記事を書いている間に日付が変わってしまったから、もう今日だ。安倍内閣の改造人事。

 安倍内閣。ふう。

 僕は安倍内閣が発足する時や、小泉内閣で何回かあった人事では、「今度は人事はどんな感じになるんだろう?」って積極的に考えてみたい気になったけど、今回はあんまりそういう気も起きない。それでも日曜朝の「報道2001」を聞いていたら、人事そのものは「誰かなー。わくわく」という感じはないにしても、ひょっとしたら安倍政権は近いうちに終わるかもしれない。そういうことを含めて考えるんなら、意味のあることじゃないか、と思った。

 今日発足するのは、安倍総理が国会で首班指名された結果の組閣ではないから、たぶん「第1次安倍改造内閣」ということになるのだと思う。あるいは「第1次」はいらないかもしれないけど。


 だいたい、人は困難な時にこそその人となりの本性がよく出るなんて言うけど、この厳しい時期に安倍総理がどうふるまったかを見て、「ああこの人はこういう人か」というのが色々と分かったように思う。
 僕は、「安倍首相という人はイノシシみたいな人だ」という印象を受けた。
 ウォルト・ディズニーは、自分で映画を製作したりする会社をやっていた。その時に、たしかスキャンダルだったか、資金難だったかがあって会社が逆風のさ中にある時、「自分たちの仕事は、いい映画を作ることだ」って言って、いっさいの雑音を無視して、スキャンダル対策とか全然せずに、映画づくりに専念した。その結果、いい作品ができて、スキャンダルなんかもおさまって、すべてがうまくいったという。
 こういうパターンは多いと思う。自分たちの仕事は何か?アーチストだったら、いい作品を作る。それによってすべてはいい方向に向かっていく。そういう考え。
 安倍総理も、そういう考えのようだ。支持率が下がっても、松岡農相のスキャンダルがあった時も、それに何らの対処もしなかった。「政策をすすめ、結果を出すことで国民の皆様の支持が得られると思っている」というようなことを言い続けた。さすがに赤城農相の時は、少し踏み込んでスキャンダル対策もしたような感じだったけど。
 安倍総理は、支持率が急落している最中の7月1日、21世紀臨調主催の党首討論で、小沢民主党代表とサシで討論した時、まったく暗さとか自信のなさを感じさせなかった。勢いの真っ只中にある人のように、自信満々に、小沢と討論をしていた。僕はあの討論を見ているうちに、安倍内閣の支持率低下なんてどこにもないような錯覚を受けた。それほど安倍はいい雰囲気をかもし出していた。すべてはうまくいっているのだ、という空気を発散させていた。これは政治家としては良い資質だと思う。どんな困難な時にでも楽観的でいられるというのは、大切なことだ。同じ楽観的な資質を、小泉や麻生も持っていると思う。そしておそらくは橋本元首相には、この資質が欠けていたように思う。安倍と橋本は、共通項もあるように思うが、ここは違う。
 安倍が、明らかに苦しい時でも自信満々でわが道を行く、というのはいいけど、ここまでくると、「困難を察知する触覚がちぎれているのではないか」という気もしてくる。それで結局うまくいかないこともたくさん出てきた。松岡の問題は、それを無視して、彼を国際会議で成果をあげさせることで解決できたかというと、そうではない。松岡は自殺してしまった。安倍はもっと早く対処しておくべきだった。自信満々でスピーチすることで参院選に少しでも良かったかというと、大敗した。結果論だが、こんなことなら、町村とか谷垣とか、面白味はないが安定感のある人が総裁だったほうが、参院選の結果ははるかに良かっただろう。彼らでは勝てそうもないが、そのかわりここまで大敗というのもなかっただろう。


