UnsplashのAnastacia Dviが撮影した写真
日経新聞(9/16付け)の「春秋」欄に『きっかけはドジョウの不思議な生態だった』という記事があった。
きっかけはドジョウの不思議な生態だった。田んぼなどの酸素のうすい土壌では、えら呼吸に加えて「腸呼吸」をしながら生きている。ならば哺乳類で同じことが起きてもおかしくない。ブタのお尻に酸素をたっぷり含んだ液を注入すると、血中の酸素濃度が高まった。
思わずプッと噴き出す研究をたたえるイグ・ノーベル賞。2024年の「生理学賞」に、日本のチームの研究「哺乳類の尻呼吸」が選ばれた。率いたのはiPS細胞によるミニ臓器作製の先駆者である武部貴則博士だ。6年前、31歳の若さにして国立大学の教授に就いた。かの湯川秀樹よりも早い「出世」と話題になった。
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優れた科学研究は常識にとらわれない好奇心や探究心から始まる。「くだらない」と一笑に付されそうな発見や発明も、見方を変えればイノベーションの芽といえるだろう。斬新さではイグ・ノーベル賞は本家にまけない。日本人の受賞は18年連続だ。この国の科学力も若手の遊び心を生かせばまだまだ捨てたものでない。
さて、今年のノーベル賞受賞者の発表がされている。日経新聞(10/8付け)には『ノーベル賞受賞者の出身国』という記事があった。
ノーベル賞は成果発表から受賞まで20年以上かかるとされている。20〜30年代に米国内で盛んになった研究が50年代以降に認められて受賞につながったケースが多い。
日本は49年に湯川秀樹が物理学賞を受賞した後、受賞者数の伸びは低調だったが、2000年代に入り一気に増えた。23年までに25人が受賞し、世界第5位となった。
00年代以降に日本出身の受賞者が急増した要因は、高度経済成長期以降の科学技術分野への研究開発投資が他国より多かった点にありそうだ。
文部科学省の科学技術・学術政策研究所の「科学技術指標2024」によると、1981〜2000年の主要国の研究開発費の総額(実質額)で、日本は米に次ぐ2位(約220兆円)。ドイツの約1.7倍、フランスの約2.7倍だった。
ただ足元の20年間をみると、日本は研究資金や研究者数の伸びが、欧米の主要国のほか、中国や韓国などと比べても見劣りしている。質の高い研究論文数の世界順位では10位以下に低迷するなど、研究力の低下が指摘されている。今後、中長期的にノーベル賞3賞の受賞が続く保証はない。
イグ・ノーベル賞は日本人が毎年受賞しているようだが、ノーベル賞の受賞は今後どうなるだろうか。ノーベル賞の受賞には基礎研究も大事だ。そのためには研究資金も必要だし、若い研究者の柔軟な発想も求められよう。
くだらないと思われる研究も継続できる研究環境も求められる。