DVC00367


( ∵) もう終わるようです


1 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/23(水) 18:42:58.91 ID:7KH3RVdgO
季節感ガン無視
立ったら投下


2 :立った……!:2011/02/23(水) 18:44:37.82 ID:7KH3RVdgO
( ・∀・) 「やぁや、また会ったね」

( ∵) 「……」

流れる川のせせらぎを聞きながらぼーっとしていた時、その中に全く別の音が混ざる。
首だけで確認をすると、全身を緑色で包みヴァイオリンを片手に持つ青年がいた。

彼とは何度か面識があったので、ひとまずは手を振ることで挨拶をする。

( ・∀・) 「相も変わらず静かだね、君は」

( ∵) 「……」

そして軽い笑い声を上げながら、青年は一方的に話し始めた。
あの森にいたら酷い目にあった、空からも幾度も命を狙われただとか。
甘い甘ぁい場所があったから向かったら罠で、危うくその命を落とすところだっただとか。


3 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/23(水) 18:45:20.92 ID:7KH3RVdgO
そんな話を、幾つも幾つも。
僕が退屈してる理由はと言えば、彼の話が内容は違えど、中身が常に一緒だからだ。

( ・∀・) 「とと、話し過ぎて随分と時間が経ってしまったな……うぅむ」

ハッとなってから空を見上げると、慌てた口調で――その様子はないが、それではと話を締めた。
相も変わらず、彼は随分とお喋りなようだ。

( ∵) 「……ゴェ」

あぁ、僕も喋りたいのにと呟けど、そんな勇気はもちろんなくて。
誰にも聞かせたことのないその声を、夜空に向かって投げつける。

静寂は、その声さえも押し潰してしまった。





4 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/23(水) 18:46:08.83 ID:7KH3RVdgO
( ∵) 「……」

空は、広い。
僕が飛んだところで、僕が鳴いたところで、いったいどれだけの存在が認識してくれるのだろうか。
それなのにみんなは自らを撒き散らし、その存在を誇示しようとする。

しかし、その気持ちは全くわからないと言うワケでもない。
どうせならば、意地でも自分を押し付けてやりたいのは、僕も一緒なのだから。

( ∵) 「……」

ふぅと息を吐くと、小さな自分が更に小さくなった気がした。
どれだけの時間をあの闇の中で過ごしたか、正確な時間は思い出せないし、思い出したくもない。
ゆっくりゆっくり、何も出来ずにただ耐えることで育んできたこの命。


5 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/23(水) 18:46:41.22 ID:7KH3RVdgO
( ∵) 「……ゴェ」

たかだか自己顕示の為に使うなど下らない。
そんな欲で磨り減らしてしまうのなんて、愚かしいとすら思えてしまう。



なんてことは、昨日も一昨日も今日もずっと考えている。
まだわからないけれど、たぶん明日もだ――。


6 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/23(水) 18:48:02.68 ID:7KH3RVdgO
◆◇◆◇◆

( ∵) 「……」

いつの間にやら寝ていてしまっていたことは、頭から被る日の暑さで気付いた。
今日もジリジリと真上から照り付けやがって、コンガリ焼くつもりか。
しかし焼いたところで、いったい誰が僕を食べるのだろう。

そんな空想に時間を割いていたが、下らないと気付いた僕は近くの川へと喉を潤しに行った。
それから朝ごはんを食べて、自然の音に耳を傾けながら近辺を徘徊する。
いつも通りの日常だ。

出来る限り木陰を通り、日に当たらないようにひたすらに進む。
空も広いが、地面も十分に広い。
この僕の短い命を賭して、回りきれるだろうか。

( ∵) 「……?」


7 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/23(水) 18:50:02.75 ID:7KH3RVdgO
今日も今日とてせかせかと歩き回っていたのだが、しばらくすると何やら怪しい音が聞こえた。
面倒なことには首を突っ込みたくはないのだが、悲しいかな僕は好奇心を抑えられる程に大人ではない。
ついついその音の出所を探してしまった。

キョロキョロと辺りを見回しながら探り、自分よりも背の高い草たちの合間を縫って移動する。
音はその距離が縮まる毎に大きくなり、草を一枚隔てたところで、ようやくたどり着いた。
さぁ、何があるのだろうかと、首だけ出してみる。


ミセ*;д;)リ


そうして見つけたのは、ポロポロと涙を流す僕の同族だった。


9 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/23(水) 18:52:21.68 ID:7KH3RVdgO
(;∵) (どうしたの?)

