期待の若手映画監督たちが横浜黄金町に集結します!
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桝井孝則『夜光』|梅本洋一

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(*写真は、桝井孝則『夜光』より)

上映後、さまざまなサイトで「未来の巨匠たち」上映作品について言葉が交わされております。

「未来の巨匠たち」ウィーク、あっという間に1週間は過ぎ去りましたが、熱気はまだまだ残っています。

作品に刺激され、つぎつぎと新しい言葉が生まれてくることを願っています。

今回の企画にも参加していただいた映画批評家の梅本洋一さんもさっそく『夜光』について書いていますので、ここに掲載いたします。


* * *

「未来の巨匠たち」特集上映の枠で、桝井孝則の『夜光』を見た。プログラミングに携わるひとりなのに、初めて見たと告白する無責任さを許してほしい。関西に住む彼の作品に触れる機会がなかったと言い訳するのも、DV撮影されているのに、ディジタル時代のアナログメディアである映画がなかなか距離を踏破しづらいことを示しているのかもしれない。

「未来の巨匠たち」ブログに掲載されている海老根剛の文章( はこのフィルムにはうってつけのイントロダクションになるだろう。そして桝井孝則のフィルムを、ものの1分も見れば、このフィルムが作っている力学を感じられない人はいないだろうし、その映画を見たことがある人なら一様に「ストローブ=ユイレ!」と呟いてしまうだろう。異様なテンションで語られるリアリズムから遠い台詞回し、長々と続行する風景のショットとノイズを排除しない現場の音……そう書けば、ストローブ=ユイレの真似事は誰にでもできそうなのだが、ゴダールの真似をできる人がいないように、映画の限界体験でもあるストローブ=ユイレの力学をそのままコピーしたところでストローブ=ユイレになれる人など誰もいない。なぜなら、ストローブ=ユイレのフィルムが生成するのは、フォルムではなく、力学からだからであって、その力学は、厳密な弁証法に基づいて成立する。音声と映像と簡単に言ってしまえばそれまでなのだが、その弁証法的な力学に到達できる人は、例外的だ。

つまり桝井孝則は例外的な存在だ。彼のフィルムでは、どんな局面においてもそうした弁証法的な力学が息づいている。台詞と声、ペンと紙、男と女、都会と田舎、停止と移動、時間と空間、仕事と金銭……。表面的には、派遣労働者である女性と同じように写真家になりたいのだがアルバイト生活をする男性の労働についての物語の体裁を採っている。重要なのは、その物語が語る内容ではなく、弁証法の産み出す力学であって、映画は、その要素をひとつひとつ詳細に知的に構成しつつ、弁証法の運動をそのプロセスのまま提示している。『夜光』は、その意味で、撮ってしまった映画とは正反対の位置にある。

むろん、こうした映画が備えている困難さについては誰でもが知っている。映画は商業であり、娯楽であると言われれば、このフィルムは、その範疇には入らない。映画産業から見れば、このフィルムは映画ではない。だが、映画にはどんな可能性があり、映画でどんなことが可能になるか、という商業を括弧に入れて、別の問題を立てれば、このフィルムほど、その問いにまっとうな回答を与えているフィルムはないだろう。つまり映画とは思考である。映画とは弁証法の運動である。

*「nobody」ウェブサイトより
http://www.nobodymag.com/journal/archives/2010/0126_1950.php

梅本洋一(うめもと・よういち)
1953年生まれ。横浜国立大学・教育人間科学部マルチメディア文化課程教授。パリ第8大学大学院映画演劇研究所博士課程修了(映画論、フランス演劇史専攻)。最近の著書に『建築を読む』(青土社、06年)、『映画旅日記 パリ、東京』(青土社、06年)ほか。

