偶然会えたら(クゥー・ド・ヴァン/ワイン&ビストロ/天満橋)

2007年09月16日00:20
 偶然見つけて、チェックをいれていた店。外装はビストロのように見えなくもないけど、中をのぞき込んでみると、今流行のリュクスな感じのする店内。なので、バルのように気軽に使える店ではないようなイメージを持ってたんだけど、一度は行ってみるとバルのようにも使える。バルでカウンター席となると、ほぼ間違いなくメンソールはストゥールには座らずに立ったままなんだけど、バルと言うよりはビストロよりの、こちらの店ではしっかりと座ってしまうし、その方がしっくり来る。

 この日、店の前にはカラーが飾られていて、それを見た史絵が、「私、カラーも好きなんだ」と、言いながら、「それは良かった」と、言いながら、カラーの横の扉を開ける。そして、案内されるままカウンター席へ。入り口から見て左側には、大きな黒板があってそれがフードメニューになってる。店の中央にもテーブルがあって、そこには白ワインやスパークリングワインがクラッシュド・アイスにつっこまれている。ステンレス製のワインクーラーはもちろん磨き上げられているし、テーブルやカウンターも光沢が出るほどに磨き上げられている。可愛い感じに作られているビストロとかになれてると、違う雰囲気が味わえる。

 ワインリストを見ると、ほとんどが6,000円以下。グラスワインも30種類くらい用意されていて、だいたい1,200円くらい。ちなみにソムリエは、神戸の『オー・ベック・ファン』の出身。

 ワインの方は、好みを伝えてソムリエにお任せして、フードの方はチーズの盛り合わせをオーダーする。もちろん、ウォッシュや青カビが好きだと付け加えるのは忘れなかった。

 フードの方も、1,200〜2,000円くらいとリーズナブル。しかも、隣のフレンチレストラン『クゥー・ド・フランス』から運ばれてくるので味は確か。ちなみに、『クゥー・ド・フランス』は、以前『ポンテ・ヴェッキオ』があった場所にある。

 史絵は、ウォッシュチーズを食べて「うぁー、すごい」と言い。ワインを飲んで、「この前のとぜんぜん違う」と驚いてた。

 「今度また偶然に会えるとしたら、どこに行く?」と聞いてみたら、「えぇー、偶然なんだ…」と、笑いながら「メンソールの気になっている店に行こ。肥後橋の…」と、言った。「わかった、じゃ、偶然会えたら肥後橋ね」と言って、手を振った。


 さて、使い方が難しいと思う。いわゆる大人の店かな。とにかくデートで、フレンチかイタリアンをコースで…、と思ってるなら外した方がいい。逆に、フードを先に決めて、ワインはソムリエに下駄を預けてみるとか、お気に入りのワインをボトルでオーダーして、それに合わせてフードを選ぶとかの使い方ができるなら、かなり使いやすいし、気軽に行ける。語弊をおそれずに言うなら、客を選ぶ店だな。つきあいの長いカップルが、あれこれ相談しながらオーダーを決めていくのもいいだろうし、一人で立ち寄ってグラスワイン&アラカルトも良い。なんと言っても、グラスワインとフード類の充実度の高さが魅力。なお、ビオ度はそれほど高くなさそう。

 自信がある場合は別として、つきあい始めたばかりの彼女を連れて行く場所じゃないような気はする。大人の社交場というのは言い過ぎだけど、カジュアルでないことは確か。
度胸を決めていくか、彼女を連れて行くなら、一度下見しておきましょう。




(店  名) クゥー・ドゥ・ヴァン
(ジャンル) ビストロ・バー
(所 在 地) 大阪市北区天満1-5-2
(電  話) 06-6351-4088
(営業時間) 11:30-14:30、17:00-22:30
(定 休 日) 無休
(ウ ェ ブ) http://coeur-de-france.jp/vin/vin.html

奇跡(ビストロ・ド・ヨシモト/中津)

