「メンソール、ちょっと会われへん?」、そういって連絡をくれたのはアコだった。「でさ、メンソール、和食食べたいんやけどな」、と言う。「判った。じゃ、アクロスの前で」と、返信した。最近アコはなんか様子がおかしくて、何かたくらんでるんじゃないかと思ったりした。正直、待ち合わせ場所のアクロスにアコは現れなくて、メンソールに淡い恋心を持っていると聞かされている娘が待ってるんじゃないかとも思ったりした。アコは、メンソールに内緒でその娘のキューピット役を買って出たんじゃないかとも…。
メンソールの幻想は打ち砕かれ、待ち合わせ場所に現れたのはアコだった。メンソールをみるなり「このビルに入ってる店なんか?」と聞くから、「ちゃう、ちょっと歩く」と行って東心斎橋にある平成ビルの六階に案内する。アコはたぶん、お洒落系居酒屋くらいをイメージしてたんだと思う。店の扉を開けた時、ちょっとびっくりしてた。靴を脱いで挙がり、堀を切ったカウンターに並んで座る。
メンソールが予約しておいたのは、6,000円のコース。夜のコースは他にも、8,000円、10,000円、そしておまかせコースがある。
カリン酒と共に出されたのは、月見料理と呼ばれる前菜。仄かな明かりのろうそくが灯されているのも印象的だが、品数の多さがまた半端じゃない。京都の芋と棒鱈煮、黒豆ゼリー、あんこ浮きも豆腐、柿ベーコンと車エビとムカゴの串打ち、穴子の棒鮓、柿玉子。メンソールも日本酒で対抗する。日本酒の取りそろえは三種類くらいしかないけど、よく吟味されていると思う。
「ほんまはな、待ち合わせ場所には別の娘がおるかもしれんって思とってん」と、と言ってみると。「引き合わせ役か?。そんなことするわけないやろ。今日はメンソールとのデートやのに…」と、アコが言った。
煮物椀は雑煮なんだけど、これまた手が込んでる。椀は輪島塗、餅花あげ、美味出汁、三葉、白髪ネギ、大根おろし、海苔。箸も独特で、細身なんだけど扱いやすい。メンソールの方は、伯楽泉(一合)があっという間になくなってしまったので、緑川を二合でオーダーした。クラッシュド・アイスに埋められたような感じで二合徳利と猪口が出される。なかなかうれしい心遣いだ。
「あの子はどうなったん?」と、アコが聞く。「あかん、一週間で振られたわ。手繋ぐどころかデートもしてへん。なんで振られたんか判らん」と、言いながら、ひょっとしてアコが「私のメンソールに手を出すな」とか言ったんかなと思ったりした。「へっ、私?。そんなことせえへんで」と、アコが言った。
造りもまた手の込んだもので、品数も多い。クラッシュド・アイスを固めて作った氷器に盛られているのは、寒ブリを炙ったもの、マグロ、ホタテ貝の炙り、天然鯛、牡蠣の田楽風、湯葉とうに、いかの塩辛、そしてあしらいが一式。ポン酢と醤油の二種類が出される。
アコとは、しばらく近況を話し合ったりした。焦点はどうしても来年三月になるんだけど、何が起こるかは判らんわな。ま、準備はしとかなあかんやろけど…。
おしのぎとして出されたのが、かぶらの巻鮓、うなぎときゅうり、車エビのパンロール、酢牛蒡。そして強肴が松葉ガニ。蟹酢が出されるんだけど、何とも仄かではかない。出汁の味も、酢の酸味も、それほど主張はしない。ほんのりとはんなりと。それでいて、しっかりと蟹の味を引き立ててくれるといった感じ。メンソールは、最後に蟹酢を飲み干してしまったほど。
「メンソール、来年のことやねんけどな」と、鬼も笑う2008年の予定を話し合い。「うちのグループやけどな、ちょっと気になってる娘がおるねん」と言った話が出て、メンソールは次の二合をオーダーし、料理の方は八寸へと進む。
八寸は、陶器の家をかたどった器に盛られていて、まながつおの味噌漬け、牡蠣の田楽焼き、キスの天ぷら、丸大根のふろふき、菊衣人参、手羽先塩焼き、カステラ風だ手巻き玉子、赤名も、高野豆腐、こんにゃく、厚揚げ豆腐、蓮根小豆など、これでもかの品数が並ぶ。
ご飯物は、鯛飯、香の物離す、きゅうり、かぶら塩漬けで、30年以上のぬか床を使っているらしい。吸い物は、粕汁。
「メンソールは、出さんでええで」と、アコは言い、会計を済ませてくれた。「その代わりな、メンソール。夜はまだまだ長いから、ちゃんとつきおうてくれなあかんで」と、言われてしまった。ヘ(^^ヘ)(ノ^^)ノ。
メンソールとしては、ちらり気になるところもあるんだけど、品数の多さは圧倒的。そして器の選び方が秀逸で、コストパフォーマンスはウルトラ級だと思う。あまり紹介されることはないけど、寡黙そうに見える大将が口を開くと、ギャグが飛び出すところがまた落差があって楽しかったりする。毎月でも行きたいくらい。
