免震

新阿蘇大橋 地震に強く

gifuNews
日経新聞(4/17付け夕刊)に『新阿蘇大橋 地震に強く』という記事があった。
熊本地震で崩落した熊本県南阿蘇村の阿蘇大橋の下流側で架け替え工事が進む新たな橋について、国は、大きな地震で周辺の地盤がずれた場合、橋脚と橋桁の接合部がすぐに外れ、衝撃を抑える構造を導入することを決めた。2度目の激震「本震」発生から2年。関係者は「地盤がずれる前提で橋を造るのは珍しい」としている。

阿蘇大橋は阿蘇地域を流れる黒川に架かり、国道325号の一部として南阿蘇村中心部と熊本市方面を結んでいた。本震で土砂崩れが起き、周辺では阿蘇市の大学生、大和晃さんが犠牲となった。新たな橋は国直轄事業として崩落箇所から南約600メートル下流で建設が進められ、2020年度の開通を目指す。

国土交通省九州地方整備局によると、橋脚6本のうち、活断層の推定位置に近い右岸側から3本目と4本目は橋桁との接合部の強度を弱め、最大震度7を2度観測した熊本地震と同程度の揺れが発生すると外れる構造にする。丁字形をした橋脚の上部の幅を当初予定より広げ、外れた橋桁は橋脚がそのまま受け止め、橋の機能を維持する。

橋の長さは605メートルとしていたが、工事で出た土砂を右岸側に盛るため、525メートルに短縮することになった。

西日本新聞では、阿蘇大橋の直下に活断層があった可能性を指摘し、「アーチ橋は固い地盤の上に造られるが、地盤が動くと致命的な力を受ける。橋は断層を避けるべきで、もし架ける場合は構造に考慮が必要だ」という識者のコメントを掲載している。
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工事が進められている新阿蘇大橋の下にも活断層があると考え、橋脚と橋桁がずれる構造を導入することにしたのだろう。一種の免震構造ともいえるが、どれくらいのズレ量まで対応できるのだろうか。橋に直交するズレであれば、ずれることで免震的な効果は得られそうだけど、橋の長さ方向に断層のズレが生じた場合はどうなるのだろうか。新阿蘇大橋はアーチ橋ではないので、大丈夫ということだろうか。

いずれにしろ新阿蘇大橋が開通することで、被災地へのアクセスがよくなり、早期の復興につながることを期待したい。







折り紙名刺

本学の卒業生(機械工学科出身)の名刺は、折り紙建築ならぬ「折り紙名刺」となっている。名刺を開くと、ITERの内部構造が現れる。
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ITER(イーター)は、国際熱核融合実験炉で、フランスで建設が進められている。このITER計画には彼もかかわっており、ITERを紹介するために名刺を自分自身で手作りしているという。

ITERの建設中の状況は↓のとおり。
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ITERはトカマク型核融合装置であり、その中心部分は超伝導コイル、真空容器及び真空容器内機器等から構成されている。これらの機器は、運転温度が異なるため熱収縮を考慮し柔軟な支持系で支持されており、標準設計として0.2gの地震加速度に基づいて耐震設計がなされているだけである。そこで、それ以上の地震動に対応するために、ITER建屋は免震構造となっている。もう免震層は見えないけれど。。。

ITER計画を簡単にいえば、「地上で太陽をつろう!」というもの。原子力発電のように放射性物質などはでないクリーンなエネルギー源となることが期待されている。








動き出した新38条認定?

日経アーキテクチュア(12/14号)に「動き出した新38条認定、第1号は奈良・平城宮復元」という記事があった。

記事の冒頭には「建築基準法38条が削除されてから15年を経て2015年に復活した。法規定だけにとらわれずソフト面も評価する新制度は、これから建築の可能性を広げるだろう」とある。参考までに、旧38条の条文と新38条の条文を下に示す。条文は「建設大臣」と「国土交通大臣」の違いがある程度で、大きな違いはないように読める(法制の専門家は違うというかもしれないが)

(特殊の材料又は構法)
第三十八条 この章の規定又はこれに基く命令若しくは条例の規定は、その予想しない特殊の建築材料又は構造方法を用いる建築物については、建設大臣がその建築材料又は構造方法がこれらの規定によるものと同等以上の効力があると認める場合においては、適用しない。

