新耐震基準の木造住宅の耐震性能検証法

国土交通省は16日、「新耐震基準の木造住宅の耐震性能検証法」公表した。
平成28年4月に発生した熊本地震においては、旧耐震基準による建築物に加え、新耐震基準の在来軸組構法の木造住宅のうち、接合部等の規定が明確化された平成12年以前に建築されたものについても、倒壊等の被害が見られました。

このため、国土交通省としては、既存の木造住宅について、平成12年以前のものを中心に、リフォーム等の機会をとらえ、同年に明確化した仕様に照らして、接合部等の状況を確認することを推奨することとし、建築物の耐震改修の促進に関する法律に基づく耐震改修支援センターとして指定した(一財)日本建築防災協会に対し、効率的な確認方法の検討を依頼していたところです。

今般、同協会において、新耐震基準の在来軸組構法の木造住宅について接合部等を確認することで効率的に耐震性を検証する方法として、「新耐震基準の木造住宅の耐震性能検証法(新耐震木造住宅検証法)」がとりまとめられ、同協会ホームページにおいて公開されましたので、お知らせします。

対象となる住宅は、新耐震基準(昭和56年6月以降)のうち、在来軸組工法(基礎がコンクリート造のもの)、昭和56年6月〜平成12年5月に建築されたもの、平屋または2階建てのもの、となっている。

この検証では、所有者等による検証(PDF)があり、これでOKなら「耐震性あり」と判断し、NGなら専門家による検証を求めることになっている。所有者等による検証では、住宅の平面形状、接合部の金物の確認、壁の配置バランスなどを確認することになっている。ただ、接合部金物の確認をするためには内外装を取り外す必要があり、リフォームなどをするときにしか検証できそうにない。
耐震性検証

こうした検証法を広く周知することで、居住者がリフォームをするときに耐震性の確認につながることは期待できそうだ。リフォーム業者や工務店などが、耐震性の確認まで行いやすくなるかもしれない。まずはこうした専門家への啓発も必要だろう。

いずれにしても、新耐震基準であっても耐震性が不足している住宅があるということを認めたことになる。木造住宅が対象だが、RC造などはどうするのだろうか・・・

ミニ氷河期の到来?

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週刊東洋経済誌(5/27号)の「ミスターWHOの少数異見」欄に『ミニ氷河期の到来も? 太陽の黒点活動に要注意』という記事があった。
筆者はこの1週間、天気を気にしていた。「頼むから、気温を上げないでくれ」と。目下の気温が、本文の信憑性にかかわると思うためだ。ところが実際は、「今年1番の暑さ」とか「この季節にしてみると異例の暑さ」とかいうことばかりだった。

筆者は米国のトランプ大統領とは、政策も思想も相いれない。先般は大統領になって100日を経て最初の評価が下された。公約どおりになったのはTPPからの離脱だけであり、ほかは司法や議会の「NO」で苦戦している。それでも筆者はこれだけはトランプ大統領の言うとおりだと思うことがある。それは「地球温暖化問題というのは人類にとって不都合な真実ではない」という意見である。

地球温暖化問題の論者としては、元米国副大統領のアル・ゴアが有名だが、彼の一族が地球温暖化対策を商売にしているということが判明して、結局ゴアにとっての「不都合な真実」として封印された。

それでも地球温暖化というロジックは残り、京都議定書をはじめとしてコペンハーゲン合意などにも影響を与えている。この前提は二酸化炭素の増加が、温暖化の犯人だという立場に立っている。

だが本当にそうだろうか。
気温に、より大きな影響を与えるのは太陽であって、その太陽の黒点の数がいくつかによって気温は左右されるという説もある。その黒点の数が3月7日から22日まで15日間ゼロになった。これは、2010年以来のことであった。これは、これからミニ氷河期が来るという説をもたらしている。

みなさんは1645年から1715年にかけて、マウンダー極小期と呼ばれるミニ氷河期があったのをご存じだろうか。同時期には太陽の黒点は激減し寒冷期が到来する。同時に地震や火山の噴火などの災害が頻発してきた。

そして普段なら凍ることのない河川が凍結するなどの現象が起きる。たとえば英国のテムズ川ではロンドンブリッジ付近が凍結し、その上でマーケットが開かれた。日本でも1703年に元禄地震、1707年には宝永地震が発生し、同じ1707年には富士山が大爆発を起こすなど、災害と飢饉が続いたとされる。

この極小期が、またやってくるかもしれない。
黒点活動は11年毎に1回転するといわれており、現在は24期である。まもなくサイクル25が始まるのだが、現在の太陽の活動は極めて弱い。そういえばこの冬は例年になく寒かった。桜も関東は開花宣言をしてから1ヵ月以上ももって、異例の長さだった。これは開花宣言のあと寒さがぶり返し、花は咲いているけど散らない状態が続いたからである。

はたしてサイクル25はどんな活動をみせるのか? 今後とも目が離せない。

ミニ氷河期が起きて寒冷化するのか、逆にミニ氷河期が起きても、地球温暖化による気温上昇の方が大きくて寒冷化しないとも言われている。例えば、前者は「あと5〜10年で地球は極寒に? 最新の太陽研究が予測」、後者については、「気候変動の向こう側」などがある。

地震活動が活発化する時期というのがあり、いまはその活動が活発になっている時期だということも聞く。地球だけでなく、太陽などの影響を受けているということもあり得るのかもしれない。ただ、このような自然現象は我々にはどうしようもない。地震や噴火の発生に備えて、対策をすすめていくしかない。

2030年から2040年にかけて、太陽活動が大幅に低下するともいわれている。この時期に、南海トラフで巨大地震が起きると警鐘を鳴らしている研究者もいる。単なる偶然だろうか・・・

政府は地震予知できぬと認めて

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朝日新聞(5/18付けの夕刊紙)に『政府は地震予知できぬと認めて』という記事があった。
日本政府は地震予知ができないことを認めるべきだ――。
こう題した論考が英科学誌ネイチャーSeismology: Japan must admit it can't predict quakes)に18日、掲載された。東日本大震災から6年を経ても、科学的根拠が乏しい地震予知や長期予測に頼っているとして、防災政策を改めるよう促している。

筆者は米国生まれで、今年3月で東京大教授を退職した地震学者のロバート・ゲラーさん。1984年に来日して以来、日本の地震研究が地震の予知に偏っていることに疑問を抱いてきた。

