2007年02月

涙のペアウォッチ(羽山料理店/靱本町)

2007年02月18日00:09
8a063f5d.jpg 「メンソールが誘ってくれるとは思えへんかったわ」と、アコが言った。「うん、ちょっとアコがどう思ってるのか知りたくてな」と、メンソールが応える。「で、何が知りたいの?」と、アコが聞いてきたけど、「後にする。今答えると食事がまずくなる」と、メンソールがかわす。

 メンソールは、アコを案内して靱公園の南側にある『羽山料理店』へ。ここは以前、『ラネックス』というセクシーなワインバーがあったところなんだけど、そんなことはもう覚えてる人は少ないのかな。店に行くまでの道すがら、今日の店はがっつり系だから、前菜二品とメイン人品くらいで十分満腹するといった話を仕込んでおく。店に入ったメンソールは、外の様子がよく見える席を勧める。本当は、通路側には男性が座るべきなんだけど、その辺は臨機応変と言うことで…。ギャルソンが椅子を引いてくれれば、それが一番の上席なんで、そこに女の子を誘導すればいいんだけど、ビストロではそこまでやってくれないんだよな。ま、やるやらないの問題じゃなくて、そこまでこだわらなくてもいいですよと言うことなんだろう。

 メニューは前菜、魚系、肉系に分かれてて、アコが「前菜はアコに選ばせて…」と、いうので任せてみたら、パテを選んだ。メンソールは、メニューを見た時にメイン料理を真っ先に見る癖が付いているので、う〜ん、鹿、鴨、羊か…、とか思ってたりした。なので、この中でアコが食べれるもんてどれだろうで悩んでた。アコが「メンソール、魚料理も選ばせて…」と、言うので任せてみたら、ブイヤベースを選んだりした。「どうした、アコ。昔は冒険家だったのに…」と、メンソールが聞く。「えっ、そう。そんなことないよ」と、アコは言うけど、このセレクトは絶対におかしい。アコらしくない。「アコ、羊はOKやな?」と、一応メンソールは聞いてみる。「いいよ」と、アコが言う。アコは泡。メンソールはビールで、だってプレミアムモルツだったから…、乾杯する。

 最初に出てきたパテを取り分けながらメンソールが言う。「アコ、前にも言うたけど…」、「判ってる。メンソールは、セックスフレンドとかメッシーとかは嫌なんやろ」と、アコがまたも遮った。「そやけど、本当に判ってるん?」と、メンソールは聞いてみた。

 魚料理は、アコが選んだブイヤベース。三種の類魚、海老、ホタテなどが入ってる。若干、軽い目ではあるけど、フィッセルの薄切り的なパンも添えられている。それから粉パルメジャーノとルイユが添えられてる。「ねぇ、メンソール、ブイヤベースってトマト味じゃないの?」と、アコが聞く?。「ちゃうちゃう、ブイヤベースはフランス南部、地中海に面した地方の料理で、白身魚とフェンネル、ローズマリー、ディル、サフランなんかのハーブを加えて煮込んだ料理や。トマト味にする場合もあるけど、サフランを使うのが王道やで」と、メンソール。ルイユというのは、辛みのあるソースで、添えられているパンにルイユをつけ、ブイヤベースに浮かべて食べる。

 メンソール的には、ここまでの料理は結構軽い目。そして無難という印象なんだな。各方面で絶賛されてるけど、それほどではないような気がしないではない。ウェイトレスのアウエアネスが若干弱くて、ウェイトレスよりも先にシェフが気が付いたりしたすることが何度かあった。ウェイトレスであるならば、客席から目を離すべきではないと思うんだけど、ちらり、客席が空白エリアになる時間が多いんじゃないかとは思う。

 メインは、メンソールが選んだ羊肉。羊肉とともに、芽キャベツとかキャロットとか、季節の菜の花とか付け合わせになっている。羊肉は、ジューシーで旨いし、菜の花の苦みが逆に食欲をそそったりする。「ね、メンソール、話って何?」と、アコが聞いてくる。「メンソールは、セックスフレンドな関係は嫌いや、アコとはまだセックスしてへんけど…。それから、メッシーな関係も嫌いや」と、メンソールが答える。「判ってるやん。そんなこと…」と、アコが言う。「もし、判ってるんやったら、メンソールとおる時だけでもええ。そのペアウォッチは外しといてくれ」と、メンソール。一瞬、アコが凍った。動きが止まり、沈黙が訪れた。「なんで判ったん、ペアウォッチやって…、普通に女もんの時計やん」と、アコた言った。「女の子が、男の微妙な嘘を見抜くように、男も、女の子の微妙な嘘は見抜けんねん。見抜かれへん男も多いけど…」と、メンソール。「アコの
場合は、まるわかりやわ」と、ちょっとこれは誇張した挑発。再びアコは凍り付き、しばらくしてうつむいたまま「ごめんなさい」と、言った。う〜ん、今言われてもなぁ。食事が…。おい、泣くなって…

