外国人と災害情報

ce92388ebc5c0bbd089a84f34b06bb55

「熊本地震における訪日外国人旅行者の避難行動に関する調査」というのがあった。

それによると、外国人向けの避難マニュアルがなく、どうすればいいのかわからなかった、という。加えて、テレビなど情報が理解できないため、どのような行動をすればいいのかわからず戸惑われたかたが多かったもよう。地震を経験したことない方もいるなかで、どう避難して何をすればいいのか戸惑われた方も多いという。また避難誘導を多言語でしてほしいという意見も多くの方が希望している。

九州にも外国人旅行者が多数来られている。中国や韓国などのアジア系の観光客が多いと思われる。そうすると、英語だけでなく中国語や他の言語での情報提供も必要になるだろう。これまで地震を経験したことがない方にとっては、地面が揺れるという経験は恐ろしいだろう。

地震などの災害時への対応マニュアルは整備しておくことが求められよう。

自治体と災害

cimg12801
朝日新聞(9/18付け)の社説に『自治体と災害 混乱の実例から学ぶ』という記事があった。
住んでいる地域が突然、豪雨や地震などに襲われる。その時、住民を守る最前線となる市町村の役場で何が起きるか。

台風10号に見舞われた岩手県岩泉町は、9人が亡くなった高齢者施設の周辺に避難勧告を出していなかった。担当職員は、近くを流れる川の水位が勧告基準を超えたことをパソコンで確認していた。しかし、ほかの電話対応に追われて町長に報告できなかったという。

そんなバカな、と誰しも思うだろう。だが、他のまちでも同様の事例が報告されている。

ちょうど1年前。茨城県常総市のある地区では、避難指示が伝わらぬまま鬼怒川の堤防が決壊した。市の依頼で、大学教授らが関係者にインタビューし、検証報告書を6月にまとめた。

浮かび上がったのは、業務の激増に追いつけない災害対策本部の混乱ぶりだ。

中核となるべき防災の担当課は、聞こえにくかった防災無線の問い合わせなど約2千本の電話に手をとられた。「地理はわかっているから」と本部に大型地図は掲げられず、被害の全体像の把握に後れをとった。職員の役割分担も不明で、場当たり的な対応が繰り返された――。

思わずため息が出るが、自分が住む自治体ではあり得ない話だと言い切れるだろうか。

ひとたび大きな災害がおきれば、住民への情報伝達や避難所の開設、受け入れなど、自治体は一度に多くの仕事をかかえ込む。一段落した後も、罹災証明の発行業務などが続く。

しかし、職員数が200人以下というところがいまや全国の4割を占める。岩泉町は183人、熊本地震に襲われた南阿蘇村は165人。多くの場合、その職員らも被災する。庁舎は壊れて使えないかもしれない

役場も機能不全に陥るという想定に立って、日ごろから対策を練っておく必要がある。

課や係の垣根を越えて仕事を担い、総力戦でのぞむのは言うまでもない。都道府県庁や周辺自治体、ボランティアの協力もあおがねばならない。事前に協定を結び、実務に即した訓練を積んで、組織を動ける状態にしておくことが欠かせない。

政府は、市町村の機能が低下しても大事な仕事は続けられるように、業務継続計画の作成を求めている。だが、整備したのは4割にとどまる。小さな自治体ほど人手やノウハウの不足が障害になっているといい、丁寧な支援が求められる。

災害大国日本。過去の混乱に学び、備え、次の混乱の回避につとめたい。

自治体に限ったことではなく個人でも企業でも、災害対応や防災については、後回しにしがちだ。しかし、そうした対応を事前にしていた組織は、被害の程度を抑えることができている。BCP(事業継続計画)を作成している企業は増えていると思うが、はたしてそれが実効性のあるものかどうか。企業だけでなく、地域や自治体との連携も欠かせないのではないだろうか。

建築文化遺産の復興に向けて

熊本・文化財ドクター第一次調査報告会『建築文化遺産の復興に向けて』に参加した。

熊本大学にある工学部研究資料館(旧機械実験場)は国の重要文化財。今回の熊本地震で被災した。
熊本大学実験場

熊本県には国指定の重要文化財建造物が30件あり、そのうち12件が被災した。このなかには熊本城、阿蘇神社、通潤橋などの有名な建造物も含まれているが、国指定の文化財ではない伝統的建築物のなかには解体されてしまったものもあるという。

文化財ドクターによる1次調査では、1350の建造物が対象となった。そのうち950件ほどが神社・仏閣となっている。1350件のうち、傾斜・半壊・全壊している建造物は200件(15%)となっている。また、1350件のうち1134件(84%)は未指定の文化財となっており、いかに未指定のものが多いかがわかる。

地域の景観やまちなみを形成している伝統的建築物を残していくにはどうすればいいのか。被災した建造物を修理するにはお金と時間がかかる。やはり、お金の問題は切実であり、公費解体を選択するケースもある。公費で解体するのではなく、公費で修繕できるような仕組みがつくれないものか。

いずれにしても、復旧のための資金を確保することが必要となっている。さらには、復興基金による支援、伝統的建造物群保存地区への指定、歴史まちづくり法の活用などを検討する必要がある。各地に残されている文化財や伝統的建造物は、地域のコミュニティーの活性化にも役立つし、なによりも地域の景観を構成している重要な要素である。有名な建造物だけでなく、地域の文化財を復旧できる仕組みを作っていくことも必要だろう。

