日経新聞(9/29付け)の「シネマ万華鏡」に『ドリーム』映画予告サイト)が紹介されていた。
米ソの宇宙開発競争が激化した1960年代初頭。NASA(米航空宇宙局)で初の有人宇宙飛行「マーキュリー計画」を裏で支えた実在の数学者、技術者ら黒人女性3人に光を当て、彼女たちが闘う人種、性の差別を通して歴史の裏側の事実が明かされる。

偏屈老人と少年の友情を描く『ヴィンセントが教えてくれたこと』(2014年)で注目されたセオドア・メルフィの脚本・製作・監督。数学の天才とはいえ、お洒落で恋も子育てにも手を抜かない普通の女性でもある黒人女性の日常を丁寧に描くことで彼女たちへの敬意が滲み出る。

まだコンピューターがなく、NASAでは多くの黒人女性が計算者として働いている。その中に幼いころから数学の天才だったキャサリン(タラジ・P・ヘンソン)、優れた統率力を持つドロシー(オクタヴィア・スペンサー)、航空科学エンジニア志望のメアリー(ジャネール・モネイ)の3人がいた。

路線バスもトイレも図書館も白人用と有色人種用に分かれていた時代。能力を認めた研究所の部長(ケビン・コスナー)がキャサリンを部下に加えれば、全員が白人男性の数学者たちの冷たい視線が肌を刺す。それでも黙々と実力を示す彼女には自信と誇りがある。それは他の2人も同じだ。

白人女性の上司が差別なんかしてない、と言えば、ドロシーはその認識のなさそのものが差別で誤り、と言い返す。キャサリンは心惹かれる同じ肌の色の軍人(マハーシャラ・アリ)が女性蔑視の言葉を吐けば、憤然と反撃した。愛していることと理不尽な言葉を聞き流すのはまた別の話。

宇宙飛行士を乗せて飛び立つロケットに黒人女性の誇りと夢を重ね、優れた能力で不遇の時代を切り開く女性たちにエールを送るドラマは、見る者をすがすがしい感動に誘い込む。

hiddenfigures

原題は”Hidden Figures”、直訳すると「隠された人物(または数字)」ということになる。映画を観ると、ドリームという邦題には、ちょっと違和感があるかな。邦題はともかく、内容は実話に基づいており、見応えがある。女性が最先端の分野で活躍していく姿が素晴らしい。この当時と比べて、いまは女性が活躍している分野は広がっている。しかし、見えない壁がまだまだ多い。そうした壁を少しでも破る、広げるようがんばっている女性(もちろん男性)に観て欲しい。

一番、印象に残っているのは、研究所の部長(ケビン・コスナー)が、トイレに掲げられていた白人専用という看板をハンマーで打ち壊すところ。「看板」を壊すという行為が、いろいろな差別や格差を打ち壊すことに繋がっていると思う。

ちなみに、数学者のキャサリン・ジョンソンさんは、2015年にオバマ大統領から大統領自由勲章を受章している。