論考では、東海地震に備えた大規模地震対策特別措置法(大震法、1978年施行)が、地震の前兆現象の観測を前提にしていることや、南海トラフ地震などの大地震が周期的に起こるという考えに基づき、発生する確率を算出していることについて、いずれも「科学的根拠はない」と指摘している。

一方で、東日本大震災を起こした地震は「想定外」だとして、現在も予知や予測に基づいた政策を続けていることは不適切だと批判した。

ゲラーさんは「政府は国民に正確な直前予知ができないことを伝え、堅実な科学研究に基づいた地震対策をすべきだ。ネイチャー誌も、東日本大震災後に改善の兆しが見られない日本の地震学の状況を憂慮して論評の場を提供してくれたのではないか」と話している。

地震が起きるメカニズムや、起きたときに地面がどう揺れるのか、熊本地震のような活断層地震で長周期地震動が発生するのはなぜか、など耐震設計を行う上で必要なことについて、もっと研究を推進してもらえると嬉しい。

もっと地震学(理学)と工学の連携が必要ではないだろうか。
建物側の研究者や設計者は、地震学の成果として予測された強震動をつかって建物の応答予測をしたり、設計しないといけない状態になってきている。「想定外」とならないために、予測される地震動はだんだんと大きくなっているように思う。

大きめに予測しておけば、想定外とは言われないかもしれないが、もし予測が外れた場合は誰が責任をとるのだろうか? 過大な地震動で設計したおかげで、安全にはなったかもしれないが、建設費が増えたとすれば・・・
 

熊本地震を起こした活断層

朝日新聞(5/18づけ)に『想定より多い大地震の痕跡』という記事があった。
昨年4月の熊本地震を引き起こした布田川(ふたがわ)断層帯・日奈久(ひなぐ)断層帯が、従来の想定より高い頻度で大地震を引き起こしていた可能性があることが、産業技術総合研究所などによる調査で分かってきた。政府は近くこれらの活断層の評価を見直す議論を始める。
活断層トレンチ

熊本県益城町から南西約16キロにわたる日奈久断層帯の高野―白旗区間はマグニチュード(M)6.5の前震(最大震度7)を引き起こした。

この区間について、産総研が1月から掘削調査をすると、過去に大地震があったとされる1200〜1600年前を含め、約1万5千年前までの地層から4〜5回の大地震の痕跡が見つかった。平均3千〜4千年周期で起きたことになる。

南西に隣接する日奈久区間(宇城市―芦北町、約40キロ)での掘削調査でも、2万年で4〜6回の大地震の痕跡が見つかり、平均で3千〜5千年に1度の周期になるという。従来、2万年前以降に起きた大地震は2〜3回で、平均間隔は3600〜1万1千年だと考えられていた。

宮下由香里・活断層評価研究グループ長によると、高野―白旗区間は熊本地震で地表が約8センチずれたが、こうした痕跡は地層に残らない可能性があるという。「痕跡があった大地震以外にも熊本地震並みの揺れは繰り返し起きていた可能性がある。周囲には今回動かなかった断層の区間もあり、大地震が当分来ないと言える状況ではない」と話す。

M7.3の本震(最大震度7)を引き起こした布田川断層帯では、これまで見つかっていなかった「分岐断層」が益城町に現れた。熊本大や名古屋大などが調査をしたところ、約7300年前以降に熊本地震を含め2度以上の痕跡が見つかった。

名古屋大の鈴木康弘教授は「活動頻度が低いと考えられてきた分岐断層について見直しを迫られる結果だ。熊本地震では活断層に未知のことが多いと思い知らされた」と話している。

平均で3千年から4千年周期で起きたとか言われても、人間の時間感覚からすれば、すごく長いコトに変わりはない。しかし、熊本では、明治時代にも熊本城の石垣を壊すような地震は起きている。一つの活断層を取り出せば、地震の繰り返し時間は数千年という単位となるが、活断層の集合、あるいはある地域で考えれば、地震の発生間隔はもっと短くなるのではないだろうか。

活断層がいつ動いて、どれくらいの地震を起こしたかを知ることは大事なことだろう。しかし、問題は、将来どんな地震が起きるのか、ということ。でも、これに対しては、明確に答えることはできない。

とすれば、建物の耐震化や地域の防災力を強化していく取り組みが求められる。昨年の熊本地震では、地盤による地震動の増幅や地盤変状もみられている。建物だけでなく地盤や基礎の耐震性についても検証したり、耐震化に取り入れるなどの方策を検討することも必要ではないだろうか。

ジャッキアップとコンクリートのひび割れ

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長野市庁舎は、市役所棟と芸術館が一つの免震建物として構成されている。

写真の頂部にある帽子のようなところは市議会の議場だ。芸術館(写真奥側)には、大ホールと小ホール2つがある。建物の外壁はコンクリート打ち放しで仕上げられており、特に大ホール部分には大きなコンクリート壁面を持っている。下の左の写真は、建物の南面(上の写真の裏側)で、右側にある大きなコンクリート壁面(大ホール)にひび割れが多く発生した。右は中庭部分で、右側が大ホール、左側が市庁舎側となっている。この中庭部分には小ホールが配置されている。
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建物の構造体がほぼ完成したときに、T社の高減衰積層ゴムの偽装が発覚した。そこで、積層ゴムの取り替え工事が行われた。取り替え工事では、事前にジャッキアップによる建物への影響を構造解析で検証した上で進められた。取り替え工事が始まる前から、乾燥収縮によるひび割れが一部で確認されていたという。そもそもこうした壁面の構成や仕上げでは、ひび割れが入るのは避けようがないのかもしれないが。

一部の新聞などでは、積層ゴム交換の際のジャッキアップによって、ひび割れが発生したのではないか、といった指摘もされていた。しかし、ひび割れの入り方などをみるとコンクリートの乾燥収縮によるものであるというのが、専門家の見方であった。ひび割れ幅は0.2ミリ以下が大部分であるものの、壁面全体に数百個所も入っており、一般の方に対しては不安を助長したかもしれない。

いまでは、ひび割れは補修されていて、一見しただけではひび割れの痕跡は確認できない。積層ゴムの取り替えのために、建物を部分的に最大で1cmほど持ち上げている。これがひび割れを拡大させた可能性は否定できないものの、積層ゴムの取り替えがひび割れの主要因ではない。

