除本理史・佐無田光著『きみのまちに未来はあるか? ー「根っこ」から地域をつくるー』(岩波ジュニア新書)を読んだ。なかなか衝撃的なタイトルだったので、思わず手に取った。
本書では、地域づくりの実践例(飯舘村、水俣市、金沢市、石川県奥能登)を紹介し、それぞれの地域の活性化の方法として、伝統とか文化、コミュニティといった地域の宝物=「根っこ」を住民自身で自覚することの大切さを訴えている。地域を活性化させる場合、企業や工場を誘致したり、観光客を増やそうとする場合が多いが、工場などは景気の影響を受けるし、観光もあまりに多くの人たちが来ると、地域のつながりが壊されていくこともある。
本書では、そうした従来の方法ではなく、地域にある宝物を再発見して、その価値やストーリー性を高めることで、地域の活性化を目指すヒントが示されている。田舎にいくと「ここには何もない」と言われることが多い。しかし、実はそんなことはない。人々が地域のなかで積み重ねてきた暮らしの積み重ねこそが、価値の「根っこ」になる。それらは「作り物」ではなく、人々の生きた証であり、地域の自然と一体となったローカルな知恵が込められている。
建築もフローからストックの時代になる、とだいぶ前から言われているものの、空き家増え続けている。「モノ」という商品に頼る時代ではないのではないか。これまでは「ものづくり」が大事だということで、いかに売れる商品をつくり、大量に買ってもらうか、というのが多かった。しかし、そうした商売は最終的には価格競争になって、長続きせず、疲弊していく。
地域固有の自然や景観、伝統、文化、コミュニティなど、暮らしの豊かさを支える「根っこ」の意味を再評価し、地域の資源としていくことが必要となっている。地域の価値に気づき、高めていくことが地域のリノベーションにつながるのではないか。
それにあわせて働き方も変わる必要がある。企業でサラリーマンとして働くだけでなく、副業をもつ。多様な働き方、いくつもの職業を兼ねる、という柔軟な働き方ができるようにしていくことが必要だろう。昔、農家だけでは生活できなくて兼業農家も多かった。これからは兼業サラリーマンというのも普通になっていくといい。さらに多様な働き方を促進するには、税や社会補償の仕組みを変えていくことが必要ではないか。「世帯(主)」といった昔ながらの制度も改める時代になってきていると思う。
以前、地方創生とかいった事業もあったけど、政府が音頭をとっても必ずしもうまくいっていない(と思う)。地域に根差し、そこに住んでいる人たちが活動しやすい環境や制度をつくっていくことが必要だろう。