大粒の雨が落ちてきた。メンソールはみみ子からのメールに「明日は待ちに待った【蛍会】だけど、雨みたい。私は、日ごろの行いは良いほうだから、きっと、メンソールのせいね....」と書かれていたのを思い出した。すぐに、「大丈夫。雨は降らないよ」と返信したし、午前中は晴れてたのに、突然夕立のような雨。メンソールは上新電機へ飛び込んで雨宿りした。時刻はちょうど18:30くらい。寺田町での待ち合わせまであと90分しかないのに、メンソールは足止めを食らってしまって動けない。
上新電機の各フロアを丹念に見て回っていると、一階に下りてくる頃には雨は上がっていた。メンソールは難波へと向かった。割引券があったので、 7月のオフ、『ルッリョ・ドティチ』へ贈る花束は日々花壇で購入しようと思ってのことだ。残念ながらホリデーイン南海の一階にある日比谷花壇は、改装中だった。無駄足を踏んだことになるが、引き返すしかない。このころ 19:30。待ち合わせまであと30分。 メンソールが寺田町に到着したのは19:57。ぎりぎりである。みみ子はまだ来ていなかったので、メンソールは駅の南側にある公園を目指した。このあたりに屋台があるはずなんだけど....、と見渡すがそれらしきものは見あたらない。電話してみると今日は休業するとのこと。突然の雨だったし、仕方ないかな....。メンソールは寺田町駅へ引き返した。しばらくするとみみ子が微笑みながらやってきた....。「お久しぶり....」とみみ子がいう。確かにものすごく久しぶりのような気がする
んだけど、前回は何時会ったかな....と振り返ってみると、一ヶ月ぶりくらいなんだ。この前別れてからだったら、もっと長い時間が流れたような気がするんだけど、間違いなく一ヶ月なんだ。メンソールは彼女に、赤いバラの花束をプレゼントした。
んだけど、前回は何時会ったかな....と振り返ってみると、一ヶ月ぶりくらいなんだ。この前別れてからだったら、もっと長い時間が流れたような気がするんだけど、間違いなく一ヶ月なんだ。メンソールは彼女に、赤いバラの花束をプレゼントした。
メンソールは、初デートの時にはバラの花束をプレゼントするんだけど、何色のバラにするかはそれなりに、その日会う相手のイメージに合わせているつもりだ。みみ子には赤が似合う、そう思って赤いバラにした。少し後のことなんだけど、深紅のバラをプレゼントした相手のことを思いだした。そう、深紅のバラを受け取ったのは、メンソールの天敵である。シーバ美保なのだ....。 寺田町に、話題の屋台『蛍』があることは、知っている人も多いと思う。みみ子とは一ヶ月前から『蛍』へ行く計画を練っていた。ところが突然の雨のため、『蛍』は休みだった。メンソールは、ここに来るために乗ってきた環状線外回りにもう一度乗り込む。天王寺を越えたあたりで、「明治屋、行きたいな」とみみ子がいう。うぅーん、ワンテンポ遅かった。電車はすでに天王寺を出たあとだったのだ。福島駅で降りると、目の前には新阪神ホテルが見えた。食事したあとは、ホテルのメインバーでブランデーなど飲むのも良いかもしれない....、と思いながら少し北へ歩く。JR東海道線の高架下が、そのまま福島市場となっているが、その中ほどに『まけへんで』という店がある。メンソールは串焼きの店だと思っていたんだけど、看板には『創作七厘焼き』と書いてあった。
扉を開けると、そこにはカウンター席だけだ。満席かな....と思ったんだけど、二階へと案内された。二階席があるとは思わなかった。二階席といっても四人掛けのテーブルが二脚あるだけ。一階にあるL字型のカウンターも、多分八席くらいしかないんじゃないかと思う。