これからも他の建物においてT社積層ゴムの取り替え工事は行われていく。取り替え工事によって上部構造への影響をできるだけ小さくすることが必要だし、オーナーや居住者への説明も丁寧に行うことが必要だろう。今回の工事では、B社製の積層ゴムに入れ替えられている。両社の積層ゴムを固定するボルトの位置が異なっているなど、取り替え工事には苦労したとも聞いた。

今後は積層ゴム製品(取り付け部)の規格を統一するなどの取り組みも求められよう。また、たくさんの建物で取り替え工事が行われおり、こうした経験をまとめて継承できるようにすることも免震構造の発展のために有益であると思われる。


耐震シェルターベッド

地震で建物が倒壊し、その下敷きになって人が亡くなるケースが後を絶たない。

建物が倒壊しないように耐震補強をすることが求められるが、耐震化がすすんでいないのが現状だ。そのため、少なくともベッド周りだけでも生存空間を確保したり、寝室だけ丈夫にするなどの工夫や製品も販売されている。例えば、↓のようなもの。
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そんな中、中国で耐震シェルターベッドなるものが考案されているようだ。製品になっているのかどうかまでは確認できていない。映像の中では、RC造のような建物が倒壊するシーンもあるが、日本ではちょっと考えられないかな。



寝ている人を格納すれば、火災になっても大丈夫かも・・・

ゴルファーが自分を過信する理由

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<アン・シネ(出典:https://d12gnozutxpjie.cloudfront.net/cmsimg/163850.jpg)>

WSJ『なぜ飛ばない? ゴルファーが自分を過信する理由』という記事があった。
ゴルフクラブに装着して使うショット解析ツール「アーコス(Arccos)」によって集められた600万打以上のデータを分析したところ、アプローチショットの40%はグリーンの手前に落ちていることが分かった。グリーンオーバーの8倍の数字だという。
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このデータは単にゴルファーの能力を集合的に示しているだけではない。多くのゴルファーが間違ったクラブを選択してしまう要因である認知バイアスがいかに根強く、克服が難しいかを示しているのだ。

実際の能力よりも自分が飛ばせると思いがちなことだ。
こうした不本意な結果になるのは、ほとんどのゴルファーが常にベストショットを打つことはできないからだ。

ミシガン大学の心理学教授デビッド・ダニング氏は、アーコスのデータに見られた傾向と自身が過去20年にわたって研究してきた現象は一致すると話す。人間が自分の能力を過信するのはなぜなのかという研究だ。

ダニング教授は1999年、共同執筆した論文で、人々はさまざまな社会的および知的分野で、自分の能力に過度に高い自己評価を与えがちだと指摘した。「自分たちがどれほど優秀なのかを考えるとき、我々は可能性について考える」とダニング教授は指摘。「人々はプラス面を若干重視し過ぎである一方、マイナス面を大幅に割り引いて考える傾向がある」と語った。

一部ゴルファーにとって悩ましいのは、多くの場合、自信を持ってプレーするのも重要であることだ。しかし、クラブの選択には、より実際的な判断が必要だ。

昔ゴルフをやっていたとき、つくづくゴルフはメンタルなスポーツだと思った(スコアは100を超えていたが)。止まっているボールを打つのが、これほど大変だとは・・・

最初のクラブはお下がりで、ドライバーはパーシモンだった。スイートスポットは小さいものの、ちゃんと当たれば飛距離もそこそこでた。ゴルフクラブなども進歩してきており、新しいクラブは打ちやすくなっていると思うが、技術以上に精神面が大切だと思う。

ところで、ゴルフのバンカーショットの解析映像がある(出典はこちら)。1,670万個の粒子を用いた個別要素用によるゴルフのバンカーショット計算をしたものだ。最近の解析技術と計算性能の向上には目を見張るものがある。


こうした解析技術の進歩が、ゴルファーを支援する日がくるかも・・・

大学入学共通テスト

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日経新聞(5/17付け)の社説に『大学新入試は何をめざすのか』という記事があった。
大学入試センター試験に代わって2020年度に実施する「大学入学共通テスト」の原案を文部科学省が公表した。知識に加え、思考力、判断力、表現力の評価を重視する改革という。新テストの目的と期待される効果を丁寧に説明し関係者の不安を払拭すべきだ。

国語に最大120字の記述式問題を課し、英語では実用英語技能検定(英検)やTOEICなどの民間試験を活用して「書く」「話す」の技能も評価するのが柱。国語の記述問題と英語の民間試験は得点ではなく段階別で評価する。

だが、他科目は数学を除きおおむねマーク式問題で、1点刻みで受験生をふるいにかける。相対評価という幹に、おおまかな到達度評価という枝を接ぎ木したような構造だ。このため、選抜試験としての精度を疑問視する大学関係者もいる。すでに個別2次試験で受験生の思考力を問う記述式問題を導入している有力国立大学が、新テストの国語の記述問題を利用しないといった事態も想定される。

新テストの機能はセンター試験とどこが違うのか。肝心の点が曖昧だ。受験生を選抜する従来のセンター試験の性格を重視するのか、高校の教育課程の達成度を測る資格試験的な役割を持たせようとする改革の第一歩なのか。将来の方向性を明示する責任がある。

そもそも新テストは、高校と大学教育を円滑に接続させるため、(1)1点刻みで合否を判定するセンター試験一発勝負から複数回受験が可能な到達度評価に転換する(2)各大学が記述式問題を含む個別2次試験で丁寧に学力を判定する――という構想から出発した。

文科省は24年度以降、新テストの複数回実施や、地理歴史・公民や理科にも記述式を導入することを検討する。相対評価の性格を薄め、漸進的に到達度評価への移行を目指す方向とみられる。知りたいのは、それをどのような手段と時間軸で実現するかだ。

関係者の理解を得るためにも文科省は、新テストが目指す改革の工程表を早急に示すべきだ。

さて、2020年度の大学入試はどうなるのだろうか。
いまの中学3年生が高校3年生になるときから導入されることになる。当初の構想からはずいぶん変わってしまったが、記述式問題の採点は民間企業に委託するようだし、英語の試験も民間の検定試験が活用されるという。これらの採点結果は1点刻みでは出てこないため、大学側がどのように活用するのかも課題となる。