2007年09月03日15:32
ヨシモト


 かなり前に、初めて会ったときからメンソールの琴線を鳴らす娘がいた。ちなみに、琴線には触れるものであって鳴らすもんじゃないことはメンソールも知ってる。でも、『琴線に触れる』よりは『琴線を鳴らす』の方が直感的にイメージがわいたりしないか?。

 そんな史絵とつきあえたらいいなとか思ってて、ことある毎に「一緒に○○しないか?」とか「今度一緒に○○に行かないか?」とか誘ってたんだけど、けんもほろほろ鳥というか、全く興味はないと言うか、メンソールなんてアウト・オブ・眼中な感じだったので、半年間だったか一年間だったか、もっと長くだったかは忘れてしまったけど、史絵のことは考えないようにしてた。ところが何か、空気の違いというかフォースの乱れというかを感じ取ったので、「食事、一緒にどう?」と誘ってみたら、「行く行く。フレンチかイタリアンな気分」と、返事が返ってきた。返事が返ってきたのは良いが、居酒屋計ならともかくフレンチやイタリアンはちらり難しい。四点くらいリストを作って渡すと、彼女が選んだのは『ビストロ・ド・ヨシモト』だった。「ウェブで検索して調べてみた」と言うことで、検索しても出てこなかった店はオミットしたらしい。何度かやりとりする中で、ワイン好きらしいことが解ったので、ビオワインなら『キュイエール』か「DAIGAKU」と言うこともちらり頭をかすめたりしたけど、マキコレも取りそろえがある『ビストロ・ド・ヨシモト』へ。
 
 『ビストロ・ド・ヨシモト』については、特に説明の必要はないと思う。ないと思うけど書いとくと、吉本シェフは、『ラ・クロッシュ』の出身。外装&内装は、いかにも女性たちが好みそうなメルヘンチックな、『ビストロ』を絵に描いたような感じ。照明とかもやや薄暗い目に押さえてあるので、デートなんかに使うのもよさそう。店には行って右手側がカウンター席で、左手側に進むとテーブル席がある。カウンター席は、カウンター面がタイル様の素材でできているので、ワイングラスをクルクル回すときに、一瞬の躊躇と遠慮が入る。で、結局、グラスに傷が付かないようにグラスを持ち上げてしまう。フレンチやイタリアンの場合、和食とは異なり、いったん置かれた皿を異動させることはマナー違反なので、このあたりは全然気にならないが、持ち上げたり下ろしたりを繰り返すワイングラスは、気になる。あと、カウンターの正面に鏡が埋め込まれていることについては、メンソールはそれほど気にならなかった。口元が映る訳じゃないし、もっと楽しい物が映るので…。カウンターには、いろいろと小物が配してあったりするので、そのあたりも女性好みなのかもしれない。
 
 ディナーコースは3,500円のムニュ・ルポからあるけど、今宵のメンソールは、5,000円のムニュ・プレジールをオーダーした。他に、シェフお任せの7,000円のムニュ・デキスタシオンもある。もちろん、アラカルトでのオーダーも可能となっている。ワインの方は、ブルゴーニュ系にしようかランドック系にしようかを悩んだ末に、ボルドー系にするという大逆転なセレクトとなった。もちろん、マキコレを選んだことは言うまでもない。
 
 ムニュ・プレジールの方は、まずはアミューズで、生ハム&葡萄スライス。生ハムと言えば、判で押したように生ハム&メロンが出てきて、あまりおいしいという印象はなかったんだけど、生ハム&葡萄スライスは、意表をついた上に、葡萄スライスのみずみずしさが口いっぱいに広がって、しかも生ハムがそれをじゃましないという不思議な感覚があった。
 
