建設通信新聞(10/11付け)の「建設論評」欄に『コンクリートの常識・非常識』という記事があった。
ミレニアル世代と呼ばれる1980年代以降に生まれた10代、20代の若者たち。生まれた時からインターネットに接し、デジタルネイティブとも呼ばれる。そのミレニアル世代、黒電話を知らないらしい。黒電話を見せたら、電話であることは認識したものの、使い方を聞くとダイヤル番号が書かれた数字を押して使うと回答したそうだ。携帯電話に慣れたミレニアル世代にとって電話をかけるとはプッシュボタンを押すことを意味するからだ。

いまの常識も、次の時代には非常識になる。

これまで車といえば、エンジンで動き、アクセルとブレーキがあって、ハンドルで方向を決めて進むものと誰もがいまは思っている。しかし、次の20年は自動運転が当たり前になって、アクセルもブレーキもなくなるかもしれない。アクセルペダルがある車を見ると、その時代の子どもはこのペダル何のためと思うだろう。どこでも充電できるようなワイヤレス給電が実現すれば、電線がいらない社会が実現する。その時は電線を地中化することさえ無意味な世界が来るかも知れない。

建設産業もいまの常識が次の時代の非常識になるはずだ。

建設の主要資機材である「コンクリート」を見てみよう。
コンクリートの歴史で最も古いのは、イスラエルのイフタフ遺跡で見つかった紀元前7000年のものだ。コンクリートそのものは、ご存じのように圧縮には強い。技術の進化とともに、コンクリート強度は相当向上したように思われるが、コンクリート強度自体は9000年前の強度と今日でもほとんど変わらないそうだ。ローマ時代も盛んにコンクリート技術が活用されたこともよく知られた事実だ。しかし、コンクリートだけでは、引張強度に弱い。これを克服するのは19世紀になってからだ。1867年にパリの庭師モニエが鉄筋を格子状に配置した「モニエ式鉄筋コンクリート」の特許をとり、橋梁などに発展させた。近代における建設の主要資機材である鉄筋コンクリート造は19世紀はじめに始まり、これまでも継続して主要な材料として活用され続けている。

日本の鉄筋コンクリートの歴史も同じ19世紀頃。1890年(明治23)年に、横浜港の土木工事が最初。建築では1905(明治38)年の倉庫建築が最初とされている。鉄筋コンクリート造の集合住宅は長崎県端島(軍艦島)の30号棟で、1916年に竣工した。

鉄筋コンクリート技術は、今後50年、100年、数千年続くようなことも想定される。ただし、コンクリート造と鉄筋コンクリート造の大きな違いは寿命だ。コンクリート造であれば未来永劫残る。しかし、鉄筋コンクリート造は鉄筋のさびにより、寿命は50年から100年と短い。再アルカリ化などしないと保てないのがいまの技術だ。

鉄筋コンクリートができて百数十年、まだこれ以上の建設素材を見つけていないのが、現在の建設技術だ。

AI(人工知能)やICT時代。そろそろ常識を非常識にする時代に来ているのではなかろうか。新たな素材や新たな生産方法の導入により、より長持ちする建設主要資機材を獲得するような、建設素材の大胆な変革に期待したいものだ。

黒電話を超えるためにも。

東洋経済1021

週刊東洋経済(10/21号)の特集は『EVショック』
日本経済を牽引してきた自動車業界を揺るがす電気自動車(EV)の展開が取り上げられている。中国は2019年から生産台数の一定の割合でEVやPHV(ハイブリッド車)の生産を義務づけるし、イギリスとフランスは2040年までにガソリン・ディーゼル車の販売を禁止するといっている。アメリカでもカリフォルニア州をふくむ10州で排ガスゼロ車の規制が強化されるようになる。こうした動きをうけて、自動車メーカーはEVなどの開発に本格的に取り組んでいるという。

EV化で部品は4割も減るという試算もあり、エンジンを中心として従来の自動車生産の構図は大きく変わる可能性がある。また、エンジン関連部品を生産してきている部品メーカーも打撃をうける可能性もある。さらにガソリンスタンドや自動車整備士も不要になるかもしれない。

エンジン車が誕生したのは約130年前といわれているが、近い将来、これまでのエンジン車が「黒電話」と言われる時代が来るかもしれない。これに自動運転などの技術が組み合わされれば、自動車の概念がまったく変わるだろう。

一方の建設業界では、鉄筋コンクリートや鋼材が使われるようになって、同じく130年ほどが経過している。自動車と違って、簡単には素材やシステムが変わるということはないにしても、新しい素材や技術を研究開発していくことは必要だろう。