朝日新聞(8/31付け)に『AI ビルの揺れ抑制 長周期地震動学び対応』という記事があった。
NTTファシリティーズは、地震時に高層ビルをゆっくりと大きく揺らす「長周期地震動」を、人工知能(AI)で抑える世界初の技術を開発した。AIがビルの揺れを分析し、モーターで人工的にビルを揺らして地震の揺れを打ち消す仕組み。南海トラフ地震などで高層ビルに大きな被害が出るおそれが指摘され、対策が課題になっている。

長周期地震動は遠くまで届くことや、大きな建物ほど被害を受けやすいことが特徴だ。東日本大震災では東京のビルで1メートルを超える揺れ幅を記録したほか、震源から数百キロ離れた大阪市内のビルでも内部が損傷。2003年の十勝沖地震では大型石油タンクの火災を引き起こした。

通常の制震や免震の装置では防ぐのが難しい。従来の技術では、ビルの各階を支える梁に油圧式のダンパーを多数取り付けて揺れを少しずつ吸収するため、大規模な工事が必要だった。

NTTファシリティーズの新技術は、ビルの梁の一部にモーターで横揺れを生み出す装置を取り付ける。センサーがビルの揺れを感知すると、AIの指示で地面の動きを打ち消すようにビルを揺らし、揺れが上層階まで伝わらないようにする。完成済みのビルの耐震工事にも使える。

揺れ方はビルによって全く違うため、AIはビルの構造図面を元に様々な地震についてシミュレーションを繰り返し、揺れの抑えを自ら学習する。電動モーターには行きすぎた動きを吸収するダンパーも取り付け、AIが誤作動しても建物が壊れないようにする。

従来の技術に比べて揺れを半分以下に抑えられるうえ、工事が必要な梁の数が半分程度で済むため、コスト削減にもつながるという。近く、関西のビルの耐震工事で使われる予定だ。AIで地震の揺れを抑える技術が実用化されれば世界初とみられるという。

制御を学習したAIは建物に設置されるセンサーの計測データを使い、地震時にダンパーの減衰力を自律的に制御し、建物に生じる揺れを抑えるという。これによりパッシブ制振と同じ制振性能を半数程度のダンパーで実現し、工事量の削減と工事期間の短縮を通じて工事コストを最大30%削減することを目指している、という。

ニュースリリースには、ダンパーの有無による振動大実験の結果が示されている。これによれば、確かに応答は半分程度に抑制されている。しかし、パッシブダンパーとAIを使ったアクティブ制御との応答比較は示されておらず、制振効果ははっきりしない。
Nファシ

イメージ図によれば、ダンパーを下層部に集中配置するようだが、変形をダンパー設置層に集中させることにならないだろうか。関西のビルに導入されるとのことなので、ぜひ実大実験もして欲しい。AIで強制的に建物を揺らさせて、それを自律的に抑制できるかどうか検証できるのではないだろうか。実際の地震動とは違うかもしれないけど・・・

東日本大震災から6年半が経過する。
こうした最新の制振・制御技術も必要だろうが、巨大地震後の生活再建やまちづくりというものをどう考えていくのかについても課題だ。こちらはAIではなかなか解決しそうにない。