流石に僕でも、同族の女の子が泣いてるのを見てさようなら、なんてことは出来ない。
慌てて駆け寄り、地面に文字を書いて彼女に問い掛ける。
飛び出した僕の姿に驚いたのか、一度大きく目を開いてから、またわんわんと泣き出した。

ヾ(;∵)ノシ

ミセ*;Д;)リ 「うぁぁぁぁ! うぐ、あぁぁぁぁぁぁ!!」

僕が何かしたのだろうか。
もしもそうだとしたら、本当に申し訳なく思う。

ミセ*;Д;)リ 「よかった、よかったぁぁぁ……」

(;∵) (落ち着いて、大丈夫だから)


10 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/23(水) 18:54:02.46 ID:7KH3RVdgO
くすんくすんと鼻を鳴らしながら、先までの大声はようやく収まる。
しかし、よかったとはどういうことで、何があったのだろうか。
少し経って落ち着いた彼女に、また僕は問い掛けてみた。

ミセ*゚‐゚)リ 「さっきまでね、友達と一緒にいたの……」

彼女の話は、こうだ。
つい先ほどまで友達と一緒に遊んでいたらしい。
楽しく談笑をしていたのだが、急に捕獲網が降ってきてその友達が拐われたのだ。

ミセ*゚‐゚)リ 「彼らは、私たちよりもずっとずっと大きいから恐いし、私じゃあの子たちを救えなくて……」

それで泣いていたそうな。
話の間、僕は適当なところで頷いて、相槌を打って聞いていた。


11 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/23(水) 18:56:03.44 ID:7KH3RVdgO
( ∵) (大変だったね)

話を聞き終えたところで、さらさらと文字を書く。
それに対して頷いてから、今度は彼女が僕に質問をしてきた。

ミセ*゚‐゚)リ 「アナタ、話せないの?」

きょとんとしながら訊ねるその姿に、思わず笑ってしまう。

( ∵) (笑ってゴメンね。僕は話せないんじゃなくて、あまり話したくないんだ)

疑問符を頭に浮かべながら、くりくりとした目で彼女が僕を見る。
その大きな黒目は僕を吸い込んでしまいそうで、何だかドキドキして目を反らしてしまった。

少しの間そうしていたが、ふぅんと言ってから彼女は笑った。


12 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/23(水) 18:58:15.65 ID:7KH3RVdgO
ミセ*゚ー゚)リ 「ま、いいや! アタシはミセリ、アナタは?」

( ∵) (僕はビコーズ)

お互いに自己紹介をすると、彼女は質問をマシンガンの如くぶつけてきた。
いつこちらに出てきたのか、どこから来たのか、下にいた時はどうだったのか。
他にもいろいろ聞かれたが、途中で疲れてしまったのであまり覚えていない。

ミセ*゚ー゚)リ 「そっか、アタシとあまり変わらないね!」

( ∵) (そうなんだ)

ニコニコとしている彼女の質問責めを何とか返して、やっと一息吐くことが出来た。
と、思ったのも束の間、また新たに彼女から質問が飛んでくる。

ミセ*゚ー゚)リ 「どうして、話さないの?」

( ∵) 「……」


13 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/23(水) 19:00:09.88 ID:7KH3RVdgO
答えてもいいものだろうか。
正直な話、僕は自分の思想が正しいと思っているし、みんなの考えが愚かだとも思っている。
それでも同族にその話をするのは、何となくいけないとも思っている。

どうしたものかとうんうん唸っていると、何かおかしかったのか彼女が声を上げて笑う。

ミセ*゚ー゚)リ 「変なのー、ビコーズって変わってるね」

( ∵) 「……」

そう言われるのも無理はないだろう。
正しいとは思っていても、その考えは同族からして見れば明らかに異端だ。
だから彼女の言葉に怒りは湧かないし、そうなのかもと一言書いて、僕も笑った。

ミセ*゚ー゚)リ 「それじゃあ、そろそろ行くね」

楽しい時が過ぎるのはあっという間で、気づけば太陽がその身を隠し始めていた。
もう少し話していたかったのだが、仕方がない。
コクリと頷いて手を振ると、ニコリと笑って彼女は言った。