(特殊の構造方法又は建築材料)
第三八条 この章の規定及びこれに基づく命令の規定は、その予想しない特殊の構造方法又は建築材料を用いる建築物については、国土交通大臣がその構造方法又は建築材料がこれらの規定に適合するものと同等以上の効力があると認める場合においては、適用しない。

記事では、新38条認定のやり方が示されている。
  評価方法:個別事案ごとに設定、基本的に第三者委員会を設けて審査
  評 価 書:指定性能評価機関などの評価書取得の義務なし
  前提条件:建築主事が38条での認定しか対応できないと判断
  窓  口:国土交通省住宅局建築指導課

前の38条認定の時は建築センターに認定委員会があり、そこで質疑を繰り返して評価をしてもらっていた。新しい38条認定では、国交省が窓口となるということだが、スムーズな審査が行われるののだろうか。

記事の最後には『国交省は17年11月時点で、平城京の復元計画以外に新38条認定の相談を受けていないという。国交省建築指導課の担当者は「第1号認定は慎重に事前協議と審査を進めたが、今後は認定までの運用を効率化し、新技術の開発のスピードに追いつきたい」と語った』とある。

免震構造を実用化するときには、建築センターのなかに特別な委員会をつくってもらい、そこで八千代台住宅(写真↓)などの振動実験や積層ゴムの実験データなどを提出して審査をしてもらったと記憶している。免震構造がどういうものか審査する側もわからなかったので、どう審査すべきかを検討するための委員会が最初にできた。
八千代台住宅

その後は、建築センターに免震構造の評定委員会ができて、免震構造の審査が行われていった。新技術や新材料の審査を最初にするときには、慎重にすすめるべきであるが、その後は新技術の発展を阻害せずに、技術の発展を促すような審査制度になってほしい。

免震構造は告示もでき、第37条では免震材料として大臣認定を得ることも求められている。そのため、「免震」という限り38条認定にはならないとも聞いてる。しかし、免震デバイスのさらなる発展のためには、新38条で免震デバイスと建物を一緒に認定する道があってもいいはず。新しい免震デバイスを開発して適用したいと考えても、まずはデバイスの認定をとらないといけない。当該建物にしか使う予定のないデバイスの認定をとるのは時間と労力の無駄でもある。

新38条を使って新しい免震デバイス・装置と免震建物を一緒に審査できるようにならないものだろうか。

施工がわかるイラスト建築生産入門

『施工がわかるイラスト建築生産入門』(彰国社、3200円)が発刊された。
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本書では、一つの建築物の着工から完成、維持・保全までのプロセスを実践に基づいたストーリー仕立てで分かりやすく解説されている。800点を超えるイラストを中心に現場のリアルさを凝縮し、読むだけで疑似体験できるよう心がけたとか。発刊は日本建設業連合会の建築生産委員会によるもので、イラストは川一雄氏が担当している。

編集の中心的役割を果たした同委員会の木谷宗一施工部会長は、「現場の魅力を埋め込みながら、品質問題や企業の社会的役割といったトピックも散りばめている。大学や専門学校の学生、ゼネコンの新人教育に役立つ内容になっている」と説明。

大学などの教育機関では、各専門分野の内容を分かりやすく理解できるように工夫した教科書が多数あるが、図版や写真よりも文字が多く、若者にとって難解な部分も多いことから、「現場で何をやっているかが手に取るように分かる」ことにこだわったとか。
(以上は、建設通信新聞より)

本書をみると確かにイラストが多く、文字は少ない。写真よりもイラストにする方が、注目して欲しい点などを強調できてわかりやすいようだ。大学生だけでなく中学・高校生や一般の方にもとっつきやすいかもしれない。しかし、難解な文章を読み解くことも大学生には必要なスキルだと思う。こうした入門書から興味をもってもらい、さらに深く学んでもらうことに繋がれば嬉しい。

ところで、「地震に対する技術」というところで免震構造が紹介されている。
イラスト建築生産入門_免震_2

そこでは、「積層ゴム支承」に下記のような説明がついている。
「積層ゴムは、地震時にゴムの柔らかさによって地震動が伝わらないようにゆっくり揺れる。鋼板は、その硬さによって建築物を支える。」

???
鋼板は積層ゴムの中間鋼板のことを言っているのだろうか。鋼板の硬さで建築物を支えているわけじゃないんだけど。ちょっと説明が不足していないだろうか・・・

「九州免震普及協会」が発足しました

10月20日に設立総会を開催し、「九州免震普及協会」が正式に発足しました。
総会につづいて開催した記念講演会と懇親会には50名以上の方に参加いただき無事に終えることができました。
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本会の活動の目的は、免震構造の適正かつ健全な普及を図るとともに、より確実な耐震技術の発展と安全で良質な建築物の整備に貢献し、地域住民の生活の向上を目指す、としています。

