日本建築学会

研究者に光を

建設通信新聞(5/11付け)に『研究者に光を』という記事があった。
「フラッシュメモリ」は、いまやパソコン、デジカメ、携帯電話、SDカード、さらにはいつも使うスイカやパスモといった交通系ICカードにも使われている。フラッシュメモリは電源が入っていなくてもデータを保存でき、低消費電力で、ハードディスクも磁気ドライブからフラッシュメモリへと移行している。あらゆる電気製品に使われていると言っても過言ではない。
(略)
ところで、このフラッシュメモリを開発したのが日本の技術者であることを知っている人はどれだけいるだろうか。当時の東芝社員数人で、舛岡富士雄氏(現東北大名誉教授)を先頭に、フラッシュメモリの開発に始まった。

いまや、実に東芝の利益の9割まで稼いでいるフラッシュメモリではあるが、このフラッシュメモリの開発は当初、東芝社内で見向きもされず、逆に米インテルや米モトローラといった会社が早くから注目し、インテルはフラッシュメモリの売却で大きな利益を得るとともに、この研究に着目した香港出身の社員は副社長まで出世し、大きな富を得ることができた。

米インテルが目をつけるような技術であれば、当然、東芝社内でも研究に集中するはずだが、当時の経営幹部の誰もその可能性を見いだすことができず、開発費もろくにつかない中で細々と研究を続けた成果が現在のNAND型フラッシュメモリの誕生につながった。一方で、発明の当事者である研究者は、DRAM全盛時代の経営幹部から研究の機会を奪われ、関係者の多くが東芝を去り、米IT企業や国内外の大学へ転職した。

この後、フラッシュメモリが東芝の危機を支える技術となったのは皮肉であろう。

ここから学ぶのは、「経営幹部の目利き」の重要さだ。
多くのゼネコンが研究所を抱える日本は、世界的にみれば特別な存在だ。この研究所の機能を高め、AI(人工知能)やIoT(モノのインターネット)、BIM時代に対応した建設生産技術を開発することは、これからの建設方法を大きく変え、世界的なシェアを獲得する可能性を感じる。

ぜひともゼネコンの経営者や経営幹部は、個々の研究者の活動に理解を示し、中長期的な視点でゼネコン研究所の社員をサポ−トして欲しい。

一方で、学術雑誌の影響度を引用された頻度に基づき指標化した「インパクトファクター」を上げるために、日本建築学会ではこの2018年から英語論文誌『Japan Architectural Review』を始めた。ぜひとも多くのゼネコン所属の研究者が、自ら英語論文で発表することを進めてほしい。当時の東芝の技術者も英語の論文を提出したことで、外国の評価につながったことを述懐している。自己の研究の可能性を高め、範囲を広げるためにも、多くの英語論文が投稿されることに期待したい。

日本建築学会の会員構成を業種別で分類すると↓のようになっている。
AIJ会員構成

研究・教育機関と総合建設業に所属する会員数はほぼ同じ。総合建設業の会員がすべてゼネコン研究所の研究者かどうかは判別できないものの、ゼネコンに所属している会員が多いということがわかる。

ゼネコン研究所で生み出される技術などで、建築生産の方法が改善されたり、新しい技術によってこれまでにない建築が生み出される可能性もある。ゼネコン研究所は民間企業であり、研究成果や研究テーマについても何らかの制約があるかもしれない。そういうときには、経営幹部としての決断や目利きが求められるのだろう。

一方で、大学では大規模な実験施設がなかったり、予算が十分でなかったりして、思うような研究ができない場合もある。そういう場合でも工夫しながら研究と教育が行われてい。ゼネコンだけでなく、大学も含めた研究者に「光」があたるようになると、いいかな〜







学会誌の表紙について

下は日本建築学会の機関誌『建築雑誌』(1月号)の表紙です。今号から編集委員が交代したことで、機関誌のデザインや編集方針なども変わっています。ただ、この表紙ですが、なんとも文字ばかりで、細かいというか、わかりにくいというのが第一印象です。
201801建築雑誌_表2

今号で取り上げている特集の一つは、『建築と学び』、特に設計教育や設計演習に主眼がおかれています。設計演習では、設計行為のイロハを習得するためにさまざまな課題がだされます。しかし、人口が減少する社会で新築ばかりの課題でいいのか、学生個人による作業だけでいいのか、といったなかなか本質的なテーマが取り上げられています。こうしたテーマと表紙のデザインがどうも合っていないように感じるのは僕だけでしょうか。

ちなみに土木学会誌(1月号)の表紙は↓です。
橋梁の写真が掲載され、いかにも「土木」という感じですね。
2018012土木学会誌2

建築雑誌の表紙の裏側には、「建築漫画」が掲載されています。今号からの新しい企画のようです。この漫画の下に小さな字で書いてある説明を読めば漫画の意味するところはわかるのですが、女子高生のスカートの丈が短くなったとかいう漫画を見ただけでは「何を言いたいの?」というのが正直な感想でした。
201801建築雑誌_裏2

