メンソールに女性の好みなどあるはずがない、男でなければだれでもいいはずだ、という声も聞こえてきそうな気がするけれど、そんなことはなくて、ちゃんと好みとかタイプというものはある。ただし、メンソールの好みというのは太ってるとか痩せてるとかといった外見的なものではないし、言葉で説明できるほど画一的なものでもない。おそらく外見とか性格とかを総合的に含んだその人独特の雰囲気とか、オーラのようなものが、メンソールの琴線を強く刺激するんだと思う。だからちまきは、メンソールが普段言っているメンソールのタイプではなかったりする。

 激しい運動をしたりして脳に十分なエネルギーを供給できなくなったとき真っ先に影響を受けるのは視力で、視野狭窄が起こり、運動を継続することが困難になることがある。これをブラックアウトと言い、ジェットファイターの操縦士なども、急上昇するとGの影響で、脳への血液供給が出来なくなり、ブラックアウトすることがあるそうだ。

 メンソールがちまきに初めて会ったとき、メンソールの視界はホワイトアウトした。メンソールの視界の中央にいたちまきだけを残し、その他の風景はすべて光の中に包まれたようになって見えなくなった。それくらい初対面の印象は強烈だったし、だからちまきと初めて会ったのは1991年10月10日だと、日付まではっきりと覚えている。

 1月10日(日)、そんなちまきと久しぶりに梅田へ出た。JR大阪駅の中央コンースから南側にはホテルグランビュアがあり、大丸が百貨店がある。地下へ降りると専門大店があり、右手側にはメンソールが好きなカレーショップである『サンマルコ』があるが、左側には見知らぬ店があった。

 店はガラス張りだが、稲穂(後日確認したところ稲穂ではなくて麦穂だった)をモチーフにしたディスプレイで、うまく目隠ししているので、外から店内をうかがい知ることは出来ない。一見居酒屋とも思えるような内装が見て取れたが、居酒屋ではなくパン屋だった。

 入り口は狭く、まずカウンターがあって、そこでオーダーしたのち店内で食べることも出来るようになっていた。メンソールは照り焼きチキンのサンドイッチとクラムチャウダー、ちまきはキノコのキッチュとパンプキンスープをオーダーして、そのまま一番奥のテーブル席へ移動した。ちなみに、イートインの場合は、ドリンクを必ずオーダーする必要があるようだ。

 店内は白木の八人掛けのテーブルが三脚と後は窓際にカウンター席がある。カウンターからは店外が見えるが、先に書いたように稲穂がうまくディスプレイされているので、通行人の視線が気になることもないだろうと思う。

 テーブルの中央には和紙が敷かれていて、その上に一升ますを重ねたディスプレイされていたりして、内装としては完全に和風である。ただ、パン屋で稲穂というのはどう考えてもそぐわないし、店の名刺には麦穂がデザインされているので、たぶんカウンター席の前にディスプレイされているのは麦の穂じゃないかと思う。

 メンソールはキッチュなる物を食べるのは、本当に久しぶりなんだけど、ふわふわした感じで、口の中で溶けてなくなりそうで、はかなくて、優しい味だった。

 この日は食べなかったけれど、この店のお勧めは『エッグタルト』なんだそうだ。パイ生地の中に玉子のブリュレが入ったものらしいが、香港で大ブレークしているらしい。


 店を出たメンソールは、阪神百貨店でちまきに、以前から欲しいと言われていたペアの湯のみをプレゼントした。「ねぇ、メンソール。今夜家に来ない。夕食は私が作ってあげる」とちまきが言う。きっとペアの湯のみをすぐにでも使ってみたかったんだろう。昨日『AKKA』→『カヴォ・ラ・ヴィーニュ』→『アルファ』→『Magara』と四軒もはしごしたメンソールは、さすがに二日酔いで、胃の調子もあまり良くなかった。「あっさりしたものが食べたい」とメンソールが言う。「まかせて」とちまき。結局その日メンソールは御飯を四杯もお代わりするほど食べてしまった。


===============(お店情報)===============
・ブレッド・ダイニング 『Die Guete』
・06-6344-5601
・大阪ターミナルビル地下一階
・07:30-21:00
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P.S.

 ドイツ語のフォントであるウムラウトが使えないため、店名のGueteはウムラウトが使えないときの綴り規則に従ってueと綴っていますが正しくはuウムラウトです。本店は神戸の方にあるようです。