まずドリンクオーダーを取りに来たので、メンソールは迷わずトリビー。毎回説明しているので、今回は説明する必要はないと思うが、トリビーというのは、とりあえずビールをメンソール流に縮めたもので、あまり一般的ではない。今回もウェイトレスに聞き返されてしまった。そんなメンソールとウェイトレスのやりとりを見ていたみみ子が言った。「メンソールさんって、面白いんですね」と言われてしまった。
七厘焼きは、単品もあるがセットがお得だと思う。八品セットと、本日のお薦めセットをオーダー。この店は七厘焼きだけではなくオリジナル料理も充実している。鮎の湯葉巻き揚げ、ハモつらら山芋そうめんをオーダーした。まずトリビーで乾杯。突き出しは、鯛の昆布締め梅肉ソース合え。これがけっこう美味しかった。鮎の湯葉巻き揚げは、鮎の骨煎餅が中央にあり、左右に湯葉巻き揚げがある。レモンと抹茶塩が添えられていた。これは想像したとおりの味付け。残念だったのは、抹茶塩に化学調味料が混ぜられていたこと。化学調味料はいらん。塩だけでええ。というわけで塩を探したところ、テーブルには梅肉塩も置かれていた。残念なことに、こちらも化学調味料がミックスされている。これがこの日唯一の残念無念。
ハモつらら山芋そうめんは、山芋をそうめん状に切ったものの上に、湯通しして抹茶をつけたハモが乗せられている。それとは別に、筋子か....、と思われるような赤いものが....。食べてみるとこれは煮こごりで、強烈なカツオだしの味と、それに隠れるように梅肉の味がした。これは美味しい....。ということで、メンソールは一気に食べちゃった。
七厘焼きをオーダーすると、テーブルに七厘をセットしてくれる。七厘というと、鶴橋などの焼き肉屋で見るようなものを想像するが、そうではなくて、おしゃれな土鍋といった形状のものが出される。炭は紀州備長炭。
出てきたものをすべて記憶しているわけではないんだけれど、カニ、タコ、生ベーコン、トウモロコシ、ささえのエスカルゴ風、ヤマメ、アンチョビポテト、焼きおにぎり、ボタンエビ、ホタテバター等々....。それぞれ焼き方をちゃんとアドバイスしてくれるんだけど、生で食べれるもんなんで、軽く炙るくらいにしてください、というものが多かった。
先ずはタコ。表面が白くなった程度で引き上げて食べる。生でも食べれるタコということだったんだけど、軽く火にかけることで身が引き締まって、かみ切ろうとする歯に対して、超絶の弾力性で抵抗してくる。旨い、旨い。次はカニ。切れ目が入っているので、それを上にして、こちらも表面が白くなったくらいで火から下ろす。焼きガニのかおりが部屋一杯に広がって、否が応でも興奮が高まってくる。しかも、その期待と興奮に負けないくらい美味しい。このころすでにメンソールは日本酒に移行していた。ワインにしようかなと思ったんだけど、みみ子に聞くと日本酒が良いということだった。「何が好きなの」と聞くと、「日本酒とビールとワインです」との答えが返ってきた。なぜ「好きなのはメンソールです」と言えんか....と思いながら、「それじゃ全部じゃない」と返す。「私、蒸留酒がダメなんです」と、みみ子。となると、当然カクテルもダメなんだろうな。食事が終わったら、新阪神ホテルのバーにでも行こうと思ってたんだけど、予定変更かな....。
猪口は二つですか、とウェイトレスが聞いてくるが、メンソールはぐい飲みが良いと告げた。出てきたのは湯飲みだったけど、猪口でちょこちょこと飲むよりは、こっちの方が性に合っている。日本酒は一合徳利しかないらしいんだけど、湯飲みに入れたら一合全部入っちゃった。そのため、徳利を包むクラッシュアイスと徳利クーラーは、運ばれてくると同時にその役目を終え、引き取られていった。