ミセ*゚ー゚)リ 「もしよかったらまた明日ここで遊ぼうね、それじゃあ」

そう言って一方的に約束を結んで、去っていった。
沈んだ夕日に溶け込むように、サァッと彼女の姿が消える。
仕方がない、また明日ここに足を運ぼうか。


14 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/23(水) 19:01:28.01 ID:7KH3RVdgO
その日の夜は、珍しくいつもと違った。

頭を回せど回せど、出てくるのは彼女のことばかり。
また明日とは言っていたが、どのくらいの時間に行けばいいのだろうか。

( ∵) 「……」

あぁ、この身に詰まる何かを吐き出したい。
愚かなことだと笑っていたが、僕もその分類にされていいから大声でぶちまけたい。

だけれど臆病者の僕が、またひょっこりと顔を出す。
大切に大切にしているその命、感情の為に磨り減らしていいのかい? と――。
彼のおかげで、少しだけ頭が冷えた。

そうだ、僕はこの一生を長く長く謳歌していたいのさ。
下らない感情のせいで棒に振って、たまるかってんだ。

( ∵) 「……ゴェェ」

それに、こんな汚い声を彼女に聞かせられるものか。
思考の渦に飲まれていると、突然後ろから声がかけられた。


17 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/23(水) 19:04:10.23 ID:7KH3RVdgO
('、`*川 「あらあらあら、どうしてこんなところにまぁまぁ」

ぽわぽわと儚げに光を放ちながら、その存在を見せつける女性に会った。
美しいとは思うけれど、彼女もまた愚かだ。

( ∵) (こんばんは、はじめまして)

('、`*川 「うふふ、はじめまして。どうしてこんなところにいるの?」

彼女が何を聞いているのか全く理解出来なかったが、しばらく頭を回して合点が合うと一度大きく頷いてみせる。

( ∵) (特に、理由はないかな)

('、`*川 「あらあら……それも声を出さずに答えるなんて、不思議な方ね」

言ったところで、どうせ理解してもらえやしないさ。
そう思った僕は、とりあえず困ったように笑ってみせた。


16 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/23(水) 19:03:02.24 ID:xdHgtXof0
アラクネ?



18 :>>16 ……?:2011/02/23(水) 19:06:24.47 ID:7KH3RVdgO
そう言えばこの種族に、どうしても聞いてみたいことがあったのだ。
せっかくだから彼女に聞いてみることにしよう。

( ∵) (貴女たちは、どうして光るの?)

('、`*川 「……んん? ごめんなさい、ちょっと質問の意味がわからないわ」

目をパチクリとさせながら、理解できなかったことが伝えられる。
無理もない、彼女たちには僕の考えなんてわからないのだろうな。

( ∵) (だって、その命がどんどんと削られるんだよ? 貴女たちは特に)

文字を書き終えると、あぁと呟いてからクスクスと笑われた。
やはり僕の疑問はおかしいのだろうな。

('、`*川 「見てほしいから、その生を謳歌したいから……じゃダメかしら?」


19 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/23(水) 19:08:17.42 ID:7KH3RVdgO
( ∵) (どうして見てほしいの? 長く生きた方が、謳歌出来るじゃないか)

('、`*川 「それじゃあ、生まれてきた意味がないとは思わないの?」

はて、彼女は何を言っているのだろうか。

('、`*川 「誰にも見てもらえない一生なんて、幾ら長くてもつまらないじゃないの」

( ∵) 「……」

('、`*川 「それに、私は地味だから。光ってないと誰も見てくれないから……」

見られることに、認識されることに意味があるのだろうか。
どうせどんなに頑張っても、たかが知れてるのに。

('、`*川 「ふふ……それじゃあ土の中にいるのと一緒。綺麗じゃないわ」

私は女だから、綺麗でありたいのと告げると、彼女は軽やかに踊りだした。

('、`*川 「光って消えるだけ、その命の灯火を一瞬だけ燃え上がらせて消えるだけ、そう知っているのに」

光っている私は綺麗でしょう? そう聞かれる。
たしかに彼女の舞いは、息を飲むほどに綺麗だ。
彼女が通った道を辿るように、光の粒が追いかける様は何と言い表せばいいのだろうか。

('、`*川 「ただただ生きるだけ、そんなのは生きてるだなんて言えないわ」

そう言って彼女は笑い、去っていく。
心なしか、その笑顔は寂しそうに見えた。


20 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/23(水) 19:10:15.79 ID:7KH3RVdgO
◆◇◆◇◆

