エクアドル地震

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2016年4月16日にエクアドルでマグニチュード7.8の地震が発生した。
日本ではあまり報道されていないが、現地の被害は甚大で、200名以上の人たちが命を落としている。熊本地震の被害も甚大であるが、世界を見渡せば災害はどこにでも起こりうるともいえる。

完全に倒壊している建物もみられる。
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高層建物の中間階が崩壊している。よくも崩れ落ちてこなかったものだ。
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道路の地割れ、陥没も。
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地震に対して脆弱な都市ができるのは、なぜだろう。
国の経済レベルが低ければ、建物の耐震化に費用をかけるよりも、もっと別のことにお金を使う必要がある。建物の耐震化が進むためには、経済に余裕ができてからになる、のだろうか。しかし、経済レベルが高くなるまでに建設された建物は耐震性が低いままであり、都市の脆弱性は残されたままとなる。

国の経済レベルに応じた耐震性、あるいは耐震性能目標というのがあるだろう。では、我が国の耐震性能目標は妥当といえるのだろうか・・・

熊本地震における建築物被害の原因分析を行う委員会

日経新聞(5/26付け)に『熊本地震の倒壊原因分析 国交省有識者委が初会合』という記事があった。
国土交通省などは26日、熊本地震で建築物の倒壊原因を分析する有識者委員会の初会合を開いた。同地震では震度7の揺れが2回発生し、多くの建物が被害にあった。委員会では被害状況を建物の年代別や構造別、地域別などに応じて分析し、原因を解明する。結果を踏まえ、耐震基準見直しの必要性なども含めて議論を進める。

委員会は建築構造や設計の専門家ら25人で構成。会合では、同省の研究機関である国土技術政策総合研究所(茨城県つくば市)などが被害が甚大だった熊本県益城町などで実施した現地調査を基に議論。今夏にも建物の倒壊原因や被害状況の詳細をとりまとめる。

国は1981年に導入した現在の耐震基準で、震度6強以上の揺れでも倒壊しない耐震性を建物の建築時に求めている。阪神大震災後の00年には木造家屋の柱と土台を接合する金具などに関する規定を強化。ただ熊本地震のように震度7が同じ地域で続発するケースは想定していなかった。

委員会では現行の耐震規定の妥当性を中心に議論されるのだろう。しかし、震度6強以上の揺れでも倒壊しないという基準の考え方そのものについても議論してほしいものだ。東工大名誉教授のW先生は、講演されるときに、"Ductility is Damage"ということをよく紹介される。
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"Ductility"は、靱性とか粘り強さという意味。建物が大きな地震を受けたときに、建物は大きく変形するものの、柱や梁などの構造部材が塑性変形することで倒壊は免れるようにしている。建物が大きく変形すると、それなりの損傷(Damage)が発生する。

大きな揺れに襲われたときに、倒壊はせずに人命を守るという最低基準でいいのかどうか。もちろん建築基準法は最低基準ということになってはいるけれど、「公共の福祉」のためとしても妥当なのかどうかということも議論してほしい。

また、W先生はこうした言葉も紹介している。
"Ductility is not Final Goal"

南海トラフでひずみ蓄積が大きい?

ハフィントンポストに『南海トラフ、四国沖などに「ひずみ」 想定以上に大きいものも』という記事があった。
南海トラフ巨大地震を引き起こす、海側のプレートが陸側に入り込んで蓄積された「ひずみ」の分布図を海上保安庁が作製した(発表資料PDF)。海底の観測器による実測値を初めて使った図で、想定以上の大きなひずみも確認されたという。
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24日、英科学誌ネイチャー電子版に論文が掲載された。海保では2000年度から観測器を海底に置き、ひずみがたまる陸側と海側のプレート境目の動きを測定。南海トラフ沿いの15カ所について、06年度から15年度の動きを分析した。

その結果、陸側プレートに置いた観測器が海側プレートの沈み込みとともに年間2〜5.5センチ移動。動きが大きい場所ほどひずみも大きかった。ひずみの場所はほぼ、政府が南海トラフ巨大地震の震源域として想定する範囲内。ただ、南海トラフ巨大地震の一つ東海地震の想定震源域の南西側や、1940年代に起きた二つの大地震の震源域南西側にも大きなひずみを確認した。
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ひずみの分布と地震の詳細な関連性はわかっておらず、海保の横田裕輔・海洋防災調査官付(測地学)は「過去の履歴にない強いひずみが見つかった。今後、地震の評価に役立ててほしい」と話している。

南海トラフで大地震が発生することは以前からも指摘されている。問題はどの程度の地震が発生するかだが、今回の調査結果が地震の規模や特性を評価する上で役立つことを期待したい。過去の震源域の外側にも高ひずみ領域が確認されたということは、より大きな地震が発生するということだろうか。

いつか地震は発生するわけだから、それに対する備えをしておくことが求められる。熊本地震では木造住宅に多大な被害が発生した。こうした被害をできるだけ防ぐことが必要だろう。耐震診断や耐震補強の必要性が叫ばれているが、もっと実効性のある対策が必要なのかもしれない。

熊本地震では地震火災が少なかったのか?