同時にAO・推薦入試での学力評価に義務化する方針だという。学力評価のために新テストの受験、大学独自のテスト、小論文などを課すよう求めるという。また一般入試でも調査書や面接の活用を呼びかけ、大学側に受験生の多面的な評価を促す。AO入試の名称は「総合型選抜」などに改める、という。

一方、高校生の基礎学力を確認するために19年度に導入する「高校基礎学力テスト」は「高校生のための学びの基礎診断」と仮称を改め、国の要件を満たした民間試験を活用する案が示された。

これまでの「知識偏重」から脱し、思考力や表現力を測る入試への一歩となるのかどうか。。。
こうした動きに対して、本学も対応を検討しなければならないが、一番大変なのは受験生だろう。文科省はできるだけ早く入試制度の全体像を開示すべきだろう。

みる・きく・おもう

日経新聞(5/15付け)の「あすへの話題」欄にアサヒグループホールディングス会の 泉谷直木氏が『みる・きく・おもう』と題して寄稿している。
「少年老い易く学成り難し、一寸の光陰軽んずべからず」とは朱子の言葉である。
寸暇を惜しんで常に勉強していなければすぐに年をとってしまうぞとの学問の勧めである。若い頃は思い出すことはなかったが、30代で管理職になった頃からこの言葉が自分への警句として重くのしかかるようになった。

自分の人生の先行きを考えるようになったからだ。しかし仕事は忙しくゆっくりと勉強をしている時間はなかった。それでも何とかしなければと工夫して編み出したのが「何でも三段活用法」だ。日常的に無意識に行っている行動に意味を持たせ、自分磨きに挑戦していくこととした。

例えば、目に見えている「見る」から意図をもって「視る」に、そして全体像をとらえる「観(み)る」に視座を上げていく。耳に聞こえている「聞く」から相手に尋ねることを含めた「訊(き)く」に、そして聞いた内容を理解してそれに応える「聴く」へと論点を高めていく。

単に思い浮かべるだけの「思う」から大切なものとして気にかける「想(おも)う」に、さらに実現することを強く願う「念(おも)う」へと意欲を引き上げていく。この勉強法のおかげで50代、60代と馬齢を重ねてきたが若い時代の意欲を失わずに人生を送ってこられた。

またこの勉強法は多方面に活用できた。上司と部下とのコミュニケーション、企業としてのマーケティング論、戦略論、そして組織運営にも活かすことができた。物事の解にはその課題しか解決できない「個別解」と原理原則を押さえることですべての課題解決に対応できる「普遍解」がある。

先行きに夢が描けない若者もいると聞くが「何でも三段活用法」で「普遍解」をつかむ方法を試してみてはいかがだろうか。

「聴く」というのは、心を落ち着け注意して耳に入れる、自らきく気になって、念を入れて詳しくきく、感覚を働かせて識別する、という意味で能動的な姿勢が求められる。一方、「聞く」は、音・声を耳に受ける、話を情報として受け入れる、といった意味で、受け身の姿勢となる。
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学生には、授業を「聞く」と「聴く」の違いは説明しているが、「みる」「おもう」にもいろいろな視点があるというのは面白い。「工学」というのは、現実問題を現実的に解決することを目的にしている。そのため個別具体的な解決方法がとられることも多い。しかし、そうした経験が蓄積していくことで、「普遍解」のようなものが出来上がっていくことになる。

大学の教育も、知識を詰め込むだけでなく、学生が自分自身の考えを向上させ、学びのなかから「普遍解」をつくることができるようにしていきたいものだ。

空飛ぶ家?

日経新聞(5/14付け)に『「空飛ぶクルマ」離陸 トヨタが支援』という記事があった。
トヨタ自動車が「空飛ぶクルマ」の実用化に向けて、社内の若手有志が中心になって進めてきたプロジェクトに資金拠出する方針を固めた。米国の新興企業や航空機会社が相次ぎ参入を表明するなど、今最も注目を集める分野だ。次世代モビリティー(移動手段)論争が熱を帯びるなか、「空」が有力な選択肢として浮上している。

空飛ぶクルマは従来、有志団体「カーティベーター」のメンバーが勤務時間外に開発を進めてきた。資金はネットで広く支援を募るクラウドファンディングなどに頼っていた。今回、トヨタやグループ会社が4千万円規模の資金を提供することで大筋合意した。

今後は複数のプロペラを制御し機体を安定させる技術を確立し、2018年末までに有人飛行が可能な試作機を完成させる計画だ。東京五輪が開催される20年の実用化を目指す。
(以下省略)

下はエアバス社が提案している”Urban Air Mobility”のコンセプト。大きなファンを付けることで空も飛べるようになっている。詳しくは、動画で確認を。
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ここで想像力を豊かにしてみると、自動車が空を飛べるなら、家も空を飛んでもいい、はず。
万が一、地震や津波などに襲われたとしても、その直前に浮き上がって、被災を免れることができる。戸建て住宅を浮き上がらせるためには、どれくらいのプロペラが必要なのかわからないものの、効率的なドローンが開発されれば、夢物語ではなくなる、かも。(住宅よりも大きなプロペラが必要になるかもしれないが)

住宅を浮かせるという方法に、「エア断震」がある。こちらは圧縮空気を利用して建物を瞬間的に浮かせるというもので、ホバークラフトに似た方法だ。

空気で浮かせるという意味ではドローンも同じだが、ドローンの場合だとより高く浮き上がることもできて、移動もできるようになる。ただ、そうなると給排水や電気設備などをどうするかも考える必要があるが・・・

やっぱり、無理かな〜

不要な物の必要性

週刊東洋経済誌(5/20号)に作家の童門冬二氏が『不要な物の必要性』と題して書いている。

都庁に勤めていた頃、知事が突然職場巡回に来た。そのとき机の上に山と積まれた書類を見て、「きみたちはいらない書類ばかり集めているんだね」、と。当時の旧都庁舎には設計者の丹下健三さんに言わせれば、「予定の3倍以上の職員が入っている」といわれたそうだ。しかし、それでも机の上の不要書類は保存し続けた・・・
というのは、”不要な物の必要性”を感じていたからだ。いらない物もいるのだ、という逆説的な思いが私の心の中にあり、それを保全することが私の生き方の一部になっていた。

理性的には、いらない物は確かに捨てた方がいい。「しかし人の世はそんな単純なものではない。捨てるには忍びない情というものが人間にはある」と言ったのが、江戸後期の大学者、広瀬淡窓だ。豊後日田(大分県日田市)で咸宜園(かんぎえん)という私塾を開き、全国から学びに来る門下生は3000人を超えた。
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http://www.realhita.net/area/hita/kangien