 プレフィックスになっているので、オードブルはセレクトできる。メンソールはズワイガニとトマトを使ったものをオーダーした。続く魚料理は穴子。セルクルで固めて、下から穴子、麦、フォアグラがミルフィーユ仕立てになってたと思う。で、この穴子がどえりゃーうまい。上に乗せられているフォアグラもそれなりに脂分があるが、フォアグラの動物系とは異なる魚系の脂の旨味が主張してフォアグラに対抗してる。負けてない。さらに、フォアグラのさっくりと穴子のふんわりの微妙な食感の違い。それがまた心地よいハーモニーで溶け合い、穴子のワタを使ってあるのか軽い苦みが後から追いかけてきて、それが心地よいというか、次の一口を急がせるというか、セクシーでワンダフルな一品だった。もう、これだけで満足。
 
 続いての魚料理は、先の穴子料理ほどの感激はなかったけど、定番の一品という感じ。白身魚の皮をしっかりと焼いてあって、ザウワークラウト風な味付けの添え付けとが柔らかく調和する良い皿なんだけど、穴子が強烈すぎて…。
 
 肉料理も数品の中からセレクトできる。メンソールが選んだのは、カタルーニャ・ポークを使った料理。日本では、カタルーニャというよりやカタロニアというと思うが…。比較的素直なポークのグリル料理なんだけど、八角茴香の香りがありオレンジソースの味がする。添え付けの野菜も、ベビー・コーンとかブロッコリーとか、あまり手をかけてないもので、それが逆に素朴にストレートにポークの味をサポートしてるような感じ。ポーションは大きめだと思うけど、あっさり軽口なので、するっと食べれてしまう。
 
 続いてはデザートなんだけど、メンソールはチーズをオーダーしてみた。通常は、好みを聞かれるはずなんだけど、何も聞かれず。出てきたのはフレッシュと白カビだった。「わし、ウォッシュかブルー、食いたいんやけど…」とは思ったけど、ライト系のフレンチにはライトなチーズとライトなコーヒーが合うんだろうなとは思う。
 
 デザートのセレクトできて、メンソールが選んだのはバジルのアイスクリーム。いや、バジルなんだわ。本当に。バジルが主張するんだわ。
 
 パンは一種類のみ。追加すると200円かかる。クラストはパリパリで、クラムの色がやや灰色っぽく見えたので、ライ麦パンかと最初思ったんだけど、酸味はあるものの、それほどのもちもち感はなかった。と言うことは、天然酵母パンかな。フレンチやイタリアンを食べるときって、結構な量のパンを食べるメンソールとしては、加護のパンが少なくなったら補充してほしい気はする。あと、フロアは決して悪くないというより、言葉遣いも態度も良いんだけど、若干アウェアネスが低いような気がする。テーブル席に取られてしまうのか、カウンター席が盲点になってしまう時間が比較的長い。店の構造がテーブル席とカウンター席で分離されたような形になってるので、フロアとしてのアウェアネスが分断されてしまうようなところはあるんだと思う。ただ、チーズからデザートが出るまでの間が空いたのは、アウェアネスではないような気がする。何か考えるところがあったんだと思うけど、なんだろう?。しかし、厨房の人口密度は高いな。
 
 グランド・オープンは2006年3月。未だに週末は予約が取りにくい状態が続いているらしいので、週末に行くなら予約は必須と思って良い。若干ライト系だと思うけど、味の方は濃厚でセクシーな感じ。カウンター席でも、比較的余裕があるように思うので、隣の客のことはあまり気にならない。気になるなら正面にある鏡でチェックすればいいし…。
 
 
 「あのさ、史絵」と、メンソール。「今日のことは、奇跡みたいに感じてるんだけど、また奇跡は起こるのかな?」と、問いかけてみる。「奇跡とか偶然とかは、起きるもんじゃなくて起こすもんなんでしょ、メンソールとしては」と、史絵が返してきた。「奇跡、起きると思うよ。メンソールが、起こそうとすれば…。きっとね」
 