 デザートのチーズを食べながら、「前から判ってたん?」と、アコが聞く。「うん、判ってた」と、メンソール。「女の嘘を見抜けない時は、男の嘘で包み込むもんや」と、メンソール。メンソールは心の中で、"Thank you, Silva."と、叫んでみたりした。歌詞を、そのまま使ってゴメンね。チーズは四種類。フルム・ダンベール、マンステール、パルメジャーノ、そしてカマンベール。カマンベールは北海道産の『雪』と言うもの。これがどえらくセクシーで、発酵臭というかアンモニア臭というかが鼻孔を駆けめぐる。でも、そこにワインを流し込むと、チーズが表情を変える。こんなセクシーなカマンベールが、国産であるなんて思わなかった。病みつきになるかも…。いや、AOCがあるから、国産のチーズはカマンベールと言ってはいけないんだな。カマンベールタイプのチーズか…。

 アコは、うつむいたままで顔を上げなかった。泣いてるんかな…。泣くなよ。メンソールがいじめてる見たいじゃん。誰が見たって…。「あやまらんでもええねん。でも、メンソールの恋心を利用するのは止めてほしいねん。メンソールは、アコが好きやし…」と、メンソール

 「アコ、駅まで送るわ」と、メンソール。「あのさ、メンソール」と、言いかけたアコの唇を、メンソールの指が押さえた。「アコ、あのな。メンソールと本当に向き合えるようになったら、またら連絡くれ。待ってるから…」と、メンソールはアコに言った。

 う〜ん、ちょっときつかったかな。でも、アコはもろくなったな…。
 




(店  名) 羽山料理店
(ジャンル) ビストロ
(所 在 地) 大阪市西区靱本町2-5-1 丸文靫ビル一階
(電  話) 06-6449-6369
(営業時間) 11:30-14:00、18:00-22:00
(定 休 日) 日曜日&第四月曜日


はなればなれ(うのあん/船場)

2007年02月09日00:04
37fd0337.jpg 高いところに昇ろう。とびきり高い高いところへ。そうすれば、二人のこれからも見えるかもしれないね。

                           Word By 原田郁子


 「メンソール、最近どうしてるの?。元気?」というメールが入った。誰やこいつは…、と思ってよく見たら、しばらく音信のなかったアコだっだ。久しぶりのメールなんだから、本名じゃなくてアコと書いてきてくれないと判らないぞ。

 「元気だよ」と、返すと、「じゃ、今度一緒に食事しよう」と、返ってきた。「鍋でもいいか?」と、返してみた。アコは、和食は好きだけど鍋料理は苦手だったはずなんだ。「メンソール、アコが鍋がダメなん知ってるでしょ」と、言われるかと思ったけど、意外にも「いいよ」と、と返ってきた。それならばと言うことで、メンソールは『うのあん(船場店)』に予約を入れた。『うのあん』は、つみれ鍋が美味しい店で、鶏肉好きのメンソールとしては、行ってみたいと思って機会をうかがってたんだ。

 堺筋本町で待ち合わせて、そこから徒歩で一分くらい。メンソールとアコは、二階の掘りごたつ座敷へ。久しぶりにあったアコは、昔と変わらずスリムで長身で、アンジェリーナみたいなところも一緒だった。トリビーで乾杯しながら、「どうしたんや?。突然食事に誘うやなんて」、と聞いてみる。「うん、ちょっとね。また、メンソールをからかってみたくなったのよ」、とアコ。なんやねん。メンソールはアコのおもちゃとちゃうぞ。

 『うのあん』では、ディナータイムに予約すると、料理としてつみれ鍋(1,260円)が自動的に予約される。つみれ鍋は三ランクあって、これは当日グレードアップが可能。因みに『つみれ鍋(お徳)』になると、先付け、しゃぶしゃぶ、うどんが追加になる。『つみれ鍋(うのあん)』の場合は、先付け、温泉卵、しゃぶしゃぶ、煮物などが付く。