東京大学大学院の廣井悠准教授が『熊本地震で地震火災は少なかったのか?』と題して書かれている。
一般に,地震火災の出火率は住宅の倒壊率と因果もしくは相関があるものと言われています.(略)ここでは最大震度6強の消防本部を抽出し,1万世帯あたりの出火件数(以下,出火率)を計算してみましょう(ただし被害報で火災が報告されている熊本県のみを計算).「平成27年国勢調査人口速報集計」からこれらの世帯数を引用すると,震度6強地域の世帯数は474,689世帯と推察され(ただし消防本部単位),1万世帯あたりの出火率は約0.3件となります.筆者のこれまでの研究によれば,東日本大震災時の出火率は津波火災および非浸水地域を除けば1万世帯あたり約0.4件ですので,調査データが単純に比較できないことに注意しつつも,熊本地震の出火率は東日本大震災と比べて同じくらいか,わずかに少ない程度という解釈をすることができます.

つまり絶対数だけ見ると熊本地震では地震火災があまり発生していないような印象を受けるのですが,それは被災範囲が東日本大震災などの広域災害に比べてやや狭いことによるもので,出火率は東日本大震災の非浸水地域を大きく下回るものではないことが分かりました.しかしながら別の地震を取り上げてみると,例えば阪神・淡路大震災における震度7地域の出火率は1万世帯あたり約3.0件とされており,また中越地震における震度6強以上地域の出火率は1万世帯あたり約1.2件といわれていることからも,東日本大震災以前の大規模地震時と比べて少ないことも確かです.

これは,感震ブレーカーやマイコンメーターの普及,電力会社による慎重な通電再開など社会環境の変化によるものとも考えられます.しかしながら一般に,地震火災は時刻や季節によってその数が大きく異なるといわれています.例えば食事の支度をしている家庭が多くなる夕方に発生した地震では出火件数が多いと考えられます.また,冬に地震が発生した場合も暖房器具などの火気器具が室内に多いことにより,出火件数が多くなるとみられています.

阪神・淡路大震災は1995年1月17日5時46分,中越地震は2004年10月23日17時56分に発生した,真冬もしくは夕方の地震でした.つまり東日本大震災や熊本地震はこのような出火の多いとみなされている時刻や季節に発生した地震ではなかったため,出火率が低かったとも解釈できるのです.もし今回と同じ地震が冬の夕方に発生した場合,16件を大きく超える出火件数となる可能性も十分に考えられます.

出火率に関係する要因としては他にも,倒壊建物の数など建物被害に関する指標もありますが,「広域に大きい揺れをもたらした本震の発生時には数多くの避難者が発生しており,自宅で火気器具や電気を利用する状況ではなかった」といった今回の地震に特有の被災特性が影響している可能性もあります.延焼や避難など出火以降のステージも考慮すると,地震火災の被害は大都市であればあるほど大きいものと考えられます.つまり東京や大阪,名古屋など大都市での火災被害は阪神・淡路大震災を大きくこえる甚大なものになる可能性もあります.これらの点は今後の精緻な調査・分析で明らかにする必要がありそうですが,いずれにせよ今回の熊本地震で地震火災の件数が少なかったからといって,必ずしもわが国の地震火災リスクが低減したというわけではないことに注意する必要がありそうです.

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朝日新聞「地震火災の恐怖」には地震火災の出火原因が紹介されている。ストーブなどが割合としては高い。

確かに熊本地震では火災は少なかったと感じている。しかし、出火率にすれば、阪神淡路大震災などと比べると1桁小さいものの、東日本大震災と同程度となっている。今後、大都市で震災が発生した場合の火災リスクについても対応を考えておくことが求められるということか。

それにしても、地震の発生した時間帯というのは、被害の様相に大きな影響を与えるものだ。

災害による住家の被害認定

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南阿蘇村で倒壊している学生アパートでは、地盤の変状もみられた。

アトリエサンカクスケールの村上明生氏が、南阿蘇村に建築相談員として行ったときのことを次のように書いている。
昨日、南阿蘇村にて災害支援機構の建築相談員としてボランティアに参加してきました。
罹災証明関連の相談を被災者の方々から受けましたが、まだ何から手をつければいいのか?という感じです。震災当初の人命支援を終え、今から生活再建に向けてのプログラムが始まりますが、やはり居住する場所の安定が必要であることを痛感します。

一方で、罹災証明制度自体の限界もあらわになっています。

罹災証明はあくまで建築本体の安全性を考えた制度であり、外部要因については考えないことになっています。南阿蘇村では丘陵地などが多く、中には建物のすぐ脇に何本もの地割れが谷に向かって走っている方や、山側の崖が崩落しており二次被害が出そうな方など、土木的要因による危険が身近に存在しています。

しかしこのような場合でも、建物が大きく損傷してなければ、今の所、支援の手立てがないのが現状です。現在、役場が県などに掛け合いながら協議している状況ですが、そもそも外構と建築が一体的に考えられていないところに、国のシステムの根本が問われる結果となっています。

