温泉を探し当て『…沼田の方角に近い処に視線を落とすと、其処に「猿ヶ京村」という不思議な名の部落のあるのを見るだろう。サテも斯んな処に村があり、斯んな処にも歌を詠もうと志している人がいるのかと、少なからず驚嘆したのであった。…』と記されています。 この旅では月夜野を通り、湯宿から猿ヶ京温泉や法師温泉を訪ね、旧月夜野町では義人茂左衛門を知り、千日堂の香煙を見て、「…月夜野橋を渡ると直ぐ取っ着きの岡の上に御堂はあつた。田舍にある堂宇としては實に立派な壯大なものであつた。そして、その前まで登って行って驚いた。寧ろ凄いほどの香煙が捧げられてあつたからである。そして、附近には唯雀が遊んでいるばかりで人の影とてもない。百姓たちが朝の仕事に就く前に一人ひとり此処にこの香を捧げて行ったものなのである。一日として斯うない事はないのだそうだ。立ち昇る香煙のなかに佇みながら私は茂左衞門を思い、茂左衞門に対する百姓たちの心を思い瞼の熱くなるのを感じた。…」と、その時の感慨を書いています。
また、旧新治村の二人の社中の同士と出会い、その中の一人、浅地の松井太三郎氏とは、「君は何処で歌を作るのです、此処ですか。」…「何処という事もありません、山でも野良でも作ります。」と僅かに答えたとあります。
もう一人、猿ヶ京の林 銀治氏とは、湯宿温泉・金田屋旅館で出会い、「…仙台からの帰途沼田の本屋に寄って私達が一泊の予定で法師に行った事を聞き、ともすると途中で会うかも知れぬと言われて途々氣をつけて来た。そして、もう夕方ではあるし、ことによるとこの辺に泊って居るかも知れぬと立ち寄って訊いてみた宿屋に、偶然にも私が寝ていたのだと言う。あまりの奇遇に我等は思わず知らずひしと両手を握りあった。」と書いています。この社中の同士の松井太三郎氏と林 銀治氏は、私達の郷土の大先輩であり、牧水との親しみを一層深くしてくれます。
旅先では、各地に多くの歌を残しております。
旧新治村永井宿には、法師温泉に向かう道すがら、新治村立猿ヶ京小学校の永井分校に立ち寄り
“ 山陰は日暮れ早きに学校の
まだ終わらぬか本読む声す ”
と詠み、この歌は石碑に刻まれ、現在は永井宿郷土資料館の前に建てられています。また、水上温泉・湯原の水上橋の袂では
“ 大渦のうずまきあがり音もなし
うねりなだれて岩をおおへども”
と詠む等、みなかみ町の雄大な自然や人々との繋がりを牧水文学にまとめ、今の世に伝えています。これによって私達は「谷川連峰・水と森防人宣言」を起草し、
新生「みなかみ町」を誕生させました。
今、90年余の時を越えて、上州の自然や風土、そして温泉を求めて旅した牧水の足跡を辿り、自然を愛し、歴史を重んじ、地域文化を育てたいものでます。そのためには、若山牧水の足跡の保存し、継承することが大事であり、確かな足取りを残した月夜野、水上、新治地区の3地区に牧水の顕彰公園を建設し、後世に伝えるべきであると考えます。そして、若山牧水との関わりを私達の誇りにして、これを生かし、21世紀に飛翔する「みなかみ町」の発展に情熱を傾けたいと思います。





























