がん診断とイグ・ノーベル賞

日経新聞(9/15付け)に『がん診断、大腸が最多13万人』という記事があった。
国立がん研究センターは15日、2014年にがんと新たに診断された患者は86万7408人と発表した。部位別では男女全体で大腸がんが初めてトップとなった。罹患率が高くても死亡率が低い県もあった。同センターは「各自治体での今後のがん対策に生かしてほしい」としている。
(略)
14年に新たにがんと診断された患者は、前年から1万8578人増えた。男性が50万1527人で、女性が36万5881人だった。患者数を部位別にみると、男女全体では大腸がんが約13万4千人で、胃がん(約12万6千人)を抜いて初めて最多になった。汚染された水などから感染し、胃がんの原因となるピロリ菌の感染者が戦後の衛生状態の改善によって減ったためとみられる。

男女別では、男性で最も多いのは胃がん(約8万6千人)、肺がん(約7万6千人)、大腸がん(同)と続く。女性は乳がん(約7万6千人)がトップで、2位が大腸がん(約5万7千人)、3位が胃がん(約3万9千人)だった。
(以下省略)

大腸がんの発見では、内視鏡検査が必要となるが、座って内視鏡検査をする方が苦痛が少ないという。これを実証した医師に対して「イグ・ノーベル賞」が贈られた(日経新聞(9/15付け)。
座った姿勢での大腸内視鏡検査を自ら試し、苦痛が少ないことを実証した長野県の昭和伊南総合病院の堀内朗内科診療部長兼消化器病センター長(57)が「医学教育賞」を受けた。発表資料によると、授賞対象は「座って行う大腸内視鏡検査―自ら試して分かった教訓」と題した研究。大腸がん検査などで行われる内視鏡は、通常、横になった状態で肛門から管を入れる。
イグノーベル賞大腸がん検査

堀内さんは苦痛を減らす方法を探して自らが患者役になり、座った姿勢で容易に挿入できたため、試行を重ねたという。2006年に自身の体験談や研究内容を発表した。

がんに対しては早期発見、早期治療が求められる。大腸の検査でももっと患者の負担にならない方法が必要だろう。検査方法だけでなく、簡単に検査を受けられるように病院側の受入体制なども検討する必要があるのではないだろうか。

島津製作所は患者の血液から早期にがんを見つける診断サービスを10月から始めるという。大腸がんを9割以上の確率で発見できるそうだ(自由診療で検査費用は約2万円)。大腸がんの新しい診断方法につながるといいな。

こういいう記事に目がとまる年齢になってきたということかな〜










世界に1ペアだけの三角形

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朝日新聞(9/19付け)に『世界に1ペアだけ “周りの長さも面積も同じ直角三角形&二等辺三角形” 』という記事があった。
世界に一組だけ、特別な関係を持つ三角形が存在する――。
図形を扱う数学の幾何学に関する定理を、慶応大の大学院生2人が証明した。定理自体は小学生でもわかる内容。2人は「数学の奥深さや面白さを楽しんでほしい」と話している。

証明に取り組んだのは、幾何学の問題で、「辺の長さが全て整数となる直角三角形と二等辺三角形の組の中には、周の長さも面積も共に等しい組は存在するか」というもの。慶応大大学院理工学研究科で数学を学ぶ大学院生の平川義之輔さん(28)と松村英樹さん(26)の2人が昨年12月に挑み始めた。

2人はまず、三角形がたくさん出てくる幾何学の問題を、式を扱う代数方程式に変換させ、解がいくつ存在するか、という問題に置き換えた。その上で、現代数学の手法「数論幾何学」を用いて解いたところ、解が一つ存在することがわかった。

この結果から、周の長さと面積が共に等しいものは、相似を除いて、「135、352、377」の辺を持つ直角三角形と、「132、366、366」の辺を持つ二等辺三角形の1組だけと証明された。定理は今後、「平川―松村の定理」などと呼ばれる。

数学が生まれた古代ギリシャ時代には、「ピタゴラスの定理」など幾何学の問題は盛んに研究されてきた。平川さんは「私たちが証明した定理は、ギリシャ時代にも研究されていただろう。そんな定理が、数千年の時を経て、高度な現代数学の力で証明されたことはとても珍しく、また面白い」。松村さんも「(証明まで350年以上かかった)フェルマーの最終定理のような素朴な定理を証明することに憧れていたので、結果が出てうれしい」と話している。

研究成果の論文は、米国の整数論専門誌「ジャーナル・オブ・ナンバー・セオリー」に掲載された。

自分の名前が付いた定理なんてスゴイね。
発見された唯一のペアの三角形は、直角三角形と二等辺三角形ではあるものの、底辺は132と135と似ている。でもこれくらいでないと、周の長さと面積が共に一致しないんでしょうね。

論文名は、”A unique pair of triangles”で、こちらから見ることができる。









北海道地震、主要活断層が関与?

日経新聞(9/17付け)に『北海道地震、主要活断層が関与?―震源と深部で接続か』という記事があった。
北海道で震度7を観測した地震について政府の地震調査委員会が当初の説明を修正し、震源近くにある活断層「石狩低地東縁断層帯」の一部がずれ動いた可能性を否定できないとする見解を示した。同断層帯は今回の地震とどう関係しているのか、不明な点はなお多い。これまでの経緯や影響についてまとめた。

Q 活断層とは。
A 過去に繰り返しずれ動き、将来も活動する恐れのある地下の断層のことだ。国内に約2千あるとされ、1995年の阪神大震災や2016年の熊本地震などを引き起こしてきた。石狩低地東縁断層帯は南北にのびており、全体の長さが100キロメートル規模に達する長大な活断層だ。政府の地震調査委が重点調査する約110の「主要活断層帯」の一つに入っている。

Q 今回の地震に同断層帯はどうかかわっていたのか。
A 調査委は地震が起きた6日の夜に開いた記者会見では「今回の地震は同断層帯で起きた地震ではない」と説明していた。震源の深さが約37キロメートルに達し、同断層帯よりもかなり深い場所で発生したと考えられたためだ。

 しかしその後の分析で、震源となった断層の様子がわかってきた。長さが約15キロメートルあり、上端が地下15キロメートルまで到達している可能性があることが判明した。当初の想定より浅い場所まで断層がずれていた恐れが強まり、調査委は11日「同断層帯の深部とつながっている可能性を否定できない」として見解を修正した。調査委も地下深くの状態を把握し切れておらず、今後も分析や検証を続ける。

Q 今後の地震活動に影響はあるのか。
A 専門家が警戒するのが、今回の地震をきっかけに同断層帯が本格的にずれ動き、さらに大きな地震が発生することだ。調査委によると、同断層帯の南部はマグニチュード(M)7.7以上の大地震を発生させる恐れがある。

 大地震があると地下の力のかかり方が不安定になり、周辺で地震が誘発されることがよくある。2年前の熊本地震では震度7の大地震が2回起きた。地震発生から時間がたつにつれリスクは下がっていくと考えられるが、油断はできない。

今後も地震の発生メカニズムに関する調査は必要と思われるが、今回の地震の断層は傾斜77度の逆断層型で、すべり量は1.2mと推定されている(国土地理院)。こうした震源メカニズムにより強い揺れが狭い範囲に集中したり、大規模な斜面崩壊につながったのだろうか?

