市場のかみさんたちジャック・オッフェンバック:オペレッタ《市場のかみさんたち》
  A.レポワント台本 J.オッフェンバック作曲
    日本語訳:和田ひでき
    演奏用楽譜編曲:青島広志
 
指揮:大島義彰
演出:飯塚励生

【出演】
 魚屋のポアルタペ夫人・・・・大津佐知子
 八百屋のマドウ夫人・・・・三津山和代
 八百屋のブールフォンデュ夫人・小川嘉世
 鼓笛隊隊長のラフラフラ・・・・・三村卓也
 果物売りのシブレット・・・・・・加藤千春
 コックのクルトポ・・・・・・・・吉田伸昭
 警察署長・・・・・・・・・・・・堀野浩史
 お菓子売りの女・・・・・・・・・植木光子
 野菜売りの女・・・・・・・・・・古川尚子
 洋服売りの女・・・・・・・・・・小杉 瑛

【演奏】
 ピアノ・・・・・・・・・・・・・遊間郁子
 バイオリン・・・・・・・・・・・朝来桂一
 チェロ・・・・・・・・・・・・・佐藤 翔
 フルート・・・・・・・・・・・・永井由比



知り合いのソプラノ歌手、加藤千春さんにお誘いいただいて、調布のせんがわ劇場での好演に出かける。
仙川駅に降りるのは初めて。10年ほど前、弟が2つ向こう(神奈川方面から見て)の蘆花公園に住んでいて、何度か遊びにいったことがある程度で、あまり馴染みがない。
ホールは駅からほど近い立地。120席と決して大きいホールではない。

会場に早めに着いたので、勧められるまま椅子に座って待っていると、演目に因んでか、八百屋さんの出張販売。聞くと、俳優の永島敏行氏がオーナーを務めている『青空市場808』とのこと。彩り鮮やか。開場となって席に着くと、なんとホール内に移動して販売。演出の一部ではないだろうと思うが、こういう演目でなら面白い企画。

そうこうしているうちに開演時間となる。ところが、責任者が出てきて言うには、出演者が一人開演時間を間違えて、まだ到着していないとのこと。オッフェンバックの比較的大きな規模の作品第一号であるけれども、登場人物は10名で、そのまま誤魔化すこともできないのだろう。急遽楽隊が登場して、聴衆と歌を歌ったり、演奏したりで時間を稼ぎ、若干の休憩時間を入れて、30分遅れでスタート。褒められたことではないけれども、この程度であれば特に怒ることもない。


さて。


ジャック・オッフェンバック Jacques Offenbach (1819-1880)は、ドイツ生まれでフランスで活躍(後に帰化)した作曲家、チェリストである。ジャック・オッフェンバックは父親の出身地(ドイツ・フランクフルト近郊のオッフェンバッハ・アム・マイン)からとったペンネームで、本名はヤーコプ・レヴィ・エーベルスト Jakob Levy Eberst。名前から判る通り、ユダヤ系である。
よく知られているのは、オペレッタ《冥府のオルペウス(天国と地獄)》、オペラ《ホフマン物語》。前者は、所謂フレンチ・カンカン(ギャロップ)の代表ともいえる曲が夙に有名で、後にサン=サーンスが《動物の謝肉祭》のなかでわざとテンポをおとして『亀』として誂っている。《ホフマン物語》は『舟歌』が有名。と、その程度の知識しかない。

オペレッタ《市場のかみさんたち Mesdames de La Halle》は 1958年の作品。この年までオッフェンバックが持っていた上演許可証では2-3名程度の役者しか使えず、この作品がその制限が解除され、コーラスと比較的大規模なキャストを使った最初の作品であった。東京室内歌劇場としては四半世紀ぶりの再演ということだが、あまり演奏機会は多くない模様。

台本自体は、取り立てて言うべきこともない。ルイ15世時代のパリの市場が舞臺。レ・アール Les Halleと呼ばれる中央市場が舞臺という説明もあるけれども、1858年にはまだ完成していない(1866年完成-1969年移転/解體)。確証はないけれども、これは未来のお話ではないと思う。
借金返済のために市場のかみさんの資産を狙う鼓笛隊隊長の行動が巻き起こす、市場の一波乱と、二組の「カップル」の愛を巡るドタバタ群像喜劇である。
市場のかみさんたちを男声で歌わせるという、バロック的手法で書かれたユニークな作品とのことだが、私がみたAキャストでは女性がかみさんたちを歌っている。

他愛もないと言ってしまえばそれまでだが、ルイ・ナポレオン(ナポレオン三世)支配下で現在の姿へと変貌しつつあったパリの、生き生きとした逞しい市民生活が伝わってくる。音楽も、當時のパリを彷彿とさせる小洒落たもの。
今日の舞臺は観客との距離が近く、また客席通路まで使っての公演だったこともあり、喜劇としての腕前が試される部分も大きかったと思う。加藤さんのコメディエンヌ振りは以前から知っていたけれども、今回「かみさん」を演じた方々はみな芸達者。大笑いさせて貰った。「娯楽」だもの、こうでなくては。

終演後見送りに出てこられていた加藤さんに挨拶して、帰宅。