敷地内に危険が存在し、今後いつでも建物が損壊する危険性をわかっていながら、安心して住むことはできません。そしてそんな不安を抱える人たちに対する支援は、今の所、国のシステムでは対応外となっています。このような被災者の方々に、相談員として、ただただ話を聞くことしかできませんでした。建築の専門家として、制度を改革する事も必要な仕事なのだと感じます。

国を始め、行政の方は必死で働かれていました。私たち相談員もそうです。ですが、それでも、被災者の現実を支援できない事は、制度やシステムに人々が呑み込まれている錯覚におちいります。必要以上のマニュアルは機能しないと思いました。

災害による住家の被害認定については、内閣府でたくさんのマニュアルが用意されている。被災度判定は、建物、それも構造体や内外装材などの被害を点数化していって、被災度を判定する仕組みになっている。村上氏が指摘しているように、制度が追いついていないのではないだろうか。

被害認定に関するQ&A 集(PDF)には次のような記述がある。
Q16.住宅だけでなく、地盤にも被害があるのですが、住宅の被害認定に反映されるのですか。
A16.地盤そのものの被害は、住宅の被害認定には反映されませんが、地盤被害の影響による住宅の基礎等の損傷又は機能損失については、住宅の被害認定に反映されます。

Q17.住宅の中の家財道具にも大きな被害があるのですが、被害認定に反映されるのですか。
A17.家財道具の被害は、住宅の被害認定には反映されませんが、所得税の軽減等の支援措置を受けられる場合もありますので、税務署等にご相談ください。

Q18.この家に住み続けても大丈夫ですか。(地震の場合)
A18.被害認定調査は、居住可能かどうかを判定することはできません。別途、建築士等にご相談ください。なお、当面の使用の可否については、応急危険度判定が、恒久的な復旧方法については、被災度区分判定が参考になります。

被害が出ないようにしておくのが一番ではあるものの、我々が想定していない被害が発生することも多い。こうした事例にどう対応していけばいいのだろうか。

スマート免震?

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一般社団法人地盤対策協議会が、スーパージオ工法を用いることで減震効果があると解説している。

住宅の基礎の下に、スーパージオ材(ビールケースのようなもの)を敷設することで、液状化対策だけでなく、減震効果もあるという。WEBサイトには縮小試験体を用いた実験映像もあるが、どれくらい応答が低減しているのかという定量的なデータは見つけることができない・・・

同じサイトには「スマート免震70R」という新しい(?)工法についても説明があった。従来よりも低価格で免震工法を適用できるという。東日本大震災のとき、船橋市にあった69棟では家屋はもちろん、家具や食器にも被害がなかったとされている。どれほどの地震入力に対する効果だったのか、知りたいところだ。

それなりに効果があったのだと思われるが、この工法を採用した住宅が熊本地震の益城町にあったら、効果はどうだったんだろうか。

ある程度の免震性能でも万が一のときには免震(減震)効果を発揮できる工法があってもいいはずだ。現状の戸建て住宅の免震工法では高い免震効果が期待できる反面、費用が高いということも指摘されている。こうした免震工法を「松免震」とすれば、そこそこの免震効果を期待できる工法を「梅免震」として開発してはどうかと提案したのはずいぶん前のことであった。「梅免震」の開発は今後ますます重要であると思う。もちろん、工学的な実証データを示してその効果を適切に説明できることが必要となる。

地震予知はできる?

地震予知に関して東京大学理学のロバート・ゲラー教授は、不可能であるとずいぶん前から発言している(2011年のnatureの記事)。
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その理由は、
 |録免生の正確なメカニズムは、いまだ解明されていない。
 地震発生のメカニズムは、地域や規模が違えばその都度に変わってくる。
 自然現象はたくさんの要素が相互作用することで引き起こされる。
とされている(このサイトを参照)。

地震は断層が破壊して起きる現象である。破壊現象がいつ、どのように起きるかを特定することは困難(不可能)である。学生によく話をする例として、お弁当を食べ終わった後に割り箸を折る人がいるけれど、割り箸がどのように壊れるかを正確に予測することはできない、と。ましてや広範囲にわたる断層面の破壊を予測するのはさらに難しいはずだ。

一方で、地表の変動を測定して、地震の前兆を検知するJESEA(ジェシア)というところもある。MEGA地震予測では、2015年の震度5以上の地震は的中したとしているが、今回の熊本地震の予測はできなかったそうだ(横浜地球物理学研究所)。

万が一、地震の発生が予測できたとしても、それによって地震が発生しなくなるわけではない。建築に携わる者としては、地震によって建物が大きな被害をうけないようにすることが第一であろう。

ふるさと納税、被災地へ届け

ふるさと納税
http://furusatonouzei.yahoo.co.jp/shien

朝日新聞(5/21付け)に『ふるさと納税、被災地へ届け』という記事があった。
熊本地震の被災地に「ふるさと納税」の寄付が続々と届いている。熊本県は20日、地震発生後1カ月間の受付額が前年度1年間の24倍を超える約22億8千万円に達したと発表した。被災した県内の市町村も前年度を上回るペースで、新たな被災地支援の方法として注目されている。