建築家としての災害支援

20160916112323854

『科学』(9月号)の特集は「2016年熊本地震」
特集記事の内容は地震動の話題が多く、建物の被害は木造住宅に関してのものが1つだけだった。「科学」という面から熊本地震に迫ろうという主旨なのだろう。

巻頭エッセイは建築家の坂 茂氏が『建築家としての災害支援』と題して寄稿している。
建築の仕事を始めて10年くらい経ったころ、われわれ建築家はあまり社会の役に立っていないということに気がつきました。

それはなぜか。

建築家の主たるクライアントは、歴史的にみても特権階級です。今は特権階級の種類が昔とは違っているというだけです。特権階級の人たちがもっている財力や権力は、目に見えません。そこで、建築家を雇って、立派な建物を建てさせるわけです。大きな宗教建築も同じです。そういうモニュメントをつくることが、歴史的に建築家の仕事でした。

もちろん、モニュメントとなるすばらしい建築が街につくられることは、いいことです。街の顔になる建築ができて街がよくなったと人々が感じることは、いいことです。でもそれだけではなくて、もっと一般大衆、あるいは自然災害で家を失った人たちの住宅や、居住環境を改善することも、建築家の仕事ではないかと思ったのです。

それで1994年のルワンダで、内戦下の現地の非常に悲惨な難民キャンプの状況を見て、その改善に行きました(紙管を用いた「紙の難民用シェルター」を国連高等弁務官事務所に提案・開発)。1995年、阪神・淡路大震災後の神戸で、行き場を失おうとしていた元ベトナム難民たちの仮設住宅(紙管とテント布による「紙のログハウス」)をつくったり、教会(たかとり教会の紙のコミュニティホール「紙の教会」)をつくりました。
20160617G411
『紙の建築 行動する』にも書いたように、最初は大変だったので、やめたいとも思ったのですが、これは自分の生涯の仕事だと思うようになりました。当初は、両立できればいいと思ったのですが、いつの間にかそれらに境がないことに気がついたのです。仮設住宅をつくっても、お金持ちの人の住宅をつくっても、自分の興味やかける時間、引き渡した後に喜んでいただいて感じる満足感に、まったく変わりがありません

唯一の違いは、設計料をもらっているか、もらっていないかです。居住性のいいものをつくることが僕の興味であり、あるいは社会的使命であって、それに特権階級も被災者も関係ないということに気がついたのです。

本誌には坂氏のインタビュー記事「これからの仮設住宅のために」も掲載されている。坂氏は、仮設住宅に間仕切りのシステムを提案し、実際に使えるように自治体に働きかけたり、住みごごちのいい木造の仮設住宅を提案し実際に建設もしている。

いま、新しい仮設住宅をメーカーと開発しているそうだ。工場は海外につくって、平時は途上国での雇用をつくりだし、住宅のレベルアップをはかる。材料は、発泡スチロールにFRP(繊維強化プラスチック)を塗ったパネルだそうだ。断熱性能と強度を兼ね備え、大きさも自由になるという。

災害が起きるのは日本だけではない。こうした取り組みが世界中の被災者を支援することにつながれば素晴らしい。

これからの建築

朝日新聞(9/15付け)に建築家・伊東豊雄氏へのインタビュー記事『これからの建築』があった。
――熊本地震の被災地でいま、どんな仮設住宅をつくっているのでしょうか。
「殺風景で無味乾燥なプレハブではなく、血の通った住まいを提供したい――。蒲島郁夫県知事の意向もあり、約4千戸の仮設住宅のうち15%を木造にしました。日本はいまや災害大国ですから、被災時の生活の質(QOL)にもっと目を向ける必要がある。その可能性を示せればと考えています」

――「血の通った仮設住宅」とはどういうものですか。
「熊本産の木材で、地元の大工さんが建て、鉄骨よりはるかに温かみがあります。棟と棟の間隔を従来より1.5〜2.5メートル広げ、3棟ごとに縦の通路も設け、各戸に掃き出し窓と縁側をつけました。見知らぬ人々が気軽に声をかけ合って、孤立せずに憩える環境を、と考えたのです。ただ、材料や労働力を確保しきれず、全戸とはいきませんでした」

「また、仮設住宅50戸ごとに、『みんなの家』という集会所も造ります。81棟すべてが木造で、縁側や畳の間を設け、各棟の前庭に桜の木も植える予定です」

――「みんなの家」という名には温かい響きがありますね。
「東北に建てた『みんなの家』がモデルです。東日本大震災の直後、仙台の集会所に行ったら、鉄骨にクロスを貼っただけの壁に安物のカーペット、片隅に座布団が積まれ、テレビが1台あるだけでした。寒々とした空間を見て、家を失った人が心を温め合える場所をつくりたい、と思ったんです。いわば、断ち切られたコミュニティー再生の拠点です」

「小さくても美しく、心地良い空間を生み出すのが建築家の仕事だと思いました。被災者の要望を聞き、施工者とも協力してつくった。みんなによる、みんなのための建築です。東北でこれまで15棟建て、その第1号に木材と資金を提供してくれたのが熊本県でした。建築を通じてまちづくりを進める熊本県のアートポリス事業で私がコミッショナーを務めている縁から、手を貸してくれたのです」

――その熊本で、今度は仮設住宅も木造にしたのですね。
「国は『なぜプレハブでないのか』と渋ったそうですが、熊本県が粘り強く説得してくれたと聞いています。ただ、その前にも壁はありました。地震の2週間後にはもう、従来のプレハブ仮設を建てる準備が始まろうとしていたのです。一刻も早くという気持ちはわかりますが、5、6年暮らすことを考えれば、住み心地やコミュニティーとしての機能は重要です。鉄骨のプレハブを並べるより1カ月ほど工期が延び、コストも多少割高ですが、木造の方がはるかに居住性は高い。たとえ1カ月遅くなっても木造の良さには代え難いのでは、と思いました」
(以下省略)