 安倍は、この参院選大敗という結果を受けて、やり方を変えると言っている。人事も刷新すると言っている。国会対策も、強硬と言われた手法を見直し、民主党などと協調すると言っている。しかし、困難が横から来ても、前の目標に専念するという彼のイノシシ的な性格が基本的に変わることはないだろう。
 すると、今後、スキャンダルみたいな、政権の仕事の本質とは関係のないことが出てきた時にうまく対処できる人が安倍政権の中にいなくてはいけないことになる。それは、各仕事を持つ大臣ではなく、党3役とか、あるいはもし閣僚だとしたら、官房長官。たとえば今までだったら、松岡とか、赤城などの問題が起きた時に、首相がおっとり構えていても、「松岡は辞任するしかない」なんて言っちゃうような人。にらみが充分きくぐらいの長老で、しかもおせっかいに人事のことに口をはさんで、誰からも文句の出ない人。小泉内閣の場合、財相だったが、塩爺。こういう人が安倍内閣では不在だった。長老と言ったら、尾身財相、久間防相だけど、この二人が、そういうおせっかいな役をしようとした形跡は一切なかった。誰かそういう人がいるべきだ。それは誰かと言ったら、今朝の「報道2001」で、選対総局長の谷津義男が出ていたが、この人はそういう貫禄があるなあ、と思った。あるいは、森義郎元総理。つまり、充分にベテランで、年とっていて、しかも、すでに政局から一歩退いていてギラギラしてない人。つまり、派閥の領袖ではなくて、元派閥の領袖みたいな感じの人。議長に選ばれそうな感じの人。民主党でいえば渡部恒三みたいな人。あるいは河野衆議院議長みたいな人。もちろん河野は安倍とは水と油だろうからありえないが。生きていたら宮沢元首相みたいな人。引退していなければ塩爺みたいな人。と考えると、とりあえず頭に浮かんだのが上の2人だ。他に誰かいるのか分からないが。
 幹事長はもう麻生太郎で決まっているようだから、そういう人を、どこかに入れる。


 
 財務大臣与謝野馨がなるんじゃないか、という予測があるという。この人はものすごく定評のある政策通で、総理大臣になってもおかしくないんだという。この人がTVに出てきて何か喋る時は、たしかに勉強になるようなことをたくさん言うので、この人の話は好きだ。でも、小泉、安倍路線とは少し違い、小泉政権末期には、小泉−竹中VS谷垣財相−与謝野経財金相という対立があった。安倍が、これからの政権運営をどうしたいかにもよるが、もし、「今までの路線をさらに推し進めていく。しかし参議院での民主党優位という現実がある以上、目標に向かって突っ走るだけでは解決のつかない問題が山積している。そのためには、参議院対策、野党対策、マスコミ、スキャンダル対策、党内の派閥対策などができる調整能力のある人が強力な補佐役として必要」ということであれば、与謝野起用はありえないだろう。もし与謝野が起用されたら、それが意味するところは、従来の小泉−安倍路線を変更することを意味するだろう。つまり、消費税も大きく上げる。大きな政府とまでは言わなくても、小さな政府という路線ではなくなる。当然、今まで出してきた「骨太の方針」にも、かなり大きな変更があるだろう。僕は、安倍はそこまでは考えていないと思う。また、そういう大きな変更をする気がない、しかも今や泥舟のような末期的な安倍内閣を、与謝野が自分の考えを曲げてまで惜しみない協力することは考えら得ない。



 それから、防衛相は、小池百合子が辞意を表明しているので、交代することになる。小池は、参院選の直前に、自民党のジャンヌダルクになるか?と言われたが、けっきょくは2005年衆議院選挙で演じた刺客のような活躍をすることはなく、自民党は惨敗。今回、小池は防衛相事務次官の交代問題で色々あったので、辞めるのは、変な問題を後に引きずらない意味でもいいことだと思う。でも、小池が「辞める」と言ったのは、単に防衛大臣をもうやらないと言ったのか、それとも「今度は安倍政権の中には入らない」ということも示唆したのか?女神が安倍政権を見捨てたのか?小池は小泉内閣で環境相に任命されて以来ずっと内部から時の政権を支えてきたのだが、久しぶりに政権から距離をおくということか?小池は今までも、政界の渡り鳥と言われ、権力のにおいがするところに飛んでいく、みたいなことが言われてきた。僕の考えは、日本の政党のように、何でもありで、特に強いイデオロギーもなく、もともとごった煮みたいにいろんな考えが内部にあるようなものに、忠誠を誓う必要なんか別にないと思うので、小池みたいな渡り鳥でもいいではないか、と思う。小池は政党を移ったからといって、保守的で、外交防衛に高い関心を払うという態度は全然変わっていない。節操がないのはむしろ政党のほうであって。
 では、小池の後任は誰になるのやら。石破茂などは無難だろう。
 これはありえないと言っていいだろうが、こんなことがあったら面白いのにな、と思うのは、民主党の前原誠司に、「民主党を辞めて、防衛大臣に就任して力を貸してほしい」って打診する。もし「いいですよ。民主党を辞めてお受けします」と言ったら、そのままなってもらう。
 でも、それは考えにくい。前原はいくらなんでも「民主党を辞めるつもりはない」ぐらいは最低言うだろう。そしたら、「では民主党籍のままで防衛大臣に就任してほしい」と言う。それでも前原は断るだろう。でももし本当にそういうオファーを安倍がしたら、超サプライズだ。そういうオファーが面白いのは、前原は、11月1日で期限が切れるテロ対策特別措置法の延長問題で、小沢代表の態度に反対をしているので、これは民主党に揺さぶりをかけることになる。つまり、安倍首相が、「小沢さんはあなたと違う考えを持っているけど、総理である私は、あなたと同じ考えなんですよ」というのをアピールすることになる。こういうオファー1つで政界再編が始まるわけではないが、それに向けたすごい揺さぶりにはなる。