 史絵は、横断歩道を少し渡ったところで振り返って、「今度、連絡するね」と微笑んだ。しばらくしてから、メンソールの手には、シメイ(ホワイト)が握られていたりした。シメイの専用グラスを置いてない店だったので、普通のビア・グラスだったが…。やっぱり、こんな日は一人で乾杯しないとね。
 

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(店  名) ビストロ・ド・ヨシモト
(ジャンル) フレンチ
(所 在 地) 大阪市北区中津1-5-3
(電  話) 06-6377-5513
(営業時間) 11:30-14:00、17:00-21:30
(定 休 日) 月曜日
(ウ ェ ブ) http://yosimoto.nomaki.jp/
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P.S.1. マキコレ
 金井麻紀子がセレクトしたワインのこと。金井麻紀子コレクションを略してマキコレという。ワイン好きの間ではかなり有名らしい。メンソールは、ごく最近まで知らなかったが…。さらに詳しく知りたい場合は、http://r.gnavi.co.jp/k634300/menu6.htmなどを参照してください。
 
P.S.2 けんもホロホロ鳥
 けんもほろろが正しい日本語です。『ケーン』も『ホロホロ』もキジの鳴き声なので、ホロホロ鳥はなんの関係もありません。わけわかめのとろろ昆布とかと同じく言葉遊びですので、気にしないでください。



涙のペアウォッチ(羽山料理店/靱本町)

2007年02月18日00:09
8a063f5d.jpg 「メンソールが誘ってくれるとは思えへんかったわ」と、アコが言った。「うん、ちょっとアコがどう思ってるのか知りたくてな」と、メンソールが応える。「で、何が知りたいの?」と、アコが聞いてきたけど、「後にする。今答えると食事がまずくなる」と、メンソールがかわす。

 メンソールは、アコを案内して靱公園の南側にある『羽山料理店』へ。ここは以前、『ラネックス』というセクシーなワインバーがあったところなんだけど、そんなことはもう覚えてる人は少ないのかな。店に行くまでの道すがら、今日の店はがっつり系だから、前菜二品とメイン人品くらいで十分満腹するといった話を仕込んでおく。店に入ったメンソールは、外の様子がよく見える席を勧める。本当は、通路側には男性が座るべきなんだけど、その辺は臨機応変と言うことで…。ギャルソンが椅子を引いてくれれば、それが一番の上席なんで、そこに女の子を誘導すればいいんだけど、ビストロではそこまでやってくれないんだよな。ま、やるやらないの問題じゃなくて、そこまでこだわらなくてもいいですよと言うことなんだろう。

 メニューは前菜、魚系、肉系に分かれてて、アコが「前菜はアコに選ばせて…」と、いうので任せてみたら、パテを選んだ。メンソールは、メニューを見た時にメイン料理を真っ先に見る癖が付いているので、う〜ん、鹿、鴨、羊か…、とか思ってたりした。なので、この中でアコが食べれるもんてどれだろうで悩んでた。アコが「メンソール、魚料理も選ばせて…」と、言うので任せてみたら、ブイヤベースを選んだりした。「どうした、アコ。昔は冒険家だったのに…」と、メンソールが聞く。「えっ、そう。そんなことないよ」と、アコは言うけど、このセレクトは絶対におかしい。アコらしくない。「アコ、羊はOKやな?」と、一応メンソールは聞いてみる。「いいよ」と、アコが言う。アコは泡。メンソールはビールで、だってプレミアムモルツだったから…、乾杯する。

 最初に出てきたパテを取り分けながらメンソールが言う。「アコ、前にも言うたけど…」、「判ってる。メンソールは、セックスフレンドとかメッシーとかは嫌なんやろ」と、アコがまたも遮った。「そやけど、本当に判ってるん?」と、メンソールは聞いてみた。