熊本型の仮設住宅については、桂英昭氏が「建築討論」で紹介している。熊本県ではアートポリス事業を長年続けてきたことも、こうした災害時の対応にも役だっているのかもしれない。
c0d73d3247110db98f006fece0524834-500x416

伊東氏は建築家の役割についても、こう述べている。
「日本中、空き家だらけですから、古い建物をどう補強しながらリノベーションするかにもっと目を向けるべきです。新たに建てられなければ、壊すのではなく、つくり直し、使い手となる住民がどのように使いたいのかを聞いて、一緒に考えながら進めていく。そうしなければ、建築は使われないままになってしまいます。これからの時代の建築家には、発注者である行政と利用者である住民をつなぐ通訳兼コーディネーターとしての役割も求められるのです」

これからの建築のあり方というのも、変わってくるのだろうか。
構造技術者は、自然(地震)に対して安全な建物をつくるべく努力している。ある意味自然をコントロールできるという思い込みがないだろうか。こうすれば地震力に耐えることができる、これくらいの変形に抑えることができる、などなど。地震という自然そのものをコントロールできるとは思っていないものの、地震によって引き起こされる建物の「応答」をコントロールできると・・・

東日本大震災にしても、熊本地震にしても、これまで経験したことがない揺れをもたらしている。我々の経験だけで自然を理解できたとは思ってはいけない。自然に対する畏敬の念を忘れないことが大事なんだろう。

なぜ新耐震住宅は倒れたか

なぜ新耐震住宅は倒れたか

日経ホームビルダー編『なぜ新耐震住宅は倒れたか』を購入した。
熊本地震による木造住宅の被害についての記事の総集編といった感じだが、まとめて読めるので木造住宅をやっている設計者や工務店には参考になるのではないだろうか。

このなかで、建築基準法見直しに関する学識者の意見があったので、紹介する。
川瀬 博さん(京都大学防災研究所教授)
国土交通省は建築基準法の見直しを議論する前に、建築基準法が震度7の大地震に耐えることを保証したものではないということを、住まい手などに伝える必要がある。建築基準法が担保しているのは中程度の地震で損傷を生じないこと。大地震で倒壊しないという経験則を持ち出すので混乱が生じる。大地震でも倒壊しないために必要なのは剛性ではなく変形性能。耐力壁の試験方法に変形性能を高く評価する仕組みが必要だ。

宮澤健二さん(工学院大学建築学部名誉教授)
建築基準法施行令46条は、特定行政庁が指定した区画では必要壁率を1.5倍するとしているが実効性がない。軟弱地盤などの説明もないので、何のための規定かもわかりにくい。設計者が適切に対応できる仕組みが必要だ。節のある筋交いの破壊や不適切な緊結金物も見られた。筋交いの品質を規定すべきだ。施行令45条で筋交いの緊結は「柱と横架材に近接」と規定しているが、そうなっていないものが認定されている。法に則った運用が必要だ。

五十田 博さん(京都大学生存圏研究所教授)
建築基準法の最低基準の見直しは、時間を掛けて議論すべきだが、最低基準がわずかに上がったからといって将来の大地震に耐えるとは限らない。法律で縛ることより、高いレベルの耐震住宅を供給しやすくするための体制づくりや情報提供が必要だ。熊本地震で旧耐震基準の木造住宅が数多く倒壊した問題は看過できないので、耐震改修を促進させるための継続的な手立てと、必要性を説明する取り組みが欠かせない。

大橋好光さん(東京都市大学工学部建築学科教授)
これまでも15年〜20年ごとに建築基準法は改正されてきた。現行法も2000年の大改正から16年が経過して、見直すべき時期に来ている。まず、見直したいのは、建築基準法と性能表示制度との不整合だ。必要壁量が建築基準法は性能表示制度より少ないこと、多雪区域の割り増しがないことなどが問題だ。また、筋交いの強度の見直しも必要だ。さらに、地域係数は活断層や地盤の増幅などを考慮したものにするべきだ。

いろいろと課題があるようだが、戸建て住宅などが対象となる「4号特例」の取り扱いも問題になるのではないだろうか。本書では「4号特例」の存続、廃止に関する調査結果も示されているが、「廃止」が半数を超えている。

必要壁量だけでなく、きちんと構造計算をして耐震性能を確保することも必要ではないだろうか。

熊本地震と免震構造

P1080033

日本建築学会の「建築討論」に、福岡大学の森田助教が『熊本地震と免震構造』と題して寄稿している。

熊本地震でも、免震構造はきちんと機能を発揮した。

熊本で最初の免震マンションを購入した人、阿蘇にある免震病院の関係者は、免震なんて必要ない、と思っていたそうだ。しかし、実際に地震が起きると、「免震でよかった!」と言われている。

万が一のときに、免震は効果を発揮する、のである。

災害より恐ろしい我欲

瀬戸内寂聴さんが、朝日新聞(9/9付け)に『この世の地獄 災害より恐ろしい我欲』として書いている。
毎年、恐ろしい暴風雨になって国じゅうを襲い、死者や行方不明者をおびただしく出し、堤は切れ、川は氾濫し、家々は流され、壊されていく。天気予報はテレビやラジオでこまめに正確に報じられるが、それの防ぎ方は、避難所に行くだけしかない。逃げ遅れた年寄りたちの死者や行方不明者は、何十人と報じられるのが当たり前になっている。これほど文明が発達し、月に人間が降り立ち、宇宙を人が飛び回れる世の中になっても、毎年見舞われる暴風雨の被害を防ぐことができないのはどうしてだろう。