国土地理院では、厚真町の斜面崩壊に関する立体地図を公開している。自由に回転したり拡大できる。左は吉野地区、右は幌内地区での斜面崩壊の立体地図となっている。
(↓の地図は回転しませんのでご注意を)
厚真町吉野3D厚真町幌内3D

吉野地区は、山の麓に住宅が建てらていたことがわかる。山の反対側には川があり、この川の氾濫を避け、農地を広く確保するために山側に居住地を移したと聞いた。日本では、いろいろな災害を念頭においた対策が求められるということを教えられる。









ハザードマップ超活用法

週刊東洋経済(9/22号)の特集は「買って良い街 悪い街」。
そのなかに『災害リスクから家を衞ハザードマップ超活用法』という記事があった。
災害大国・日本での住まい選びは、駅近などの利便性だけでなく、安全で安心な立地かどうかも重要なポイントだ。
(略)
国土交通省が、堤防や下水道などのハード対策に加えて、洪水ハザードマップの基になる洪水浸水想定区域図の作成マニュアルを策定し、ソフト対策に乗り出したのは2001年。ハザードマップは「洪水」や下水道の排水能力を超えた浸水被害を示す「内水」のほかに、国交省が所管しているだけで「高潮」「火山」「津波」「土砂災害」「震度被害(揺れやすさ)」「地盤被害(液状化)」の計8種類がある。

広大な木造住宅密集地域を抱える東京都では、1975年から5年ごとに地震による建物倒壊と火災発生のリスクを評価する「地震に関する地域危険度測定調査」を実施して独自にマップを作成・公開している。これらを1つずつ調べるだけでも大変だ。

国交省の国土地理院では、各自治体のハザードマップを簡単に検索できるように10年ほど前に「ハザードマップポータルサイト」を開設した。当初は自治体のサイトリンクを張る「わがまちハザードマップ」だけだった。だが、2014年から国土地理院の地図に、複数のハザードマップや地形図などのデータを重ね合わせて見ることができる「重ねるハザードマップ」の提供を開始した。

担当者に聞くと、実際にハザードマップを作成しているのは地方自治体で、各自治体のデータを地図に重ねる加工作業を国土地理院で行うため、「提供するのに時間がかかることがある」と言う。使い方としては、「重ねるハザードマップ」で災害リスクを把握し、「わがまちハザードマップ」から自治体のサイトに移動し、「最新のマップを確認してほしい」と言う。

ただ、ポータルサイトの利用状況は「災害が発生した直後にアクセス数が急増するが、普段は多くない」のが実情のようだ。住宅の売買などでハザードマップを事前に確認する人は少ないのだろう。

災害リスク情報を不動産取引にどう活用するか。地盤調査会社の地盤ネットホールディングスでは、通常の地図に、災害リスク情報を重ね合わせて見ることができる「地盤安心マップPRO」を有償で不動産会社などに提供している。

その最大の特徴は、自社の地盤調査データと国土地理院が公表している浸水リスク、地盤の揺れやすさ、液状化リスク、土砂災害リスクの5項目を各20点の100点満点で点数化した「地盤安心スコア」だ。地図をクリックするだけで、調べたい場所の点数が表示される。東京都の市区町村の平均スコアのランキングは1位が利島村、2位 国分寺市、3位 西多摩郡瑞穂町。ワーストの62位は江東区となった。

また今回、「地盤安心マップPRO」を使い、地震による揺れやすさ、浸水・液状化の3つのリスクを重ね合わせた首都圏の地図を作成した。地図をよく見ると、湾岸や川沿いのリスクは高い。ただ、緑のエリア(低リスク)にも黄(中リスク)や赤(高リスク)が細かく混じっている。同じ地域でも場所によって状況は異なるので注意が必要だ。
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同社では2017年2月に地盤安心スコアが80点以上(安心エリア)の優良物件だけの不動産情報サイト「JIBANGOO」を開設し、これまでに680件ほど成約した。今年2月には、アパマンショップが「地盤安心マップPRO」を全店舗に導入し、顧客へ情報提供を開始した。大手不動産物件検索サイトにもこういった情報が表示されるのが望ましいが、ネガティブなデータを開示することへの抵抗感は強い。

ハザードマップの整備が進み、情報も手に入りやすくなっている。想定外の自然災害が発生する昨今、住む街を探すときに自ら情報収集していくことが必要となるだろう。

こんなにも多くのハザードマップが提供されていることは知らなかった。もう少し、わかりやすく提供することはできないものか、と思う。ただ、ハザードマップがどういう根拠で作成されたのかについても知る必要はないだろうか。2011年東日本大震災ではハザードマップが正しいと考え避難しなかったために被害にあったケースもあったという。

ハザードマップを絶対と思ってはいけないものの、いろいろな情報を集めて住んでいる地域の安全性を確認することが必要なのだろう。










70歳以上、2割超す

今日は敬老の日。

朝日新聞(7/17付け)に『70歳以上、2割超す』という記事があった。
日本の総人口に占める70歳以上の割合が、今月15日時点の推計で前年より0.8ポイント高い20.7%、人数は100万人増の2618万人となり、初めて2割を超えた。1947〜49年生まれの「団塊の世代」が昨年から70歳代になったことなどが影響した。
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65歳以上の高齢者が総人口に占める割合(高齢化率)は28.1%、3557万人で、いずれも過去最高を更新した。高齢化率は前年より0.4ポイント高くなり、高齢者数は44万人増え、比較可能な1950年以降伸び続けている。総人口は少子化などの影響で27万人減の1億2642万人。

男女別の高齢者数は、女性が2012万人(高齢化率31.0%)と初めて2千万人を超えた。男性は1545万人(同25.1%)。

日本の高齢化率は世界で最も高く、2位のイタリア(23.3%)より4.8ポイント高い。国立社会保障・人口問題研究所の推計では、高齢化率は25年に30%、36年は3人に1人が高齢者になる。総務省の労働力調査によると、高齢者の就業率は23.0%で、10年前より3.3ポイント上がり、主要7カ国で最も高い。

■高齢化率(65歳以上)が高い上位5カ国
1 日本     28.1%(3557万人)
2 イタリア   23.3%(1382万人)
3 ポルトガル  21.9%(225万人)
4 ドイツ    21.7%(1783万人)
5 フィンランド 21.6%(120万人)

2025年には、僕も高齢者の仲間入りだ。そのときは、3人に1人が高齢者ということになり、高齢者という言葉の意味も変わってくるのではないだろうか。高齢者の就業率も23%ということだが、この先はもっと増えていくかもしれない。

社会保障に不安を抱える高齢者も増えてくるだろうから、働けるうちは働きたいという高齢者も増えるのではないか。高齢社会を迎えている日本では、これまでの社会システムが適用できなくなってくると思われる。高齢化では世界の先頭を走っている日本。どんな対策をとっていくのか、世界から注目されている、かも。










IT進化で受験がなくなる?