* * *

『夜光』
現代に蔓延する疎外。仕事が生活を圧迫し、生活はただ食べて寝るという単調な繰り返しになっていく、 という日常。印刷会社で働く由佳も、そのひとり。会社の傾きにより、時間外も働くことが当たり前になって自分の生活を見失ってしまう。映画はここから始ま る……。第16回大阪ヨーロッパ映画祭上映作品。
監督・撮影:桝井孝則
録音:松野泉
出演:本倉由佳、濱口香済、植田歩、佐々木一平、田野“JAM”昌子
2009年/DV/51分
映画『夜光』公式HP
http://www.shikounorappasya.or.tv/yako/main.html

桝井孝則(ますい・たかのり)

1979年大阪生まれ。「思考ノ喇叭社」( )の一員。2006年、板倉善之『にく め、ハレルヤ!』に製作助手として参加し、2003年に活動をスタートした「思考の喇叭社」に加入した。同グループは、個々のメンバーが映画、アニメー ションに限らず、イラスト、音楽、人形制作とジャンルを超えて協力し合いながら、活動を続けている。

最終日!濱口竜介監督!!

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(*写真はトーク)

最終日です!!

本日ご来場のみなさん、そして期間中ご来場くださったみなさんありがとうございました!!

そして、本日のトークも充実の1時間でした。

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(*写真は濱口竜介監督)

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(*写真は梅本洋一さん)

最終日のトークは濱口監督の作品についてはもちろん、監督になるまでのいきさつ、濱口監督の作品をご覧のみなさんなら誰もが思う台詞の多さや役者との関わり方などについて、大変興味深いお話を聞くことができました。

また、この企画に参加していただいた監督たちや今映画を製作している監督たちが思っている実製作におけるデジタルとアナログについての話は今現在の製作状況についてのある一片を垣間みれた瞬間かもしれません。
 
そしてトークの最後には、先日亡くなられたエリック・ロメール監督をめぐる話題が客席より提起され、それに答える濱口監督の発言は、これまでのロメール観とは異なる視点を導入するもののように思いました。

* * *

最後に、今回の企画に参加していただいた監督さんをはじめ、観客のみなさん、7日間お付き合いいただきありがとうございました。

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また、「未来の批評キャンペーン」は会期後も継続して募集しておますので、ご来場いただいた方は、ぜひご感想を監督さんたちに送る気持ちで、ご投稿いただければと思います。

よろしくお願いします。
http://blog.livedoor.jp/mirai_kyosho/archives/51393279.html

本日最終日!濱口竜介の新作『永遠に君を愛す』上映!

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(*写真は、濱口竜介『永遠に君を愛す』より)



いつのまにか、もう最終日。

1週間というのは、あっという間ですね。

最終日を飾るのは、昨年『PASSION』で大きな話題を呼んだ濱口竜介監督。

しかも、新作『永遠に君を愛す』のプレミア上映つきです!

大学映研卒業時に制作した『何食わぬ顔』。

ENBUゼミの卒業制作である『はじまり』などなど。

濱口監督の歩みを追うことのできる、魅力的なプログラム。

また、20時より、濱口監督、梅本洋一さんをお迎えして、トークショーを開催いたします。

「未来の巨匠たち」も、ついに最終日となりました。

みなさま、ぜひともご来場下さい!

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本日のスケジュール
14h00 『PASSION』
16h20 『何食わぬ顔』『はじまり』『Friend of the Night』
18h20 『記憶の香り』『永遠に君を愛す』
20h00  トーク  濱口竜介×梅本洋一(映画批評家)
http://www.mirai-kyosho.kitanaka-school.net/program/index.html


濱口竜介(はまぐち・りゅうすけ)

1978 年生れ。東京大学在学中より自主映画の製作を始める。卒業後、自作の制作と並行して映画やTV番組の助監督を務める。東京藝術大学大学院映像研究科(映画 専攻・監督領域2期生)の修了作品として長編『PASSION』を監督。サンセバスチャン国際映画祭、東京フィルメックスなどに出品され、大きな話題とな る。本特集では最新作『永遠に君を愛す』を本邦初上映。

作品紹介はこちら
http://www.mirai-kyosho.kitanaka-school.net/films/taki.html  
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