熊本県によると、4月18日〜5月18日に1万1701件、22億8819万円が寄せられた。前年度の受付額は9386万円だった。

全壊家屋が100棟を超えた熊本県内8市町村に朝日新聞が5月16日時点で把握している今年度の状況を尋ねると、南阿蘇村では前年度の5倍近い1億6700万円、嘉島町でも前年度の21倍の2840万円が4月中に寄せられていた。

ふるさと納税については、高額な返礼品を目当てにしているという批判もあるが、被災自治体への寄付者には、自治体の「返礼品」を不要と申し出る人が多いという。いろいろな支援の仕方がある。お金も大事だけれど、地震やその被害のことを忘れないということが一番じゃないだろうか。

「ふるさとチョイス」のサイトはこちらから。

戸建住宅のヘルスモニタリング

NTTファシリティーズでは、低価格のセンサーを開発して『揺れモニ』というモニタリングシステムを開発して適用している。これは一般ビル向けでそれなりの費用もかかる。

今回の熊本地震では、多くの住宅が被害を受けた。前震(4/14)では大きな被害はなくても、本震(4/16)では大きな被害をうけたり倒壊した住宅もあった。地震をうけても外観上大きな損傷が見られなければ、応急危険度判定でも「危険」とみなさない可能性も高い。大きな揺れを経験した住宅の耐震性や健全性をできるだけ速やかに判定することが必要となっている。

1年前、ミサワホームKDDIは、被災度判定計「GAINET」の発売を始めた。これは地震センサーを基礎位置に取り付けて、地震計の記録から建物の被災度判定をするというシステムとなっている。
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これはミサワホームの住宅だけを対象に取り付けがなされているというが、各戸の測定データをLTE回線経由でクラウドに集約し、センターで各戸の被災度を把握できるという。さらには被災度に応じて緊急度を判断し復旧活動を実施するとされている。

ミサワホームだけでなく、多くの住宅でこうした取り組みができないものだろうか。さらには、基礎だけでなく、上部構造にもセンサーを設置できないだろうか。火災報知器のように各住宅に加速度センサーが設置されれば(義務化?)、建物の応答が把握され、健全性もすぐにチェックできるのではないだろうか。

IoT技術によって、住宅の耐震健全性を評価できるようにすることは、今後の防災・減殺にとってとても大事なことだと思う。

想定すべき外力とは?

日本建築学会の機関誌「建築雑誌」(3月号)に、東京大学教授の高田毅士先生が『想定すべき外力とは?』と題して書かれている。抜粋して紹介する。
リスクとは、対象とする事象の発生確率(頻度)と、事象発生後の被害量の組み合わせと定義されている。

リスクを低減するには、強い構造物をつくるだけの一面的な対応では不十分で、被害の様相に応じた多面的方策を考える必要が生じる。

リスク概念に基づく設定では、その発生頻度と被害量の両方を考慮しながら目標とする水準を確保できるようにリスクを低減することになる。すなわち、想定を上回る可能性や、より大きな被害量が生じる可能性を認識しながら有効な対応が可能となる。

リスク低減には、設計で対応できる(すべき)領域、設計を超えた領域、そして防災・減災対策で対応すべき領域がある。それぞれの領域において、現有リスクを許容リスク曲線以下になるように低減するには、おのおのの対応領域固有の方策による。
リスクマネジメント
http://www.jaee.gr.jp/jp/wp-content/uploads/2015/04/150415_chap03_takada.pdf参照>
不確実な要素を含む問題に対しなんらかの決断をしなければならない時に、受ける被害の大きさとそれが生じる可能性を判断条件として、自分がどれくらい被害を許容できるかを考え合わせながら意思決定することは自然であり合理的である。不確実なものを不確実でないと考えてしまって安心しきってしまうことの方が危険な状態といえる。

地震災害の場合、非常に稀に起きる地震で大きな被害が発生することがある。100年とか1000年とかに1度起きる地震に対する被害量を計算するのも難しそうだが、低頻度の事象に対するリスク対策が問題となっている。ただ大きな外力を想定すれば建築物が安全になるかといえば、そう単純ではないのではないか。外力の想定を変えなくても、それに対する建築物の応答が小さくなるように設計すれば、安全性は高くなる。要はクライテリアの設定の問題だろう。

リスク低減の考え方は紹介されているものの、具体的にどうすべきかは、たった2ページの記事では書き切れないということかもしれないが、ご教示願いたいところだ。結局は1つの建築物を強くつくるだけでは、リスクを低減できないということなのだろうか。設計範囲を超えた外力に対する対応は、どうすればいいのだろうか。

地震の発生という不確実な問題に対するリスクを正しく理解するというのは大切なことだと思う。しかし、これから新しい住宅を建てるオーナーに、大地震時にどこまでの被害を許容できるか、と尋ねても果たして答えられるだろうか。もし、ほとんど無被害になるようにしてほしいと言われたときに、それに対応した住宅を建てることはできるのだろうか(もちろん予算の範囲内で)。

住宅の耐震性能について、一般の方々にちゃんと理解してもらえるような説明ができているのか、我々は一般向けに説明できる「言語」をまだ有していないのではないか。そういえば、高田先生は技術説明学(Engineering Accountability)』の必要性を訴えられていたが、まさにいま必要なことだと思う。