 魚料理は、アコが選んだブイヤベース。三種の類魚、海老、ホタテなどが入ってる。若干、軽い目ではあるけど、フィッセルの薄切り的なパンも添えられている。それから粉パルメジャーノとルイユが添えられてる。「ねぇ、メンソール、ブイヤベースってトマト味じゃないの?」と、アコが聞く?。「ちゃうちゃう、ブイヤベースはフランス南部、地中海に面した地方の料理で、白身魚とフェンネル、ローズマリー、ディル、サフランなんかのハーブを加えて煮込んだ料理や。トマト味にする場合もあるけど、サフランを使うのが王道やで」と、メンソール。ルイユというのは、辛みのあるソースで、添えられているパンにルイユをつけ、ブイヤベースに浮かべて食べる。

 メンソール的には、ここまでの料理は結構軽い目。そして無難という印象なんだな。各方面で絶賛されてるけど、それほどではないような気がしないではない。ウェイトレスのアウエアネスが若干弱くて、ウェイトレスよりも先にシェフが気が付いたりしたすることが何度かあった。ウェイトレスであるならば、客席から目を離すべきではないと思うんだけど、ちらり、客席が空白エリアになる時間が多いんじゃないかとは思う。

 メインは、メンソールが選んだ羊肉。羊肉とともに、芽キャベツとかキャロットとか、季節の菜の花とか付け合わせになっている。羊肉は、ジューシーで旨いし、菜の花の苦みが逆に食欲をそそったりする。「ね、メンソール、話って何?」と、アコが聞いてくる。「メンソールは、セックスフレンドな関係は嫌いや、アコとはまだセックスしてへんけど…。それから、メッシーな関係も嫌いや」と、メンソールが答える。「判ってるやん。そんなこと…」と、アコが言う。「もし、判ってるんやったら、メンソールとおる時だけでもええ。そのペアウォッチは外しといてくれ」と、メンソール。一瞬、アコが凍った。動きが止まり、沈黙が訪れた。「なんで判ったん、ペアウォッチやって…、普通に女もんの時計やん」と、アコた言った。「女の子が、男の微妙な嘘を見抜くように、男も、女の子の微妙な嘘は見抜けんねん。見抜かれへん男も多いけど…」と、メンソール。「アコの
場合は、まるわかりやわ」と、ちょっとこれは誇張した挑発。再びアコは凍り付き、しばらくしてうつむいたまま「ごめんなさい」と、言った。う〜ん、今言われてもなぁ。食事が…。おい、泣くなって…

 デザートのチーズを食べながら、「前から判ってたん?」と、アコが聞く。「うん、判ってた」と、メンソール。「女の嘘を見抜けない時は、男の嘘で包み込むもんや」と、メンソール。メンソールは心の中で、"Thank you, Silva."と、叫んでみたりした。歌詞を、そのまま使ってゴメンね。チーズは四種類。フルム・ダンベール、マンステール、パルメジャーノ、そしてカマンベール。カマンベールは北海道産の『雪』と言うもの。これがどえらくセクシーで、発酵臭というかアンモニア臭というかが鼻孔を駆けめぐる。でも、そこにワインを流し込むと、チーズが表情を変える。こんなセクシーなカマンベールが、国産であるなんて思わなかった。病みつきになるかも…。いや、AOCがあるから、国産のチーズはカマンベールと言ってはいけないんだな。カマンベールタイプのチーズか…。

 アコは、うつむいたままで顔を上げなかった。泣いてるんかな…。泣くなよ。メンソールがいじめてる見たいじゃん。誰が見たって…。「あやまらんでもええねん。でも、メンソールの恋心を利用するのは止めてほしいねん。メンソールは、アコが好きやし…」と、メンソール

 「アコ、駅まで送るわ」と、メンソール。「あのさ、メンソール」と、言いかけたアコの唇を、メンソールの指が押さえた。「アコ、あのな。メンソールと本当に向き合えるようになったら、またら連絡くれ。待ってるから…」と、メンソールはアコに言った。