「学理は知、知からこぼれるのが情、その情をすくって残すのが詩」(意訳)と言って、塾では試作を大いに奨励した。そんなことを考えると、書類の滞貨一掃にもひるんでしまう。

研究室でも、さまざまな書類が蓄積される。
実験や解析データ、それにさまざまな文献、委員会資料、論文集、書籍などなど・・・
最近ではデジタル化されたものも多くなり、物理的なスペースはとらなくなってきてはいるものの、それでも書類などは増えていく。

滞貨一掃したいところだが、なかなかできずにいるのが現状だ。ずいぶん前の書類の必要性は相当薄いと思うのだが、残されている。単に片付けが下手なのか、それとも”不要な物の必要性”を感じているのか・・・

やりたい仕事に就くために

日経新聞(5/10付けの夕刊)に作家の川村元気氏が『やりたい仕事に就くために』と題して寄稿している。
大学から招かれて講義をすることがたまにある。アイデアの生み出し方や、ストーリーテリングのテクニックなどの内容を期待されているのかもしれない。けれども、そういう話はほとんどしない。もっぱら、僕がどうやってこの世界を見て、何に気づき、それらをいかに組み合わせて物語にしていくかを話す。

講義の時間は短くして、長めの質疑応答の時間を取るようにしている。昔から座学が苦手だった。壇上から一方的に聞かされた話で覚えていることはほとんどないが、みずから質問してそれに対して答えてもらったことで、人生が大きく変わったことはままある。

はじめは遠慮がちだが、ひとりが口火を切ると次々と手が上がる。「映画を作りながら、小説を書くってどういう頭の使い方をしているんですか?」「忙しいと思うんですけど、スケジュールはどうやって組んでるんですか?」といった真面目なものから、「映画の仕事をしていると俳優と仲良くなれるんですか?」というようなミーハーな質問までとりとめなく飛んでくる。冗談を交えながら、それらに答えていく。講義の時は静かだった教室も、笑いに包まれ集中力が一段と上がっていくのがわかる。

終盤に必ず出る質問がある。

「好きなことを仕事にするには、どうしたらいいんでしょうか?」
難しい質問だといつも思う。そもそも「自分が好きなこと」「仕事にしたいこと」を理解している学生が果たして何人いるのだろうか(少なくとも僕はわかっていなかった)。

「自分がやりたいことに、お金と時間をつかってください」
決まってそう答えることにしている。

映画が好きなら映画館で観てください。本が好きなら書店で買ってください。洋服が好きならセールじゃなくて新作を着てください。旅行が好きなら自分で飛行機やホテルを予約して旅に出てください。食事が好きなら色々なレストランで食べてみてください。

誤解を恐れずに言うのならば、僕の仕事を支えてくれているのは、ネットで無料の違法動画を見る人たちではない。映画館で映画を見る人たちであり、書店で本を買ってくれる人たちだ。お金を払い時間を使うと、面白かった時の喜びも、つまらなかった時の悔しさも存分に味わうことになる。アルバイトで稼いだお金をどう使うか、大切な土日をどう過ごすか必死に悩むべきだ。その体験をしていない人が、ものを作ったり、サービスを多くの人に届けたりすることは難しいと思っている

今まで自分が一番お金と時間を使ったものが何か、改めて考えて欲しいと繰り返し学生たちに伝えている。雑誌を立ち読みしかしてこなかったのに「雑誌をつくりたい」とか言っていないだろうか。逆に、本当にやりたいものを見過ごしてはいないだろうか。

そしてもし、まだやりたいことが見つかっていないことに気づいたら、今日から何にお金と時間をつかうのか考えて過ごしてみてください

話していると、壇上から「目から鱗(うろこ)が落ちていく」さまがよく見える。鱗が落ちた目たちは、決まってキラキラと輝き出す。このなかから、いつか自分とともに働く「仲間」が出てくると嬉しい。そんなことを思いながら、教室をあとにする。

大学に入学した1年生は、どんな仕事に就きたいか、決まっているだろうか。
自分が学生だったときを思い出しても、将来の仕事のことを考え出したのは、3年生後半くらいではなかったか。当時にくらべ、いまは様々な情報が飛び交っており、就職先の選択肢も増えているように思う。

それは逆にいえば、どんな仕事をしたいのか、どんな仕事だったらできるのか、さらにはどんな会社に入りたいのか、ということで悩むことも多くなるのではないか。こうなってくると、1年生とか2年生のときから将来の進路のことをちょっとでもいいから考えて大学生活を送ることが必要になっていると思う。


新入生建築研修旅行2017

今年で5回目となった新入生の研修旅行に行ってきた。
1泊2日で、建築や町並みをみて、プレゼンをするという研修だ。まだ入学して1ヶ月ほどしか経っていないものの、建築に関する関心を高めたり、友達づくりなどを目的としている。

学生は100名ほどいるので、見学先は3つに分かれている。僕が同行したのは日田で、改修された日田駅(設計:水戸岡鋭治)や日田市民文化会館「パトリア日田」(設計:香山壽夫)、そして伝統的建築物保存地区となっている豆田町を見学した。

↓は日田駅。日田杉をふんだんに使って改修されている。
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↓はパトリア日田。ホールは使用中だったので、ホール内部は見学できなかった。
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見学が終わったら、宿舎にもどって、プレゼンの準備だ。チームに分かれて、なにをどう発表するかを議論し、それを模造紙に書いていく。もちろん写真やパワポを併用してもプレゼンも可。
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何を発表するかが決まれば、模造紙に言葉や図などを書いていく。
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習ったばかりのパースの技法を使って、建物の外観や内部を描く学生も。
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プレゼン資料の作成は、約3時間ほどで終了。翌日は、それを使って各チーム(20チーム)のプレゼンをしてもらった。その後は教員から質問やコメントをしてもらう。なかには厳しい質問もあったが、これを糧にがんばってほしい。

最近では、調べ物にスマホが大活躍だが、建物をみて感じたことや疑問点、いくつかの建物を比較してみるなど、学生自身の感性や意見が発表されるチームもあり、たのもしさを感じる。