住宅に必要な耐震性とは

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写真は、南阿蘇村にある学生下宿の一つで、無被害である(応急危険度判定も緑)。南阿蘇村では2階建ての木造アパートの1階が倒壊して学生の命を奪った。建設年代ははっきりしないが、外観からすれば新しい建物ではないだろう。それでもほぼ無被害である。被害ばかりではなく、被害がでなかった建物にも注目する必要があるだろう。

熊本地震による住宅の被害をうけて、新耐震基準の妥当性への関心が高まっている(一部だけかもしれないが)

住宅の耐震性能はどうあるべきなのであろうか。

ずいぶん前のことだが、とある会合で住宅メーカーの方が免震住宅のことを説明していた。建築基準法に規定された地震動がきたとしたら、この免震住宅はこれくらいの応答変形が出ます、と。それに対して、基準法以上の地震動がきた場合にはどうなりますか?と質問をしたら、何を言っているのかわからないという感じだった。建築基準法以上の地震動がきたら、我々の責任ではない、と言いただけだったと記憶している。

建築基準法に従って住宅を建てたとしても、住宅の構法などの違いによって耐震性能には違いが生じるだろう。建築基準法で決められた方法で住宅がつくられているとしても、その住宅の本当の耐震性能はどれくらいなのだろうか、全壊に至るまでの余裕はどれほどなのだろうか。建築基準法で規定された地震動の1.2倍? 1.5倍? 2倍?・・・。どれくらいの地震動がきたら全壊になる、あるいは倒壊するという地震動のレベルを把握しておく必要はないのだろうか(すでにわかっているならオーナーに公開すべきでは)

もちろん住宅の耐震性は計算通りではないかもしれない。経年変化や施工上の問題、そして基礎・地盤特性の影響もあるだろう。そうしたことを踏まえると、建築基準法に準拠してつくればいいということも簡単には言えなくなるはず。さらには、耐震強度を高くすれば、たしかに構造躯体は損傷しないかもしれない。しかし、その中にある家具や家電製品は転倒し、中身は散乱する。決して居住者の安全・安心を守れるわけではないということには注意が必要だろう。

多数の住宅が倒壊し、その中に新しい住宅が含まれているということで、耐震基準の見直しに言及する報道も多い。これは反面、現行の耐震基準で建てられた住宅の性能についての理解が社会に浸透していなかった、ということの現れともいえる。

耐震基準の見直しを叫ぶだけでなく、現状を正しく認識し、説明していくことが求められている。さらには、耐震強度を高めるだけでなく、減衰性能を高めたり(制振ダンパーの設置)、そして免震構造にするという選択肢があることも社会に伝えていくべきだろう。

熊本地震での応答スペクトル

熊本地震の本震(4月16日)での観測波形の応答スペクトルを並べてみた。いずれもEW(東西)方向の加速度応答スペクトルで、減衰定数は5%〜30%まで変化させている。益城町のスペクトルはKik-netによる記録で、益城町役場の記録はこちらを参照。

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これを見ると、益城町と西原村では周期1秒付近に大きなピークを有していることがわかる。益城町役場は本震で大きな被害を受けたが、西原村役場はほとんど被害を受けていない。この差はどこにあるのだろうか。
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一方、一の宮での観測記録は周期1秒付近の応答は減少しているが、3秒付近の応答が大きくなっている。海溝型の地震ではないけれど、長周期地震動が発生したといえるのだろうか。

震度7の連続地震、耐震強度1.5倍必要?

京都新聞(5/11付け)に『震度7の連続地震、耐震強度1.5倍必要』という記事があった。
熊本地震のような2回の震度7の地震に建物が耐えるためには、現行の耐震基準より5割増の強度が必要になることが、京都大工学研究科の竹脇出教授(建築構造学)の研究グループの解析で分かった。1回の震度6強〜7の地震に耐えることしか想定していない現基準の建物では、立て続けに震度7級の大きな揺れに襲われると倒壊の危険性があるという。

熊本地震では、4月14日夜に続き、16日未明にも震度7を観測した。14日の地震には耐えたが、16日の地震で倒壊した建物もあり、「2回の震度7」への建築物の対応が新たな課題として浮かび上がった。

竹脇教授は、地震時における建物の揺れや必要な強度を精度よく計算する手法を独自に開発しており、2回の震度7を耐えるのに必要な強度を算出した。建物は、1回目の地震によるダメージで一定の変形が残るために、揺れに対する抵抗力が低下する。その上で、震度7にもう一度耐えるためには、1回耐える場合の約1.5倍の強度が求められる結果となった。

震度7の揺れを受けた建物は変形の幅が建物の全体幅と比べて小さいために、再度同クラスの揺れに耐えうるかどうかは、外観だけでは判断できず、専門家による詳しい調査が必要になる。変形のために低下した耐震性を再び確保するためには、大幅改修か建て直しが必要となる。