 う〜ん、ちょっときつかったかな。でも、アコはもろくなったな…。
 




(店  名) 羽山料理店
(ジャンル) ビストロ
(所 在 地) 大阪市西区靱本町2-5-1 丸文靫ビル一階
(電  話) 06-6449-6369
(営業時間) 11:30-14:00、18:00-22:00
(定 休 日) 日曜日&第四月曜日


はなればなれ(うのあん/船場)

2007年02月09日00:04
37fd0337.jpg 高いところに昇ろう。とびきり高い高いところへ。そうすれば、二人のこれからも見えるかもしれないね。

                           Word By 原田郁子


 「メンソール、最近どうしてるの?。元気?」というメールが入った。誰やこいつは…、と思ってよく見たら、しばらく音信のなかったアコだっだ。久しぶりのメールなんだから、本名じゃなくてアコと書いてきてくれないと判らないぞ。

 「元気だよ」と、返すと、「じゃ、今度一緒に食事しよう」と、返ってきた。「鍋でもいいか?」と、返してみた。アコは、和食は好きだけど鍋料理は苦手だったはずなんだ。「メンソール、アコが鍋がダメなん知ってるでしょ」と、言われるかと思ったけど、意外にも「いいよ」と、と返ってきた。それならばと言うことで、メンソールは『うのあん(船場店)』に予約を入れた。『うのあん』は、つみれ鍋が美味しい店で、鶏肉好きのメンソールとしては、行ってみたいと思って機会をうかがってたんだ。

 堺筋本町で待ち合わせて、そこから徒歩で一分くらい。メンソールとアコは、二階の掘りごたつ座敷へ。久しぶりにあったアコは、昔と変わらずスリムで長身で、アンジェリーナみたいなところも一緒だった。トリビーで乾杯しながら、「どうしたんや?。突然食事に誘うやなんて」、と聞いてみる。「うん、ちょっとね。また、メンソールをからかってみたくなったのよ」、とアコ。なんやねん。メンソールはアコのおもちゃとちゃうぞ。

 『うのあん』では、ディナータイムに予約すると、料理としてつみれ鍋(1,260円)が自動的に予約される。つみれ鍋は三ランクあって、これは当日グレードアップが可能。因みに『つみれ鍋(お徳)』になると、先付け、しゃぶしゃぶ、うどんが追加になる。『つみれ鍋(うのあん)』の場合は、先付け、温泉卵、しゃぶしゃぶ、煮物などが付く。

 先付けはささみのたたき。スライスオニオンが添えられていてポン酢がかけられている。ポン酢は、若干甘みが強いような気がするけど、酸味も強く、メンソールの好みだな。

 「彼氏とはうまくいってんのか?」と、一応聞いてみる。「一応ね」と、アコが答える。「そうか、それは良かった。…。それでやな、急に何の用やねん。あのときメンソールは、涙を飲んで、断腸の思いで、それから…」と、メンソールは言葉に詰まる。「恋人にはなられへんけど、飯友やったらええよって言うたやん。そやのにメンソールったら、それから何の連絡もくれへん。あせったわ」と、アコが言う。

 次に出された温泉卵を丸飲みにしながら、「言うとくけどメンソールは…」と、言いかけた。遮るようにアコが、「セックスフレンドとかメッシーとかの関係は嫌いなんでしょ。判ってる。前にも聞いたし…。でも、彼氏がいる女の子は嫌いじゃないでしょ」と、言った。「うん、嫌いじゃない」と、メンソールが答える。
 
 次に出されたのが、しゃぶしゃぶ用の肉が四きれ。鍋に張られたダシからは、すでに軽く泡が上がってきている。しゃぶしゃぶするには最適の温度かな。メンソールは、まず生のまま食べてみた。これが熟成が進んでいて、見事に旨い。朝引きの地鶏は、それは新鮮で歯ごたえはいいかもしれないけど、肉は熟成させなきゃダメさ。ささみ肉なんで、もも肉に比べたらずっとあっさりしてるはずなのに、肉の旨みがすごい。しゃぶしゃぶなんかにするのがもったいない。ポン酢つけるのがもったいないくらい。結局、しゃぶしゃぶにしたのは一枚で、後は全部生で食べちゃった。