またも太陽は上から見下ろしてきやがる、憎々しい。
あまりの暑さに随分と早い時間に目を覚ましてしまった。

( ∵) 「……」

昨日あの女性に会った場所へと、ノドを潤す為にのそのそと向かう。
一晩寝て起きたらノドがカラカラになる季節なんて、僕は嫌いだ。
だからこそ、長く生きたいと言う思いが強くなる。

少しばかり歩けば、目的地。
水面へ顔を近づけて、ゴクリゴクリとノドを鳴らす。
あぁ、生き返る――。


22 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/23(水) 19:12:04.13 ID:7KH3RVdgO
( ∵) 「……?」

少し離れたところに、コロンと転がる黒い影。
何なのだろうと少し気になり、短い足で地面を掻く。

( ∵) 「……」

( ー 川

見なければよかったかな、とちょっぴりだけ後悔が浮かぶが、蹴り飛ばす。
その気持ちは、持っちゃいけないんだ。

しかし、何だろう。
もう光ってないし、黒いその体は綺麗なんかじゃないハズなのに。

その満足そうな顔を見て、少しだけ綺麗だと思ってしまった。
どうしてそんなに満たされた顔をしているのと聞いてやりたいが、彼女はもういない。
少しだけ、寂しくなった。


23 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/23(水) 19:14:03.35 ID:7KH3RVdgO
いつもより早い朝ごはんを終えると、ミセリと約束した場所まで向かう。
心なしかいつもより歩くスピードが速いが、気のせいだろう。

ミセ*゚ー゚)リ 「あ、来た来た」

ちょっと早いかなぁと思っていたが、そんな僕よりも早く彼女はここで待っていた。
随分と早起きなのだなと感心しつつ、謝罪文を地面に書いた。

ミセ*゚ー゚)リ 「おいおい君ー、そんなのは誠意が伝わらんなぁ」

(;∵) (何か随分と軽くなったね……)

ミセ*^ー^)リ 「だって、友達が相手だから」

彼女が笑うと、体が軋む。
押さえ付けている衝動が、本能が、飛び出してしまいそうになるのだ。
今までこんなことはなかったのに。


24 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/23(水) 19:16:04.15 ID:7KH3RVdgO
( ∵) 「……」

ミセ*゚ー゚)リ 「ん、どしたどしたー?」

朝も早いのに元気な彼女は、僕の気持ちなんかお構い無しにずいずいと顔を覗いてくる。
心まで見透かされそうなその瞳は、僕なんかが見ていていいのかと不安になってしまう。

( ∵) (ミセリは、長く生きたいと思わないの?)

ミセ;*゚ー゚)リ 「んあ、なんだそりゃ」

僕の質問に、彼女はポカンと間抜けな顔で返す。
つい訊ねてしまったが、不味かったか。

しかし既に彼女には伝わってしまったのだから、もうどうしようもないか。


26 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/23(水) 19:18:05.76 ID:7KH3RVdgO
( ∵) (ミセリは、お喋りだ)

ミセ*゚ー゚)リ 「ビコーズも口にはしないだけで、お喋りよ?」

( ∵) (だから僕は、声を出さないんだ)

ミセ;*゚ー゚)リ 「……? ゴメン、よくわからない……かな?」

( ∵) 「……」

やはり理解されないだろうか。
そう思い不安になった僕は、やっぱりいいやと地面に書いて、彼女へ笑ってみせる。
無理に聞くことはないし、無理に話すこともないさ。

そのまま他愛のない話を続けていたのだが、なかなかどうして、ヴァイオリン弾きと話すよりも楽しいではないか。
会話と言うものは、こんなに楽しかったのかと心の中で驚いていた。


29 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/23(水) 19:20:04.88 ID:7KH3RVdgO
しばらくするとミセリは手を叩き、散歩に行こうと提案をする。

( ∵) (いいね、行こうか)

ミセ*゚ー゚)リ 「どっちが高いところまで行けるかな?」

その言葉を聞いてハッとする。
そうか、彼女たちにとっての散歩は――。

ヾ(;∵)ノシ (待って待って!)