建物の強度は柱や壁、はり、筋交いなどの設置状況で決まる。竹脇教授は「既存の住宅では、地震の揺れを吸収する制震ダンパーなどを設置することでも耐震性を向上させることができる。今後、現在の耐震基準の見直しも必要になるだろう」と話している。

益城町では震度7の地震を2回うけて、多くの木造建物が被害をうけ、倒壊している。それでも100%倒壊しているわけではない。震度7を2回連続でうけても、倒壊せずに踏ん張っている建物もある。こういう建物は耐震強度が1.5倍以上あったということなのだろうか。それとも他の要因で倒壊を免れたのだろうか。

確かに大きな地震を経験すれば、外観上は問題なさそうでも、構造体や接合部の健全性は損なわれているかもしれない。建物の健全性を評価する簡易な方法の開発も必要ではないだろうか。たとえば常時微動を計測して建物の固有周期を調査してみるなど。

震度7クラスが2回で、耐震強度が1.5倍必要。
では、3回きたら、どれくらい必要なのだろうか・・・きりがないけど。

熊本地震で被災した文化財の復旧修理

熊本地震では、阿蘇神社や熊本城などの文化財の被害が大きく取り上げられている。
被災地では、まずは被害をうけた住宅や学校などの復旧が優先され、1日でも早い日常を取り戻せるようにすることが最優先である。

そのため、文化財やそれに相当する家屋などは後回しになりがちだ。しかし、熊本城や阿蘇神社以外にも文化財の被害は多いことが調査でわかっている。こうした現状を踏まえ、日本イコモス国内委員会から『熊本地震の被災した文化財等の保存に向けた緊急アピール』が出された。
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国などにより指定された文化財の復旧修理事業には時間がかかっても達成される仕組みがあるそうだが、指定されていない文化財には工事費の補助がないか、あっても上限がきまっているという。被災した文化財には指定されていないものもあり、そうした歴史的建造物が解体される危機にある、と。

同様に、日本建築学会からも文化庁長官への要望書が提出されている。
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写真は、熊本市の景観重要建造物である「西村邸」。壁などが剥落していたため応急危険度判定では「危険」とされていたが、建物内部はいたって健全であった。こうした建物は他にも多数ある。
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多くの方々のご理解とご協力により、被災地の文化財や歴史的建造物が復旧修理されることを願いたい。

地震が怖くて家に帰れない

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ハフィントンポストに、強い地震のトラウマで、子供が家に帰りたがらないなどといった被災地の家庭向けの絵本が紹介されていた。絵本は熊本市HPで公開されている(PDF)。

ストーリーを考えたのは、障害のある子供の支援をする熊本市子ども発達支援センターの所長で医師の木村重美さん。保育士の細郷幸美さんが子供向けの文体に仕上げ、やはり保育士の川嶋久美さんが絵を描いている。

木村さんによると、ポイントは以下の通り。
・慣れた環境に戻す
「お気に入りのぬいぐるみなど、身近なものを持たせてあげるといいかもしれません」

・安心できるスペースをつくる
「物が落ちてこないような場所を示してあげてください」

・見通しを示す
「今回は余震が続いていますので、次に余震があった場合など、どうすればいいかの見通しが、子供にもわかるようにすることが大事です」

熊本地震では、余震活動も活発で、震度1以上の地震が1400回近くになっている。大きな被害を目の当たりにして、子どもたち(大人も含め)の心のケアが大事な時期になってきている。地震の発生は防ぎようがないが、地震による災害は減らすことができる。子どもたちが安心して生活できる家や学校などをつくっていくことが必要だろう。

51棟ではなく最大でも17棟?

本日、日本建築学会では熊本地震の速報会を東京工業大学において開催した。
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多くの参加者に加えて報道関係者も多数お見えだった。報道関係者の関心は、やはり新耐震基準による住宅の全壊棟数だったのか。新耐震基準を満足していても、大きな被害を受けた住宅があるということはニュース性が高いのだろう。新耐震基準ではダメだから、国は耐震基準を見直せ、などというストーリーを描きやすいからだろう、か。

しかし、古い住宅でも倒壊していない住宅もあるのである。
被害調査のときには、どうしても被害を受けている建物を中心に調査を行うが、被害が小さい建物の調査はあまりなされないことが多い。被害調査において、被害を受けなかった建物、被害が少なかった建物の調査も行う必要があるだろう(自省もこめて)。

そういう意味で、ある範囲にある建物を被害程度にかかわらず全部調べる悉皆調査では被害の程度を定量的に評価できる。新耐震基準の何棟が全壊したのかではなく、何棟中何棟がどういう被害を受けたのか、それは建設年代によってどう変化するのか、あるいは建設地(地盤)の違いによる影響はあったのか、などを分析する必要があるのだ。

益城町などの断層近傍の住宅において多くの住宅が被害を受けたのは事実である。この被害が、震度7という強烈な揺れによって引き起こされたのか、あるいは断層運動にともなう地盤変状によって引き起こされたのか、あるいはその両者が複合したものか、など解明すべき点は多い。

なお、益城町の木造住宅の被害調査報告で、京都大学の五十田教授は、まだまだ精査が必要と前置きしながらも、2000年以降の木造住宅の倒壊棟数は最大でも9棟、全壊は最大でも8棟程度ではないかと報告していた。これらの被害棟数が何棟に対する割合なのか、が問題となる。さらに倒壊した建物の原因は究明する必要があろう。また、設計上の配慮不足、施工不良もみられるという。

日本建築学会の災害調査委員会としてはさらなる調査・分析をして、結果を公開していきたいと考えている。

また出ました「51棟全壊」

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朝日新聞に続いて西日本新聞(5/11付け)においても『新耐震基準 51棟全壊』という記事が出ました。

「2000年以降に建てられたとみられる木造家屋の被害のうち、全壊が51棟に上ることが日本建築学会九州支部の現地調査でわかった」、と書かれていますが、学会として正式に発表していません!