これからの本会の活動としては、
 (拔会・見学会等を通じて免震構造への理解を深める
 ∋楴腓箏築家などを対象とした講演会・セミナー等を開催し、免震構造の健全な普及に努める
 施主・建築家と設計者・技術者間の交流をはかるために、情報交換等を行う場を設ける
 ぅ瓠璽ーの技術者や実務者・学識者からの最新情報を提供できるセミナーや勉強会を開催する
といったことを掲げています。

「免震」という言葉自体は知られてきていると思いますが、免震の効果や手法についての理解は十分深まっているとは言えないと思います。本会の活動が少しでも免震構造の普及につながるようにしていきたいと思います。

よろしくお願いいたします。

日本の免震・制振技術の海外展開

日本免震構造協会では、我が国の免震・制振技術を海外に展開すべくいくつかの国で免震・制振セミナーを開催してきている。

最初は、トルコだった。トルコでは大規模な医療施設を免震構造で建設しており、その際に日本の技術を導入したいという要望もあったのが最初の取りかかりだった。下は建築模型だが、1200床の医療施設。これ全部が免震構造。
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そうしたこともありトルコの首都アンカラで政府関係者を対象にしたセミナーを開催し、その後、イスタンブールで技術者などを対象としたセミナーを開催した。トルコの後はルーマニアで同様のセミナーを開催した。ルーマニアでは1970年代に建設された建物の耐震化が問題となっており、免震・制振技術よりも耐震補強に関する知見が求められていたように思う。

そして、今年の8月にはマレーシアとインドネシアで開催し、10月末にはインドでの開催が予定されている(私は校務の関係で参加できない)。マレーシアには大きな地震はないとのことで、耐震設計もそれほど求められていないという。しかし、セミナーには100名ほどが参加し、積極的に質疑応答があったと聞いている。

マレーシアの構造設計基準はユーロコードをベースにしており、インドネシアでは米国ASCE基準がベースになっているそうだ。いずれの国でも設計基準にはヨーロッパや米国の基準を下敷きに作られている。日本の耐震設計基準などはいくつもの震災経験に基づいて改訂されてきており、実績も高いと思われる。しかし、英文化して広く海外に周知できていなかったためか、日本の設計基準が世界で流通しているとはいいがたい。

別に日本の設計基準が他の国で使われなくてもいいのかもしれないが、日本の設計者や技術者が世界で仕事をするには、日本の設計基準が使えた方が便利だろう。さらに日本の震災経験を広く共有することで世界各地で起きる震災をできるだけ軽減することにも役立ててほしい、という思いもある。

そこで、日本の「免震構造設計指針」(日本建築学会)を英訳した。あまりダウンロードされていないようだが、広く活用してもらえると嬉しい。ただ現実問題として、すでに各国では設計基準をユーロコードや米国基準にならってつくっているため、日本基準を使ってもらうことは難しいだろう。

設計基準として使うことは無理でも、設計思想(フィロソフィー)は伝えることができるのではないだろうか。「免震構造設計指針」はその名のとおり「指針」であり、こういう計算をすればいいという手順は具体的に示されていない(逆に、使えない?)。ある意味、免震建物の設計を支援するための情報や考え方、すなわち設計思想が書かれている。こうした設計思想が数々の震災の経験に基づいて築き上げられたものなら、なおさら有益だと思われる。

海外での免震・制振セミナーを通じて、日本の経験や設計思想といったものを伝えていけたらと思う。こうした活動を通じて、日本と海外の設計者や技術者が交流を促進することにもつなげたい。いまは国内の仕事で忙しいかもしれないものの、その後に備えておくことも必要ではないかと・・・

長周期パルスの衝撃?

昨晩放送されたNHKのメガクライシス『長周期パルスの衝撃』を見ました。
期待どおりの内容でしたね。
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https://www.nhk.or.jp/ohayou/digest/2017/09/0901.html

この番組を見てて、次のような疑問が浮かびました。
  • 内陸の活断層地震では、長周期パルスが必ず発生するの?
  • これまでの活断層地震でも長周期パルスが発生していたの? 観測されなかっただけ?
  • そもそも長周期パルスって何?定義はされているの?
番組では、2016年熊本地震の西原村役場での地震計で観測された地震記録が紹介されていました。それは大きな記録で長周期構造物に大きな応答をもたらす記録だったからでしょうが、他の地点での記録はどうなっていたのでしょうか? 西原村役場で観測された地震記録だけを見て、活断層地震では長周期パルスが発生するといえるのでしょうか?