 次に出されたのが、メインのつみれ。つみれは薄い皿に載せられてやってきて、スプーンが一本添えられている。メンソールは、もう一本スプーンをもらって、つみれ団子を作り、鍋に落としていく。「やっぱり上手いなぁ、メンソールは…。ちゃんと火加減にも気を遣ってるし…」と、アコが言う。「器用な手先を見てると惚れそうになるんとちゃうの?」と、メンソールが聞く。「もう惚れてるよ。昔から…。最初は、女たらしかと思ったけど…」と、アコ。「そうか…」と、メンソールが応え、沈黙が訪れた。つみれ団子を作り終わったメンソールは、野菜たちを鍋に入れ、蓋を閉めて火力を上げる。メンソールはそっと手を伸ばして、アコの手を握った。アコは、少し驚いたような顔をしてメンソールを見て、それからすぐに、かすかに頷いて微笑んだ。

 鍋ができあがったので、何をおいてもまずつみれを一口。どうやったらこんなに旨いつみれ団子になるんだ。ダシかと思ったけど、ダシも旨いんだけど、ダシの味だけじゃない。つみれ団子の照り焼きも出てきたんだけど、照り焼きのあじに全然負けてないというか、照り焼きよりも濃厚な味がするような気がする。

 このころになると、ハラパンで、動くのも辛いほど。しかも、ラストの雑炊は200円のアップで親子丼に差し替えてある。親子丼と言っても、玉子とじになってるんじゃなくて、鶏照り焼き丼と言った感じ。そこに生卵が添えられているので、好みで混ぜて食べる。ここは、ちゃんと混ぜた方が美味しい。鶏肉の方が濃いめの味付けになっているので、玉子と合わせてちょうどいい。

 「ねぇ、メンソール。飲みにいこ」と、アコに言われたけど、もうなんにも食べられへんし、飲まれへん。「また今度ね」と、言ったら、「誘ってくれなかったら、アコから誘うから…」と、言われた。「言うとくけどな、アコ。メンソールは…」、「判ったメンソール、セックスフレンドやメッシーは嫌いなんやろ」と、アコがまたメンソールを遮った。「うん、判ってるんやったらええねん」と、メンソール。

 高いところに昇ってみたら、二人のこれからが見えるかもしれない…、か…。メンソールは、原田郁子の言葉を思い出していた。




(店  名) うのあん 船場店
(ジャンル) 鶏鍋
(所 在 地) 大阪市中央区南本町2-3-6
(電  話) 06-6261-0212
(営業時間) 11:00-23:00
(定 休 日) 日曜日
(ウ ェ ブ) http://www.unoan.com/casuno/index.html

シャウト(ほうば/天五)

2007年01月21日12:43
63e57a83.jpg 2006年の末に、チヂミが美味しい韓国料理店が出来たという情報を得た。そのまま、速攻で確認しに行ったら、確かに店はあったけど、12月31日のことなんですでに年内の営業は終了したような感じだった。

 「アシャン、今度、韓国に行くか?」と聞いたら、「行きたい」と、返ってきたので、「じゃ、18:00に…」と、送り返した。

 いつもの通り、待ち合わせ場所には少し早い目に出かけて、一番目立たない場所に立ったつもりだったけど、アシャンにはあっさりと見つけられてしまった。「どうして判るんだ?」と、きいたら、「回りからは一番見えにくい場所で、周りはよく見える場所にいると思ったから」と、言われてしまった。商店街は水曜日に休む店が多いので、ひょっとしたら定休日じゃないかなとも思ったりしたんだけど、ちゃんと営業してた。変形カウンタと、テーブル席が二卓くらいかな。いかにも新しい店という感じでぴかぴかしてる。韓国料理といえばビールかマッコリなので、トリビーと言おうとして一瞬躊躇した。スーパードライなんだな。躊躇したけど、選択肢はこれしかないので、トリビーをオーダーした。