 それから、野党の議員を閣内に入れるというのは、日本ではほとんど考えられないことだろう。
 アメリカでは、民主党のクリントン大統領政権下で、共和党のウィリアム・コーエンが国防長官を務めている。もちろんアメリカと日本は政治制度が違うから、内閣というものがないアメリカでは当然、閣議とか、閣内不一致というものはないだろう。日本の場合は、内閣が意思決定を行う時には、全大臣の合議(つまり閣議)によってこれを行うことになっている。閣議の議決は、多数決ではなくて、全員一致によることとされている。「内閣は、行政権の行使について、全国民を代表する議員からなる国会に対し連帯して責任を負う」(内閣法第1条第2項)がその根拠である。だから前原が民主党籍のままで入閣したら、何か気に入らないことをしたら、閣議で反対をすれば内閣を麻痺させることができる。
 ただ、今の国会というのは、参議院での民主党の優勢という、今までに経験したことのない事態になっている。これからの国会運営は、未知数のものをたくさん含む。どっちみち、自民党と民主党は双方が歩み寄らなければいけないことになっている。それを考えると、あえて野党の政治家を閣内に入れるというのは、ひとつ実験的にでも考える価値があることかもしれない。実際は99.9%ありえないと思うが、いつ終わってもおかしくない泥舟政権が繰り出す超サプライズとして、こんなことがあったら面白いのになあ、という観点から。そして万が一前原が入閣して、閣内不一致を起こしたら、すぐに罷免すればいい。



 僕は、今の安倍政権は、特に年金問題については強い批判を持っている。記録が残っていないという問題ではなくて、民主党の菅直人などが「破綻しかけているのではなく、すでに破綻している」と断言する、年金制度そのものに対する姿勢に、前向きなものが見られないのには、失望する。もし安倍が、「今は経済の建て直しに全力投球をしているから、年金制度をはじめとする社会保障制度は、その後に取り組む」というのなら、僕は安倍を支持するかもしれない。でも安倍は、今の制度のままでずっといく、という態度をとっている。それがね。僕は厚生労働大臣には野田毅あたりに丸投げしてやらせたら、民主党なんかと連携したりして面白そうだと思うけど、これもまずありえないだろう。連立パートナーの公明党は、あくまでも今の制度を「100年安心」としてこだわる姿勢を示している以上、いじることは難しいだろう。



 今の内閣は、「仲良し内閣」とか言われて批判されている。そうじゃなくて、もっと派閥の均衡をとって、安倍に反対をしている派閥の長も入れるべきだ、というようなことも言われる。でも、もう派閥は小泉内閣の時に事実上解体されて、これから生き返ることは果たしてあるのだろうか?あるとしても、すぐには元気にならない。派閥の長を見れば、昔とは全然違って、みんな大人しいもんだ。だから安倍は今回も、小泉時代からのやり方を継承して、各派閥の要望を聞いたり、相談したり、ということは一切していないにも関わらず、それに対して特にどの派閥からも文句は出ていないようにみえる。これだけ弱っている安倍内閣に対しても、そういう要求が出ないということは、もう派閥は昔のようではないのだということだと思う。だから、自民党内の反主流の派閥の抵抗で内閣が傾くとか、そういう時代ではもはやないんだと思う。ということは逆に、強い派閥を味方にすれば政権が安定する、というのでもないということだと思う。だから、派閥の均衡を心がけた人事をしても、特に誰も喜ばないし、そのご利益もあんまりないんじゃないかな。