 先付けはささみのたたき。スライスオニオンが添えられていてポン酢がかけられている。ポン酢は、若干甘みが強いような気がするけど、酸味も強く、メンソールの好みだな。

 「彼氏とはうまくいってんのか?」と、一応聞いてみる。「一応ね」と、アコが答える。「そうか、それは良かった。…。それでやな、急に何の用やねん。あのときメンソールは、涙を飲んで、断腸の思いで、それから…」と、メンソールは言葉に詰まる。「恋人にはなられへんけど、飯友やったらええよって言うたやん。そやのにメンソールったら、それから何の連絡もくれへん。あせったわ」と、アコが言う。

 次に出された温泉卵を丸飲みにしながら、「言うとくけどメンソールは…」と、言いかけた。遮るようにアコが、「セックスフレンドとかメッシーとかの関係は嫌いなんでしょ。判ってる。前にも聞いたし…。でも、彼氏がいる女の子は嫌いじゃないでしょ」と、言った。「うん、嫌いじゃない」と、メンソールが答える。
 
 次に出されたのが、しゃぶしゃぶ用の肉が四きれ。鍋に張られたダシからは、すでに軽く泡が上がってきている。しゃぶしゃぶするには最適の温度かな。メンソールは、まず生のまま食べてみた。これが熟成が進んでいて、見事に旨い。朝引きの地鶏は、それは新鮮で歯ごたえはいいかもしれないけど、肉は熟成させなきゃダメさ。ささみ肉なんで、もも肉に比べたらずっとあっさりしてるはずなのに、肉の旨みがすごい。しゃぶしゃぶなんかにするのがもったいない。ポン酢つけるのがもったいないくらい。結局、しゃぶしゃぶにしたのは一枚で、後は全部生で食べちゃった。

 次に出されたのが、メインのつみれ。つみれは薄い皿に載せられてやってきて、スプーンが一本添えられている。メンソールは、もう一本スプーンをもらって、つみれ団子を作り、鍋に落としていく。「やっぱり上手いなぁ、メンソールは…。ちゃんと火加減にも気を遣ってるし…」と、アコが言う。「器用な手先を見てると惚れそうになるんとちゃうの?」と、メンソールが聞く。「もう惚れてるよ。昔から…。最初は、女たらしかと思ったけど…」と、アコ。「そうか…」と、メンソールが応え、沈黙が訪れた。つみれ団子を作り終わったメンソールは、野菜たちを鍋に入れ、蓋を閉めて火力を上げる。メンソールはそっと手を伸ばして、アコの手を握った。アコは、少し驚いたような顔をしてメンソールを見て、それからすぐに、かすかに頷いて微笑んだ。

 鍋ができあがったので、何をおいてもまずつみれを一口。どうやったらこんなに旨いつみれ団子になるんだ。ダシかと思ったけど、ダシも旨いんだけど、ダシの味だけじゃない。つみれ団子の照り焼きも出てきたんだけど、照り焼きのあじに全然負けてないというか、照り焼きよりも濃厚な味がするような気がする。

 このころになると、ハラパンで、動くのも辛いほど。しかも、ラストの雑炊は200円のアップで親子丼に差し替えてある。親子丼と言っても、玉子とじになってるんじゃなくて、鶏照り焼き丼と言った感じ。そこに生卵が添えられているので、好みで混ぜて食べる。ここは、ちゃんと混ぜた方が美味しい。鶏肉の方が濃いめの味付けになっているので、玉子と合わせてちょうどいい。

 「ねぇ、メンソール。飲みにいこ」と、アコに言われたけど、もうなんにも食べられへんし、飲まれへん。「また今度ね」と、言ったら、「誘ってくれなかったら、アコから誘うから…」と、言われた。「言うとくけどな、アコ。メンソールは…」、「判ったメンソール、セックスフレンドやメッシーは嫌いなんやろ」と、アコがまたメンソールを遮った。「うん、判ってるんやったらええねん」と、メンソール。

 高いところに昇ってみたら、二人のこれからが見えるかもしれない…、か…。メンソールは、原田郁子の言葉を思い出していた。




(店  名) うのあん 船場店
(ジャンル) 鶏鍋
(所 在 地) 大阪市中央区南本町2-3-6
(電  話) 06-6261-0212
(営業時間) 11:00-23:00
(定 休 日) 日曜日
(ウ ェ ブ) http://www.unoan.com/casuno/index.html

Comments
  • ライブドアブログ