ミセ*゚ー゚)リ 「ん、何? 風は待っちゃあくれないんだぜ?」

(;∵) (何そのキャラ……)


30 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/23(水) 19:22:14.62 ID:7KH3RVdgO
体にグッと力を込めて、今すぐにでもこの地から離れてしまいそうなミセリを止める。
すっかり忘れていたが、彼女たちと僕とじゃ散歩の認識が違う。
同族なのにおかしなことだ。

――いや、おかしいのは僕なのだけれど。

( ∵) (歩こうよ)

ミセ;*゚ー゚)リ 「え、えぇ~……疲れるじゃん」

ミセリにとっては普通であるが、僕にとっては考えられない散歩。
その命を少しでも長くしたくて、僕は"僕の散歩"を提案した。

( ∵) (お願い、今日だけ……ね?)

ミセ*゚‐゚)リ 「……」

ミセ*゚ー゚)リ 「仕方ないなぁ、今日だけだよ?」


32 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/23(水) 19:26:27.68 ID:7KH3RVdgO
( ∵) (ワガママ言ってゴメンね)

ミセ*゚ー゚)リ 「本当にねぇ」

ワガママを言って申し訳なかったが、承認してもらえてよかった。
しかし、気のせいだろうか。
こんなに明るい彼女が、一瞬だけその表情を曇らせた気がするのは。

ミセ*゚ー゚)リ 「高所恐怖症?」

(;∵) (違う!)

きっと気のせいだろう。

特に向かう当てもなくフラフラと歩く。
まぁ僕が喋る度に一々止まっているのだが、彼女はそれにイヤな顔一つしないのだからありがたい。

そんな時、彼女はその藪をつついてきた。


33 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/23(水) 19:28:04.78 ID:7KH3RVdgO
ミセ*゚ー゚)リ 「どうして、声を出さないの?」

思わず足がピタと止まる。
地面に文字を書く為ではなく、その質問にドキリとして。

ミセ*゚ー゚)リ 「結局、昨日答えてくれなかったでしょ?」

( ∵) (理由はないよ、何となくさ)

ミセ*゚ー゚)リ 「嘘吐いちゃダメだよー?」

( ∵) (嘘なんかじゃないよ)

いいや、嘘だ。
話さない理由も、その言葉も全部嘘だろうと、僕の中で何かが唾と共に吐き捨てる。

ミセ*゚ー゚)リ 「正直に教えてほしいなー……ダメかな?」

( ∵) 「……」


35 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/23(水) 19:30:01.43 ID:7KH3RVdgO
えぇい、もう何だっていいや。
成るように成るだろうとため息を吐いて、僕は初めて同族に打ち明けることにした。
ミセリだったら、わかってくれるかも知れない――。

( ∵) (理由は、二つあるんだ)

ミセ*゚ー゚)リ 「……」

( ∵) (一つは、少しでも長く生きていたいから)

ミセリはジィと地面に現れる僕の字を見つめている。
初めて同族に話した、その理由。

そして――

( ∵) (もう一つは――)

初めて僕が別の存在に打ち明ける、その理由。

( ∵) (僕は、声が汚いから)


36 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/23(水) 19:32:02.14 ID:7KH3RVdgO
あぁ、下らない下らない下らない。
何て愚かな理由なんだろうと、自分でも思う。
自分の嫌いな部分に蓋をしないと自分を愛せない、僕の中身は自分の小さな体よりもよっぽど矮小だ。

( ∵) (……下らないね)

ミセ*゚ー゚)リ 「自分の声が、嫌いなの?」

僕の文字から視線を外し、目を見つめながら不思議そうに聞いてくる。
他のヤツからしたら不思議だろうね、僕も自分以外がそう言うのを聞いたことがないし。

( ∵) (うん、好きじゃないかな)

ミセ*゚ー゚)リ 「そっかー……でも、聞いてみたいなぁ」

寂しそうなその声に、一度大きく心臓が跳ねる。
まるでその言葉が弓か槍のように突き刺さった気がした。

僕のこんな枯れた、ガラガラな声でも、聞きたいと言ってくれるなんて。

38 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/23(水) 19:34:02.95 ID:7KH3RVdgO
( ∵) 「……」

ほんの一瞬だけ悩んでみたが、何てことはない。
彼女は僕の声を聞いたことがないから聞きたいと言ったのだ。
別に、僕の声が好きで言ったワケなんかじゃない。

そりゃそうか、彼女どころか誰だって聞いたことがないのだから。
一度聞けばもういいと、そう言うに決まっているさ。

そこまで考えて僕は、首を横に振ってみせた。

ミセ*゚ー゚)リ 「そっか、無理言ってゴメンね」

( ∵) (いや、いいよ)