コンクリート構造と木質構造

コンクリート工学」(5月号)の巻頭言に、東工大の坂田弘安教授が『コンクリート構造と木質構造』と題して寄稿している。
25年ほど前から、ふとした切っ掛けで、木質構造の研究も行っています。25年ほどコンクリート系構造と木質構造の研究を平衡して行っていることになります。

そのような状況で、研究室に入ってくる学生さんにどんな研究をしたいか、コンクリート構造か木質構造かと訊くと、木質構造が人気があり、その傾向は年々強くなっています。最近では、7:3くらいの割合でコンクリート構造が負けています。なぜ、そんなに木質構造を選びたいのか、就職したらコンクリート構造に関する仕事に携わる確率の方が遙かに高いし、実際に木質構造に携わっていない者が殆どにも関わらず、このような状況です。

学生さんに木造を選んだ理由を書いてもらいました。彼らの認識不足、誤解などもありますが、そのまま掲載します。
・自分の家が木造で、幼少期からの身近な素材であるし、木材の温かい感じや香りが好きで、木独特のデザインを施して、安全な建物にし、安心な暮らしに繋がるような研究がしたい

・日本人の多くは木造住宅に住んでおり、自国で材料が賄えられ、炭素の貯蔵など環境問題にも適応できる構造である

・集成材やCLTなど従来なかった技術で、大規模木造建築を増やす社会的な流れに魅力を感じるし、今後需要があるので知識を得ておきたい

・授業では習う機会が少なく、自分にとってより一層未知である分、勉強してみたかったことと、他の構造と比べてわかっていないことが多く、木質構造の技術が進歩していくのに関わりたいと考えた
(以下省略)

コンクリートを選ばなかった理由としては、コンクリート構造の方が難しく感じ、研究テーマとして木造の方が面白いと感じているそうだ。坂田研究室では、鉄筋コンクリート構造と木質ラーメン構造の混構造の研究をすすめているという。

学生は、流行に敏感なのかもしれない。
僕の研究室は、免震や制振構造が研究の中心ではあるが、もう少し幅広く防災分野の研究をしてみたいという学生もいる。個々の建物の耐震性を高めることも必要ではあるものの、社会や都市の防災力を高めることも被害を抑制することに繋がると思い、学生の考えを尊重している。

ただ、免震構造の研究をしたいといって研究室に入ってくる学生は最近減っているように思う。研究することは、まだいろいろある。たとえば、もっと木造住宅にも免震を取り入れやすくするためには・・・
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免震実用化から30年が経過し、学生からみれば免震構造も当たり前の技術になったということだろうか。

人間の体とレジリエンス

建築保全センターの機関誌「Re」(No.194)の特集は『レジリエンス』

最近流行の言葉だ。レジリエンスはさまざまな分野にまたがる非常に幅広い概念である。英語のresilienceには「はね返り」「弾力」「弾性」「回復力」などの意味があり、外から加えられた力に対応して元の状態に戻ろうとすることを表し、ストレスあるいは脆弱性と対峙する用語として理解されている。

アメリカ心理学会では、「レジリエンスとは、逆境、トラウマ、悲惨な状況、脅威、ストレスなどの重大な原因に直面したとき、うまく適応していく過程」であると定義されている。つまりレジリエンスとは、ダメージやストレスを減らす処理をするだけでなく、置かれた状況に適応していくために柔軟に心を変化させる仕組みのことであると言える。
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この特集の最後に帝京大学医学部の新見正則准教授が『人間の体とレジリエンス』と題して寄稿している。
レジリエンスとは、ちょっとのことへの挑戦と思っている。逃げ回るのではなく、ちょっと立ち向かってみるのだ。その結果レジリエンスは鍛えられる。

小中学校のトイレを全部洋式にしようというプロジェクトがあるそうだ。愚かなことだと思っている。洋式トイレは便利で気持ちがいい。自分でも和式と洋式があれば洋式トイレを選ぶだろう。僕は学校とは、少なくとも義務教育の学校とは、将来成長して様々な職業に就く訓練をするところだと思っている。

学校で習う教科で、実際に社会に出て役立つものは少ない。それでいいのだ。何かを学ぶということを勉強しているのだと思っている。和式のトイレを経験していない子供たちが商社に入って、未開の国に行けば洋式トイレは存在しない。またがってウンチができなければ生きていけないではないか。

夏に暑いからといって、熱中症になるのを避けて屋内のみで体育の授業をしていれば、建築現場で真夏に働く人はいなくなる。熱中症警報が発令されているときに「屋外で授業をしろ」と言うつもりはない。熱中症注意報くらいなら、水分を取って、日陰で休息しながら、そして周囲の仲間に気を配りながら体育の授業や部活を行うことは将来熱中症を避けるためにも大切な経験だ。

「不味い給食をなんとかしろ」という意見もある。僕は栄養学的に間違っていなければ不味い給食もそれで意味があると思っている。不味いものを食べる練習も必要だ。将来赴任する先で、自分の好物が振る舞われるという素晴らしい人ばかりではない。生きていくために不味くても食すのだ。そんなことを勉強していると思えば、不味い給食にも腹は立たない。
(略)
気が合わない子もたくさんいるだろう。様々な境遇の子もいるだろう。そして片親が外国人、または両親とも外国人の子供も増えている。人はみんな違う。だからこそ平等と唱える必要があるのだ。気が合う子や仲の良い子とだけ遊ぶのは考えものだ。様々な人間がいると知ることが大切だ。一方で、絶対に関わってはいけない連中もいるだろう。そんなことを知っていくのも将来世の中に出てから大切な素養だと思っている。会社に入って、世の中に出て、世間は気が合わない人が少なくない。でもなんとかやっていく方便も大切だ。復元力がある体と心を作ってもらいたい。

逃げ回らずに、何かに立ち向かって、そしてより強くなることを僕は人間の体に定まったレジリエンスだと思っている。逃げ回っているだけでは決してレジリエンスは備わらない。また、とんでもない強敵に、まったく準備もせずに立ち向かえば、勝敗は明らかで、人間の体で間違った対処をすれば死に至ることもあるだろう。
(以下省略)

災害に対して、構造物や都市のレジリエンス力を高めていくことが必要だ。災害から逃げることができないとすれば、災害に立ち向かい、レジリエンス力を高めていくことが求められよう。そのためには準備をしておかなければならない。