日経新聞(9/14付け)に『IT進化で受験がなくなる?』と題してデジタルハリウッド大学大学院教授の佐藤昌宏氏が寄稿していた。
IT(情報技術)を教育に取り入れた「エドテック」が学びを大きく変えつつある。ITを活用した教育改革を唱えてきたデジタルハリウッド大学大学院の佐藤昌宏教授は「学校の役割が変わり、受験がなくなる日が来るかもしれない」と話す。

デジタル技術を活用した教育のイノベーションが起きている。大学の講義をインターネットで受けられる大規模公開オンライン講座(ムーク)は受講者が急拡大し、米国では当たり前の存在になった。人工知能(AI)や仮想現実(VR)など先端技術に加え、スマートフォンや汎用のアプリケーションなどの普及も大きく影響している。

エドテックが世界で注目されるのは、教育を効率化できるという単純な理由だけではない。これまでの教育、学校といった仕組みや、学習者の学びを大きく変える可能性があるからだ。

具体的には、ネットにつながったパソコンさえあれば、いつでもどこでも誰でも知的好奇心を満たせるようになり、学びを自分で設計できるようになった。ムークの修了証を交流サイト(SNS)に掲げ、学習歴やスキルを示す人もいる。教える側の視点だった「教育」が、学習者主体の「学び」に変わってきたことを意味している

ブロックチェーン技術の活用も注目される。デジタル技術を活用して学んだ日々の履歴情報を、原理的に改ざんできない安全な状態で流通できるようになる可能性がある

そうなれば一発勝負の入学試験の意味は薄れる。日々何を学び、何を習得したかをブロックチェーンで詳細に把握したほうが、成績評価としてはるかにフェアであるからだ。

個人情報の問題もありそうだけど、個人の学習成果がネット上で安全に公開できるようになれば、入試だけでなく就職にも使えそうだ。いま文科省が進める高大接続改革の一環で、高大接続ポータルサイト「JAPAN e-Portfolio」がつくられている。高校生の学校内外での活動をeポートフォリオとして記録していく仕組みとなっている。

eポートフォリオが入試に使えるかどうか、まだわからないものの、こうした仕組みが高校生だけでなく、大学生などにも広がっていくようなことにるのだろうか・・・










五輪ボランティア参加で単位認定?

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https://tokyo2020.org/jp/special/volunteer/

NHK『東京五輪パラ ボランティア 大学の半数が単位認定を検討』というニュースがあった(9/6付け)。
東京オリンピック・パラリンピックの開催に向けて、組織委員会などが運営などに関わるボランティアとして、期待しているのが学生です。これについて、都内130余りの大学にNHKが取材したところ、回答した半数近くがボランティアに参加すれば、単位認定する方向で検討していることがわかりました。専門家は「ボランティアは本来、自発的に参加すべきものであり、単位で誘導するようなやり方は好ましくない」と指摘しています。

東京オリンピック・パラリンピックの運営にあたり、東京都と組織委員会は、11万人のボランティアを集めることにしていますが、その中心を担う存在として、期待されているのが学生です。

文部科学省もことし7月、全国の大学に学生のボランティアの参加を促す通知を出しています。

この学生のボランティアについてNHKは、都内の国公私立138の大学にアンケートを実施し、86%に当たる119校から回答を得ました。

このうち、学生のボランティア参加について大学の考え方を尋ねたところ「学生の自主性に任せる」が50校、「積極的に参加してほしい」は48校で、自主的な参加を求める大学が僅かに上回りました。

一方、ボランティアに参加できるよう大会期間中の授業や試験日をずらすことを検討しているか聞いたところ「その予定がある」などと答えた大学は79校で、全体の66%に上りました。

さらにボランティアへの参加を単位として認めるかどうか聞いたところ「認定する予定がある」と答えたのが亜細亜大学や日本体育大学など4校、「検討している」が55校で、全体のほぼ半数の49%の大学が単位認定することを検討していました。

大学教育に詳しい東京大学の小林雅之教授は「ボランティアは本来、自発的に参加すべきものであり、災害などのボランティアとオリンピックとではそもそも性質が異なる。大学が学生に対し、単位で誘導するようなやり方はのぞましくない」と指摘しています。
(以下省略)

各地で起きている災害では多くのボランティアが参加しているが、こうした災害ボランティアでも単位を認定しているのだろうか。五輪のボランティアに参加して単位を認定する大学は、きとんとした説明責任が求められるのでははいだろうか。

単位で学生の参加を促すというのは、ボランティアという自主的な活動とは異なるように思う。いっそのことアルバイトにした方がすっきりするのではないだろうか。五輪の開催・運営には巨額な費用がかかっており、アルバイト費用くらい捻出できるのではないか。

本来の授業や試験日を五輪のために圧迫することは、学生の学ぶ機会を奪うことにもつながるのではないか。五輪の運営側はもっと慎重に考えるべきだろう。でも、大学は文科省には弱いからな〜










北海道胆振東部地震での免震建物の状況

北海道胆振東部地震では最大震度7を記録しました。北海道にも多くの免震建物がありますが、震源に近いところに建っている病院の調査を行いました(といっても私は参加できていませんが)

↓の左は苫小牧市立病院、右は千歳市民病院。建物の位置は、地震ブログで確認できます(全ての免震建物が掲載されてはいませんが)
苫小牧病院千歳市民病院

いずれの建物も被害はなく、免震層の変形は5cm程度となっていました。地震計も設置されていましたので、今後詳細な分析が報告されることを期待します。

気象庁の速報『「平成30年北海道胆振東部地震」について(第7報)』(PDF)では、胆振地方中東部の厚真町鹿沼で長周期地震動階級4を観測していたことが報じられています。

長周期地震動階級とは、地上に設置している地震計の観測データから求めた絶対速度応答スペクト(減衰定数5%)の周期1.6秒から周期7.8秒までの間における最大速度で求められています。階級4は、速度応答が100cm/s以上を記録したことを意味しています。

長周期地震動といっても、熊本地震のときに観測された地震動とはずいぶんと異なるようです。免震構造に対する長周期地震動階級は減衰5%ではなく、10%とか15%で計算しないと実際の応答とは対応しないのかもしれません。









高減衰制震構造の振動台実験

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建設通信新聞(9/3付け)に『高減衰制震構造の振動台実験』という記事があった。
東急建設(PDF)と西村功東京都市大工学部建築学科教授は、相模原市の東急建設技術研究所の大型振動台で、高減衰制震構造システムを組み込んだ新型ハイブリッド制震構造の公開振動台実験を実施した。約4分の1スケールの4層鋼構造試験体に3種類の地震波を与え、制震構造の減衰性能を確認した。

