東京大学

火山を透視する

日経新聞(3/25付け)に『火山の透視解像度100倍』という記事があった。
東京大学の田中宏幸教授らは、従来の100倍の解像度で火山の内部をレントゲンのように透視する技術を開発した。マグマが上昇している様子やマグマの空洞がどこにあるかなどをきめ細かく把握できる。今後、より短時間に透視できるように改良を進め、噴火予測に役立てる。

ミュー粒子と呼ばれる素粒子をガス検知器で検出する新型の透視装置を使い、桜島(鹿児島市)の内部を透視した。縦横10メートルの解像度で内部の様子を撮影できた。従来は縦横100メートルだった。

桜島の昭和火口が噴火で広がっている様子などが見えた。また従来の装置でははっきり撮影できなかった山の形も明確に見えるようになった。

実験では試験用の小型透視装置を使い、半年かけて解像度の高い透視画を撮影した。今後、試験装置の50倍前後の大型装置を作り、数日で火山内部を細かく撮影できるようにする。将来は毎日のマグマの動きをリアルタイムで把握できることを目指す。

透視装置はミュー粒子が火山を突き抜けてきた様子を調べて、火山内部の画像を作る。ガス検出器を使う透視装置は従来より小型でも高い性能を得られ、価格も安くなる。東大はハンガリー科学アカデミーと共同で開発を進めている。

↓は田中宏幸教授が2007年に発表した浅間山の写真で、肉眼では見ることのできない活火山の火口底より下の画像。
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また、田中教授は、高エネルギーのニュートリノを利用して地球を丸ごと透視できなかと研究をすすめているそうだ。これまで地震波の伝播でしか分からなかった地球の内部構造がよりはっきりすることが期待される。

こうした技術を地震断層の検出などに利用できないものだろうか。断層の位置などを特定するには、トレンチ調査などで実際に地面を掘ってみることが必要となる。これでは特定の個所でしか断層の確認はできないが、もっと面的に広がりをもった範囲を透視して断層の位置や大きさがわかるようになれば素晴らしいのだが。










英国の名門大学の強さと本質

Oxford
Wedge(12月号)に『英国の名門大学の強さと本質とは』と題してオックスフォード大学の苅谷剛彦氏が寄稿している。
日本の研究者、教育者が苦しんでいる本質的な原因は資金だ。
国立大学が運営資金の多くを頼る国立大学運営費交付金が減らされたことで、研究・教育に弊害が出ている。今後、人口減少が避けられない日本では、萎んでいく原資を各国立大学の間で奪い合うことになる。

私の勤める英国オックスフォード大学とそれに並ぶケンブリッジ大学、いわゆる「オックスブリッジ」も国立大学だ。しかし、日本の国立大学とは収入構成が異なる。

オックスブリッジではその運営資金について国内外からの外部資金や寄付金の比率を高めている。オックスフォード大学の場合(2015年度)だと収入の40%にあたる5億3740万ポンド(約814億円)が外部からの研究資金であり、それに加えて寄付金などの総額は3億4500万ポンド(約522億円)にのぼる。東京大学の最新の寄付金総額が81億8100万円(16年度)だから、およそ6倍の違いである。

これをもたらしている一つの要因がグローバルの大学ランキングの順位だ。9月に英教育専門誌のタイムズ・ハイヤーエデュケーション(THE)が発表した「世界大学ランキング」でオックスフォード大学は世界第1位、ケンブリッジ大学は第2位を獲得している。

ただ、オックスブリッジが外部資金を調達できているのは、大学ランキングの順位が本質ではない。歴史と伝統を守りつつ、常に革新し続けることこそが最も大きい理由だ。例えば人文系の分野では、歴史や文学、哲学といった一見社会にすぐに役立つとは思えない分野の卒業生が、ビジネスの世界でも活躍している。そのことを大学側もアピールしている。その一方でビジネススクールや公共政策大学院の設置といった改革も行ってきた。

その他の分野を含め、こうしたことが評価され、THEの「研究力ランキング」でもオックスフォード大学は第1位、ケンブリッジ大学は第3位に位置している。伝統と革新の両輪によって、世界から信頼を集め、それにより外部資金が集まる仕組みが構築されている。

かたや日本の大学は国外からの資金調達はさらに難しいようだが、どこに問題があるのだろうか。

日本の文部科学省は、大学の国際化を進め、ランキングでの順位をあげるべく、2014年から「スーパーグローバル大学創成支援事業」(SGU)を行っている。その成果指標には「シラバスの英語化」「全学生に占める外国人留学生の割合向上」「外国語による授業科目の増加」などが並ぶ。

確かにグローバル化が進んだ中で、英語は重要なツールだろう。英語圏の大学が優位なことは間違いない。しかし、こうした目標を達成するだけでは、先進国のトップ大学を差し置いて海外から資金を集めることはできない。

日本の大学に必要なのは、文系の場合、日本独自の学問を構築、研究することだ。日本人の思考で日本語を用いて研究するからこそできる分野もあることを忘れてはいけない。

日本の人文社会系の学問は高等教育が始まって以来ずっと西洋の「翻訳学問」「輸入学問」と揶揄されてきた。最近の日本語で発表される研究では原文ではなく翻訳で海外の研究が引用される。英語での発信と言っても、言葉を換えただけではオリジナリティを発揮しているとは言えない。これでは、海外から優秀な学生も研究者を引きつけられない。

輸入学問と言われながらも外部の知識を吸収しそれを独自化する。そうやって日本が積み上げてきた経験を、ネガティブなものも含めて掘り起こして世界に伝えることがオリジナルな学問を構築する足がかりになる。

大学がこうした研究・教育に変わるためには社会全体が、それを辛抱強く見守ることも重要だ。SNSなどの発達により、情報の分断と拡散が急速に起きていることで、人々の判断が拙速になっている。

