僕は20代のある時ふと、自分は結婚しないんじゃないか、と思い当たったことがある。それからは、結婚について誰かに聞かれると、自分は結婚の意志のないことを公言するようになった。実際にそうなった。
 今の日本では、結婚しない人が増えている。2005年の数字では、25歳から29歳の男性では71.4%が未婚だ。女子は59.0%。30歳から34歳では男47.1%、女32%。50歳では男15.4%、女6.8%。この数字は年々上がる傾向がずっと続いている。

 で、結婚する気がないという僕のような人間もいるし、結婚しようにもその機会がないという人も多い。そういう人は、出会いの場を求めたり婚活をしたりする。

 昔は、たとえば地域社会がしっかりしていた頃は、その基盤の中で、世話焼きおばさんが仲をとりもったりもした。また、会社の中で、社内恋愛ということもあっただろう。この2つは、地域共同体、カイシャ共同体という基盤のもとに男女が結びつくということだ。僕が20代だった頃は、たとえばナンパして結婚するなんて、犬じゃあるまいし、なんて言われたこともあったと思う。

 これは、結婚の基盤として、なにかしら共同体を背景にしているのが普通ということじゃないかと思う。
 たとえばアメリカ。アメリカはプロテスタントの国だけど、カトリックと違って、宗派がすごくたくさんあって、結婚も、宗派の中でされることがとても多いという。だから、人種がたくさんあるけど、意外とアメリカで人種を超えた結婚がないというのもそこに原因がある。逆にラテンアメリカは、自分は白人と黒人とアジア系などがすべて混じってて、民族的にみても10種類以上の血が混じってるみたいな人がたくさんいて、しかもラテンアメリカではそういうのが誇らしいことだそうだが、これはラテンアメリカがカトリックだからだと思う。カトリックはプロテスタントみたいに宗教共同体が細断されてないから。

 要するに、今の日本の未婚率の多さは、共同体の喪失と関係があるんじゃないかと思う。つまり、自分は結婚したくない、という僕みたいな人間の心理の背景には、自分は既存のどの共同体にも属していないという意識があると思うし、結婚したくても出会いがないという人にも、ほんとは地域共同体でもカイシャ共同体でもいいけど、どこかまともな共同体に属したくても、そういうものが壊れていて、求める人の前に現れないということがあると思う。

 少子化の原因は、結婚した人の出生率の低下にあるのではなく(それはほとんど変わっていないという)、未婚率の増加に主な原因があるとすれば、その根底には、共同体の喪失ということがあるのかもしれない。
 かつて日本の地域共同体は、農業社会から工業社会に変化する中で崩壊し、その工業社会が終わりを迎えた今、日本はもともと宗教の共同体がない以上、新たに人が結びつける何かを探さなくてはいけない。つまり;

農業社会:地域のつながり
工業社会:カイシャ内のつながり
IT社会: ?                   ということです。


 去年の衆議院選挙で、鳩山民主党は、地域社会の再生みたいなことも掲げた。たとえばNPOみたいなものが地域社会の中心で頑張ってもらう、みたいなことを、これは民主党がというより、鳩山さんが主導して言ってた感じがあった。それが有権者にどこまでアピールしたかは知らないが、どこか、新たしい日本がはじまる、みたいに期待した人もいたのかもしれない。それは今となっては幻想に終わったと言ってもいいと思う。鳩山さんは日本社会の体質を洞察できてなかったと思うし。民主党自体も、IT社会の秩序を作っていく、という意識がほぼなかったと思うし。(自民党にも充分あるとは思わない。)
 日本人同士が深く結びつけるような新たな仕掛けづくりが必要なんだと思う。けど、実際に日本人は、工業社会でのカイシャ共同体という成功例が忘れられないらしく、それを潰したのは小泉改革だろう、みたいに言って、要するに決して戻ってこない過去へのノスタルジーが重くて、どうしても明日の時代の中であらたな秩序を形成していこうという意識が弱すぎて、僕はそのことが日本の将来にとって最も懸念すべきことだと思っている。