パッシブ型の制震構造で、免震構造に使う積層ゴム支承と制震構造に使うオイルダンパーを組み合わせていることが特徴。振動数5ヘルツの建物に対し10%の減衰率を達成している。

これまで西村教授の提唱する振動制御理論と小型振動台実験で学術的に評価してきたが、大型振動台で実験することで実在建物の制震補強工法として技術的に実用化できることを確認した。

従来のパッシブ型制震構造と比べて約2倍の地震動に適応できるため、設計で想定した制震性能を発揮することが難しかった中低層建築物の合理的な制震システムとして実用化が期待できる。工期やコスト面で地震対策が難しい既存不適格建物に対しても、経済的で高性能な制震補強技術として適用できるほか、災害時の防災拠点となる小中学校や病院、消防署などの中低層公共施設に採用することで防災・減災に寄与するとしている。

西村研究室では、従来の層間型のパッシブ制震構造について、構造モニタリング技術などの発達により多くの実在建物で地震観測データが得られると、設計で想定するような減衰性能が必ずしも発揮されていないことが分かってきたとして、独自の振動制御理論を構築。建築架構の減衰率と振動数は一定の関係を有しながら変化し、高い減衰性能を発揮して地震時の構造的な損傷を低減するには大きな振動数の変化が必要であるとし、この構造形式を「部分免震構造」として特許登録した。

東急建設と東京都市大学は2020年度を目標に実在建物の制震補強を実現し、新型ハイブリッド制震構造の社会実装に向けて取り組む。

試験体をみると、下層部の2層に積層ゴムとダンパーが仕込んである。この積層ゴムによって建物の振動周期(剛性)を調整し、効率よくダンパーで減衰性を高めようということなのかな。免震層を2つ以上設ける複層免震構造などの研究もなされてはいるが、建物内に免震層を複数設けることで、制震性能を高めることを目指しているのだろう。
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基礎免震構造は免震層でほとんどの地震エネルギーを吸収し、上部構造の応答変形を小さくできる優れた構法だと思っている。しかし、さまざまな要因で基礎部分に免震層がつくれない、より高い効果を目指すために上部構造にダンパーを組みこんでエネルギーを吸収させるハイブリッド構法など、さまざまな展開がなされている。

このようにして技術は発展していくのだろうが、本質は見失わないようにしないといけない、と思っている。









平成30年度一級建築士試験問題

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今年の1級建築士の学科試験において、構造分野の初出題率は13%と低く、過去問題と類似の問題が出ていたそうだ。
初出題の問題のなかで、耐震設計に関する出題として以下があった。
建築物の耐震設計に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。
1.鉄骨造の建築物において、張り間方向を純ラーメン架構、桁行方向をブレース構造とする場合、方向別に異なる耐震計算ルートを採用してもよい。

2.鉄筋コンクリート構造において、部材のせん断耐力を計算する場合のせん断補強筋の材料強度は、JIS規格品の鉄筋であっても、せん断破壊に対する余裕度を確保するために基準強度の割増しはしない。

3.保有水平耐力は、建築物の一部又は全体が地震力の作用によって崩壊形を形成するときの、各階の柱、耐力壁及び筋かいが負担する水平せん断力の和としてよい。

4.各階の保有水平耐力の計算による安全性の確認において、ある階の偏心率が所定の数値を上回る場合、全ての階について必要保有水平耐力の割増しをしなければならない。

免震・制振構造に関する問題もほんの一部だけど、出題されていた。
建築物の構造設計に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。
1.制振構造において、ダンパーのエネルギー吸収効率は、一般に、主架構とダンパーとの接合の構造形式を間柱型とするより、ブレース型とするほうがよい。

2.免震構造において、積層ゴムアイソレータの2次形状係数S(全ゴム層厚に対するゴム直径の比)は、主に座屈荷重や水平剛性に関係する。

3.プレストレスコンクリート造の梁は、一般に鉄筋コンクリート造の梁に比べて、地震後の残留変形が大きい。

4.コンクリート充填鋼管(CFT)構造の柱は、鉄骨構造の柱に比べて塑性変形能力が優れているため、軸力比制限や鋼管の幅厚比制限を緩和することができる。

最初の問題の正解は「4」で正答率は31%、2つめの問題の正解は「3」で正答率は74%だったそうだ。こうした学科試験で正解できないと建築士の資格を得ることができないわけだが、正しい答えを1つ選ぶ回答方式をこれからも続けていってもいいものだろうか。

大学入試センター試験も、正解が一つだけとは限らない問題を出したり、記述式問題を出題する方向に変わろうとしている。知識だけでなく、思考力・判断力などの学力の3要素を問う問題に変わろうとしている。建築士試験では、もちろん知識も大切だけど、それ以上に必要なものもあるような気がする、な。









September 11から17年

17年前の9月11日は、米国ニューヨークなどで飛行機によるテロ事件が起きた日だ。

ニューヨークにあったワールドトレードセンター(WTC)の2棟の超高層ビル(↓の写真)に飛行機が衝突して、2棟とも崩壊してしまった。
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2001年の今日、出張先のホテル(国内です)でテレビを見ていたら、WTCに飛行機が衝突し、煙をあげている映像が映し出されていたのを今でも覚えている。最初は何が起きているのか、まったく理解できなかったが、テレビを見ている間に建物は崩壊していった。

今では、WTCの跡地(写真の緑地の中にある2つの四角い部分)を囲むように高層ビルが建設されており、跡地はメモリアルパークとして整備されている。
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ずっと、ニューヨークには行くことができていないが、再びWTC(跡地)を訪ねてみたいものだ。










超高層建物の揺れを振り子で低減

建設通信新聞(8/31付け)に『大成建設と三菱重工機械システム/T-Mダンパーの作動性確認、安全実証』という記事があった。
大成建設と三菱重工機械システムは、共同開発した屋上設置型の高性能振子式大型制振装置「T−Mダンパー」の振動実験を実施し、性能を実証した。3分の1スケールの試験装置に三軸振動台で地震波を与え、揺れの低減効果や上下動を伴う揺れに対する装置の安全性・作動性を確認した。また、数値解析モデルとも一致した実験結果を得た。200mの超高層建物では装置の設置により、長周期地震動で発生する建物の揺れを最大で3割低減できる。(大成建設のプレスリリース) 
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T−Mダンパーは3つのフレームと重り、オイルダンパーなどで構成する。外、中、内フレームと重りをワイヤで直列につなぎ、地震時には建物の揺れに対して揺れを抑える方向に振り子が作用する。重りに集まった地震エネルギーはフレーム間に設置した新開発のロングストロークオイルダンパーで吸収し、建物の揺れを低減する。

