みみこ

雨の日の蛍(まけへんで)

2004年12月13日23:08
 大粒の雨が落ちてきた。メンソールはみみ子からのメールに「明日は待ちに待った【蛍会】だけど、雨みたい。私は、日ごろの行いは良いほうだから、きっと、メンソールのせいね....」と書かれていたのを思い出した。すぐに、「大丈夫。雨は降らないよ」と返信したし、午前中は晴れてたのに、突然夕立のような雨。メンソールは上新電機へ飛び込んで雨宿りした。時刻はちょうど18:30くらい。寺田町での待ち合わせまであと90分しかないのに、メンソールは足止めを食らってしまって動けない。
 
 上新電機の各フロアを丹念に見て回っていると、一階に下りてくる頃には雨は上がっていた。メンソールは難波へと向かった。割引券があったので、 7月のオフ、『ルッリョ・ドティチ』へ贈る花束は日々花壇で購入しようと思ってのことだ。残念ながらホリデーイン南海の一階にある日比谷花壇は、改装中だった。無駄足を踏んだことになるが、引き返すしかない。このころ 19:30。待ち合わせまであと30分。 メンソールが寺田町に到着したのは19:57。ぎりぎりである。みみ子はまだ来ていなかったので、メンソールは駅の南側にある公園を目指した。このあたりに屋台があるはずなんだけど....、と見渡すがそれらしきものは見あたらない。電話してみると今日は休業するとのこと。突然の雨だったし、仕方ないかな....。メンソールは寺田町駅へ引き返した。しばらくするとみみ子が微笑みながらやってきた....。「お久しぶり....」とみみ子がいう。確かにものすごく久しぶりのような気がする
んだけど、前回は何時会ったかな....と振り返ってみると、一ヶ月ぶりくらいなんだ。この前別れてからだったら、もっと長い時間が流れたような気がするんだけど、間違いなく一ヶ月なんだ。メンソールは彼女に、赤いバラの花束をプレゼントした。
 
 メンソールは、初デートの時にはバラの花束をプレゼントするんだけど、何色のバラにするかはそれなりに、その日会う相手のイメージに合わせているつもりだ。みみ子には赤が似合う、そう思って赤いバラにした。少し後のことなんだけど、深紅のバラをプレゼントした相手のことを思いだした。そう、深紅のバラを受け取ったのは、メンソールの天敵である。シーバ美保なのだ....。 寺田町に、話題の屋台『蛍』があることは、知っている人も多いと思う。みみ子とは一ヶ月前から『蛍』へ行く計画を練っていた。ところが突然の雨のため、『蛍』は休みだった。メンソールは、ここに来るために乗ってきた環状線外回りにもう一度乗り込む。天王寺を越えたあたりで、「明治屋、行きたいな」とみみ子がいう。うぅーん、ワンテンポ遅かった。電車はすでに天王寺を出たあとだったのだ。福島駅で降りると、目の前には新阪神ホテルが見えた。食事したあとは、ホテルのメインバーでブランデーなど飲むのも良いかもしれない....、と思いながら少し北へ歩く。JR東海道線の高架下が、そのまま福島市場となっているが、その中ほどに『まけへんで』という店がある。メンソールは串焼きの店だと思っていたんだけど、看板には『創作七厘焼き』と書いてあった。
 
 扉を開けると、そこにはカウンター席だけだ。満席かな....と思ったんだけど、二階へと案内された。二階席があるとは思わなかった。二階席といっても四人掛けのテーブルが二脚あるだけ。一階にあるL字型のカウンターも、多分八席くらいしかないんじゃないかと思う。
 
 まずドリンクオーダーを取りに来たので、メンソールは迷わずトリビー。毎回説明しているので、今回は説明する必要はないと思うが、トリビーというのは、とりあえずビールをメンソール流に縮めたもので、あまり一般的ではない。今回もウェイトレスに聞き返されてしまった。そんなメンソールとウェイトレスのやりとりを見ていたみみ子が言った。「メンソールさんって、面白いんですね」と言われてしまった。
 