「学会は耐震基準の見直しが必要かどうか詳細な分析を進める方針」??
詳細な分析は必要ですから、これから悉皆調査で得られたデータを慎重に分析するつもりです。
分析した結果としてならともかく、現時点では耐震基準の妥当性に関して何も言えません!

研究者個人による発言かもしれませんが、記事は正確に書いて欲しいものです。

朝日新聞の記者さんは、災害調査本部に毎日のように来られてましたが、西日本新聞の記者さんは見かけませんでしたね。記事を書くときには、ちゃんと中身を検証してほしいものです。

TBSニュースでも誤った情報が伝えられているようです。

建物の耐震化はどこまで必要?

日経新聞(5/12付け)に『学校の耐震どこまで 熊本地震、補強済みでも被害』という記事があった。
熊本地震では耐震工事を済ませた学校施設などに被害が出て、再避難を余儀なくされるケースが相次いだ。国の基準は、震度6強以上の地震「1回」に耐えるレベル。今回は繰り返し発生した強い揺れに耐えられない施設が目立った。大地震に備えている各地の自治体では、学校施設で従来以上の耐震補強が必要なのか、戸惑いの声が上がっている。

「耐震についての考え方を変える必要があるかもしれない」。東海地震で大きな被害が想定される静岡市教育施設課の担当者は、熊本地震を目の当たりにしてこう漏らした。同市は2009年までに、市内全ての小中学校の施設が国の基準を満たした。担当者は「今回のようなケースでは、どんな被害が出るのか分からない」と不安を漏らす。

文部科学省によると、体育館などの学校施設に求める耐震基準は「震度6強以上の地震で倒壊・崩壊の危険性が低い」水準だが、大地震の連続発生は想定していない。
(略)
文科省は、被災地に担当者を派遣するなどして情報収集を進めている。ただ従来の耐震基準を見直すかどうかは現時点では白紙という。

耐震設計に詳しい福岡大学工学部の高山峯夫教授(建築学)は「多くの自治体は現行の耐震基準を満たすところまでしか対応しておらず、現行基準がより厳格な対策を結果的に妨げていた側面もある」と指摘する。その上で「どの程度の強さの余震にまで備えるべきかはコストの問題もあって簡単には答えが出ないが、今回の地震を耐震設計のあり方を考える契機にすべきだ」と話した。

今回の震災を受けて、耐震基準の強化という声が出てくるかもしれない。しかし、建築基準法を改正して全国一律に耐震基準を上げるということはしないほうがいいのではないか。今後の詳細な調査を待つ必要があるものの、まずは現行の耐震基準(いわゆる新耐震基準)に従ってつくられた建物の被害がどの程度だったのかを明らかにする必要がある。新耐震基準であれば無被害にとどまるということはなくて、ある程度被害は出る可能性がある。

では、どの程度の被害であれば許容できるのか。こういった点について施主と設計者がきちんと協議をするということが求められるのではないだろうか。すでに断層があることが確実視されているような地域で建物をつくる場合にはより高い地震力を考えて設計するなどの配慮が必要だろう。

日経アーキテクチュア『見逃された「活断層に住宅」のリスク』という記事では、例えば福岡市で取り組んでいる耐震基準の割り増しなどが紹介されている。ただ、これはあくまで努力規定であり、強制力はない。地域の地震特性にあわせて自治体が地震力を規定できるような制度になってもいいのではないだろうか。

国は「耐震等級」という制度もつくったのだから、もっと活用するようにした方がいいのではないか。できれば耐震等級に「0.8」とか「0.6」があってもいいはずだ。建物の健康診断をして耐震等級を明らかにし、等級があがるように支援していくことも必要なのではないだろうか。
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阪神淡路大震災の後に、これからは性能設計の時代だと言われた。建物の耐震性能を評価する「性能設計」の充実がますます求められる。

がまだすばい!くまもと

日経新聞(4/25付け)に『「がまだすばい!」 記者、揺れ収まらぬ故郷を歩く』という記事があった。

18日に熊本に入った記者が被災地のなまなましい情景をレポートしている。
■なぜ車中泊を選ぶのか
日吉小の体育館は避難所として利用され、常時300人程度が寝泊まりする。運動場には車が並び、車中泊する人も多い。地元の同級生たちも、その中にいた。