マスダンパーは重りの可動量と重量で制振性能が決まるが、T−Mダンパーは3段振り子式としたことで、単振り子式と比べ振り子の可動範囲を2倍の約4mまで拡大でき、軽い重りでも高い制振効果を発揮する。また、設置にかかるコストも抑えられる。風揺れ対策用として使われていた装置を改良したもので、2016年から開発を進めていた。

今回の実験では、実機の3分の1となる幅4.5m、奥行4.5m、高さ2m、錘重量5.6t、最大変形量1.3m、振り子周期3.3秒の試験装置を制作。三軸振動台を使い、地震時の作動や振り子周期のほか、水平方向の揺れに加えて上下動が作用した際の装置の安全性や作動性を検証した。

その結果、各段の振り子がスムーズに作動し、想定どおりの振り子周期を確認した。また振り子が浮き上がる上下動がある場合も損傷が生じることなく安全に作動することを実証した。数値解析で想定した結果とも一致し、安定した制振効果を確認した。

同社では長周期地震対策として、新築や改築の超高層建物への適用へ提案を進めていく。

中国の上海には、高さ632mの上海中心(上海センター)が建っている。この建物の最上部にはTMDが設置されている。展望台から見ることもできるそうだ(実際に見たことはないが)。このTMDは多段振り子のように複雑ではなく、単純な構成となっている。ただ、減衰装置としてはオイルダンパーなどではなく、渦電流(Eddy Current)を使ったダンパーとなっている。
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高さ200mの建物の最上部が1mの変形をした場合、振動の周期が4〜6秒とすれば最大速度は秒速1m〜1.5m、最大加速度は100〜250ガルとなる。こうした揺れが数分も続くことを考えれば、TMDや制振ダンパーなどで減衰性能を高めることは不可欠だろう。










「クローゼット型」衣類清掃機

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日経新聞(8/29付け)に韓国で開発された『「クローゼット型」衣類清掃機』の紹介記事があった。
自宅でスーツやシャツのシワ取りや除臭が手軽にできるクローゼット型の衣類清掃機(LG Styler)が韓国で人気だ。LG電子が数年かけて単独で市場開拓した成果が表れ、業界推定では2018年の韓国市場は前年比2倍の30万台になる見通し。ライバルのサムスン電子もこのほど参入した。1台150万ウォン(約15万円)前後と高額だが、忙しい共働き世帯などから好評を博している。

「これ1台あれば、衣類をクリーニングに出す必要がなくなります」。サムスンが21日にソウルで開いた衣類清掃機「エアドレッサー」の発表会。ゲストとして登壇した女性アナウンサーは新製品の集じん、殺菌、脱臭、シワ取りの各機能を繰り返し強調した。

エアドレッサーは更衣室のロッカーに似たクローゼットタイプで、スーツなら1度に上下3着を収納可能。内部に噴射される空気と蒸気、備え付けのフィルターと光触媒のにおい分解装置を通じて、1回約25分の稼働で衣類を毎日きれいに保てるよう設計した。
(略)
「きれい好きや、営業職など人と接する機会が多い人がよく購入していく」。ソウルの百貨店の家電売り場。LG電子の販売員は同社の衣類清掃機「LGスタイラー」の売れ行きを聞くと笑顔をみせた。今年は毎月50台強が売れるという。

LG電子は販売実績を公表していないが、17年は韓国で約15万台を売ったもよう。同社関係者によると、15年末に大幅にモデルチェンジして以降、じわじわ人気が出てきた。クリーニング店のように衣類がパリッとするわけではないが、朝起きてから出勤するまでの慌ただしい時間の中でもボタン1つで仕事着をきれいにできる利便性が受けているという。

万が一、子どもが中に入っても内側からも扉を開けられるので、とじ込められる恐れはないという。

日本でも購入できるようだが、果たして売り上げは・・・

雨でパンツ(ズボン)が濡れてしまったときや、真夏でジャケットが汗だくになったときに有効なのかな。もっと技術開発が進んで、本当にクリーニングをしたような状態にできるといいかな〜

でも、家電はどこまで進歩するのだろうか。そのうち、人間が料理や掃除などをしなくても良い時代がくるのだろうか。そうなると、いまの生活スタイルも変わりそうだし、住宅のデザインも変わる必要があるかな。









北海道胆振東部地震

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<出典:東洋経済

9月6日の午前3時7分頃、北海道胆振(いぶり)地方を震源とする地震があり、最大震度7を観測しました。すでにテレビなどでは繰り返し報道されているように厚真(あつま)町では大規模な土砂災害が発生しています。この土砂崩れは火山灰層が滑ったと推測されています。それにしてもこれだけ大規模な崩壊は目にしたことがありません。

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<出典:ハザードラボ

この地震について、政府の地震調査委員会は、地震の発生原因を内陸の地下深くで断層がずれ動いた逆断層型の「地殻内地震」だとして、地震活動の西側にある「石狩低地東縁断層帯」で発生した地震ではないとの見解を示しています。

観測された地震動については、防災科研筑波大の境研究室で地震波形やスペクトルが公開されています。これを見ると、地震動の卓越周期は1秒以下となっています。北海道には免震建物も多く建っていますので、地震時の挙動が気になりますね。札幌市内の免震建物は5cmほど動いたという情報もあります。

いずれにしても、被害にあわれた方々のご無事をお祈りいたします。









熱中症の監視、ヘルメットで

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このごろは猛暑も少なくなってきたものの、日経産業新聞(8/29付け)に『熱中症の監視、ヘルメットで』という記事があった。
戸田建設と村田製作所は、ヘルメットにセンサーを取り付けて健康状態を管理できるシステムを共同開発したと発表した。センサーは作業員の脈拍数やヘルメット内・外気の温度などを記録し、独自のアルゴリズムで熱ストレスを測定して熱中症の予防に役立てる。量産化に向けた最終準備を進めており、来春から戸田建設の一部の現場に導入する予定だ。

両社は2016年から共同開発してきた。生体情報や周辺の環境情報などを取得するデバイスは付け忘れを防ぐため、作業員の必需品であるヘルメットに装着する。ヘルメットの前部とヘルメットを頭部に固定するバンドの間に生体センサーを設置し、作業員の脈拍数や活動量などを記録する。ヘルメットの後部の外側には環境センサーも配置し、現場の気温などを記録できる。デバイスのバッテリーや通信機器も搭載している。

センサーが得た情報はクラウド上で解析し、熱中症の危険性が高まった場合などは現場監督が持つスマートフォンや事務所のパソコンに通知する。情報解析のアルゴリズムは2社に加え、豊橋技術科学大学とも協力して精度を向上した。

従来の健康管理用のウエアラブル端末は生体情報を取得するため、皮膚に接触する必要があった。今回のデバイスは非接触型なのが特徴。サイズや重量はヘルメットに装着する一般的なヘッドライトと同程度に抑えられているため、違和感なく装着できる。デバイスは充電すれば繰り返し使用可能で、1回の充電で2週間から1カ月は連続稼働するという。

建設業界は熱中症の発症例が多い。厚生労働省によると17年の職場での熱中症による死傷者のうち、約4分の1が建設業だった。戸田建設の現場でも今年7月末時点で75件の発症例があった。

ゼネコンでは大林組が新型の熱中症予防システムを開発し、長谷工コーポレーションは繊維メーカーのクラボウが開発したセンサー付き衣料を使った熱中症対策の実証実験に取り組む。各社が現場の安全管理の高度化に力を入れている。

ヘルメットって、熱がこもったりしないだろうか。またヘルメットの下にタオルなどを巻いている場合もあるけど、そうした条件でも正しく測定ができるということなのかな。

いずれにしても、熱中症を防ぐためには、新しい技術開発も求められるということだろう。そもそも、夏場に外で仕事をしないといけないという作業条件をなんとかできないものだろうか・・・










就活の指針を廃止?