 「メンソールって、相変わらず、女の子の右側に座るんだね」と、アシャンが言った。「うむ、利き手は空けておきたいからな」と、メンソールが答えると、「神恭一郎みたいね」と、アシャンが答えた。うむ、アシャン。恐ろしい娘だな。

 この日のターゲットはちぢみなので、メニューの中のちぢみセクションを探す。結局、ホワイトボードにもあったパジョンをオーダー。あとは、ナムルの6種盛り。これは、常時12種類くらいあるナムルの中から、6種類をセレクトしてくれる。そして、カムジャタン。チャプチェはオーダーしようと思っていたけど、忘れてしまった。カムジャタンをオーダーしたあとで、タクハンマリがあることに気が付いたんだけど、そのままカムジャタンにした。

 まずは、ナムル6種盛りがカウンターに並べられる。6種類全部は覚えてないんだけど、クレソン、島らっきょ、なすび、瓜など…。これがめっちゃ旨そうに見える。で、食べてみるとめっちゃ旨い。ナムルだけで、最初のビールは一気飲みしてしまったので、マッコリを瓶をオーダー。このあたりでちょうどパジョンが運ばれてきた。食べ慣れたパリパリした感触ではなくて、ふわふわした感覚で柔らかい。かといって、お好み焼きのような感触でもない。鉄板の上にニラを並べて、それらを繋ぐためだけにごく少量の生地を使っているという感じ。乗せられている海老などの魚介類もぷりぷり感を残している。その後、別の店で、ジョンの原型に近い料理を食べさせてもらったんだけど、感覚的にはフリッターに近いような料理だった。なので、この日食べた、極端に小麦粉の生地が少ないジョンも、何となく判るような気はする。

 カウンターに並んで座りながら、ショーンの言葉がリフレインしていた。久しぶりにあったアシャン。彼女にもっと近づきたい。近づいて確認してみたい。そんな思いが、爆弾低気圧のもたらす強風のように、メンソールのこころを凍てつかせる。

 パジョンを食べ終わると、簡易コンロが置かれて、カムジャタンが登場する。ほとんどできあがっているので、簡易コンロで調理すると言うよりは、保温するというのが目的だろう。これが、べらぼうに旨かった。カムジャタンはブームなので、知らない人はいないと思うけど、豚の尻尾や背骨を煮込んだスープに、ジャガイモを入れて煮込んだ料理。唐辛子とかエゴマのは、ゴマなども使う。メンソールにとってはそれほど辛くないんだけど、骨に付いている肉は、力を入れなくても骨からするっとはずれてしまうほどだし、ジャガイモがフワッとサラッと崩れていく。うむ、崩れていくという表現は適当じゃないな。マッシュド・ポテトじゃないかと思うくらいのスムーズさで、口の中で解けていくような感覚がある。初体験な感覚だな。
 

 「あのさ、メンソール。メンソールが嫌でなかったら、これから二人きりになれる部屋に行きたいんだけどな」と、アシャンが言った。メンソールを凍結させていた氷が一気に緩んだような気がした。「欲求不満なのか?」と、メンソールが聞く。「ちょっとね」と、アシャンが答える。「そうか…」と、メンソールは答え、メンソールにとってはほぼ六ヶ月ぶりのカラオケボックスへ。で、二人でシャウトした。メンソールの声は、ボックスの防音扉を突き抜けるので、たぶん、迷惑だったような気がする。なんか、アシャンが近くなったような気がした。




(店  名) ほうば
(ジャンル) 韓国料理
(所 在 地) 大阪市北区天神橋5-3-10
(電  話) 06-6353-0180
(営業時間) 17:00-24:00
(定 休 日) 木曜日
(ウ ェ ブ) http://houba.jp/
(備  考) 予約が望ましい。
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