
メンソールは、アコを案内して靱公園の南側にある『羽山料理店』へ。ここは以前、『ラネックス』というセクシーなワインバーがあったところなんだけど、そんなことはもう覚えてる人は少ないのかな。店に行くまでの道すがら、今日の店はがっつり系だから、前菜二品とメイン人品くらいで十分満腹するといった話を仕込んでおく。店に入ったメンソールは、外の様子がよく見える席を勧める。本当は、通路側には男性が座るべきなんだけど、その辺は臨機応変と言うことで…。ギャルソンが椅子を引いてくれれば、それが一番の上席なんで、そこに女の子を誘導すればいいんだけど、ビストロではそこまでやってくれないんだよな。ま、やるやらないの問題じゃなくて、そこまでこだわらなくてもいいですよと言うことなんだろう。
メニューは前菜、魚系、肉系に分かれてて、アコが「前菜はアコに選ばせて…」と、いうので任せてみたら、パテを選んだ。メンソールは、メニューを見た時にメイン料理を真っ先に見る癖が付いているので、う〜ん、鹿、鴨、羊か…、とか思ってたりした。なので、この中でアコが食べれるもんてどれだろうで悩んでた。アコが「メンソール、魚料理も選ばせて…」と、言うので任せてみたら、ブイヤベースを選んだりした。「どうした、アコ。昔は冒険家だったのに…」と、メンソールが聞く。「えっ、そう。そんなことないよ」と、アコは言うけど、このセレクトは絶対におかしい。アコらしくない。「アコ、羊はOKやな?」と、一応メンソールは聞いてみる。「いいよ」と、アコが言う。アコは泡。メンソールはビールで、だってプレミアムモルツだったから…、乾杯する。
最初に出てきたパテを取り分けながらメンソールが言う。「アコ、前にも言うたけど…」、「判ってる。メンソールは、セックスフレンドとかメッシーとかは嫌なんやろ」と、アコがまたも遮った。「そやけど、本当に判ってるん?」と、メンソールは聞いてみた。
魚料理は、アコが選んだブイヤベース。三種の類魚、海老、ホタテなどが入ってる。若干、軽い目ではあるけど、フィッセルの薄切り的なパンも添えられている。それから粉パルメジャーノとルイユが添えられてる。「ねぇ、メンソール、ブイヤベースってトマト味じゃないの?」と、アコが聞く?。「ちゃうちゃう、ブイヤベースはフランス南部、地中海に面した地方の料理で、白身魚とフェンネル、ローズマリー、ディル、サフランなんかのハーブを加えて煮込んだ料理や。トマト味にする場合もあるけど、サフランを使うのが王道やで」と、メンソール。ルイユというのは、辛みのあるソースで、添えられているパンにルイユをつけ、ブイヤベースに浮かべて食べる。
メンソール的には、ここまでの料理は結構軽い目。そして無難という印象なんだな。各方面で絶賛されてるけど、それほどではないような気がしないではない。ウェイトレスのアウエアネスが若干弱くて、ウェイトレスよりも先にシェフが気が付いたりしたすることが何度かあった。ウェイトレスであるならば、客席から目を離すべきではないと思うんだけど、ちらり、客席が空白エリアになる時間が多いんじゃないかとは思う。
メインは、メンソールが選んだ羊肉。羊肉とともに、芽キャベツとかキャロットとか、季節の菜の花とか付け合わせになっている。羊肉は、ジューシーで旨いし、菜の花の苦みが逆に食欲をそそったりする。「ね、メンソール、話って何?」と、アコが聞いてくる。「メンソールは、セックスフレンドな関係は嫌いや、アコとはまだセックスしてへんけど…。それから、メッシーな関係も嫌いや」と、メンソールが答える。「判ってるやん。そんなこと…」と、アコが言う。「もし、判ってるんやったら、メンソールとおる時だけでもええ。そのペアウォッチは外しといてくれ」と、メンソール。一瞬、アコが凍った。動きが止まり、沈黙が訪れた。「なんで判ったん、ペアウォッチやって…、普通に女もんの時計やん」と、アコた言った。「女の子が、男の微妙な嘘を見抜くように、男も、女の子の微妙な嘘は見抜けんねん。見抜かれへん男も多いけど…」と、メンソール。「アコの
場合は、まるわかりやわ」と、ちょっとこれは誇張した挑発。再びアコは凍り付き、しばらくしてうつむいたまま「ごめんなさい」と、言った。う〜ん、今言われてもなぁ。食事が…。おい、泣くなって…
デザートのチーズを食べながら、「前から判ってたん?」と、アコが聞く。「うん、判ってた」と、メンソール。「女の嘘を見抜けない時は、男の嘘で包み込むもんや」と、メンソール。メンソールは心の中で、"Thank you, Silva."と、叫んでみたりした。歌詞を、そのまま使ってゴメンね。チーズは四種類。フルム・ダンベール、マンステール、パルメジャーノ、そしてカマンベール。カマンベールは北海道産の『雪』と言うもの。これがどえらくセクシーで、発酵臭というかアンモニア臭というかが鼻孔を駆けめぐる。でも、そこにワインを流し込むと、チーズが表情を変える。こんなセクシーなカマンベールが、国産であるなんて思わなかった。病みつきになるかも…。いや、AOCがあるから、国産のチーズはカマンベールと言ってはいけないんだな。カマンベールタイプのチーズか…。
アコは、うつむいたままで顔を上げなかった。泣いてるんかな…。泣くなよ。メンソールがいじめてる見たいじゃん。誰が見たって…。「あやまらんでもええねん。でも、メンソールの恋心を利用するのは止めてほしいねん。メンソールは、アコが好きやし…」と、メンソール
「アコ、駅まで送るわ」と、メンソール。「あのさ、メンソール」と、言いかけたアコの唇を、メンソールの指が押さえた。「アコ、あのな。メンソールと本当に向き合えるようになったら、またら連絡くれ。待ってるから…」と、メンソールはアコに言った。
う〜ん、ちょっときつかったかな。でも、アコはもろくなったな…。
(店 名) 羽山料理店
(ジャンル) ビストロ
(所 在 地) 大阪市西区靱本町2-5-1 丸文靫ビル一階
(電 話) 06-6449-6369
(営業時間) 11:30-14:00、18:00-22:00
(定 休 日) 日曜日&第四月曜日