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朝日新聞(9/4付け)に『経団連会長、就活指針の廃止表明』という記事があった。
経団連の中西宏明会長(日立製作所会長)は3日、新卒学生の採用選考に関する指針について、2021年春入社の対象者から、取りやめる考えを示した。経団連が廃止に踏み切れば、1953年の「就職協定」に始まった就職活動のルールがなくなることにもなりかねない。ただ、正式な機関決定はこれからで、大学など各方面からの強い反発も予想される。

定例記者会見で明らかにした。中西会長は指針への対応を問われ、「学生のことなどすべてを経団連が采配しているわけではない。それなのに、いいの悪いのと批判を浴びる。終身雇用など基本的なところが成り立たなくなっている。一斉にやることもおかしな話だ」と強調。「もう何月解禁とは言わない。指針も目安も出さない」と述べた。

経団連は現在、就活日程に関する指針を「3月に説明会解禁」「6月に採用面接など選考解禁」と定め、約1600社の会員企業に順守を求めている。政府もこの指針をもとに各経済団体に周知している。ただ、優秀な学生を獲得したい企業側が非公式な形で学生と接触。事実上前倒し状態となり、指針が形骸化していると指摘されてきた。

現在の指針は、今の大学3年生にあたる20年春入社までが対象。2年生の21年春入社についての指針は出しておらず、今秋に改めて検討する予定だった。学生の活動が東京五輪・パラリンピックの時期と重なるとして、指針の見直しも取りざたされていた。

中西会長は会見で、指針を撤廃した場合の学生への影響を問われ、「学生側の意見はしっかり見えていない。若い人たちと対話しながら就職のあり方を考えないといけない」と述べた。さらに「政府の方で多岐に議論するのであれば徹底的にやりたい」と述べ、就活ルールの再構築に前向きな姿勢も見せた。

経団連が指針を取りやめた場合、大学や学生に大きな影響を与えそうだ。私立大学からは現行ルールの維持を求める意見も公表されているほか、経団連内部からも「何もない状態でいいのか。指針ではなく、別の形に変わる可能性もある」との見方も出ている。

中西会長は一部の副会長らとも話し合いを進めていることを明らかにし、「今のところ、反対意見は出ていない」という。今後、正副会長会議で話し合って合意を取り付けるとみられるが、「経団連がやめることと就活のルールがあることは別問題」としており、今後、政府や大学を巻き込んだ議論となりそうだ。

そもそも、大学在学中に就職先を決める必要があるのだろうか?
学生は在学中に卒業後の就職先を決めたい、企業側は新入社員を確保したいという両者の思惑が一致して、現行のような制度になってきたのだと思われる。しかし、在学中に就職活動をすることで勉学に支障が出るという意見がある一方で、早くから企業研究やインターンシップを行うことで就職後のミスマッチを減らせるという意見もある。

現実問題として、多くの大学生は、大学を「就職予備校」と捉えているのではないか。大学で何を学ぶかよりも卒業後のことに関心があるように思われる。もちろん、大学で勉強したい、学びたいと思っている学生もいるけれど。でも、就職をどうするかは、学生共通の一番大きな問題であるのは間違いない。

企業による新卒一括採用は、学生にとってもメリットがある。極端にいえば、大学であまり勉強しなくても、採用面接などをうまくこなせれば、そこそこの企業や大企業に就職できたりする。結局、企業は学生に何を求めているのだろうか。

でっ、こういうやり方はどうだろう。
まず、大学入学を9月にする。
ちょっと前に話題となった秋入学だ。高校3年の1月〜3月にセンター試験や大学の個別入試が行われている。しかし、1月は雪が降ったりして、受験には過酷な環境である。全国一斉に同じ試験を実施するとしつつも、受験環境には差がある。そこで、入試を4月とか5月に実施するというものだ。受験を行う大学は授業との兼ね合いもあり、大変かもしれないが。入学する大学が決まれば、入学に備えての準備とか、長期の旅行などに行ってもいいだろう。

大学在学中は、授業のほかに、企業研究やインターンシップなどで将来の進路を考えていく。しかし、現状のような就活や採用活動はなし。

9月に入学すれば、卒業は7月とか8月になる。
企業に入社する来年4月までの半年間に、企業の採用試験や面接をうけることにする。もう大学は卒業しているので、学業に支障が出ることもないし、企業側は大学4年(もしくは6年)でやってきたことを把握して、採用を決めることができる。学生も採用では大学生活が評価されることを知れば、大学生活をより充実させようと行動するのではないだろうか。

いかが?








リベラルアーツとシティズンシップ

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「科学」(8月号)に東京大学の藤垣裕子先生が『科学者の社会的責任』(第7回)と題して書いている。その中から「リベラルアーツとシティズンシップ」について抜粋して紹介する。
リベラルアーツとは、人間が独立した自由な人格であるために身につけるべき学芸のことを指す。ラテン語のartes liberales(アルテス・リベラレス)を語源とし、古代ギリシャを源流とする概念であり、人間が奴隷ではなく自立した存在であるために必要とされる学問を意味する。

この概念は、ローマ時代の末期に自由7科(文法学、修辞学、論理学、代数学、幾何学、天文学、音楽)の形で具現化され、中世ヨーロッパの大学での教育の礎を提供した。現代の日本に奴隷制度はないが、自立した自由な人格であるためには何が必要だろうか。現代の人間は自由であると思われているが、実はさまざまな制約を受けている。日本語しか知らなければ、他言語の思考が日本語の思考とどのように異なるのか考えることができない。また、ある分野の専門家になっても、他分野のことをまったく知らないと、目の前の大事な課題について他分野のひとと効果的な協力をすることができない。気づかないところでさまざまな制約を受けている思考や判断を解放させること、人間を種々の拘束や制約から解き放って自由にし、自立した思考をするために必要な思考や技芸がリベラルアーツである。

