日本機械学会の「機械力学・計測制御部門ニュース」(No.60)に金沢大学の小松崎俊彦先生が『硬さの変わる””磁気粘弾性エラストマ”の応用可能性について』と題して寄稿されている。
MREを免震用積層ゴムへ適用した研究がないかと探したところ、下の論文を見つけた。
”Development and characterization of a magnetorheological elastomer based adaptive seismicisolator”
この論文では下のような試験体(積層ゴム)をつくって実験されている。
論文の結論では、積層ゴムとして十分な性能を持っているとされているものの、実験では軸力は載荷していないようだし、水平変形は10mm程度しか実験されていない。もしMREを使って免震用積層ゴムとしての性能を発揮させるには、さらなる研究が必要だと思われる。水平変形能力、荷重支持能力、ゴムと中間鋼板の接着性、製造技術などの確立、さらには磁気をかける方法など。
しかし、こうした材料をうまく使って積層ゴムをつくることができたとすれば、積層ゴムの変形量にあわせて、水平剛性や減衰を変化させることも可能となる。免震構造のさらなる性能向上のために、こうした新しい免震デバイスの開発は欠かせない。
磁気応答性材料の一つである磁気粘弾性エラストマ(Magnetorheological Elastomer, MRE)は、非磁性エラストマを基質として、その内部に磁性粒子を分散固定した複合材料であり、外部磁場に応答して見かけの弾性率や減衰特性が可逆的に変化する。剛性の可変性という、これまであまり着目されなかった特長を有する機能性材料として、種々の振動制御デバイスへの応用可能性が期待される材料である。
MRF(Magnetorheological Fluid, 磁気粘性流体)は、主に見かけの粘性変化を生ずるのに対し、MREは弾性的性質が支配的なエラストマ材を基質として用いるため、弾性的性質の変化が主となる。言い換えると、MRFは降伏後の特性を、MREでは降伏前の特性を利用することに対応する。また、MRFを減衰要素に組み込む際、基本的にはその変形が一方向のみの抵抗要素として用いるが、MREはその変形が一方向に限られないため、その点をうまく利用すればMRFとの差別化がより明確になる。
MREは通常、磁性粒子、エラストマ、添加剤を混合してつくられる。MREの物性変化は磁性粒子の磁気的結合力におるもので、磁場の強さに応じて変化は大きくなる。磁性粒子には透磁率が高く、残留磁化の小さいものを用い、基質には天然ゴムやシリコーンゴムを用いるのは一般的である。物性変化を支配する磁気結合力は磁性粒子間距離が小さいほど大きいが、MREでは磁性粒子が基質中に固定されるので、攪拌・脱泡後の硬化過程で磁場印可することで粒子を接近させ、なおかつ特定方向に磁性粒子の長い鎖を形成させて材料を固めれば、均一分散の場合よりも高いMR効果を得ることができる。
MREは全般的に準能動的な制御手段、具体的には動吸振器や防振マウント、構造要素への適用など、振動・騒音制御への応用が検討されている。これら以外にも、特性変化幅の向上を目指した基礎物性に関する研究や、磁場に対する粘弾性変化の理論予測に関する検討などがあるが、材料開発、理論および応用面いずれも途上にあり、今後のさらなる研究開発が期待される。
(以下、MRE防振マウントを使ったセミアクティブ制振の研究が紹介されているが、省略)
MREを免震用積層ゴムへ適用した研究がないかと探したところ、下の論文を見つけた。
”Development and characterization of a magnetorheological elastomer based adaptive seismicisolator”
この論文では下のような試験体(積層ゴム)をつくって実験されている。
論文の結論では、積層ゴムとして十分な性能を持っているとされているものの、実験では軸力は載荷していないようだし、水平変形は10mm程度しか実験されていない。もしMREを使って免震用積層ゴムとしての性能を発揮させるには、さらなる研究が必要だと思われる。水平変形能力、荷重支持能力、ゴムと中間鋼板の接着性、製造技術などの確立、さらには磁気をかける方法など。
しかし、こうした材料をうまく使って積層ゴムをつくることができたとすれば、積層ゴムの変形量にあわせて、水平剛性や減衰を変化させることも可能となる。免震構造のさらなる性能向上のために、こうした新しい免震デバイスの開発は欠かせない。