お互いに苦笑いで、彼女は声を出し、僕は文字を書いた。
そうしてまた歩き出したが、空気が何だか重たい。
先ほどよりもミセリの口数は格段に減り、その内に立ち止まることもなくなった。


39 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/23(水) 19:36:03.94 ID:7KH3RVdgO
ミセ*゚ー゚)リ 「じゃあ、楽しかったよ」

( ∵) (うん)

昨日よりも少し遅い時間、太陽がその身を完全に消してから、僕らは別れの言葉を交わす。
だけれど、どうしても何かがノドに引っ掛かっていてムズムズするのだ。

ミセ*゚ー゚)リ 「明日……明日もまた、会えればいいね」

( ∵) (うん、会おうよ。また同じ場所でお話をしよう)

僕の書いた文字を見て、彼女はその眉毛をハの字にしてはにかむ。
やはり何処か寂しそうなその顔は、僕の心をぐちゃぐちゃに掻き回す。
それはすぐに上からいつも通りの笑顔に変わるのだが、その一瞬がどうしても引っ掛かっていた。

ミセ*^ー^)リ 「そうだね、うん! 約束!」

手を振りながら月に取り入られようとする、彼女の後ろ姿。
何だかこのままじゃいけない気がして。
ただ手を振って別れるだけじゃ、後悔する気がして。

( ∵) 「ゴェェェェエ゙エェェ!!」

自分でも気づかない内に、大きな声で叫んでいた。
あぁ、あぁ――――、何て気持ちがいいんだろう。


41 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/23(水) 19:38:09.50 ID:7KH3RVdgO
初めて会った時のように目を大きくしたミセリが、振り返る。
やっぱり、僕の声は汚いなぁ。

もしかしたら、これで嫌われてしまったかもと、叫んだことを後悔し始めていた。
しかし次の瞬間、彼女がお腹を抱えて笑っているのが見えた。

ミセ*^ー^)リ 「あはは! 何その声!」

やっぱり笑われてしまったか。
そりゃあそうだ、こんな声を笑わない方がおかしいだろう。

( ∵) 「……ゴェ」

ミセ*ぅー゚)リ 「いやー、顔に似合わない声だねぇ……」

笑いながら泣くと言う高等テクニックを見せ付け、ようやくそれが収まったミセリが目を擦りながら感想を言う。
うぅむ、やはり自分の声は恥ずかしいし、初めて他の存在に聞かれてよりいっそうだ。
しかし、初めて出した大声は随分と気持ちがよかったな。


42 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/23(水) 19:40:10.74 ID:7KH3RVdgO
そんなことを考えていた僕の手が、突然ギュッと握られる。
ニコニコと笑っているミセリの顔が、ずいと近づいてきた。

ミセ*゚ー゚)リ 「アタシは好きだよ、ビコーズの声」

行動も言動も、その全てが思わぬ不意打ちだった。
急に顔が熱くなり、自分でも真っ赤になっているのがわかる。
それを見てミセリは、またクスクスと。

ミセ*゚ー゚)リ 「明日、絶対会おう。うん、約束は果たさなくちゃ」

そのまま目を閉じて、一人うんうんと頷くミセリ。
僕はと言えば、夢見心地でポーッとしたまま、体が固まっていた。

ミセ*゚ー゚)リ 「ありがとう、何か勇気が湧いたよ」

何の話かわからなかったが、お礼を言われたのでひとまずどういたしましてと返す。
そうして、今度こそミセリは月に取り入られて行った。


43 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/23(水) 19:42:06.93 ID:7KH3RVdgO
いまだに体が熱いし、その場から動けずにいた僕はとりあえず横になった。
今夜も星が綺麗に輝いて、その存在をアピールしている。

ふと、昨日会った女性を思い出した。

――('、`*川 「光って消えるだけ、その命の灯火を一瞬だけ燃え上がらせて消えるだけ、そう知っているのに」

何となく彼女の言っていたことがわかった。
みんなそれぞれ、自分を認識してもらいたくて輝いているのだ。
きっと、今日僕が初めて叫んだ時、僕は今まで生きてきた中で一番輝いていたのだろうな。

明日、ミセリと会ったら散歩に行こう。
"僕の散歩"ではなく、"僕たちの散歩"をしよう。
そう心に決めて、寝ようと決心した時に何処からかヴァイオリンの音が聞こえてきた。