私の不勉強のためかもしれませんが、内陸の活断層地震で長周期パルスが出るということは聞いたことがありませんでした。長周期パルスは3秒が卓越するのでしょうか。もしそうだとすれば、長周期構造物の設計において周期3秒を避ければいいだけです。長周期パルスの成因について地震動や地盤震動の専門家の先生のご意見をお聞きしたいところです。

新宿の○学院大学の校舎に西原村での地震記録が入力されたときには、とても大きな被害が出ると紹介されていましたが、新宿で長周期パルスって起きるんでしょうか? そもそもそれを起こす活断層はどこに?

熊本地震のときに熊本大学の免震病院での応答変形についても紹介されていました。応答変形が40cmとなっていて、もう少し地震が大きかったら擁壁に衝突していたかもしれないという。しかし、熊本市内にある建物に長周期パルスの影響はあったのでしょうか? 

そもそも1995年の阪神淡路大震災で、短周期パルス(キラーパルス)が観測され、断層破壊の方向(ディレクティビティ)が影響したことが要因であると説明されています。では熊本地震の断層破壊の方向はどうなっていたのでしょうか?

分からないことがまだまだあります。阿蘇にある免震病院では最大変形46cmを記録しました。この病院の東3.5kmにある地震観測点では長周期成分(周期3秒が卓越)が観測されていました。この地震動が免震病院に入力されたとすると応答変形は1.5m弱となり実応答とはまったく違ってきます。こうした現象も解明していかないと、長周期パルスがどのように発生し、その影響がどういう範囲に及ぶのかは分からないのではないでしょうか。

Eディフェンスで空気圧を使った免震装置(?)の実験が紹介され、これを使えば街全体を免震化できるらしいです。空気圧でどの程度の高さの建物を支えることができるのでしょうか? 確かに戸建て住宅では空気圧で免震化されているものもあるようです。また空気圧によって上下免震実現した3階建て建物もあります。3階建てとなっているのは、使える空気圧が法的に制約されているからと聞いています。より高い空気圧を用いれば高い建物も免震化できるかもしれません。
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1気圧は平方メートル当たり約10トンに相当します。基礎面全体に1気圧の空気を瞬時に送ることができれば10階建てくらいの建物を浮かせることができるかもしれません。では4気圧なら40階建てくらいはできる? でもそうした設備を常に備えておくのって大変かも。

番組の最後に「見たくないモノを見る必要がある」と言われてましたが、そのためには情報を正しく伝えることが必要なんじゃないでしょうか。

磁気粘弾性エラストマと積層ゴム

日本機械学会の「機械力学・計測制御部門ニュース」(No.60)に金沢大学の小松崎俊彦先生が『硬さの変わる””磁気粘弾性エラストマ”の応用可能性について』と題して寄稿されている。
磁気応答性材料の一つである磁気粘弾性エラストマ(Magnetorheological Elastomer, MRE)は、非磁性エラストマを基質として、その内部に磁性粒子を分散固定した複合材料であり、外部磁場に応答して見かけの弾性率や減衰特性が可逆的に変化する。剛性の可変性という、これまであまり着目されなかった特長を有する機能性材料として、種々の振動制御デバイスへの応用可能性が期待される材料である。

MRF(Magnetorheological Fluid, 磁気粘性流体)は、主に見かけの粘性変化を生ずるのに対し、MREは弾性的性質が支配的なエラストマ材を基質として用いるため、弾性的性質の変化が主となる。言い換えると、MRFは降伏後の特性を、MREでは降伏前の特性を利用することに対応する。また、MRFを減衰要素に組み込む際、基本的にはその変形が一方向のみの抵抗要素として用いるが、MREはその変形が一方向に限られないため、その点をうまく利用すればMRFとの差別化がより明確になる。