このようなリベラルアーツは、ただ多くの知識を所有しているという静的なものではない。自ら思考する力が必要となる。自分とは異なる専門や価値観をもつ他者と対話しながら、他分野や異文化に関心をもち、他者に関心をもち、自らのなかの多元性に気づいて自分の価値観を柔軟に組み換えていく。そのような開かれた人格を涵養するのがリベラルアーツ教育である。
(略)
開かれた人格を涵養するためには、専門分野の枠をただ越えるだけでなく、枠を「往復」する必要がある。(略)往復の力を身につけてこそ、「壁を所与と考えない人」「既存の壁を再編する制度設計をする人」の育成が可能になるだろう。そこには、個人や組織の責任追及にとどまらず、新たな制度設計を行う力、制度・規則は自分でつくるものという能動性、そして一度つくったものを何度でも書き換えることができるという意識(壁を固定して考えない)の醸成がある。壁を固定して考えない自由な思考は、リベラルアーツの原点でもある。バートランド・ラッセルの言葉にもあるように、「教育の主な目的は、これまであたりまえと思われてきたことに対して問いを発し、疑ってかかるよう」勇気づけることである。

こうしたリベラルアーツ教育は、実はシティズンシップ教育とつながっている。シティズンシップとは市民性を指し、市民が市民権を責任をもって行使することを指す。市民を単なる経済活動の中の受動的アクターとして見るのではなく、能動的な主体としてみる見方である。たとえば米国には、気候変動の公平性(クライメートジャスティス)を唱え、自国をふくむ先進国のCO2排出量規制をめぐる行動は、負担の公平性という意味である種の不正義であると訴える運動がある。そのことによって米国政府を動かそうとする。そういったことを能動的に行うのがシティズンシップである。このように、市民の側から世界を変えて行くための市民の力、シティズンシップを涵養することは、明らかに公共空間を支えると考えてよいだろう。
(略)
リベラルアーツやシティズンシップ(能動的な市民性)を考慮すると、科学者の助言のありかたや、政府から市民への発信のありかたも変わっていく必要がでてくる。たとえば東日本大震災直後、政府および専門家は、無用なパニックを避けるために安全側に偏った情報のみ流し、ただちに問題ないと言い続けた。幅があっても偏りのない系統的知識を流すことができなかった。しかし、無用なパニックをおこすほど日本人の知性は低いのだろうか。政府や専門家は、国民のリテラシーを低くみていたからこそ、安全側に偏った情報を流したのではないか。そして逆説的なことに、安全側に偏った情報しか流さない政府を市民が信用しなくなるという現象がおきた。
(略)
専門家の意見は割れて当然であると市民が考え、異なる意見をいう複数の専門家の意見を聞いたうえで最後は市民が決める必要がある。そのためには、市民の側も、専門家に行動基準を一つに決めてほしいと丸投げするのではなく、幅のある情報のなかから自ら選択する力(シティズンシップ)をもつ必要がある。そのような意味で、専門家の社会的責任は、市民性の成熟度、そして社会の成熟度の関数なのであり、市民や社会との関係をどう構築するかによって影響を受ける。したがって科学者による助言は各国における市民性の成熟度や文化差といったものとの関係を考慮する必要があるだろう。

同時に、最先端の科学技術と社会の接点に発生する簡単に答えのでない問題について共に議論することを重視した場合、現在の科学者の論文数のみに偏った業績評価制度は、再考されるべきだろう。現代の業績は論文数に重きがおかれているために、社会に対する責任を考える余裕がない。これは研究不正の土壌でもある。
(略)
土地を耕すcultivateという言葉は、文化culture、そして教養cultureにつながる。公共空間での議論に科学者が責任を果たし、かつ公共空間を育てる技術文化の醸成とそれを支える市民の教養が求められる。それは社会全体としての「生きる力」につながるだろう。

日本における市民性の成熟度は、どくらいだろうか。
依然として、政府(行政)や専門家に「正しい」意見を求める傾向がないだろうか。自分たちで考えるためには、シティズンシップやリベラルアーツ教育が求められるのだろう。では、大学では、リベラルアーツ教育はどれくらいなされているのか。教養科目(一般教養)は所定の単位数を修得しないと卒業できないが、それがリベラルアーツ教育とみなしていいものかどうかは、大学によって異なるだろう。

東京大学では、後期教養教育というものを実施している。後期教養教育とは、専門を学んだ後のリベラルアーツ教育との位置づけで、知のプロフェッショナルとして柔軟かつ責任ある思考ができる素地を培います、という。

これから大学の役割、研究者の社会的責任などをしっかり考えていくことが求められている。









過剰なる災害報道

週刊東洋経済(9/8付け)の「少数異見」欄に『もはや有害無益な過剰なる災害報道』という記事があった。
この夏、テレビでは毎日のように日本全国の災害を見せられた。特にNHKは「災害チャンネル」のようだった時期もある。西日本の豪雨、異例のコースを通る台風、猛暑と次々に災害に見舞われたので仕方ないとも思える。

それでも過剰な報道はよくないと思うのは、それが続くと逆に視聴者が見なくなり、注意喚起が意味を成さなくなるためだ。報道機関が注意喚起を行うのはわかるが、「災害が起きているのにドラマを放送するのは不謹慎だ」などという批判を恐れて、アリバイづくりのためにこれでもかと災害を中継する姿勢には違和感を覚える。

なぜ過剰に走るかを考えると、10人のうち1人でも災害を伝える責任を唱えたとき、残り9人は伝える必要がないとは公式の場で言えなくなるからだろう。テレビ局はアリバイづくりをしたくて行っているのではなく、反論できない空気に弱くなっているのだと思う。

テレビ局だけではない。私たちも近頃、過剰な正論を振り回す人々に反論しなくなってはいまいか。身近な例は過剰なコンプライアンスである。正論を情緒的に叫ぶやからに、皆が無関心を装うのはよくない。本当は節度を持とうと公衆の面前で言い返す「大人の対応」がもっとあってよい。大人が沈黙しているから、変な空気に支配されるのだ

災害の過剰報道については、さらに考えてほしい問題がある。テレビは災害について伝えるべきことを正しく伝えているのかという点だ。豪雨の後、危険だった地域の友人に電話してみた。「あと1日大雨が長引くと水没していた」と言っていた。その人は自宅が危険地域にあると知って驚いていた。別の地域の友人は、堤防の決壊を恐れ、1階の家具をすべて2階に上げて、夜は寝られなかったという。

テレビを見ていても実際のところは何もわからない。友人たちの話からは、将来、災害のときに自分たちがどう備えをしておきべきかを教えられる。私たちに必要なのは、これからどう災害に備えるかという問題意識だ。

災害報道では、被害の大きさをセンセーショナルに描き、被害者に無神経に取材することが批判を浴びている。被害映像を見て恐ろしく思うことも、人々の警戒を喚起するが、しょせんそれで終わる。人々がどう災害に対処したかをもっと啓蒙的に報道したほうがよい。災害はのど元過ぎると準備を忘れてしまうというのがいちばんよくない。

災害報道が急増したのは、東日本大震災以降のことだ。あのときは津波や地震への対処を教えてくれる啓蒙的な番組があり、勉強になった。最近は、騒ぎになっているときにだけ過剰に被害を見せられる。あのときの教訓が、忘れられているのではないか。