(店 名) 木田
(ジャンル) 京料理
(所 在 地) 大阪市東心斎橋2-7-11 平和ビル六階
(電 話) 06-6213-9358
(営業時間) 11:30-14:30、17:00-22:00
(定 休 日) 不定休
(店 主) 木田和夫
メンソールの幻想は打ち砕かれ、待ち合わせ場所に現れたのはアコだった。メンソールをみるなり「このビルに入ってる店なんか?」と聞くから、「ちゃう、ちょっと歩く」と行って東心斎橋にある平成ビルの六階に案内する。アコはたぶん、お洒落系居酒屋くらいをイメージしてたんだと思う。店の扉を開けた時、ちょっとびっくりしてた。靴を脱いで挙がり、堀を切ったカウンターに並んで座る。
メンソールが予約しておいたのは、6,000円のコース。夜のコースは他にも、8,000円、10,000円、そしておまかせコースがある。
カリン酒と共に出されたのは、月見料理と呼ばれる前菜。仄かな明かりのろうそくが灯されているのも印象的だが、品数の多さがまた半端じゃない。京都の芋と棒鱈煮、黒豆ゼリー、あんこ浮きも豆腐、柿ベーコンと車エビとムカゴの串打ち、穴子の棒鮓、柿玉子。メンソールも日本酒で対抗する。日本酒の取りそろえは三種類くらいしかないけど、よく吟味されていると思う。
「ほんまはな、待ち合わせ場所には別の娘がおるかもしれんって思とってん」と、と言ってみると。「引き合わせ役か?。そんなことするわけないやろ。今日はメンソールとのデートやのに…」と、アコが言った。
煮物椀は雑煮なんだけど、これまた手が込んでる。椀は輪島塗、餅花あげ、美味出汁、三葉、白髪ネギ、大根おろし、海苔。箸も独特で、細身なんだけど扱いやすい。メンソールの方は、伯楽泉(一合)があっという間になくなってしまったので、緑川を二合でオーダーした。クラッシュド・アイスに埋められたような感じで二合徳利と猪口が出される。なかなかうれしい心遣いだ。
「あの子はどうなったん?」と、アコが聞く。「あかん、一週間で振られたわ。手繋ぐどころかデートもしてへん。なんで振られたんか判らん」と、言いながら、ひょっとしてアコが「私のメンソールに手を出すな」とか言ったんかなと思ったりした。「へっ、私?。そんなことせえへんで」と、アコが言った。
造りもまた手の込んだもので、品数も多い。クラッシュド・アイスを固めて作った氷器に盛られているのは、寒ブリを炙ったもの、マグロ、ホタテ貝の炙り、天然鯛、牡蠣の田楽風、湯葉とうに、いかの塩辛、そしてあしらいが一式。ポン酢と醤油の二種類が出される。
アコとは、しばらく近況を話し合ったりした。焦点はどうしても来年三月になるんだけど、何が起こるかは判らんわな。ま、準備はしとかなあかんやろけど…。
おしのぎとして出されたのが、かぶらの巻鮓、うなぎときゅうり、車エビのパンロール、酢牛蒡。そして強肴が松葉ガニ。蟹酢が出されるんだけど、何とも仄かではかない。出汁の味も、酢の酸味も、それほど主張はしない。ほんのりとはんなりと。それでいて、しっかりと蟹の味を引き立ててくれるといった感じ。メンソールは、最後に蟹酢を飲み干してしまったほど。
「メンソール、来年のことやねんけどな」と、鬼も笑う2008年の予定を話し合い。「うちのグループやけどな、ちょっと気になってる娘がおるねん」と言った話が出て、メンソールは次の二合をオーダーし、料理の方は八寸へと進む。
八寸は、陶器の家をかたどった器に盛られていて、まながつおの味噌漬け、牡蠣の田楽焼き、キスの天ぷら、丸大根のふろふき、菊衣人参、手羽先塩焼き、カステラ風だ手巻き玉子、赤名も、高野豆腐、こんにゃく、厚揚げ豆腐、蓮根小豆など、これでもかの品数が並ぶ。
ご飯物は、鯛飯、香の物離す、きゅうり、かぶら塩漬けで、30年以上のぬか床を使っているらしい。吸い物は、粕汁。
「メンソールは、出さんでええで」と、アコは言い、会計を済ませてくれた。「その代わりな、メンソール。夜はまだまだ長いから、ちゃんとつきおうてくれなあかんで」と、言われてしまった。ヘ(^^ヘ)(ノ^^)ノ。
メンソールとしては、ちらり気になるところもあるんだけど、品数の多さは圧倒的。そして器の選び方が秀逸で、コストパフォーマンスはウルトラ級だと思う。あまり紹介されることはないけど、寡黙そうに見える大将が口を開くと、ギャグが飛び出すところがまた落差があって楽しかったりする。毎月でも行きたいくらい。
(店 名) 木田
(ジャンル) 京料理
(所 在 地) 大阪市東心斎橋2-7-11 平和ビル六階
(電 話) 06-6213-9358
(営業時間) 11:30-14:30、17:00-22:00
(定 休 日) 不定休
(店 主) 木田和夫