自然の猛威に人間の力はひとたまりもない。万物の霊長などとうぬぼれている場合ではない。世の中で恐ろしいものは、「地震、雷、火事、親父(おやじ)」と言ったものだが、現在、恐ろしい親父などめったにいなくなって、長生きすれば認知症になり、若い人たちの負担になっている。

自然の災害が報じられる度、逃げおくれた老人たちの死に様や行方不明者の数を聞くと、94歳になってしまった私は、やりきれない鬱(うつ)に襲われる。こんな時、北朝鮮が何やら恐ろしい爆弾を日本海にバラバラ打ち出している。中国は、日本の海でわが物顔に船を泳ぎ回らせている。拉致被害者の解決も一向につかないまま、したい放題にされて、日本はただ歯を食いしばっているだけだ。自然の猛威は恐ろしいが、人間の我欲はもっと恐ろしい。

老齢のきざしの見えはじめた地球に、長命一途になる人間があふれんばかりに住んで、年々に自然災害にうちのめされている。これがこの世の地獄でなくて、なんであろうか。

これまでの災害から多くの教訓を学んでいる(はず)。しかし、その教訓を反映していくためには、さまざまな課題もある。たとえば地震被害を軽減するためには建物・住宅の耐震化が急務であるといわれている。少しずつ耐震化はされているものの、まだまだ多くの住宅では未実施である。

強制的に耐震化を進めることはできないし、洪水危険地帯に住んでいる人たちを強制的に移住させることなんてできない。社会の仕組みや政策などで、うまく誘導していくことができないものか。我欲に打ち勝つ、知恵が求められている。

熊本城を折り鶴で

Cry5kbLUIAA1DbO

くまにちニュース「折り鶴羽ばたき熊本城に」という記事があった。
熊本市中央区の熊本デザイン専門学校のエントランスホールに、白く輝く鶴と熊本城のオブジェが展示されている。学生らが折り鶴3万個を使って作り、熊本地震からの復興への願いを込めた。

オブジェは奥行き6メートル、高さ2.7メートルの大きさ。熊本県から飛び立った白い鶴の群れが、姿を変えて城を形作っていく様子を表現した。大小の天守閣は2メートル以上の高さがあり、折り鶴2万個を釣り糸でつるして形作った。

学校の文化祭(3、4日)の出品作として、建築・インテリアデザイン科の学生約40人が考案。「熊本の人たちに笑顔と元気を届けられるように」と、鶴と熊本城をモチーフとした。8月中旬から作業に取り掛かり、分担して大小の鶴を折った。天守閣の模型などを基に寸法を設計し、城の屋根や破風の形も表現した。

学生代表の堀川未樹さん(26)は「一つ一つの折り鶴は小さいが、集まるとこんなに大きなものができる。同じように、一人一人の思いは小さいかもしれないが、集まると復興につながることを表現したかった」という。作品は9月末まで展示し、一般の人も観覧できる。堀川さんは「一人でも多くの人に見てもらいたい」と話している。

熊本地震から5ヶ月が経過した。

熊本地震の復興のシンボルともいえる熊本城では、石垣の被害が多数発生している。さらに天守閣も大きなダメージを受けている。これらを復興するには20年もの時間がかかるとも言われている。学生が話をしているように、一人ひとりの力や思いを集めることで、復興を早めることができるかもしれない。

デザインがもつ「ちから」というものを感じる。若者たちの活躍にも期待したい。

Seismic Isolation for Architects

SeismicIsolation4Architects

著者の一人、Andrew Charlesonは、ニュージーランドのVictoria University of Wellingtonの准教授で、構造設計者としても長い経験をもっている。もう一人の著者であるAdriana GuisasolaはアルゼンチンのMendoza Universityの准教授で建築家でもある。この二人が世界11ヵ国の60を超える免震建物を訪問して調査した結果が本書で紹介されている。

本書では世界各地の免震建物が写真で紹介されている。免震構造や免震装置についても最低限のことは紹介されている。加えて、免震改修(レトロフィット)やエキスパンションジョイントやクリアランスの処理についても写真や図を用いて説明している。構造設計者ではなく、建築家を対象にして書いていることがわかる。

ただ、147ページにある下の図はちょっとまずいかな。免震建物が左側に変位したとき、クリアランスカバーの長さが足りなくなる。周辺を人が通行したりしなければ問題ないかもしれないが。
クリアランス

本書の最後には、免震の経済性、施工やメンテナンスのことも記載されている。日本でも免震構造の建設費(コスト)は一般的に高いと言われる。しかし、地震後も建物機能が維持されること、通常の耐震構造よりも高い性能を目指していることなどを考えれば、多少コストがかかるのは当然ではないだろうか。

こうした建築家向けの免震の解説本は日本でも必要だと思う。

月の引力が巨大地震のきっかけ?