MREは通常、磁性粒子、エラストマ、添加剤を混合してつくられる。MREの物性変化は磁性粒子の磁気的結合力におるもので、磁場の強さに応じて変化は大きくなる。磁性粒子には透磁率が高く、残留磁化の小さいものを用い、基質には天然ゴムやシリコーンゴムを用いるのは一般的である。物性変化を支配する磁気結合力は磁性粒子間距離が小さいほど大きいが、MREでは磁性粒子が基質中に固定されるので、攪拌・脱泡後の硬化過程で磁場印可することで粒子を接近させ、なおかつ特定方向に磁性粒子の長い鎖を形成させて材料を固めれば、均一分散の場合よりも高いMR効果を得ることができる。

MREは全般的に準能動的な制御手段、具体的には動吸振器や防振マウント、構造要素への適用など、振動・騒音制御への応用が検討されている。これら以外にも、特性変化幅の向上を目指した基礎物性に関する研究や、磁場に対する粘弾性変化の理論予測に関する検討などがあるが、材料開発、理論および応用面いずれも途上にあり、今後のさらなる研究開発が期待される。
(以下、MRE防振マウントを使ったセミアクティブ制振の研究が紹介されているが、省略)

MREを免震用積層ゴムへ適用した研究がないかと探したところ、下の論文を見つけた。
”Development and characterization of a magnetorheological elastomer based adaptive seismicisolator”

この論文では下のような試験体(積層ゴム)をつくって実験されている。
MREisolator

論文の結論では、積層ゴムとして十分な性能を持っているとされているものの、実験では軸力は載荷していないようだし、水平変形は10mm程度しか実験されていない。もしMREを使って免震用積層ゴムとしての性能を発揮させるには、さらなる研究が必要だと思われる。水平変形能力、荷重支持能力、ゴムと中間鋼板の接着性、製造技術などの確立、さらには磁気をかける方法など。

しかし、こうした材料をうまく使って積層ゴムをつくることができたとすれば、積層ゴムの変形量にあわせて、水平剛性や減衰を変化させることも可能となる。免震構造のさらなる性能向上のために、こうした新しい免震デバイスの開発は欠かせない。

免震層の「けがき板」を分析したい

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昨年の熊本地震のとき、阿蘇にあった免震病院では、最大変形46cmを記録した(上の写真)。免震層の動きを記録した「けがき板」には動いた軌跡が残されている。この軌跡から免震層がどの程度変形したかが確認できる。

しかし、どの方向に、どのくらいの時間をかけて動いたかは分からない。免震建物の時刻歴応答解析などを参考にある程度推定はできるものの、「けがき板」に残された軌跡(溝)の形状や深さなどから追加の情報が得られないかと考えている。

このためには、軌跡(溝)を拡大し、形状を分析する必要がある。そのための装置としてデジタルマイクロスコープというのが使えそうだ。下の画像はデモをしてもらったときのもので、溝が鮮明に映像化され、さらに断面形状まで自動で計測してくれる。
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この装置があれば、「けがき板」からさらに情報を引き出せそうだ。
ただ、この装置の価格は数百万円(!)もして、とても買えない。免震建物の応答特性を解明するためにも、この「けがき板」から情報をもっと引き出したい。どこかの研究機関や大学にはデジタルマイクロスコープがあるはず。協力してもらえるところはないだろうか・・・

米国流・免震構造の設計手法?

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日経アーキテクチュア『断層近くの病院守る! 米国流・免震構造の設計手法』という記事があった。
アメリカ大陸西岸ロサンゼルスから車で東へ1時間、人口2万人程度の小さな街、ロマリンダ市で、「ロマリンダ大学メディカル・センター・プロジェクト」が進行中だ。延べ面積9万7000平方メートル、地下2階・地上17階建て、病床数600床を超える巨大病院は、2014年の計画開始から3年の月日を経てようやく設計を終え、21年の開業を目指して現場に入ったばかりだ。

災害時にも機能維持が求められる病院プロジェクトでは、近年免震構造の採用が一般的である。最先端の医療技術の提供を目指す本病院でも、巨大地震への対策として免震構造が採用されている。筆者自身が関わったこのプロジェクトを例に、日米での免震構造の設計手法の違いを紹介したい。
(略)
まず、免震装置の違いがある。日本では天然ゴム系積層ゴムや鉛プラグ入り積層ゴムなど、ゴム系の免震装置が主流である。一方、米国では、振り子支承が入れ子構造となっているTFPと呼ばれる装置が主流である。このプロジェクトでも、126台ものTFPが使用されている。

