西原村

熊本地震で観測された長周期地震動

2016年の熊本地震において、西原村役場で観測された地震動は「長周期パルス」だったといわれている。しかし、そもそも「長周期パルス」って何なんだろうか。NHKでも取り上げられので、いつのまにか「長周期パルス」という言葉が一般に使われるようになるかもしれない。長周期地震動がそうだったように。地震学で「長周期」といえば、もっと長い周期帯を指す言葉だったはずだったが。科学がメディアに負けている・・・

下の図は、熊本地震の本震で観測された地震動から求めた加速度応答値(減衰5%)で、周期2秒から5秒の周期帯における平均応答をコンター図で示している。これは九州大学の研究者により作成されたものだ。
熊本地震_長周期パルス

多くの住宅が被害を受けた益城町は周期1秒から2秒が最も卓越していたのに比べ、西原村や阿蘇の一の宮付近で長周期成分が卓越していることがわかる。

以下の図は、益城町役場、西原村役場、K−NET一の宮での観測記録の波形(加速度・速度)とEW成分を使った応答スペクトル(減衰5%〜30%)である。
益城町西原村一の宮

西原村役場の速度応答スペクトルをみると周期2秒以降でも高い値を維持している。その結果、変位応答スペクトルでは周期が長くなるほど大きな変形を示している。こうした応答となった要因は、速度波形にある大速度を示してる周期3秒のパルス(?)だと思われる。一の宮は短周期成分がそぎ落とされ、周期3秒が卓越している。一の宮の加速度波形は25秒以降で周期が長くなっていようにみえる。速度波形をみるとほぼ周期3秒で正弦波に近い。

なぜ、こうした地震動が観測されたのだろうか。益城町も西原村も断層上にあるが、これほど違いがでた要因はなんだろう。国土地理院の調査では西原村は約2m沈降している。こうした断層運動が西原村の観測記録に影響を与えたのだろうか。一の宮の記録も断層運動が影響しているのだろうか。

しかし、K−NET一の宮から3kmほど離れたところにある免震病院では最大変形が46cmだった。一の宮で観測された地震動をこの建物に入力しただけでは、応答は説明できない。そうなるとこの建物の入力地震動は違う可能性もある。しかし、地震の長周期成分はあまり減衰しないはず。そうなると深い地盤構造も影響しているのかもしれない。

熊本の地質は、阿蘇山の噴火による火山灰などの堆積物が多い。地表面で大きな地盤変位が現れたり、周期3秒が卓越したのは、地質の影響はないのだろうか。こうした面からの検証も必要だと思われる。
熊本の地質図


長周期パルスの衝撃?

昨晩放送されたNHKのメガクライシス『長周期パルスの衝撃』を見ました。
期待どおりの内容でしたね。
20170901_06
https://www.nhk.or.jp/ohayou/digest/2017/09/0901.html

この番組を見てて、次のような疑問が浮かびました。
  • 内陸の活断層地震では、長周期パルスが必ず発生するの?
  • これまでの活断層地震でも長周期パルスが発生していたの? 観測されなかっただけ?
  • そもそも長周期パルスって何?定義はされているの?
番組では、2016年熊本地震の西原村役場での地震計で観測された地震記録が紹介されていました。それは大きな記録で長周期構造物に大きな応答をもたらす記録だったからでしょうが、他の地点での記録はどうなっていたのでしょうか? 西原村役場で観測された地震記録だけを見て、活断層地震では長周期パルスが発生するといえるのでしょうか?

私の不勉強のためかもしれませんが、内陸の活断層地震で長周期パルスが出るということは聞いたことがありませんでした。長周期パルスは3秒が卓越するのでしょうか。もしそうだとすれば、長周期構造物の設計において周期3秒を避ければいいだけです。長周期パルスの成因について地震動や地盤震動の専門家の先生のご意見をお聞きしたいところです。

新宿の○学院大学の校舎に西原村での地震記録が入力されたときには、とても大きな被害が出ると紹介されていましたが、新宿で長周期パルスって起きるんでしょうか? そもそもそれを起こす活断層はどこに?

熊本地震のときに熊本大学の免震病院での応答変形についても紹介されていました。応答変形が40cmとなっていて、もう少し地震が大きかったら擁壁に衝突していたかもしれないという。しかし、熊本市内にある建物に長周期パルスの影響はあったのでしょうか? 

そもそも1995年の阪神淡路大震災で、短周期パルス(キラーパルス)が観測され、断層破壊の方向(ディレクティビティ)が影響したことが要因であると説明されています。では熊本地震の断層破壊の方向はどうなっていたのでしょうか?

分からないことがまだまだあります。阿蘇にある免震病院では最大変形46cmを記録しました。この病院の東3.5kmにある地震観測点では長周期成分(周期3秒が卓越)が観測されていました。この地震動が免震病院に入力されたとすると応答変形は1.5m弱となり実応答とはまったく違ってきます。こうした現象も解明していかないと、長周期パルスがどのように発生し、その影響がどういう範囲に及ぶのかは分からないのではないでしょうか。

Eディフェンスで空気圧を使った免震装置(?)の実験が紹介され、これを使えば街全体を免震化できるらしいです。空気圧でどの程度の高さの建物を支えることができるのでしょうか? 確かに戸建て住宅では空気圧で免震化されているものもあるようです。また空気圧によって上下免震実現した3階建て建物もあります。3階建てとなっているのは、使える空気圧が法的に制約されているからと聞いています。より高い空気圧を用いれば高い建物も免震化できるかもしれません。
img_3d_01

1気圧は平方メートル当たり約10トンに相当します。基礎面全体に1気圧の空気を瞬時に送ることができれば10階建てくらいの建物を浮かせることができるかもしれません。では4気圧なら40階建てくらいはできる? でもそうした設備を常に備えておくのって大変かも。

番組の最後に「見たくないモノを見る必要がある」と言われてましたが、そのためには情報を正しく伝えることが必要なんじゃないでしょうか。

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講義中・・・
著書など
『耐震・制震・免震が一番わかる』
共著ですが、このような本を技術評論社から出しました。数式などを使わずに耐震構造、制震構造、免震構造のことを、できるだけわかりやすく解説しています。
『免震構造−部材の基本から設計・施工まで−』
免震構造協会の委員会活動の成果として、このような本をオーム社から出しました。免震構造の基本をしっかり学べるような内容となっています。
『4秒免震への道−免震構造設計マニュアル−』
いまでは少し内容が古いかもしれませんが、免震構造の基本的な考えを述べています。初版は1997年に理工図書から出ていて、2007年に改訂版を出しました。
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