6a61d897

朝日新聞(9/13付け)に『大潮前後、巨大地震の確率高め』という記事があった。
潮の満ち引きの幅が大きくなる大潮の前後は、巨大地震の発生頻度が高まるとの研究成果を、東京大のグループが発表した。巨大地震の発生頻度は元々低く、大潮前後の危険性が目立って高くなるわけではないが、地震の発生確率を計算する際の精度向上につながる可能性がある。

東大の井出哲教授(地震物理学)らは、過去の地震発生時の潮の状況を分析。マグニチュード(M)8.2より大きい巨大地震12件の場合、10件は大潮や前後の干満差が大きい日に起きていた。実際に、スマトラ島沖地震(2004年、M9.1)は大潮の日に発生。東日本大震災(11年、M9.0)も干満差が大きい時期だった。

井出教授によると、潮位が1メートル上下すると、海底を押す力は10キロパスカル程度変化し、圧力が大きく変わるほど、地震を起こす断層の動きに影響を与えると考えられるという。大潮を考慮して地震の発生頻度の予測を算出すると、M8.2より大きい地震では、干満差が小さい場合より6〜40倍高い数値になった。

一方、M5.5からM8.1までは、干満差による違いはみられなかった。

井出教授は「大地震はさまざまな要因が絡んで起きる。潮の影響もその一つとわかった。だが、(大潮になる)満月だから危ない、ということにはならないので注意して欲しい」と話している。

井手教授らの論文”Earthquake potential revealed by tidal influence on earthquake size”ネイチャーに掲載されている。
大潮が起きるのは、月と太陽と地球が一直線に並ぶときに発生する。潮汐(海面の水位)が起こる主な原因は、月が地球に及ぼす引力と、地球が月と地球の共通の重心の周りを回転することで生じる遠心力を合わせた「起潮力」による。したがって、月による引力によって大地震が起きている?とも言い換えることができそうだ。

ということで、この論文についてはネイチャーでも”Moon’s pull can trigger big earthquakes”として解説している。

今夜は中秋の名月・15夜です。
空を見上げてみては・・・

地盤変状で戸建て住宅が全壊するか?

1214_01_kumamoto_1
<出典:http://www.reform-online.jp/news/learning/8755.php

日本建築学会に『建築討論』というサイトがある。
ここで、田村修次氏が『地盤変状で戸建て住宅が全壊するか?』と題して寄稿している。
2016年熊本地震では益城町らで多くの戸建て住宅が倒壊し、多くの人命が失われた。建物の被害要因として地震動のみならず、「地盤変状」も指摘されている。本稿では、地盤変状が戸建て住宅被害に及ぼす影響を、戸建て住宅基礎の変遷とともに考える。

2000年建築基準法が改正され、基礎の寸法・配筋の最低限の仕様が明確にされ、鉄筋コンクリート造が義務化された。すなわち、1981年新耐震の導入以降も2000年まで、戸建て住宅の基礎の多くが鉄筋コンクリート造(設計者判断の配筋も含む)だったと考えられるが、無筋コンクリート造の存在も否定できない。なお、基礎全体の剛性を高めるためには、基礎梁の配置、換気口・点検口の切り欠きに対する配慮が必要である。

熊本地震では、1981年新耐震導入後さらに2000年建築基準法改正後の新しい戸建て住宅でも倒壊したと報告されている。前述のように、新耐震以降でも2000年までは、無筋コンクリート造基礎や鉄筋量が足りない鉄筋コンクリート造基礎が存在したと考えられる。そのような基礎では、新耐震の戸建て住宅でも地盤変状が建物の破壊に寄与した可能性はある。

熊本地震においても、地盤変状による無筋コンクリート造基礎の破壊事例は多く見られた。基礎の破壊で上部構造物が損傷し、振動との相乗効果で全壊した可能性が考えられる。一方、2000年以降に建設された戸建て住宅基礎の破壊事例を筆者は確認できなかった。2000 年建築基準法に準じていれば、地盤変状に対し十分な耐震性を持つかは、今後の調査報告を待ちたい。

日経ホームビルダー(6月号)では、「地盤による被害」を取り上げている。このなかでは次のように述べられている。
寺迫地区にある低地部も地盤被害が大きかった。川沿いで地盤が川側にすべり、多数の住宅が倒壊した。ボーリング調査結果を見ると、この辺りには柔らかい粘土が厚さ10m以上にわたって分布している。地盤ネット技術本部副部長の横山芳春さんは、「このような軟弱地盤は、一般に揺れが増幅されやすい」と話す。

大きな被害をもたらした一番の原因は、断層が動いたことに伴う特異な強震動と表層地盤の変状だとする分析結果もある。京都大学防災研究所教授の川瀬 博さんが発表した。

「断層と並行する東西方向に地盤や建物が著しく傾いたことや、南北に走る多くの変状が地盤に残っていることなどが根拠だ。今後も詳細な検討を続けて、地盤による増幅や地震動そのものより、断層運動の影響の方が大きいことを明らかにしたい」と川瀬さんは話す。

記事で参照しているボーリング柱状図は、「熊本地震 復興支援 ボーリング柱状図 緊急公開サイト」で期間限定で公開されているものだ。ただ、益城町で被害が大きかった地域でのボーリングデータはほとんどない。建物の被害や倒壊の要因は、強い揺れだったのか、地盤変状だったのか。特異な地盤構造によって地震動が増幅されたのか。。。

まずはできるかぎり地盤の情報を集めて、地盤特性を解明していきたい。

現行の耐震基準は有効?