TFPは、4面ある滑り面のうち内側の振り子支承の上下滑り面の摩擦係数だけが同一で、摩擦係数が3種類あることからTriple Friction Pendulum(TFP)と呼ばれる。
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TFPには次のようなメリットがある。
(1)周期が建物質量の影響を受けない
(2)免震層の偏心が生じにくい
(3)セルフ・センタリング機能がある
  <曲面の曲率によるけど、残留変形が残る可能性はある>
(4)フェイル・セーフ機能が免震装置自体に組み込まれている
(5)滑り面の半径が2種類あるため要求性能に応じた調整が可能

一方で、いくつかの問題点もある。
(1)上下面の平行度が高い精度で求められる(柱頭免震には不向き)
(2)スティック・スリップ現象(滑りに伴い摩擦係数が不連続に変化する現象) が見られる
  <フロアレスポンスへの影響はどうなのだろう?、上下加速度応答も気になる>
(3)1社しか製造会社が存在しない
(4)引き抜き抵抗能力がない
(5)実績がゴム支承ほど多くはない

コストはゴム系装置とほぼ同等であり、今後、日本での使用も期待される免震装置である。
<日本で使えるようにするには大臣認定が必要>

次に、設計用入力地震動における違いがある。
日本の法規では、再現期間約50年を想定した「稀に発生する地震」(レベル1、供用期間50年の間で起こる確率63.6%)、および再現期間約500年を想定した「極めて稀に発生する地震」(レベル2、供用期間50年の間で起こる確率10%)に対する検討が求められており、免震構造を採用した建物においても当然これらの地震を検討対象とする。

一方、米国の法規(ASCE7-10)では、免震層上部・免震層下部の構造体については、日本と同様、再現期間43年を想定したService Level Earthquake(SLE、レベル1)、および再現期間475年を想定したDesign Basis Earthquake(DBE、レベル2)に対する検討のみでOKとされているが、免震装置サイズおよび免震クリアランスの設定においては、再現期間2475年を想定したMaximum Considered Earthquake(MCE、レベル3、供用期間50年の間で起こる確率2%)に対する検討を要求している。このプロジェクトにおいても、免震装置および地下構造はMCEに対して設計を行った。

これは、免震構造を採用するくらい重要度の高い建物であれば、仮に50年間の供用期間で2%しか起こらない地震であっても、「想定外でした」で済ませてはいけない、という設計思想の表れでもあると言える。

設計用応答スペクトルの大小もあり、単純に日本で米国と同様のレベル3地震動を導入できないことは百も承知ではあるが、設計思想としてどこまでを自分の「想定内」にするのかは非常に重要であろう。 

3つ目に、解析手法においても大きな差がある。
(以下省略)

入力地震動や解析手法の違いは、これまでの日本と米国の構造技術の発展の違いなどを反映しているもので、どっちが優れているとかは言えない。たとえば、解析手法においては、串団子モデルとフル立体解析の違いとか、地震応答解析結果で、日本では最大応答を包絡するようにするが、米国では7種類の地震波で応答解析をすれば平均値を使っていい、などの違いがある。

ただ、入力地震動については、米国ではMCEレベル(50年で2%の発生確率)での検討が必要であるため、より大きな応答変形、クリアランスが求められる。これが米国において免震構造が流行らない理由の一つともれている。しかし、日本でも長周期地震動などの検討が求められるようになり、応答変形でいえば、レベル3に近づいている(あるいは超えている)のかもしれない。

免震装置については、日本では設計者の要求に応えて多様な装置が開発されている。そのため建物の用途や免震効果にあわせて最適な免震装置を組み合わせることができる。こうした免震装置の多様性は他国では見られない。

いずれにしても、どんな免震性能を持たせたいのか、免震構造の終局状態はどうなるのか。こうした点を設計者自身が検討をしていくことが必要なんじゃないだろうか。

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講義中・・・
著書など
研究室のマスコット
「アイソレータ・マン」。頭部は積層ゴムで、胸にはダンパーのマークでエネルギー充填
『耐震・制震・免震が一番わかる』
共著ですが、このような本を技術評論社から出しました。数式などを使わずに耐震構造、制震構造、免震構造のことを、できるだけわかりやすく解説しています。
『免震構造−部材の基本から設計・施工まで−』
免震構造協会の委員会活動の成果として、このような本をオーム社から出しました。免震構造の基本をしっかり学べるような内容となっています。
『4秒免震への道−免震構造設計マニュアル−』
いまでは少し内容が古いかもしれませんが、免震構造の基本的な考えを述べています。初版は1997年に理工図書から出ていて、2007年に改訂版を出しました。
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