災害に対しては、|楼茲抱えるリスクの評価能力を高める予測力の向上、⊇斗廚兵匆餤’修琉飮能力を目指した予防力の向上、H生する被害の拡大を阻止し、速やかな復旧・復興を可能にする災害対応力の向上が求められる。これら3種類の力を組み合わせて、多重防御の考えで防災・減災を推進していく必要がある、という。

しなければいけないことはわかっている。あとは実行するだけなのだが・・・


熊本地震の地盤災害調査報告書

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地盤工学会から『平成28年熊本地震 地盤災害調査報告書』が出版された。

内容は、阿蘇大橋に代表される斜面崩壊(土砂災害)、地盤陥没や液状化、橋梁やのり面などの構造物被害、災害廃棄物、そして熊本城の石垣や石橋などの歴史的遺産関連の調査報告などとなっている。

益城町の地盤変状については、「建物周りの沈下、建物の傾斜および不同沈下、擁壁や水路などの倒壊・破損、マンホールの浮き上がりや道路の凹凸、電柱の沈下・傾斜、井戸の破損など多様な被害が生じている。本調査では、明瞭な噴砂跡は確認できなかったが、自然地盤の液状化による被害と埋戻し土のそれとが混在しているように見受けられた。また液状化に起因する被害だけでなく、粘性土やその他の土質による地盤変状が生じている可能性も否定できない」と書かれている。

建物被害との関係については、「液状化に起因する被害だけでなく、宅地地盤の変状、とりわけ、擁壁等壁体構造物が、基礎地盤の支持力不足によるめり込みと損傷により大きく地盤変位が生じ、建物被害を甚大化させた様子がうかがえた。場所によっては、広い範囲にわたって地すべり的な滑動を生じている可能性もある」とし、詳細な調査が必要としている。

益城町における特徴的地盤災害として、「益城町の宅地の被害は甚大で、家屋の倒壊の要因は建物そのものの問題もあるが、擁壁の倒壊、水路へのはらみ出しなど、地盤変状に起因する宅地と建物被害が顕著である。また、熊本市沼津山地区同様、場所によっては湧水が豊富で、この湧水が被害を拡大させた可能性が考えられる」という。

湧水は自然自噴ではなく、40m、70mの被圧帯水層へ管を挿入し、ポンプを利用することなく自噴させて利用されている。この自噴管および地区の排水路が長年の利用(くわえて地震の揺れによって)で損傷を受けていれば、表層地盤への漏水浸透が生じ、表層の不圧地下水の水位を押し上げ、造成地盤を不安定化させた可能性もある。

益城町の表層地盤は、火山灰質粘性土であり、N値は非常に小さい(10以下)。さらに盛土造成によって擁壁のタイプによっては耐震性が十分ではない可能性もある。建物の耐震性が確保されていても、宅地の耐震化が不十分である場合には、建物被害が生じる可能性がある。

建物が建つ地盤の耐震性にも気を付けるべきだろう。
聞いた話だが、益城町のある工務店が建てた住宅はすべて無被害だったそうだ。この工務店ではすべての住宅で地盤改良を行っていたとのことで、こうした取り組みが被害を抑制できた可能性もある。

米国の免震設計規準の改定

先月末に開催されたニュージーランド地震工学会議において、米国の新しい免震設計規準の紹介がされていた。論文をみるとまったく違う内容だったので、がっかりだが、聞き取った点だけでも紹介したい。

米国の設計規準はいくつかあるものの、発表で紹介されたのは、”ASCE 7”の17章(免震構造)。現行は、2010年に出されたものだが(Minimum Design Loads for Buildings and Other Structures)、それが改定されようとしている。改定の目玉は、免震技術をもっと使いやすくし、適用拡大を目論んで、より簡単に経済的に設計できるようにしようとしている。ASCE7-16は今年の7月にも公表予定のようだ。

改定の主な点は、
1)時刻歴応答解析をしなくても、等価水平地震力を使った計算(等価線形化法?)で済むように適用範囲を拡大する
2)設計は、MCE(Maximum Credible Earthquake)レベルの地震動だけでいいことにする
3)免震層の偏心を考慮した場合の計算負担を削減する
4)ピアレビューの回数を削減する

1)に関連して、適用できる免震周期を3秒から5秒まで拡大、建物の高さ制限をなくす(ただしアイソレータに引張が働かないこと)、上部構造の層せん断力係数の分布の計算方法を新たに提案するなど。最後のせん断力係数の分布は、日本ではAi分布が使われているものの、免震層の復元力特性などの影響を受けるため、より適切な分布を計算できるようにするようだ。

2)に関して、上部構造の設計では、MCEレベルの地震動に対するせん断力を低減させて設計用せん断力を決める。この低減係数はRファクターと言われており、現状と同じ”2”に設定されている。Rファクタ−は、日本でいうDs値の逆数と同様の意味である。米国の通常のラーメン構造ではRファクターは”8”であり、この差が免震と耐震のコストの違いとなっている。

また、応答評価では、免震層の特性が変動したときの応答も計算するようになるようだ。日本ではこうしたことはずいぶん前から評価していたが、ようやく米国も追いついてきた?
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こうした規準の改定で、米国でも免震構造がより普及することを期待したい。免震構造の設計規準は、各国によって微妙に異なっている。もちろん想定すべき地震動の大きさは異なるだろうが、その後の計算手法などはある程度統一できるのではないか。こうしたことも免震技術の普及のためには必要ではないだろうか。
(なお、ここで紹介した内容は、会議で聞いた内容なので、不正確な点などがあるかもしれない。その点はご勘弁いただきたい。)

トーマス・クック

日経新聞(4/27付けの夕刊)の「プロムナード」欄にドイツ文学者の中野京子氏が『安酒と伝道師』と題して寄稿している。 
起業する場合、自らの経験や得意分野をもとに専門を決めるのが、まあ、普通だろう。ヘンリー・フォードが蒸気機関の修理工だったように。ジョサイア・ウェッジウッドが陶器職人だったように。

では、1808年にイギリスの貧しい家に生まれ、10歳から庭師の徒弟や野菜売りなど働きづめに働き、妻子持ちとなっても暮らしは楽にならず、家具職人と印刷屋の仕事をかけもちしながらバプテスト(プロテスタント最大派の一つ)の伝道師として奉仕する32歳の苦労人の胸に、ふと浮かんだアイディアは?