「熊本地震における建築物被害の原因分析を行う委員会」の第三回委員会が開催された。その概要が朝日新聞(9/13付け)に掲載されている。
熊本地震の建物被害を分析し、耐震基準の妥当性を検討する国の専門家委員会は12日、2000年に強化された現在の新耐震基準であれば、今回の地震でも「倒壊の防止に有効だった」と結論づけた。これにより、国土交通省は基準の見直しを見送る方針だ。

熊本地震では当初、比較的新しそうな木造住宅の倒壊が指摘された。このため国交省や日本建築学会は、震度7の揺れが連続した熊本県益城町中心部の全ての木造建物1955棟の被害状況を精査。専門家委員会は建築時期と被害の関係に着目し、耐震基準の妥当性について検討を加えた。
熊本地震_悉皆調査熊本地震_年代別被害率

同委がまとめた報告書案によると、現在の耐震基準のもとで00年6月以降に建てられた323棟では、倒壊したのは7棟(2.2%)だった。同学会の現地調査では当初、全壊51棟とされていたが、その後の調査で、最大17棟と判明。さらに、建築年代や建物の用途などを精査した結果、倒壊は7棟と認定した。7棟のうち3棟は柱の固定が不十分、1棟は敷地の崩壊が原因と推定された。残り3棟は明確な原因は特定出来なかったが、局所的な大きな地震動が影響した可能性が考えられる「例外」で、現在の耐震基準は有効と結論づけた。

一方、規定強化前の1981年6月〜00年5月に建てられた862棟では、75棟(8.7%)が倒壊。柱の固定部分が確認できた69棟全てで、00年に強化された規定は満たしていなかった。国交省幹部は「規定を満たせば倒壊を免れた可能性が高い」と指摘する。

81年5月以前に旧耐震基準のもとで建てられた770棟では、215棟(27.9%)が倒壊。委員会は、国交省に耐震化を進めるよう求めた。また、耐震基準は建物が倒壊しない「最低限の基準」だとし、災害時に拠点となる役所や学校などは、被災後も維持できる耐震性を備えるよう、検討を求めた。

日本建築学会で熊本地震の建物被害調査を取りまとめた福岡大の高山峯夫教授は「(被害の大きかった益城町では)断層の影響、地盤の変位などの要因が重なって被害が大きくなった。最低基準として今の耐震基準は妥当だと考えるが、家を建てる人に、地盤の強弱などの条件によってどのような性能の家が適切かという情報を提供できる仕組みが必要だ」と話している。

熊本地震では木造住宅の被害に注目が集まっているが、旧耐震の鉄筋コンクリート構造や鋼構造には被害が発生している。これらを含めた耐震性が低い建物の耐震化をすすめていくことが必要となる。くわえて、耐震基準を厳しくしても、それをきちんと施工しないと意味がないことも明らかなとなった。また、報告書(案)では住宅被害に関して地盤変状の影響はあまりないのではないかとされている。しかし、この点に関してはさらなる検証が必要ではないかと考えている。

熊本地震では耐震等級3の住宅の被害は非常に少ないということも明らかになっている。建築基準法による耐震基準は最低基準であり、住宅を建てようという人たちに、どういう耐震性が必要かを考えてもらいやすい情報を提供していくことも必要だろう。

なお、記事中「同学会の現地調査では当初、全壊51棟とされていた」とあるが、日本建築学会からの発表ではないので(こちらのエントリー参照)、誤解されないように。

震度7でも住める家

01
日経ホームビルダーが、「熊本地震のような震度7の地震の後も住み続けることができる家」を実現するための方法を、4つの提言にまとめている。
4つの提言は以下の通りです。

提言1:壁 量:余力抜きで等級3の1.39倍
提言2:直下率:上下の耐力壁つなげて地震力を伝達
提言3:金 物:施工ミスと金物の選定に注意
提言4:筋かい:2Pをやめて面材で押さえる

提言1の「壁量」は、「余力抜きで等級3の1.39倍」という高いレベルになってしまいました。実現できないレベルかもしれません。でも、そのくらい大きな揺れが現実に起こったことを建て主に知ってもらうことも重要だと考え、提言に加えました。実施策として、準耐力壁や外装材も耐力要素に加える場合がヒントになりそうです。

「直下率」「金物」「筋かい」については、できるだけ実際の家づくりの場面で採用しやすいよう、具体的な内容を盛り込んでいます。耐力壁の位置、金物の取り付け方、筋かいと内装ボードの関係など、配慮が必要な点を挙げています。地震に強い家を実現するには、こうした細かな配慮の積み重ねこそ重要と考えるからです。

等級3の1.39倍ということは、基準法の約2倍ということか。耐力要素をたくさん入れても、それらが効果を発揮できないと意味がない。施工品質の確保と耐力要素をバランスよく配置することが一番大切なんじゃないかな〜

September 11から15年

2863904-3x2-940x627WTC

上の写真は、在りし日のニューヨーク・ワールド・トレード・センター(WTC)。
柱のデザインがすばらしい。ずいぶん前に訪れたときには、屋上にまで上がってマンハッタンを眺めることができた。

2001年の今日、出張先のホテル(国内です)でテレビを見ていたら、WTCに飛行機が衝突し、煙をあげている映像が映し出されていた。最初は何が起きているのか、まったく理解できなかったが、そのうちWTCは完全に倒壊してしまった。

たくさんの方々が犠牲になった悲劇を忘れないように、WTCの跡地にはミュージアムができている。ミュージアムには、WTCで残った最後の柱も展示されている。

今度、ニューヨークに行く機会があったら、訪れてみたい。

空中から水を集める「Warka Water」

エチオピアでは、飲料に適した水を得ることができているのは人口の34%だけだそうだ。残りの人々は水を得るために何キロも歩いたり、得られた水も不衛生であったりする。そうした地域や人々のために、新たな水源として考案されたのが、「Warka Water」だ。
2_FrontView_151030_WP_71_1200x891