2016年熊本地震のとき、日本建築学会九州支部の災害調査委員会の委員長をやっていたので、メディアからの取材対応をした。多くの記者は、どの会社よりも早くネタを得たいという気持ちだったと思うものの、多くの関心事は大破・倒壊した建物の「数」だったし、新しい建物でも倒壊した原因を知りたいということだった(と思う)。どの記者も同じような質問ばかりで、少々辟易したのを覚えている。

NHKは免震構造の取材もしてくれた。阿蘇にある免震病院では被害もなく病院機能を維持できていた。ただ、免震層の変形が46cmと大きかったので、取材した記者は、「免震構造も危ない」というストーリーを描いていたようだ。できあがった番組は、確かにそうした方向で作成されていた。この当たりの顛末は、「大きな誤解を招いたNHKの報道番組」で。

災害報道は、それを見ている人々の防災行動につながるものであってほしい。たんに、こんなに大きな被害があった、将来こんなに大きな災害が発生することが予測されている、だけではオオカミ少年で終わってしまうのではないかと危惧している。
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防災力の底力

建築防災(8月号)の「防災随想」に東京大学地震研究所の楠 浩一先生が『防災力の底力』と題して寄稿されている。
わが国は、災害が起こるたびにその原因を詳しく分析し、水害に対しては治水の強化、地震に対しては耐震規定の高度化と既存建物の耐震診断・補強の推進、火災に対しては火災報知器の義務化、大雪に対しても耐震規定の改訂、などの対策をとってきた。時にはそのアクションを起こすためには多大な労力が必要なこともあったであろうが、着実に対策を高度化してきた。

災害対策が高度化するに従って、過去には被害を及ぼしていたような規模の災害でもその影響は限定的になりつつある。例えば、今日では震度6弱程度の地震では構造物が適法である限りその被害は限定的な場合が多い。しかし、自然災害はその規模が大きくなるとその再現期間は長くなるものの、「これ以上大きな災害はない」という上限は一般的には存在しない。

災害対策が進むにつれて対策により封じ込めている災害のエネルギーは大きくなってきている。ひとたび災害のレベルが対策を超えると、そのエネルギーが解放され、影響は極めて甚大となる。もちろん災害が大きくなると再現期間は確率論的には長くなるはずではあるが、近年多発する種々の災害をみると、時に無力感を感じることがある。

人は日々の生活でも、例えば、虫歯、風邪、インフルエンザ、メタボ、交通事故、犯罪など事の大小はあるものの沢山の脅威に対応している。各個人がすべての脅威を意識し、すべてに対して最大限に対応することは困難であり、強靱な精神力がない限りはそもそも受容できないであろう。

例えば、がんは今日、2人に1人が罹患する病気であり、2017年の死亡原因の1位である。がんを克服するために、多くの研究者が日夜研究を続けている。一方、私のような医療の門外漢はがんに対しては漠然とした恐怖心を抱きつつ、10年以上前に喫煙を卒業し、毎年健康診断を受ける程度のことを行うとともに、もしもに備えてがん保険に加入することしかできない。

これを地震に置き換えた場合、我々のような災害軽減にかかわる者の目的は、極力一般の方々の恐怖心や心配、そしてもちろん実害を低減することである。究極のゴールは、一般の方々が防災を意識しなくて済むような安全な社会である。しかし、病気に対して健康診断が有効なように、いくばくかの努力を一般の方々にもお願いせざるを得ないであろう。一般の方々が要する知識と技術を提供することもまた、我々の責務である。たとえ災害対策を進めることが目的としても、一般の方々の心配や恐怖心を増長することは我々のすることでは決してない。

1994年北海道東方沖地震を皮切りに、1995年兵庫県南部地震、2011年東北地方太平洋沖地震、2016年熊本地震を含めて数々の被害地震後の災害調査に参加してきた。地震が構造物をなぎ倒し、人命を飲み込み、被災地は極めて困難な状況にあった。しかし、驚くほど秩序は維持されており皆が同じ困難に面しているという気持ちが共有されていた。それは被災地以外でも同じで、多くの方がボランティアとして現地で協力を行っていた。一般に日本人が持つ、こういった人間性こそが実は防災力の底力である。

研究者も負けてはいられない。

防災力の底力には、日本人の持つメンタリティがあるのかもしれない。しかし、いつまでもそうした面に頼っていていいのだろうか。個々の建築物だけでなく、街や地域の安全性をどう確保していくのかといった視点が必要になってきているのではないだろうか。

下図は米国EERIが発行している論文誌EARTHQUAKE SPECTRA(2018年5月号)の表紙に掲載されていたグラフである。
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縦軸は、オクラホマ州とその周辺で発生した地震の回数を示している。2009年以降、地震の回数が急激に増えている。これは地殻運動を伴わない地震であり、原因は排水を処分するために井戸に注入したことが要因となっている。ある意味、人間活動によって地震が誘発されているということになる。

我々が対象としなければならないのは、自然現象だけではなくなっている。人間の活動によって新しい災害が生まれたり、規模が増大している面はないだろうか。










建設が、好きだ

建設業の魅力をいかに伝えるか、ゼネコン各社はいろいろと知恵を絞っているようですね。

以下は、奥村組のCMです。
=====
奥村組は考えます。
建設とは、人の幸せをつくることなのだと。
戦争で喪失した大阪のシンボル「通天閣」の再建。
震災後、74日間で成し遂げた「JR六甲道駅」の復旧。
地域と地域を結ぶトンネルの開通、
地震の被害を最小限に抑える免震技術の開発。
さまざまな場所で、人、暮らし、社会に貢献できる。
その喜びを実感できるから、建設の仕事には
魅力があります。夢や希望があります。

建設の道に、近道はありません。
そこにあるのは、地道という確かな道だけ。
その唯ひとつの道を、奥村組は、愛と誇りを胸に、
まっすぐに、一歩一歩進んでいきます。
=====

「奥村くみ」という新入社員が登場するCM動画がいくつかあります。
その中で免震技術に関するものが↓。



「免」と「麺」ね。
なかなか面白いじゃないか〜









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講義中・・・
著書など
研究室のマスコット
「アイソレータ・マン」。頭部は積層ゴムで、胸にはダンパーのマークでエネルギー充填
『耐震・制震・免震が一番わかる』
共著ですが、このような本を技術評論社から出しました。数式などを使わずに耐震構造、制震構造、免震構造のことを、できるだけわかりやすく解説しています。
『免震構造−部材の基本から設計・施工まで−』
免震構造協会の委員会活動の成果として、このような本をオーム社から出しました。免震構造の基本をしっかり学べるような内容となっています。
『4秒免震への道−免震構造設計マニュアル−』
いまでは少し内容が古いかもしれませんが、免震構造の基本的な考えを述べています。初版は1997年に理工図書から出ていて、2007年に改訂版を出しました。
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