起業に成功するには、時代を先取りしたニーズに気づくことも必要だ。19世紀半ばのイギリスはヴィクトリア朝時代、即ち産業革命による繁栄の時代だった。光あるところ、闇は濃い。貧富の差は著しく、底辺に喘(あえ)ぐ者たちは安酒ジンに溺れた。とりわけスラム街では大人も子供も男も女も朝から酔いどれ、犯罪の横行と病気の蔓延(まんえん)が社会問題となっていた。同時に全国的な禁酒運動が盛り上がりつつあった。

超のつく真面目人間だった伝道師もまた、何とか人々を救いたいと禁酒運動にのめり込む。どうして酒をやめられないのか――当時の一般的な考え方はアルコール依存と犯罪者はイコールで、それは生まれつきだ。しかし彼はそう思わなかった。自分も貧しいので貧しい者の気持ちがよくわかる。連日の激しい肉体労働の後、憂さを晴らさねばやっていられない。では同じ境遇の自分が酒を飲まないのはなぜか。信仰が支えになったから――そう結論づけてしまえば話は終わる。伝道師は冷静に自己を顧みた。辛い日々の慰めになったのは、伝道のためとはいえ各地を歩き巡り、はからずもそれが観光になったからだ。観光は安酒より確実に人を癒やす

ちょうど汽車が普及し始めていた。彼は自分で鉄道会社と交渉し、自分で広告を打って参加者を募る。使命感にあふれ、行動力に優れ、その上アイディア・マンでもあったのだ。こうしてレスターからラフバラまでの11マイル(約18キロ)の汽車旅に禁酒大会というイベントを組み合わせ、往復わずか1シリング(農民の1日分の賃料)のパック・ツアーができあがる。車両は屋根なしの吹きさらしで、椅子無しだが、それでも500人以上の乗客を興奮の嵐にして、ツアーは大成功だった。

上流階級の子弟が何カ月も何年もかけて異国を修学するグランド・ツアーならいざ知らず、下層階級の観光旅行など想像もされていなかった時代である。いかに画期的だったかわかろうというもの。

この伝道師こそ、トーマス・クックだ。彼は今に続くクック社を設立し、その後も次々アイディアを出してゆく。トラベラーズ・チェック、ヨーロッパ大陸間鉄道時刻表、ホテルのクーポン券、ガイドブックなど、近代旅行の礎は彼によって打ち立てられた。参加者数は19世紀末の息子の代で、創立時の1万倍になったという。

神の道を説く伝道師が畑違いの旅行業という新ビジネスを立ち上げ、多くの人の意識を変え、夢を与えた。わくわくするような話ではないか。子供向け偉人伝に取り上げられないのが不思議だ。私だって少女時代に読んでいたら、物書き業ではなく起業していたかもしれん。

写真はキャプテン・クックが運行しているクルーズ船の一つ。
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今年のゴールデン・ウイークも終わった。この時期はいつも仕事をしていたが、今年はニュージーランドで地震工学会議に参加することもあり、少し足を延ばしてシドニーに行った。滞在は2日間だけであったが、いい休暇になったと思う。

シドニーの湾内クルーズには、いろいろなコース、船の大きさなどがある。僕らはちょっと大きめの船で2時間のゆっくりとしたクルーズを選んだ。10ドル(オーストラリアドル)余計に払って、スパークリング・ワインが付いているコースを選択したものの、ワインは最初の1杯だけだった(^^;)

お酒より、船上からの眺めに癒やされた、かな・・・

シドニーのオペラハウスを見学する

シドニーのオペラハウスに行った。
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1973年に完成し、2007年に世界文化遺産となった。設計者はデンマークの建築家、ヨーン・ウツソン(Jorn Utzon)であったが、オペラハウスの完成を前にデンマークに戻り、オペラハウスには一度も来たことがない。オペラハウスは、コンサートホール、オペラやバレーの劇場、そして小劇場などから構成されている。大きなシェルの屋根がかかっているのが、コンサートホールとオペラなどの劇場で、もう一つある小さいシェル屋根はレストラン・バーとなっている。

ウツソンは自身のデザイン案に基づいて建物を建設できるように、同じ曲面から切り出した屋根形状にすることを提案した。その結果、プレキャスト・プレストレス構造で屋根をつくることが可能となり、工期の短縮などに貢献できた。しかし、その後の選挙で州政府の顔ぶれが変わったことによってウツソンは自国へ戻ってしまった。

その後も建設工事は続くものの、ホールの内装などは別の建築家が手がけることになった。オペラハウスでは英語や日本語などによる見学ツアーがある。英語の見学ツアーは1時間でより多くのところを見ることができるようだが、日本語のツアー(30分)に参加し、コンサートホールを見てきた(ホールの中は撮影禁止だった)。

内部に入ると屋根がプレキャストでできていることがよくわかる。塗装などの仕上げは施されおらず、打ち放しの状態である。また、ホール部分と屋根が別々の構造であることもよくわかる。左は屋根の根元の部分、右は車寄せの屋根構造である。
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1960年代に設計されたことを思わせない優れたデザインだと思う。

世界遺産にも登録されたことで、世界各国から観光客が来ており、内部の見学ツアーにも多くの観光客が参加していた。一般の人たちが、こうした建築物を見学して、建築のすばらしさを感じてもらえると嬉しい。単に世界遺産を観光した、ということではなくて・・・

シドニータワーの展望台がコアラに・・・

シドニータワーはシドニーで一番高いそうだ。
ということで、展望台にあがってみた。
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湾全体に住宅地などが広がっていること、超高層建物は市の中心部にしかないことなどがよくわかる。オペラハウスは少ししか見えなかったが、見晴らしは抜群だった。

ところが、なんと!?
眺めを楽しんでいるときに、タワーが巨大なコアラに襲われてしまった!!
しかし、どうにか脱出できて九死に一生を得ることができたのでした・・・
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講義中・・・
著書など
『耐震・制震・免震が一番わかる』
共著ですが、このような本を技術評論社から出しました。数式などを使わずに耐震構造、制震構造、免震構造のことを、できるだけわかりやすく解説しています。
『免震構造−部材の基本から設計・施工まで−』
免震構造協会の委員会活動の成果として、このような本をオーム社から出しました。免震構造の基本をしっかり学べるような内容となっています。
『4秒免震への道−免震構造設計マニュアル−』
いまでは少し内容が古いかもしれませんが、免震構造の基本的な考えを述べています。初版は1997年に理工図書から出ていて、2007年に改訂版を出しました。
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