
ジャッキー・ヒギンズ著『人間には12の感覚がある 動物たちに学ぶセンス・オブ・ワンダー』(文藝春秋)を読んだ。本書の前半では、人間の視覚、聴覚、触覚、味覚、嗅覚について最新の研究に基づいて紹介している。その能力は意識していないけれど、驚くべきものであり、それら全てに「脳」が関係している。我々は脳を介して、いろいろなものを認識していることになる。
本書の後半では、日常ではほとんど意識していない平衡感覚、時間感覚、方向感覚、身体感覚が取り上げられている。
私たちがまっすぐに立って頭を上げていられるのは、耳の奥にある内耳の中にある三半規管と耳石器のおかげだ。平衡感覚は休むことなく働き続けているが、我々がそれを意識することはない。平衡感覚は、単に身体の平衡を保つだけでなく、運動の様々な側面に関わっている。正しい方向に歩くこと、空間上での自分の位置を把握すること、そして目の動きの制御にも役立っているという。
体内時計があるとよく言われる。これまでの研究によって人間の体内時計は約25時間といわれる。この周期のことを「既日リズム」と呼ぶ。このリズムを調整してリセットするために目は重要な役割を担っている。目から入った光が、無意識のうちに体内時計を調整しているのだ。
鳥のなかには何千キロも移動するものがいる。そうした鳥は体内にコンパスをもっていて地球の弱い磁場を感じとっている(慈覚)といわれる。ただ磁気感覚が存在するのは確かだが、それがどのように働いているのかはよくわかっていない。さらに、人間にも磁気により方向を知る感覚があるというが、まだ証明はされていない。研究により、古代の船乗りたちが太陽や星、そして地球の磁場を頼りに航海していたらしいことがわかってきたそうだ。
我々は自分の体を自分のものと感じている。目を閉じても指を鼻のところまで持って行けるのはこの身体感覚のおかげだ。こうした身体感覚は、自分の体の認知にも、四肢の空間内での配置、移動にも不可欠で、そして実のところ自身の存在の認知にも不可欠である。間違いなく、五感をすべてあわせたよりも重要な感覚であるという。
人の身体にはまだまだ分からないことも多い。これからの研究で少しずつ解明されていくのだろうか。解明されたら、それらの感覚や能力を人工的に高めたり、それらの成果を活用してロボットをより人間に近づけたりできるのだろうか・・・






