七厘焼きは、単品もあるがセットがお得だと思う。八品セットと、本日のお薦めセットをオーダー。この店は七厘焼きだけではなくオリジナル料理も充実している。鮎の湯葉巻き揚げ、ハモつらら山芋そうめんをオーダーした。まずトリビーで乾杯。突き出しは、鯛の昆布締め梅肉ソース合え。これがけっこう美味しかった。鮎の湯葉巻き揚げは、鮎の骨煎餅が中央にあり、左右に湯葉巻き揚げがある。レモンと抹茶塩が添えられていた。これは想像したとおりの味付け。残念だったのは、抹茶塩に化学調味料が混ぜられていたこと。化学調味料はいらん。塩だけでええ。というわけで塩を探したところ、テーブルには梅肉塩も置かれていた。残念なことに、こちらも化学調味料がミックスされている。これがこの日唯一の残念無念。
 
 ハモつらら山芋そうめんは、山芋をそうめん状に切ったものの上に、湯通しして抹茶をつけたハモが乗せられている。それとは別に、筋子か....、と思われるような赤いものが....。食べてみるとこれは煮こごりで、強烈なカツオだしの味と、それに隠れるように梅肉の味がした。これは美味しい....。ということで、メンソールは一気に食べちゃった。
 
 七厘焼きをオーダーすると、テーブルに七厘をセットしてくれる。七厘というと、鶴橋などの焼き肉屋で見るようなものを想像するが、そうではなくて、おしゃれな土鍋といった形状のものが出される。炭は紀州備長炭。
 
 出てきたものをすべて記憶しているわけではないんだけれど、カニ、タコ、生ベーコン、トウモロコシ、ささえのエスカルゴ風、ヤマメ、アンチョビポテト、焼きおにぎり、ボタンエビ、ホタテバター等々....。それぞれ焼き方をちゃんとアドバイスしてくれるんだけど、生で食べれるもんなんで、軽く炙るくらいにしてください、というものが多かった。
 
 先ずはタコ。表面が白くなった程度で引き上げて食べる。生でも食べれるタコということだったんだけど、軽く火にかけることで身が引き締まって、かみ切ろうとする歯に対して、超絶の弾力性で抵抗してくる。旨い、旨い。次はカニ。切れ目が入っているので、それを上にして、こちらも表面が白くなったくらいで火から下ろす。焼きガニのかおりが部屋一杯に広がって、否が応でも興奮が高まってくる。しかも、その期待と興奮に負けないくらい美味しい。このころすでにメンソールは日本酒に移行していた。ワインにしようかなと思ったんだけど、みみ子に聞くと日本酒が良いということだった。「何が好きなの」と聞くと、「日本酒とビールとワインです」との答えが返ってきた。なぜ「好きなのはメンソールです」と言えんか....と思いながら、「それじゃ全部じゃない」と返す。「私、蒸留酒がダメなんです」と、みみ子。となると、当然カクテルもダメなんだろうな。食事が終わったら、新阪神ホテルのバーにでも行こうと思ってたんだけど、予定変更かな....。
 猪口は二つですか、とウェイトレスが聞いてくるが、メンソールはぐい飲みが良いと告げた。出てきたのは湯飲みだったけど、猪口でちょこちょこと飲むよりは、こっちの方が性に合っている。日本酒は一合徳利しかないらしいんだけど、湯飲みに入れたら一合全部入っちゃった。そのため、徳利を包むクラッシュアイスと徳利クーラーは、運ばれてくると同時にその役目を終え、引き取られていった。
 
次はサザエ。すでにサザエの身は5mm角くらいに刻まれており、ガーリックバターと共に殻に戻されている。この時点でガーリックバターは固まっているんだけど、火にかけると溶けだしてくる。サザエには、薄切りにしたバケットが添えられていて、このパンを軽く炙り、溶けたガーリックバターごと、サザエを薄切りバケットにかけて食べるのだそうだ。これまためっちゃ旨かった。みみ子はサザエが大好きなんだそうで、きゃっきゃ言ってはしゃいでいた。もともと年齢よりは若く見られていると思うみみ子が、満面に笑みを浮かべてはしゃいでいる姿はかわいくて仕方がない。
 
