Yuja Wangユジャ・ワン ピアノ・リサイタル

ラフマニノフ: コレルリの主題による変奏曲 op.42
シューベルト: ピアノ・ソナタ第19番 ハ短調 D.958(遺作)
スクリャービン: 前奏曲 ロ長調 op.11-11
                   前奏曲 ロ短調 op.13-6
                   前奏曲 嬰ト短調 op.11-12
                   練習曲 嬰ト短調 op.8-9
                   詩曲 第1番 嬰ヘ長調 op.32-1
メンデルスゾーン(S.ラフマノニフ編):「夏の夜の夢」より スケルツォ
サン=サーンス(V.ホロヴィッツ編): 死の舞踏 op.40
ビゼー/ホロヴィッツ: カルメン変奏曲

(アンコール)
ショパン:ワルツ第7番op.64-2
シューベルト/リスト:糸を紡ぐグレートヒェン
モーツァルト/ヴォロドス:トルコ行進曲


昨日に引き続き、武蔵野市民文化会館。三鷹駅から歩くのは一向に構わない(荒天時除く)が、三鷹までがやや遠い。新宿廻りでも立川廻りでも大差ない。

私がユジャ・ワン Yuja Wang (b.1987) を聴きに行くとは、と思われるかもしれない(自意識過剰)。ただ、他のホールのリサイタルが7,000円のところ、2,000円で聴くことができるというのは魅力的。「試しに聴いてみようか」という気になったもの。
経歴はあちこちで読めるので、敢えて書く必要はなかろう。北京生まれだが、現在は活動拠点をニューヨークに置いている。マルタ・アルゲリッチの代役として登場した2007年のボストン交響楽団の公演(指揮:シャルル・デュトワ、チャイコフスキー:ピアノ協奏曲第1番)で好評を博し、一気にスターダムを登った。代役についてはあれこれ言いたくなるものだが、こういうチャンスを掴んでいく若い才能もあるから、一概にはなんとも言えない。
演奏の好悪はともかく、「プレゼンテーション」力は聴いた誰しもが認めるところ。

今日も曲目変更。「お詫び」とともに案内が事前に送られてきていたのだが、今日入り口で更なる変更がある由告知。そのうえ、実演で1曲差し替えた。個人的には一向に構わないのだが、直前までプログラムを練っているのだろう。

ものすごく高いピンヒールの靴に真っ赤なドレスで登場するなり、額が膝につきそうなほどの深いお辞儀。そしてさっさと椅子に座って、殆ど調整もせずに引き出した。別にエキセントリックでもないし、不快な感じもないが、他の奏者のステージ・マナーとは異質。


ラフマニノフの《コレルリの主題による変奏曲》から開始。これはまあ、こういう曲だよなあ、と思いながら聴いていたのだが、2曲目のシューベルトピアノ・ソナタ第19番でさっそく驚かされる。こんなシューベルトは聴いたことがない。
テクニックはとやかく言うまでもない。左手のテンポ感が非常に明快で、圧倒的な推進力を得て曲が進行する。早めのテンポでガンガン弾いているようにみせているが、弾き飛ばしなどの乱暴なところは一切なく、旋律も全く埋もれない。まさしくドライヴ感に満ち溢れている。シューベルトでドライヴ感を感じるなんて。。。
本人は涼しい顔をして、何事もないかのような表情。

後半はスクリャービンのピアノ独奏曲から始まるが、これも曲の表情を見事に捉えていて退屈しない。メンデルスゾーンのスケルツォ(「夏の夜の夢」より)も見事。サン=サーンスの《死の舞踏》も迫力に満ちた演奏。これだったら、リストの同じ名前(日本語訳が)の曲も是非聴いてみたい。
次第に調子が上がってくるタイプのようで、最後のビゼー/ホロヴィッツカルメン変奏曲》(これが今日になって変更された曲)では圧倒的な存在感を示していた。

当然のごとく、会場は大喝采。それはそうだろう、あれだけ「煽られ」れば。納得せざるをえない。前回のグラミー賞ノミネートは伊達ではない、ということはよく判った。今後彼女のCDや演奏会チケットを買うかどうかは定かではないが、彼女の演奏を聴きたいという人に対しては決してネガティヴに接することはないだろう。兎に角、今日のリサイタルは面白かった。
彼女の演奏には「完成された」という感じはしない。まだこれから成長を続けていくだろう。それが良い方向へと向かうことを期待する。

で、いきなりアンコール。最初はショパンワルツだったが、これもテンポ・ルバートは「普通の」ピアニストとは違う。元気の良いショパンがあっていい。
続けて(本当に続けて)シューベルト/リストの《糸を紡ぐグレートヒェン》。最後にモーツァルトのピアノ・ソナタ第11番の第3楽章(トルコ行進曲)、と思いきや(会場もそう思って一瞬沸いた)、アルカディ・ヴォロドスが編曲したもの。これどこかで聴いた覚えがあるのだが、何処だったろうか。。。彼女自身が弾いている演奏がYouTubeにアップされているので、参考まで。


Yuja Wang signed CDようやく終演となり、サイン会が(今日も)あるというので、ご祝儀に新譜を買って並ぶ。正面玄関入り口まで並んでいたから、100人近かったのではなかろうか。着替えもせずドレス姿のまま、サインに応じていた。私の前から「サインは1枚だけでお願いします。」ということになり、パンフレットのほうは断念。カヴァー写真にして貰おうと思ったら、指定場所があるようで、1ページ開いた此処へ。

明日は紀尾井ホールでリサイタルがある由。行かれる方は是非楽しんで戴きたい。