( ・∀・) 「ハロー、お久しぶりー」


44 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/23(水) 19:44:05.07 ID:7KH3RVdgO
全身を緑色で包んだヴァイオリン弾きが、くるりと一回転して挨拶をする。
何だか嬉しくなった、前はあんなに嫌だったのに。

( ・∀・) 「ははぁ、ふふぅん、ほぉほぉ……」

僕を中心にぐるぐると回りながら、じろじろと僕を見回す青年。
前言撤回、やっぱりコイツは大嫌いだ。

( ・∀・) 「なぁんか、変わったねぇ」

しばらく僕を観察して唸っていた彼は、ようやく離れるとそう言った。
僕は何も変わっていないのに、彼は何を言っているのか。

( ・∀・) 「うん、やっぱり前と雰囲気が違う」


46 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/23(水) 19:46:26.38 ID:7KH3RVdgO
アゴを手で擦りながら、ニヤニヤと笑って納得していた。
何だか嬉しい気持ちが湧いてきて、思わず僕もニヤリと返す。
たしかに、変わったのかも知れない。

( ・∀・) 「しかし、流石に本能を抑える男だよ。まだまだピンピンしてらっしゃる」

( ∵) 「……?」

( ・∀・) 「おっと、こんな時間……それではまた何処かで」

細く美しいヴァイオリンの音色だけを残して、彼はピョンピョンと去っていく。
いや、音色だけではなく僕に何とも言えない気持ちも残していった。

彼の言葉の意味を、この時の僕は理解できなかった。


47 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/23(水) 19:48:03.48 ID:7KH3RVdgO
◆◇◆◇◆

いつもより少し早く起きる、ざまあみろ太陽め。
とは言ってみるものの、やはり早起きをしても暑いものは暑い。
久しぶりにノドを潤すだけではなく、水浴びも済ませた。

そうしてまたいつも通りに朝ごはんを食べて、一息を吐く。
数分した頃に重い腰を上げて、ミセリとの約束の場所へと向かい始める。

今日は僕にとって、大切な大切な一日だ。
今までの僕を脱ぎ捨てて、新しい自分に成るための一日。
そして、ようやく僕が同族と一緒に成れる日。

自然と、約束の場所へと向かう足取りも軽くなるものだ。
いつもよりも短い時間で、昨日よりも遥かに早い時間に、到着することが出来た。

( ∵) 「……?」

そこにいたのは、元気なミセリではなく、横たわる黒い影。

つい昨日に見たのと同じような姿の、それ。


48 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/23(水) 19:50:03.17 ID:7KH3RVdgO
慌てて近寄り、それを確認する。
あぁ神様と祈りながら、心の中で叫びながら、その顔を見た。

本当は見ずとも、わかっていたのに、あり得ない可能性を求めて――。

ミセ ー )リ

( ∵) 「……ゴェ」

わかってる、わかってるんだ。
僕たちの命が、とても短いなんてことは、無駄な足掻きだなんてことは。
極力削らないようにしていた僕だって、持ってもあと二日や三日が限度だろう。

ミセリは、アタシとあまり変わらないと言っていた。
つまり、真っ当に生きていた彼女が僕よりも早いのは、当然なのだ。

( . ) 「……ゴェェ」


50 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/23(水) 19:52:13.00 ID:7KH3RVdgO
胸が締め付けられる。
キュウ……なんて軽くではない、ギリギリと音を立てて、捻り潰さんが如く強く。

( ;;) 「ゴェェエ゙エ゙ェェェェェェエェ゙ッ!!」

だから僕は叫んだ、いつまでもいつまでも、強く、強く。
もう、何だっていい。
どうせ消えてしまう命だ、もう近いその日が来るまで、存分に見せつけてやる。

そして今まで開くことはなかったその羽を、力いっぱい伸ばして羽ばたく。
お天道様にまで届くとは思えないが、構うものか。
誰よりも高く高く飛んで、僕と言う存在を知らしめてやる。

汚い声だが、ジィジィと強く、大きく叫び続ける。
何かを振り払うように、光に向かって真っ直ぐに飛び続ける。


52 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/23(水) 19:54:12.16 ID:7KH3RVdgO
光って綺麗になる、なんてことは出来ない。
細く美しいヴァイオリンの音色も、響かせることはない。
彼女みたく、他の存在を幸せな気持ちにすることなんか、出来るハズもない。