 お次は、生ベーコン。軽く黒胡椒が振られている。生でも食べられるけど、10秒くらい炙っても美味しい。ということだったので、軽く炙る。脂身が暖かくなっていて、なかなかいい感じ。いつも食べてるベーコンは、名前だけベーコンで別もんなんじゃないかと思うくらい旨い。噛みしめているのはベーコンじゃない。多分幸せを噛みしめてるんだと思う。
 
 次はホタテ貝。帆立貝の殻を皿代わりにして、その上でホタテを焼く。こちらもサザエと同様、火にかけるとバターが溶けだしてくる。これも半生が良いとのアドバイスだったので、半生状態のものを食べる。もう幸せやね。
 ボタンエビも、軽くさっと炙る程度で頂く。頭と尻尾だけはカリカリになるまで焼き上げてからかじる。もう何とも言えん。
 
 司牡丹がなくなったので、古酒に移行する。銘柄は忘れたけど、奈良の古酒だった。うっすらと水割り程度に茶色い液体が、グラスに注がれる。グラスの台は竹筒をアレンジしたものだ。まず香りをかぐ。何とも言えない甘い芳香が漂う。上等の泡盛もこんな香りがしたように思う。一口含むと上品な甘みが広がっていく。度数は20度くらいだろう。これがまた、声を失うくらいに旨い。
 
 焼きおにぎりに醤油を塗り、ひっくり返して....と繰り返しているうちに、トマ
トのサラダが食べたくなった。アンディーブが敷き詰められてフレンチドレッシングがかけられた、その皿の中央に、トマトが丸ごと乗っている。トマトの表面はトマトケチャップで覆われている。最初はちょっと甘く見て段だけど、トマトは裏側からくり抜かれていて、スモークド・サーモンなどが入れられている。まさしく意表をついた一品。
 
 唯一、良く火を通した方が良いといわれたのが、アンチョビポテト。ジャガイモの皮を残して中身を抜き出し、これをアンチョビと混ぜ、先ほどの皮に戻したもの。これはアルミフォイルに包まれている。臭い消しが目的だと思うが、ちょっとハーブの香がきつい。
 
 最後はカシスのシャーベットで締め。「みみ子、メンソールと付き合えへんか?」と聞くと「もう不倫はこりごりよ」と言われてしまった。それでもちゃんと次のデートの約束を取り付けるあたり、メンソールはえらい。デートコースはもちろん『蛍』だけれど、この『まけへんで』の姉妹店である『やんて』もかなり期待できるんではないかと思う。『まけへんで』が創作七厘焼料理、であるに対して、『やんて』は遊食居酒屋と書いてある。



【店  名】 まけへんで
【ジャンル】 創作七厘焼料理
【電話番号】 06-6457-2726
【住  所】 大阪市福島区福島7-11-51 JR東海道線高架下福島市場内
【営業時間】 11:00-13:30、17:00-23:00
【定 休 日】 日曜日・祝日
【そ の 他】 姉妹店に『やんて』がある。

 

裏町デート(ビストロ・スポンタネ)

2004年12月13日23:00
 不思議なことがいくつかあって、メンソールは某ビストロからダイレクトメール (葉書)をもらうようになった。ちなみにその店には行ったことはない。当然メンソールの住所なんか判るはずがないんだけど、どうしてなんだろう。ダイレクト電子メールならまだ判るんだけど、ダイレクト紙メールとなるとちょっと理解ができない。
 
 梅新に焼き肉の『大同門』があって、その裏手あたりに、今年四月にオープンしたビストロがある。ちょっと気にはなっていた。二週間くらい前の金曜日、都島での仕事が終わったのが19:00頃だったし、都島だとメンソール宅よりも梅田の方が感覚的に近いので、ふらっと出かけてみたが、満席だった。それならばと言うことで空いていそうな火曜日を狙ってみた。
 
 入り口の扉はガラスなので店内はよく見える。カウンターのみ10席くらいの小さな店で、入り口すぐのところにはスタンドピアノが置いてある。これは自動演奏ピアノで、ジャズを主体として音楽を奏でている。ビストロにであるにもかかわらず、ナイフ、フォークの類は置かれておらず、代わりに箸が置かれている。しかも色が全部違う。ちょっとサイケデリックな演出だ。
 メニューはカウンターバックの黒板に書かれていて、コースのみの四種類。オードブル、スープ、パスタまでは共通で、その後のデザートとメインの料理の組み合わせで四つのバリエーションとなる。
 