 思うに、小泉政権は、別に小泉が一人で活躍したのではない。経済・金融・財政では、竹中平蔵が大活躍していた。塩爺もなんか色々していたようだ。田中真紀子も、一人で頑張って鈴木宗男を外務省のまわりをうろついているのを追っ払った。道路公団の問題では、現東京都副知事の猪瀬直樹が頑張った。結果については賛否両論だが、とにかく頑張っていた。石破茂も、防衛庁長官としてはじめて入閣し、今では防衛関係の大権威みたいな貫禄を備えている。北朝鮮問題では、中山恭子と安倍晋三という二人の人材を発見した。後者はその活躍を認められ、数年後に総理大臣になるまでになった。
 それに比べて、今の安倍政権では、誰か出ただろか?今朝の「報道2001」によると、安倍内閣で大化けしたのは菅総務相だけだ、なんて言ってたけど、化け率は、小泉内閣の時に比べて、寂しい限りだ。

 今回の政権人事では、「ああこの人が起用されたのは面白い」とか「この人なら化けるかも」みたいなものを感じさせられなかったら、もうこの政権は末期だな、ということになるのではないか。
 では、そんな人がいるかと考えると、山本一太あたりをどこかで起用すれば面白いんじゃないかと思う。行政改革担当相の渡辺善美も、期待にたがわずそこそこ面白いと思うけど、もとから言動が目立つ山本なら、いいところで使って、ある問題を丸投げすれば、面白い結果も期待できるんじゃないかと思うのだが。官房長官がリスクが高いとしたら、副幹事長、あるいは副官房長官あたりはどうだろう。あと、平沢勝栄とか、もともとテンションが高めの人を入れたら、なんか活気があるように見えはしないか?

 安倍政権では、官邸機能の強化ということで、総理補佐官というのを5人ぐらい置いたけど、失敗に終わった。その中で、北朝鮮問題担当の中山恭子さんが今度の参議院選挙で政治家に転向したということはあったけど、全体としては、党の幹部からも「彼らは何をしているのか分からない」なんて言われるぐらいのお粗末な感じだった。教育再生担当の山谷えり子さんも、有識者を集めて何か発表していたけど、息吹文科大臣に批判されてシュンとなっておしまい、という感じだった。

 中山恭子が参議院選挙に出たのに対し、経済財政政策担当相の大田弘子は、出なかった。これは、たぶん大田さんは今度で閣外に出るということかな、という感じがする。彼女の評判は、能力についてはすごく高いと思うが、では政治的に何かやったかというと、特に何もやらなかったようだ。竹中みたいに、けんか腰でずんずん話をすすめていくというタイプとはほど遠かった。

 先週のNHKだったと思うが、田中直樹が、「国会議員だけではなくて、広く学会、財界からも人材を求め、竹中平蔵みたいに使うべきだ」みたいなことを言っていたが、直前に選挙があったので、それは難しいと思う。もし民間から入閣させれば、「なぜこないだの参議院選挙に出馬させなかったのか?」という批判が当然のこととして起こるだろうから。

 僕は、安倍内閣が発足した時の人事を見て、「あーあ…」なんてがっかりした。センスだけは簡単に直せるものではない。安倍さんには小泉さんみたいな、キラリと輝く発想はほとんど期待できないと思う。もう今日、夜が明けたら発表される人事は、きっと「これは手堅いな」というものになると思う。あとは、「手堅くて、何の新鮮味もなくつまらない」と言われるか、「手堅いが、一部新鮮な要素もある」となるか、どちらかだと思う。安倍政権のもとでいくらでも働く覚悟のできている勢いのある人として、山本一太がまず頭に浮かぶので、山本に頑張ってもらったらどうだろう、というのが僕の思うところだ。少なくとも「あーあ…」とは言わせないようなものにしてほしい。

安倍晋三 - livedoor Blog 共通テーマ