だけれど、ガラガラに枯れたこの汚い声で、精一杯、思い切り歌うことなら出来る。
誰かのことを憶えて、その記憶を抱えていることだって出来る。
もしかしたら、誰かの記憶にだって残れるかも知れない。

あぁ、あと少し、もう本当にあとちょっとだ。
もうすぐで会いに行くことになるんだろう。
今なら胸を張って、君と同族だって言えるよ。



53 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/23(水) 19:56:02.92 ID:7KH3RVdgO





ガラガラと汚い声で鳴きながら飛ぶ、


          その存在を誇示している愚かしい僕は、


                        短いその命を燃やす、セミなんだって。







55 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/23(水) 19:58:01.41 ID:7KH3RVdgO





                         ジィジィ



  ジィジィ



        ジィ、ジィ



ジィ..ジィ..






56 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/23(水) 20:00:02.48 ID:7KH3RVdgO
いつの間に、本当にそう思った。
風を切り飛んでいたから気づかなかったのか、しかし気づいた時にはもう地面は目の前。
その身を打ち付けても、もうその痛みを感じることもなかった。

知らない内に、ロウソクは随分と短くなっていたのか。
必死に本能を押し付けてまで節約したその身は、そんな努力を嘲笑うようにあっさりと動かなくなる。

だけれど、後悔なんかしていない。
押さえつけていた分だけ強く、大きく、その一瞬を輝くことが出来たのだから。

僕にはあの螢のみたいに光ることは出来ない。
僕にはあのキリギリスみたいに美しくは鳴けない。
僕にはミセリみたいに、他の存在を幸せにはさせれない。


57 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/23(水) 20:02:02.14 ID:7KH3RVdgO
それでも見てくれ、僕の命は螢の光よりも輝いたと思うし、僕の声はキリギリスのヴァイオリンよりも大きい気がする。

ミセリのように他の存在を幸せには出来なかったが、僕は僕を幸せにすることは出来た。
本当に小さな小さな結果だが、これが何も出来ないと思っていた僕だ。

意識がどんどん遠くなっていく。
あの螢の言っていたことが、今ならば十分に理解してやれる。
どんなに長く生きていても、ただ生きるだけじゃなんの意味もない。

あぁ、そう言えば彼女には聞きたいことがあったんだっけ。
しかしそれももう聞く必要はない、そう気づいた時に何だかおかしくて、クツクツと笑いが込み上げる。

もう固まったその表情が、僅かだが動いて口角を上げる。
きっと彼女もミセリも、同じ気持ちで羽ばたいていったのだろう。
何だか妙に清々しいし、自分が誇らしい。


59 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/23(水) 20:04:19.12 ID:7KH3RVdgO
眠たい。
いつもならばうざったい太陽の日差しだが――――いや、やっぱりこの期に及んでもうざったく感じる。

きっと僕が消えても、世界は何一つ変わりやしない、当然だ。
空も地面もただただ広くて、川は緩やかに流れて太陽は憎らしく照り付けて。

それでも、もしも、だ。
頭の片隅にでも僕のことを、あの夏の日に煩く鳴きながら飛んでいった、セミがいたなと。
そう覚えている存在がいたならいいなぁ、とは思う。





             もう、夏が終わる――――。



58 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/23(水) 20:02:47.00 ID:TI05KfWxP
季節感ってそういうことね



51 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/23(水) 19:53:15.87 ID:TI05KfWxP
鳥かとも思ったが、どうも違うっぽいな
他の登場人物が虫っぽいし


61 : ◆kfuPUnAWpda0 :2011/02/23(水) 20:10:31.86 ID:7KH3RVdgO
以上で終わりです、現実では冬が終わってすらいませんが……
ちなみにセミと蛍は時期が少し違うようですが、まぁ誤差の範囲内!

蛍ではなく螢と表記しているのは、ペニサスのモデルが螢と言う曲だからです

ちなみに誤って酉バレしてしまいましたので、今後は◆6cn5tJyQdUになります
支援ありがとうございました

何か質問などがございましたら、どうぞ

>>51
ふふふ……


62 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/23(水) 20:12:05.40 ID:TI05KfWxP
敵のいない物語もいいもんだ
乙っした


63 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/23(水) 20:13:37.51 ID:/GHj3Z6w0
乙乙


64 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/23(水) 20:23:28.44 ID:HEWQeSFW0



67 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/23(水) 20:40:24.80 ID:gcE7L6Ebi
乙!ビコーズだからこそ引き立つ題材だな