次はサザエ。すでにサザエの身は5mm角くらいに刻まれており、ガーリックバターと共に殻に戻されている。この時点でガーリックバターは固まっているんだけど、火にかけると溶けだしてくる。サザエには、薄切りにしたバケットが添えられていて、このパンを軽く炙り、溶けたガーリックバターごと、サザエを薄切りバケットにかけて食べるのだそうだ。これまためっちゃ旨かった。みみ子はサザエが大好きなんだそうで、きゃっきゃ言ってはしゃいでいた。もともと年齢よりは若く見られていると思うみみ子が、満面に笑みを浮かべてはしゃいでいる姿はかわいくて仕方がない。
お次は、生ベーコン。軽く黒胡椒が振られている。生でも食べられるけど、10秒くらい炙っても美味しい。ということだったので、軽く炙る。脂身が暖かくなっていて、なかなかいい感じ。いつも食べてるベーコンは、名前だけベーコンで別もんなんじゃないかと思うくらい旨い。噛みしめているのはベーコンじゃない。多分幸せを噛みしめてるんだと思う。
次はホタテ貝。帆立貝の殻を皿代わりにして、その上でホタテを焼く。こちらもサザエと同様、火にかけるとバターが溶けだしてくる。これも半生が良いとのアドバイスだったので、半生状態のものを食べる。もう幸せやね。
ボタンエビも、軽くさっと炙る程度で頂く。頭と尻尾だけはカリカリになるまで焼き上げてからかじる。もう何とも言えん。
司牡丹がなくなったので、古酒に移行する。銘柄は忘れたけど、奈良の古酒だった。うっすらと水割り程度に茶色い液体が、グラスに注がれる。グラスの台は竹筒をアレンジしたものだ。まず香りをかぐ。何とも言えない甘い芳香が漂う。上等の泡盛もこんな香りがしたように思う。一口含むと上品な甘みが広がっていく。度数は20度くらいだろう。これがまた、声を失うくらいに旨い。
焼きおにぎりに醤油を塗り、ひっくり返して....と繰り返しているうちに、トマ
トのサラダが食べたくなった。アンディーブが敷き詰められてフレンチドレッシングがかけられた、その皿の中央に、トマトが丸ごと乗っている。トマトの表面はトマトケチャップで覆われている。最初はちょっと甘く見て段だけど、トマトは裏側からくり抜かれていて、スモークド・サーモンなどが入れられている。まさしく意表をついた一品。
トのサラダが食べたくなった。アンディーブが敷き詰められてフレンチドレッシングがかけられた、その皿の中央に、トマトが丸ごと乗っている。トマトの表面はトマトケチャップで覆われている。最初はちょっと甘く見て段だけど、トマトは裏側からくり抜かれていて、スモークド・サーモンなどが入れられている。まさしく意表をついた一品。
唯一、良く火を通した方が良いといわれたのが、アンチョビポテト。ジャガイモの皮を残して中身を抜き出し、これをアンチョビと混ぜ、先ほどの皮に戻したもの。これはアルミフォイルに包まれている。臭い消しが目的だと思うが、ちょっとハーブの香がきつい。
最後はカシスのシャーベットで締め。「みみ子、メンソールと付き合えへんか?」と聞くと「もう不倫はこりごりよ」と言われてしまった。それでもちゃんと次のデートの約束を取り付けるあたり、メンソールはえらい。デートコースはもちろん『蛍』だけれど、この『まけへんで』の姉妹店である『やんて』もかなり期待できるんではないかと思う。『まけへんで』が創作七厘焼料理、であるに対して、『やんて』は遊食居酒屋と書いてある。
【店 名】 まけへんで
【ジャンル】 創作七厘焼料理
【電話番号】 06-6457-2726
【住 所】 大阪市福島区福島7-11-51 JR東海道線高架下福島市場内
【営業時間】 11:00-13:30、17:00-23:00
【定 休 日】 日曜日・祝日
【そ の 他】 姉妹店に『やんて』がある。