考案したのは、イタリアのArchitecture and VisionのArturo Vittoriさん。物資の少ない現地でも継続して使えるよう、電気を使わず、修復などもしやすいように竹や麻で作られている。

この装置のまわりに張り巡らされた麻の網は、設置しておくだけで霧などの空気中の湿気を集め、一日に約100リットルの水を中央のタンクに貯めることができるという。
2_HowFunctions_151102_WP_12

Warka Waterは、エチオピアに自生しているWarka Treeから命名されている。

値段は、約11万円。無理に井戸を掘って、機械を維持するよりも、安くすみそうだ。現地でも簡単に修復できる素材を使うことでメンテナンスもしやすい。人が生きていくうえで、絶対に必要になる飲み水。少しでも多くの人たちに安全な水が供給できるよう、多くの国に広まってほしいものだ。

世界の困った問題を解決する技術やアイデアというのは、お金が儲かるとかそういう次元ではない。世界をよくしたい、そうした意欲の問題かもしれない。日本で培われた耐震技術で世界の地震被害をなくしていくこともできるんじゃないかな。。。

福岡大学の学術誌「七隈の杜」

日経新聞(8/27付け夕刊)に『学術誌、世相反映し人気』という記事があった。
福岡大が発行する総合学術機関誌が異例の人気だ。難解で専門家向けというイメージの強い大学の学術誌だが、世相を反映させたテーマを設定し、研究者以外の寄稿を載せるなど内容を刷新。一時は廃刊の危機にあったが、学外からの注文も相次いでいる。

福岡大の学術誌「七隈の杜」は2005年創刊で、年1回の発行。当初は教授らが書いた研究成果が多く、主に学内で無料配布してきた。ただ、「内容が硬い」と手に取る人は少数派。在庫が積み上がり、廃刊の声も上がった。

「どうせなら、やるだけやって廃刊しよう」。
重冨洋二広報課長が刷新を提案。14年から毎号、社会を反映したテーマを設定し、学外からの寄稿も募った。

命を考える「生」が主題の今年は、飲酒運転事故で息子を亡くし、飲酒運転撲滅に奔走する女性や、自殺で兄を亡くした女子高生、ホスピスで働く看護師らが書いた文章を掲載。地元新聞で紹介され、県外からも注文が来るようになった。
nanakumanomori12

来年号は、熊本地震や少子高齢化を念頭に、災害や病気、結婚などへの「備え」がテーマ。重冨さんは「学術誌」を通して、硬いと思われる研究に興味をもってもらいたい」と話している。

兄が自殺した本学附属高校の女子生徒が書いた「What do you live for...?」から抜粋して紹介する。
詩人、谷川俊太郎氏の「生きる」という有名な詩をご存知だろうか。

この詩は“生きているということ/いま生きているということ/それはのどがかわくということ/木もれ陽がまぶしいということ/ふっと或るメロディーを思い出すということ”と始まり、“くしゃみをすること、泣けるということ、いま ぶらんこがゆれているということ”とさまざまに「生きる」が定義されていく。

そして最後には“人は愛するということ/あなたの手のぬくみ/いのちということ”と結ばれる。この詩の中での「生きる」の定義には、他人に認められることやいい成績をとること、出世していい暮らしをすることなどといったものは一切見当たらない。

ただ当たり前に思えるような日常が繊細な、温かな目線でつづられているだけである。しかし、そこには自分が今を生きているという確かな実感と、ありふれた日常の一つ一つからにじみ出る生への幸せが感じられる。

突然襲う自然災害も、日常を脅かす。
自然災害で日常を奪われた人々が、早く日常を取り戻せるように祈りたい。そもそも日常を奪われないような建物、まちづくりをしていくことが求められる。

次号の「備え」も楽しみだ。

ちなみに、本学の予約型給付奨学金「七隈の杜」といいます。。。
nanakumanomori_shougaku


地震は悪霊の力?

日経新聞(9/3付け)の「春秋」は、イタリア中部地震に関するものだった。
これが破壊された都市か。すさまじさに圧倒される。崩れた建物の間を進む。ぎざぎざしたがれきの山がどこまでも続いている。人も動物も見ない。気味悪い静けさだ。長年あこがれたイタリアへの旅で、ゲーテは巨大地震が襲った古都メッシーナの廃虚を歩いている。

18世紀後半、この地で起きた震災の死者は1万2千人。3万人が家を失ったという。石造りの建物はほぼ倒壊した。文豪が訪ねたのは発生から3年後だが、荒廃したままだった。住民は郊外の小屋暮らし、店も仕事場も野天である。いつまた恐ろしい揺れがくるか分からない。おびえながら生活する様子を書き留めている。

当時をほうふつとさせる光景である。イタリア中部で起きた地震で避暑地アマトリーチェは壊滅的な打撃を受けた。石造りの建物が崩れ死者は290人を超えた。発生から10日を迎えても不明者の捜索が続く。「これからどう生きればいいか」。不安の声も聞こえる。わが熊本でも余震が続く。遠い国の災厄とは思えない。

天変地異にはかなわない。ゲーテは自然の猛威を「悪霊の力」と形容した。荒々しい爪痕は魔物が通った跡のようだ。だが、悲劇を招くのは人のしわざかもしれない。今回の被害の背景に手抜き工事や耐震偽装も疑われている。早くから耐震化を進めた近隣の町は無事だった。惨事を遠ざけるのもやはり、人の知恵である。

goethe_1828

ゲーテは大量の文学作品の陰に隠れているが、自然科学の研究者としても一流であった。ゲーテは語る。「自然はつねに真実であり、つねにまじめであり、つねに厳しいものだ。自然はつねに正しく、もし過失や誤謬があるとすれば、犯人は人間だ」(岩波文庫「ゲーテとの対話」中巻64頁)。ゲーテにとって自然は、世界の本質を教えてくれた最高の師であった。