次号にも建築漫画は掲載されるのでしょうけど、もう少し分かりやすく、読みやすいデザインであることを期待したいですね。

熊本地震から1年半

日経新聞(10/14付け)に『建物公費解体、9割完了 なお4万5千人仮住まい』という記事があった。
熊本県は13日、熊本地震で全半壊し、熊本県内で公費解体の申請があった建物約3万6千棟のうち、9割近くの約3万1千棟が完了したと発表した。解体から生じるがれきなどの災害廃棄物も8割以上処理した。最初の激震から14日で1年半。約4万5千人が仮設住宅などでの仮住まいを余儀なくされる一方、町の再生に向けた動きは進む。

県によると、9月末時点で公費解体の進捗率は約87%で、27市町村のうち上天草市や山都町など6市町で全て完了。ただ申請数の4割近くを占める熊本市の進捗率は77%と低く、3千棟以上の解体を残す。県の担当者は「業者不足で住まい再建が遅れ、被災した住宅を解体できない人も多い」と説明。来年3月には27市町村全てが完了する見通しだ。

廃棄物処理は今年8月末時点で推計量約289万トンのうち、84%の約243万トンの処理を終えた。コンクリートを砕いて道路整備に利用するなどのリサイクル利用が全体の7割以上を占めた。

一方、仮設住宅約4300戸のうち7月末までに退去したのは1割弱の約千人にとどまり、政府は原則2年の仮設の入居期限を1年延長すると決めた。県は仮設住宅やみなし仮設住宅の入居者を対象に、民間賃貸住宅に移った場合は初期費用として1世帯当たり一律20万円助成するなどの支援事業を始め、住まい再建を後押しする。

熊本城の天守閣の復旧工事は進んでいて、大天守の新しい屋根が見えており、復旧は進んでいるという印象をうける。
熊本城

東日本大震災の被災地(岩手、宮城、福島の3県)でも、まだ19000人以上が仮設住宅などで暮らしている。熊本地震での仮設住宅もこのまま使い続けていくようだ。こうなると現実的には「仮設」という言葉が意味をなさなくなってきている。災害復興をどのようにすすめていくのか、大きな課題だ。

日本建築学会九州支部の災害委員会では、熊本地震の復興・復旧の現状や取り組みなどをテーマに災害フォーラムをチラシのとおり開催することにしている。開催日は12月15日(金)で、会場は熊本大学百周年記念館。参加費は無料なので、多くの方に参加いただければと思う。
171215災害フォーラムin熊本


日本建築学会の全国大会はじまる

2017年度の日本建築学会の全国大会が、広島工業大学を会場に始まりました。この大会の参加者は毎年1万人程度で、おそらくこうした全国大会のなかでは最大規模といえるのではないでしょうか。

今年の大会の特徴は、開催期間が4日といつもより1日長いことです。これは講演会を実施する教室数が少ないということが原因だと思われます。6600題以上の発表を行うには必要な期間なんでしょう。4日間はちょっと長いな〜と思いつつも、講演会場が一つの建物に集約されており、コンパクトな会場づくりになっていると思われます。

会場となっている建物はいくつかの校舎にあった教室を集約した講義棟で、制振ダンパーが設置されています。中庭から見ると各階のブレースは色が違っていることが分かります。
IMG_5340IMG_5341

大会での発表時間は5分で、質問時間は3分程度しかないのは、これまでと変わりません。じっくりと議論するには時間は短いですが、たくさんの発表をしてもらうにはやむを得ないということでしょうか。これまでも全国大会のあり方については、いろいろと議論されてきています。分野別に分けて開催してはどうか、いやいや建築はそれぞれの分野が一体となっていることが大事だ、などなど。良い解決策はないようです。

ある先生は、全国大会はある意味「お祭り」だとも仰ってました。久しぶりに旧友に再会したり、研究発表から刺激を受けたりと、「お祭り」として楽しむことも必要でしょう。ただ、これを「お祭り」だけにとどめるのではなく、これからの建築の発展に寄与できるといいかな、と思います。それは、参加している人たちの心がけによるのかもしれませんが。

今日は防災の日です。
この全国大会で発表される研究成果が、これからの地震防災や災害の軽減にも役立つことを願っています。研究者や建築実務者だけでなく、こうした活動や成果を広く社会に伝えることも必要だと思います。

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講義中・・・
著書など
研究室のマスコット
「アイソレータ・マン」。頭部は積層ゴムで、胸にはダンパーのマークでエネルギー充填
『耐震・制震・免震が一番わかる』
共著ですが、このような本を技術評論社から出しました。数式などを使わずに耐震構造、制震構造、免震構造のことを、できるだけわかりやすく解説しています。
『免震構造−部材の基本から設計・施工まで−』
免震構造協会の委員会活動の成果として、このような本をオーム社から出しました。免震構造の基本をしっかり学べるような内容となっています。
『4秒免震への道−免震構造設計マニュアル−』
いまでは少し内容が古いかもしれませんが、免震構造の基本的な考えを述べています。初版は1997年に理工図書から出ていて、2007年に改訂版を出しました。
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