「メンソール、助けて....」のメールが飛び込んできた。通常ならば「あれぇ〜」といった、絹を裂くような女の悲鳴ということになるんだろうけれど、メールなので、悲鳴は出ない。すぐさま「な〜に?」とのんきなタイトルを付けたメールを返す。すると「明日電話する」とのメッセージが返ってきた。どうやら仕事上のことらしい。な〜んだ、デートの申し込みじゃないんだ....、と一時的に落胆はしたが、仕事絡みのことなら彼女と会ういいチャンスじゃないか....、と思い直した。実際のところ、翌日の彼女からの電話でも、状況がよく飲み込めなかったので、「カレーでも食べながら話せえへん?」と誘うと、「ええよ。ビジネスランチやね....」と応じてくれた。それまでは彼女と、メールとか電話とかで技術交流したことはあったけど、彼女はメンソールと同じおかず食いグループで、ライスはあまり食べないらしい。だからいわゆるカレーライスというものは食べないのだそうだ。カレーもインド風のものか、エスニック風のココナッツミルクを効かせたものが好きだとのこと。そうしたことから候補に挙がったのが『スパイス王国』だった。本当はエスニックなカレーとかタイ料理とかも検索したんだけど、夕方からの開店になってしまうし、彼女は主婦なので、夕方の外出は難しいらしい。
 
 待ち合わせは店の前。目印は赤いバラの花束....。メンソールはキングセット。内容は大型のナン。カレーはチキンとプローンの二種類。タンドリーチキンがツーピースと、ジャガイモとタマネギをスパイスを絡めて炒めたもの。店内はインド風の内装となっているが、入り口がガラス張りなので、店の外がシースルーで見えてしまう。店内がエスニック町で、町並みが和風....というか見慣れた世界というのは結構違和感があって面白い。
 
 オーダーを終えて、商談に入ろうとして大きなノートを広げると、もう料理が出来てしまった。メンソールが頼んだキングセットについては、上で述べたとおり。プレートのあまりの大きさに、二人分を乗せてしまうと、ほかの物はいっさい置けないという感じ。ひょっとしてプレートの大きさから逆算してテーブルを設計したんじゃないかと思ったりもする。
 
 商談は食後にすることにして、まずはタンドリーチキン。酸味を利かせたもので、なかなか良いお味。メンソールはインドカレーとかエスニックカレーとかのシャバシャバカレーの場合は、ライスよりもなんとかチャパティーにつけて食べる方が好きで、ライスにつけると、なんかカレーの味とか香りとかが薄くなってしまうような気がする。で、ナンはサクサクしていてとても香ばしい。ナンと言えばそのねっとり感がポイントのような気がしないではないが、サクサクしたナンも良いかなと思った次第。味はちょっと甘い目。ナンを甘い目に仕上げて、その分カレーの辛さを引き立てているのかもしれない。ちなみにメンソールがオーダーしたのは、激辛のカレー。カレーは好みに応じて辛さを調整してくれる。激辛でも辛みが不足していると感じる場合には、卓上に置いてある辛み調味料を加えてくださいとのコメントが書かれている。今日の商談相手は、タイ料理とかも大好きだそうで、韓国料理の場合には、卓上に置かれているコチュジャンを二人で空にしてしま
うそうだ。
 
 メンソールは、エスニックなインド料理を食べるときには、スプーンとかを使わずに手づかみで食べることにしていて、一番最初にこれをやったときは、いったいまわりの人間からどんな視線を浴びるだろう....、と気になったけど、最近は全然気にならなくなった。ただ難点は、指先からしばらくカレーの臭いが消えないことなんだけど、今日のカレーは、それほど臭いが残らないカレーだった。ちなみに同席した彼女はは、メンソールがカレーを手づかみで食べても何も言わなかった。もちろん先に手づかみするということは、メールで伝えてたんだけど、普通の人間だったら多少引くと思うのに、肝の据わった人だったな。
 
 チキンもプローンも美味しかった。カレーライスの時もそうなんだけど、ライスとルーを混ぜ合わせながら、最後にはきちんと両方が同時になくなるように調整しながら食べるんだけども、それでもカレールーが少し余ってくれるとなんか幸せな気分になって、良心的な店だと思えたりしてしまうから不思議だ。この日もナンを食べ切ってもルーが残ったので、とっても幸せな気分になったりした。
 
 食後はチャイを飲みながら彼女と商談。その後ラッシーを追加注文して更に商談。この案件が完了したら、やっぱり上本町にあるイタリアンレストランで、打ち上げをしようという約束になった。上本町のイタリアンというと、メンソールは『アット・プリーモ』を思い出してしまうんだけど、彼女のお薦めの店はそこじゃなかった。それでは、彼女との打ち上げオフをお楽しみに。


(店  名) スパイス王国(上六店)
(ジャンル) カレー

 
P.S.
 この店は、残念ながら閉店してしまいました。