こうした自然に対し、ゲーテは畏敬の念を抱く。「自然は、生半可な人間を軽蔑し、ただ、力の充実した者、真実で純粋な者だけに服従して、秘密を打ち明ける」(同)とも書いている。

また、20年間もゲーテの従僕をしていたという男性がこんな話をしている(同上巻87頁)。
「いつか真夜中にベルがなった事があります。彼の方の部屋に行ってみると、(略)御主人はやはり寝ころんでじっと天を観ておられました。『ねえ』とそれから言われました。『今大変な時なんだ。ちょうど地震が起こっているか、それとも、これから起ころうかという時だ。』

ちょうどこの晩に、イタリアのメッシーナの一部が地震のために破壊された。

ゲーテは予言者だったのだろうか、それとも・・・

せまりくる「天災」とどう向きあうか

P1080072

鎌田浩毅・京都大学教授が『せまりくる「天災」とどう向きあうか』を書いている。
自然をコントロールすることは不可能です。

よって、噴火を止めることはできませんが、噴火がもたらす災害を「科学」の力で軽減することは可能なのです。そして科学には「予測と制御」という重要な側面があります。たとえば、過去の震災について書かれた古文書や、地質堆積物として地層中に残された巨大津波などの痕跡から、今後起こりうる災害の規模と時期を推定します。

そして予測されたことから未来に向かって、災害が起こらないように制御を行うのも科学と技術の力です。

世界屈指の変動地域にある日本では、地面が揺れ、火山が噴火し、台風がやってくるのはあたりまえの「現象」なのです。そして巨視的にみると、日本人にはこうした「天災」に対処する能力があるのだと思います。

日本では変化すること自体が「常態」になっています。おそらく日本列島で10万年以上もまれつつ適応した結果、私たちはある種の「しなやかさ」を身につけてきたともいえるでしょう。このしなやかさを維持するために、本書の知恵と知識が役に立つのです。

今後も数十年もの長い間、日本列島では地震・火山・気象に関する災害が続出することはまちがいないでしょう。一方で、噴火と噴火の合間には、風光明媚な風景や温泉などの「火山の恵み」を享受できることも、忘れてはなりません。こうした関係は、地震災害や気象災害についてもいえます。すなわち、災害と恵みは表裏一体なのです。

本書には、日本列島の成り立ち、地震や津波、火山噴火そして異常気象について紹介されている。いずれも災害列島日本に住む人たちが知っておくべき内容だと思われる。本書の内容を家族で学んで自然現象や災害のことについて学んでもらえたらと思う。

家庭での学習も効果的と思うが、小学校や中学校できちんと教えることも重要ではないだろうか。最近では小学校で英語の学習が行われたり、プログラミングも必要だということも言われている。やらないよりはやった方がいいかもしれないが、災害や防災に関することは、子どもたちがどんな職業に就こうとも、必須だろう。

ところで、火山による温泉の恵みというのはわかるが、地震による恵み(?)というのはあるのだろうか・・・

坂茂氏による仮設住宅

dly1609010030-f1

日経新聞(9/2付け)に建築家・坂茂氏が仮設住宅を設計したという記事があった。
世界的な建築家として知られる坂茂さん(59)が設計した木造の仮設住宅計10戸分が御船町に完成し、報道陣に1日公開された。木質パネルを組み立てる方式で、坂さんは「高度な技術は必要なく、工期も通常より短縮できる」としている。

災害支援をライフワークとする坂さんが設計を県や御船町に提案、敷地造成も含め約1カ月で完成させた。

長屋式で3棟に10戸が入る。隣の住宅との仕切り部分には収納スペースを設けて遮音性を高めた。天井を高く設定し、ダイニングテーブルは脚の取り外しができ、ちゃぶ台としても使えるようにした。坂さんは「仮設住宅も住み心地の良さが大切。これを機に仮設住宅のレベルが上がるきっかけになれば」と話す。

木質パネルの仮設住宅の設計や建設は、Shigeru Ban Architectsでも公開されている。

東日本大震災や熊本地震をうけて、仮設住宅にもいろいろな提案がなされてきている。被災者にやさしい仮設住宅のあり方というものが探求されていくのはいいことだ。こうなっていくと、仮設住宅という言葉はやめた方がいいかもしれない。東日本大震災では仮設住宅をまだ使い続けている現状を考えると、もっと長く使える住宅となる必要もあるだろう。

Archives
Recent Comments
訪問者数
  • 今日:
  • 昨日:
  • 累計:

講義中・・・
著書など
『耐震・制震・免震が一番わかる』
共著ですが、このような本を技術評論社から出しました。数式などを使わずに耐震構造、制震構造、免震構造のことを、できるだけわかりやすく解説しています。
『免震構造−部材の基本から設計・施工まで−』
免震構造協会の委員会活動の成果として、このような本をオーム社から出しました。免震構造の基本をしっかり学べるような内容となっています。
『4秒免震への道−免震構造設計マニュアル−』
いまでは少し内容が古いかもしれませんが、免震構造の基本的な考えを述べています。初版は1997年に理工図書から出ていて、2007年に改訂版を出しました。
  • ライブドアブログ