阪本浩介(31)は、帰省時にいつも遊ぶ友人の一人で中学時代、相当やんちゃした仲間だ。妻の奈七(31)は1回目の大地震のさなか、3人目を出産したばかり。阪本は構造計算の専門家で耐震構造には詳しい。

阪本は本震の際、子供2人と一緒にいた。「自分の家は耐震構造上、頭では大丈夫だとわかっているけど、心は追いつかない。早く逃げないといけないと焦った」と振り返る。

病院には電話し、妻と新生児の無事を確認する。今は子供たちと一緒に実家に身を寄せているが、夜になったら車で寝ているという。

「子供が大人のそばを離れず、ちょっと立つだけで『どこいくの』と不安がる。少しの揺れでも泣いておびえる。また大きな揺れがあるかもしれないという恐怖心がぬぐえなくて、すぐ逃げられるように車で寝る」と頭を抱えた。
(略)
避難所では、雑魚寝でプライバシーを確保できない。実際に、財布の盗難なども起きている。自分たちのプライバシーを守り、何かあったら逃げ出すために、やむなく「車中泊」を選ぶ。

東京など被災地以外に住む人たちは、エコノミークラス症候群になるのに、なぜ車中泊するのかと思うかもしれない。「車中泊」は地元の人たちのわずかな心の安らぎを担保するものだ。水不足と次なる大地震への不安。これが今、県民の心の負担になっている。

■テレビは「絵になる」場所ばかり
記者が夕方、取材を終えて中央区の市街地から南区の実家まで車で戻る際、基幹道路の国道3号をはじめ、あらゆる道が渋滞になっていた。通常ならば30分程度で帰宅できるが、この日は4倍の2時間かかった。

基幹道路では支援物資を運ぶ大型トラックだけでなく、自家用車も多い。物資を運ぶ県外ナンバーの自家用車もあるが、熊本ナンバーが大半を占める。

地震の影響で橋や道路が一部陥没したり、ひび割れしたりして通行止めになり、通れる道も限られている。ただ通行止めの影響だけではない。

熊本市内では、すでに日常生活が始まっている。玉名市など比較的被害の小さい地域へ温泉や銭湯に入りに行く県民もいる。なにより日々の生活を回すため、郊外の大型商業施設などに買い出しする人も出てきた。支援物資の運搬という「非日常」と買い出しや風呂という「日常」の交錯が、交通渋滞を引き起こしている。

「余震が収まるまで県外に避難すればいい」という声も聞く。ただ住み慣れ、愛着のある地域で日常生活を取り戻すことが復興になる。

熊本県内でも被害には差がある。もちろん益城町や南阿蘇村の被害は甚大だ。とはいえ熊本市や八代市、御船町でも被害は大きい。大分県内にまで被害が広がる。

テレビ局など報道機関は絵になるところを選んで映す。それが他の地域の実情を見えづらくし、支援の偏りを生む。

熊本地震からまもなく1ヶ月、テレビや新聞などによる地震関連の報道は少なくなってきている。ニュースに新規性や視聴率などへの寄与がないと報道する価値がないということか。日本は災害列島であり、いつまた災害がおきるとも限らない。そうした備えをするためにも、被災地の復興を伝える報道があってもいいと思う。東日本大震災の復興もまだまだこれからなのだから。

熊本城の宇土櫓(重要文化財)は健在なり。
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新耐震基準の51棟全壊?

朝日新聞に『新耐震基準の51棟全壊』という記事が掲載された。
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日本建築学会九州支部の災害調査委員会では、益城町の悉皆調査を実施した。全6日間で約2500棟以上の建物を調査した。調査は木造建築だけに限らず、調査地域にある建物すべてを対象としている。調査では建設年代(わかる範囲で)、建物用途、被害パターン、屋根形式、基礎形式、地盤変状などを1棟ずつ記録していく。

これらをデータベース化して、詳細を分析することで、建物の建設年代と被害率の関係だとか、屋根形式や基礎形式の違いによる被害の差、そして地域ごとの被害率などが明らかにできるのではないかと考えている。

調査は終了したばかりであり、これからデータベースを作成するところである。したがって、新耐震基準の建物がどれだけ被害を受けたのかについては、まだ確定していない。51棟という数字は、日本建築学会あるいは災害調査委員会として正式に発表したものではない。

この新聞記事をみた他の報道各社から電話が殺到し、今日ははその対応に追われた。記者としては一刻も早く報道をしたいという気持ちは分からないでもないが、いかにも日本建築学会が発表したような記事の書き方はやめてほしい。

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講義中・・・
著書など
『耐震・制震・免震が一番わかる』
共著ですが、このような本を技術評論社から出しました。数式などを使わずに耐震構造、制震構造、免震構造のことを、できるだけわかりやすく解説しています。
『免震構造−部材の基本から設計・施工まで−』
免震構造協会の委員会活動の成果として、このような本をオーム社から出しました。免震構造の基本をしっかり学べるような内容となっています。
『4秒免震への道−免震構造設計マニュアル−』
いまでは少し内容が古いかもしれませんが、免震構造の基本的な考えを述べています。初版は1997年に理工図書から出ていて、2007年に改訂版を出しました。
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