その日メンソールは、18:40ごろに天下茶屋の駅に降り立った。ナナは約束の19:00時間ジャストにやってきた。やっぱりいい女って約束の時間ジャストか7分遅れでやってくるもんだ。バーなんかで待ち合わせをしているときなら、一杯目のマティーニを飲み干して、時計を確認しながら二杯目を飲もうかどうしようか考えた末に、バーテンダーを呼ぶために手を上げかけた時を狙ったようにやってくる。

「メンソール、いつも突然でわるいなぁ」
「別にかまへんで…。元気にしてたか?」
「うん、元気だったよ」
「年末は名古屋やってんな」


 そう言ってメンソールは、ナナを店に案内した。店は、駅の東側、すぐのところにある。駅前商店街じゃなくて、一本南の、『ブックスミサワ』という本屋のある筋を少し行くと、右手側に見える。見た目は焼鳥屋っぽい。

「ねぇ、メンソール。ナナが沖縄生まれなのは知ってるよね」
「知ってる。もうすぐ誕生日なんも知ってるし、A型なんも知ってるで」
「この前のデートは、沖縄料理店だったよね。で、今日は豚肉専門店って、すごく挑発的なセレクトじゃないの」
「そんなこと言うたって、突然やったからな。それに、クーブイリチーで下痢しとったやないか」
「その前の前は、路地裏の韓国料理店だったし、その前は瓢箪山のやっぱり路地裏の串カツ屋だったよね。どうして、ナッキーとかなっちはフレンチとかイタリアンで、私は路地裏のマイナーな店なの?」
「今日はえらい絡むんやな、飲んでもせんのに…」
「もぅ、メンソールったら…。私は飲んでも絡みませんよ…」
「彼女とは、マイナーでもお気に入りの店に行くことにしてるのや」

 メンソールはまず米焼酎をオーダー。ここの焼酎はすべて前割りになっているので、基本的にはロックで出てくる。まずはガツの造り。ガツというのは、胃袋のこと、造りと言ってもまったく生というわけではなく湯通ししてあると思う。それをポン酢味のタレで食べる。食感はどことなくミノに似てる。続いては、タンとレバーの薫製。
 
 焼酎は、前割りしてあるので、お湯割りとかオーダーすると怒られたりする。で、どうするかというと、前割り焼酎の燗と言うことになる。前割りの焼酎と水割りの焼酎を並べて比べれば、どんなに味覚オンチでもその差は歴然だとは思うけど、そこまでこだわって飲む人ばかりじゃないとも思う。なので、「うちはお湯割りはおいてませんねん」という言い方はどうなんだろう。燗と言えば『黒千代香』に入れて温めてくれる。しっかり温度も測ってくれるので、良い味にはなると思う。メンソールの横にいた客は、どうしてもお湯割りにこだわったので、結局前割りをコップに入れてレンジでチンすることになった。前割りの燗でもお湯割りでも、似たようなもんと思ってる客の方が圧倒的に多いと思うぞ。

 続いてメンソールは五大串セット。豚トロ、ハツ(心臓)、特上ガツ(胃袋)、ノドブエ(タン軟骨)、テッポウ(直腸)の五種類。テッポウは美味しかったチレ(脾臓)がなかったのは残念。あとはシロ(大腸)とかガシラ(頭肉)なんかもある。

 焼酎達は旨いんだけど、売り物の焼き豚達がなんか迫力に欠けるんだよな。何でかなぁ…。豚肉が苦手な人のために鶏肉(焼き鳥)も置かれている。中でもつくねは名物らしい。豚肉と鶏肉のミンチをタレで仕上げて、卵黄で食べるらしい。




(店 名) たゆたゆ
(ジャンル) 居酒屋 焼きとんya
(所 在 地) 大阪市西成区天下茶屋3-23-22
(電 話) 06-6659-1201
(営業時間) 17:00-23:30
(定 休 日) 日曜日
(店 主) 川端友二