 席に着くといきなりオードブルが出された。黒板には「オードブル(五品)」と書かれているが、その内容はかなり力の入った本格的なものだ。メバルを正中線で割って腸と骨を抜いたものを一匹そのまま片栗粉だけをつけてフライにしたものが皿の中央に置かれており、その背中には、牛肉たたきのバルサミコ風味が乗せられている。ほうれん草のニョッキにはカニ風味のソースがかけられ、サザエの方はブルゴーニュ風、グリーンピースと椎茸のテリーヌに、サーモンと量もかなり多い。これはオードブルではなく、そのまま魚料理のメインとして出しても恥ずかしくないと思ったし。オードブルからかなり飛ばしている感じ、そして色々なことにチャレンジしている感じがうかがえた。 
 
 最初のオードブルを食べ終えた頃に、やっとどのコースにするか聞かれる。四種類あるコースは、三品目まで共通なので、こういったことが出来るのだろう。フランス人達は、食事を四つのセグメントに分けていて、食前酒を飲みながらメニューを検討する、食事を楽しむ、デザートを楽しむ、食ご酒を楽しむの四つを、均等に時間配分するそうだ。そうしたことから考えると、オードブルを食べながら、今日はどのコースにするのかをじっくり検討するのも良いかもしれない。逆の見方をすると、シェフが一人だけのビストロなので、このようにした方が効率がいいのかもしれない。
 
 二品目のスープは、なんと驚くなかれ、ココナッツのスープ。『メサイ』で開催された【トムヤムクンオフ】の時にも、ココナッツミルクの風味が効いたカレーを食べていたので、そうしたエスニックカレーからスパイスを抜いたような感じがする。ちょっと不思議な味がするんだけど、食べ進むに連れて違和感がなくなり、ちょっと甘めのクリームスープのように思えてくる。非常にスムーズできめが細かい感じで、ちょっと魅入られてしまうと言うか、うっとりしてしまうといった感じ。 言い忘れたけど、コースにはパンが二種類付いてくる。それから小皿に入ったオリーブオイルも....。イタリアンファンの人はよく判ると思うけど、バケットに、少量塩を加えたオリーブオイルをつけて食べると滅茶苦茶おいしい。
 
 三品目はパスタ。平打ちの手打ち麺だった。店名が入った皿を使っていたということは、このパスタが一番のメインなのかもしれない。
 
 四品目は魚料理。ちなみにメンソールは、パスタのあとに魚料理が来てデザート四種盛りが来るCコース、みみ子はパスタのあとにグラニテ二種盛りが来るBコースを選んでいたので、魚料理は一皿を二人でシェアした。カマスのムニエルなんだけど、添えられているのが黒米。みみ子がしきりに珍しがっていた。実は、この皿はけっこう美味しかったんだ。素材をいじりすぎと言うことで、好みはかなり別れると思う。それと、通常コースというのは、オードブルからメインの料理に向けての盛り上がりの演出というものがあると思うけれど、いきなりハイインパクトの料理をぶつけてくる手法というのも、好みが別れるところだと思う。
 
 この日のグラニテは7種類用意されていたんだけど、メンソールとみみ子が選んだのは、洋なしとレモングラス。Cコースの方にもグラニテが一種類付いたので、そちらの大葉のグラニテと合わせて三種類を堪能することができた。大葉のグラニテは、初体験の味というか、いい感じでした。クセになりそう。
 
 最後はコーヒーで仕上げ。エスプレッソもできるけど、\100円アップとなる。二人でコース食べて、スパークリングワインも一本飲んで、それで\6,500-くらい。安いでんな。
 

【店  名】 ビストロ スポンタネ
【ジャンル】 フレンチ
【電話番号】 06-6366-0776
【住  所】 大阪市北区曽根崎2-1-6
【営業時間】 17:30-22:00
【定 休 日】 日祝

 
1999年10月2日のレポートのリライトです。残念ながら、この店は閉店してしまいました。
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