しかし、独自の研究を積み重ねる作業は一朝一夕にできることではない。文科省もこうした近視眼的な考え方にとらわえれ、SGUのように小出しにして補助金を投入したり、一律で運営費交付金を削減するようなことは、もうやめたほうがよい

内向きに限られた資金を奪い合っても悪循環はとめられない。西洋の呪縛から脱することが、いずれの日本の大学の誇りになり、若手研究者に光をさすことにもつながる。

西洋の呪縛というものは、まだ残っているのだろうか。工学の分野でも明治政府が海外から技術者を招いて日本人の教育に当たらせている。彼らはお雇い外国人技師と呼ばれる。確かに彼らがわが国の技術的な基盤をつくったといえるが、西洋にはない日本独自の技術や製品を開発してきている。

ただ、最近の日本では、ものづくりに係わる分野で性能の偽装などが行われてきたことが明らかになった。なぜこうしたことが起きたのかについては検証が必要だが、日本から新しい発想に基づくイノベーションが減ってきていないだろうか。これは日本社会が「内向き」になっているからだろうか。

18歳人口の減少にともない、大学の競争もこれから激しくなるだろう。国立大学だけでなく私立大学にとっても死活問題である。限られた大学生を奪い合うのではなく、大学の役割というものを社会に訴えていくことで、経営基盤を安定させることも必要だろう。

それにしても寄付金が500億円以上とは、スゴイ。
日本と欧米での寄付文化の違いがあるとはいえ、寄付をしたくなる大学になっていかないと・・・

国立大付属「抽選選考を」

朝日新聞(8/30付け)に『国立大付属「抽選選考を」』という記事があった。
国立大学の付属校が「エリート化」し、本来の役割を十分に果たせていないとして、文部科学省の有識者会議は29日、学力テストではなく、抽選で選ぶことなどを求める報告書をまとめた。学習能力や家庭環境などが違う多様な子どもを受け入れ、付属校での研究成果を教育政策にいかしやすくすることが狙いだ。2021年度末までに結論を出すよう、各大学に求めた。

国立大の付属校は本来、実験的・先導的な学校教育を行う
 ▽教育実習の実施
 ▽大学・学部の教員養成に関する研究への協力
といった役割を担う目的で設立された。だが、「一部がエリート校化し、教育課題への取り組みが不十分だ」などの指摘が出ていた。また、学校現場で教員の新規採用が減る一方、発達障害や外国人の子の支援へのニーズなどが高まり、有識者会議は国立の教員養成大・学部の改革と一体で付属校のあり方を検討してきた。

報告書では入学の際に学力テストを課さず、研究・実験校であることについて保護者の同意を得て、抽選で選考することや、学力テストが選考に占める割合を下げることを提案。同じ国立大の付属校間で、無試験で進学できる仕組みにも見直しの検討を求めた。「多くの学校に共通する課題と対応策のあぶり出しが重要だ」とし、教員の多忙化解消などで付属校が先導役になることも求めた。

文科省によると、国立大付属学校は現在、幼稚園49、小学校70、中学校71、高校15など計256校あり、約9万人が通っている。

■有識者会議が国立大付属校に求める主な改革
  ・学力テストを課さず、抽選など多様な選考を実施
  ・同じ国立大付属校間の無試験の「内部進学」などを見直す
  ・教員の多忙化解消などで公立校のモデルをめざす
  ・30〜40年の長期間の教職生活を視野に、教員の研修機能を強化
  ・2021年度末までに結論をまとめ、できるものから実施

「エリート(elite)」は、選り抜きの人々、社会や組織の指導的地位にある階層・人々、とされている。お金や知識をもっていて、社会に影響を与えることができる人ということになるのかな。では、いまの日本の大学教育ではエリートを養成しているのか?

一部の大学ではそういう意識もあるかもしれないけれど、多くの大学は横並びではないだろうか。大学の役割を明確化していくことも求められるのではないだろうか。ところで、英教育専門誌タイムズ・ハイヤー・エデュケーション(THE)が今年の大学ランキングを発表した。

上位200校に入った日本の大学は東京大学と京都大学のみ。その2校の順位の推移は下図(出典はReseMom.biz)のとおりで、順位は低下傾向にある。これは中国などの他の大学の順位が上がってきているからだろう。
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トップ10の大学のほとんどが英米の大学で占められている。ランキングに入ることが大学の目的ではないにしても、大学入試の選抜方法がこれまでの学力試験だけで本当にいいのかどうかについて見直す必要があるのかもしれない。

大学の入口ではなく、大学に入ってからの成長をみるべきで、入口より出口での管理をしっかりすることが必要ではないだろうか。加えて、いまの就職・採用活動も大幅な見直しが求められる。大学の4年次が就職活動に費やされることは学業を妨げるし、そもそもみんな同じ服装をして就活にのぞむなんて海外から見れば異様だろう。就職活動は大学を卒業してからやるようにし、そのときには大学での成績も重視してもらいたいものだ。

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著書など
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「アイソレータ・マン」。頭部は積層ゴムで、胸にはダンパーのマークでエネルギー充填
『耐震・制震・免震が一番わかる』
共著ですが、このような本を技術評論社から出しました。数式などを使わずに耐震構造、制震構造、免震構造のことを、できるだけわかりやすく解説しています。
『免震構造−部材の基本から設計・施工まで−』
免震構造協会の委員会活動の成果として、このような本をオーム社から出しました。免震構造の基本をしっかり学べるような内容となっています。
『4秒免震への道−免震構造設計マニュアル−』
いまでは少し内容が古いかもしれませんが、免震構造の基本的な考えを述べています。初版は1997年に理工図書から出ていて、2007年に改訂版を出しました。
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